| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

手話で伝えて

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

第一章

                手話で伝えて
 ゴリラは知能が高い、だからだとだ。
 動物学者のサラ=ヘンダーソンは飼育員のスティーブ=マッカートニーに話した。
「手話も出来るのでは」
「そう思われてですか」
「協力して欲しいのですが」
 ヘンダーソンは知的な感じのブロンドをまとめた青い瞳の四十代の女だ、その彼女が赤髭で顔の下半分を覆ったグレーの瞳の大男に共に食事を摂りながら話している。
「いいでしょうか」
「面白そうですね」 
 マッカートニーはヘンダーソンに笑顔で応えた。
「では」
「はい、これからですね」
「私が担当しているモーラにですね」
「手話を教えていきます」
「それでは」
 こうしてだった、ヘンダーソンはマッカートニーの助けを受けてセントルイスの動物園において雌のゴリラのモーラに手話を教えていった。
 するとモーラは人間程すぐではないが手話を覚えていった、それでヘンダーソンはマッカートニーに話した。
「やはりゴリラは知能が高いですね」
「本当に手話を覚えましたね」
「出来ると思っていました」
 マッカートニーに微笑んで話した。
「ゴリラなら」
「それだけの知能があるので」
「はい、そして」
「そしてとは」
「ゴリラはとても心優しい生きものですね」
「ええ、外見のせいでよく誤解されますが」
 飼育員としてだ、マッカートニーはヘンダーソンにすぐに答えた。
「ですが」
「それでもですね」
「実はです」
「ゴリラはとても大人しくて」
「優しい、間違っても暴力なぞ振るわない」
「そうした生きものですね」
「家族愛も深いですし」
 愛情も備えているというのだ、それもかなりのレベルで。
「とてもいい生きものです」
「左様ですね」
「若し人間がゴリラから進化していれば」 
 マッカートニーはこうも言った。
「もっと穏やかになっていたでしょう」
「ではモーラに家族を」
「はい、ですがモーラは伴侶もまだ」
「いないですか」
「他の動物園から送ってもらう話はしていますが」
 それでもとだ、マッカートニーはヘンダーソンに困った顔で話した。
「まだ先で」
「それでは」
「モーラに家族が出来るのはすぐではないです」
「そうですか、なら」
 それならとだ、ヘンダーソンはマッカートニーの言葉を受けてこう提案した。
「ゴリラでなくてもです、猫や犬を紹介して」
「そしてですか」
「家族を手に入れてもらっては」
「そしてモーラの反応を聞きますか」
「手話で」
「そうされますか」
「どうでしょうか」
「それも面白いですね」 
 それもとだ、マッカートニーは笑顔で答えた。
「それではです」
「紹介しますか」
「そのこともモーラに聞いてですね」
「それから進めていきましょう」
 手話でとだ、こう話してだった。
 ヘンダーソンは実際にモーラに手話で家族が欲しいか、そしてそれは犬か猫事前にどんな生きものか写真も見せて教えたそのことも伝えてだった。
 そのうえでモーラに聞いた、すると。
「猫ですか」
「はい、猫の家族が欲しいとです」
 ヘンダーソンはマッカートニーに動物園の中で話した。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧