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戦国異伝供書

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第七十八話 紺から紫へその八

「それも初陣までのこと」
「兄上が初陣を迎えられれば」
「その時はじゃ」
 まさにというのだ。
「誰も考え方を変える」
「その時に兄上を見て」
「まさにその場でな」
 瞬時にというのだ。
「そうなるわ、お主も思うであろう」
「はい、兄上ならば」
 まさにとだ、弥八郎も答えた。
「間違いなく」
「我等はお傍にいるからわかる」
「左様ですな」
「しかしそうでないとな」
「わからぬものですな」
「そうした場合もある、だが」
「その時が来れば」
 弥八郎も述べた。
「人はわかりますな」
「そういうことじゃ、では我等はな」
「兄上と共にですな」
「鍛錬に励んでいこうぞ」
「後に長曾我部家を支える為に」
「おそらくわしもお主も他家に入りな」
「その家を継ぎますな」
「そして長曾我部家を支えることになる」
 これが国親の考えだ、彼は他の国人達を取り込みそこに我が子達を入れて長曾我部家に取り込んでいるのだ。 
 それでだ、自分達もというのだ。
「だからな」
「それぞれの家に入ってその家の主となり」
「そのうえでな」
「兄上を、ですな」
「お守りしてな」
「支えていきますな」
「そうなる、兄上という見事な方をな」
 こう言うのだった。
「だからこそな」
「その時に備えて」
「鍛錬をしようぞ」
「弥九郎もですな」
「当然じゃ、皆がじゃ」
 兄弟全員がというのだ。
「鍛錬をするぞ」
「後に備えてですな」
「兄上が初陣を見事に飾られてな」
「そしてその時に」
「兄上の真価が世に知られた時にな」
 まさにその時にというのだ。
「我等は兄上をお助けせねばならん」
「だからこそ」
「それではな」
「その時に備えて」
「今は励むぞ」
 こう話してだった、そのうえで。
 弥三郎の弟達は今は彼等の兄と同じく学問に武芸にも己を鍛えていった、だが家の者達はそんな彼を見て不安に思う者が多かった。
「まことに大丈夫か」
「殿や弥五良様は若様ならと言われるが」
「それでもな」
「あの方は」
「どうかと思うが」
「それでもな」
「あの方はな」
 弥三郎、彼はというのだ。
「大丈夫か」
「相変わらずおどおどとされ」
「そしてぼうっと空や野原や森ばかり見られ」
「碌に喋られぬ」
「ひょろ長く弱々しい」
「実に頼りない」
「あれではな」
 どうにもというのだ。 
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