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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ

作者:かびちゃ
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第十三話 ライセン大迷宮



二日後

俺たちはライセン大迷宮に向けていつも通り飛行していた。ちなみに昨日、ハジメはシアに新しい武器を与えた。その名も『ドリュッケン』だ。普段は直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状をしているが、シアが魔力を流し込むことで大槌に変形するのだ。特定の場所に魔力を流すことで変形したり内蔵の武器が作動したりもする。シアは身体能力がとても高いので、大槌も扱えると思ったらしい。とても良い判断だと思う。

「さて‥‥‥オスカー本当に分かるのかな?場所をなんとなく知ってる感じだったけどな‥‥」

俺はエアライドマシンに乗りながらオスカーの操縦するJu-00を追いかける。すると、オスカーが操縦する機体が着陸態勢に入った。どうやら近いらしい。

「んん?なんか怪しいとこがある‥‥‥あそこかな?」

俺の視線の先には、を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。

〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

「‥‥‥‥‥‥‥」

そこにオスカーがおりてきた。

「これか?」

「そうだね。懐かしいな‥‥」

「‥‥‥裏道とか分かるか?」

「彼女がいる直前までは僕が転移させられるよ」

「うし、それで行こう」

なんともまあ、卑怯な手である。普通なら苦労して、死にそうになりながら攻略するところを転移一つであっという間にクリアできるのだ。

まあ、クリアできればいいのだ。クリアできれば。別に作者が面倒くさいから転移するわけじゃない。ないったらないのだ。オスカーとミレディは知り合いってこともあり、戦わずに済む可能性もある。ぶっちゃけ戦いたくないのも理由のうちの一つだ。俺は別に、戦闘狂じゃない。

「それじゃあ‥‥‥行くよ。“転移”!」

シュンッ‥‥‥

次に視界に写ったのは‥‥‥。

「でっけえなあ」

とてもとても大きい宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑で、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化している。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。さらに、周りに小さい‥‥‥と言っても2mぐらいのゴーレム騎士がたくさん召喚された。たくさんいると威圧感たっぷりだ。

「間違いない‥‥‥いきなりラスボスだな。“変身”」

「かなり厄介な気がするが‥‥‥まあいい。戦車隊、照準各自合わせろ!」

「こんだけ数がいたら久々に楽しめるかもな‥‥Start our mission」

「ふん‥‥‥敵なら殺すだけだ。久々に暴れるぞ」

「とりあえずこいつら倒さないとね。ミレディと話すのはそれからだな」

「血気盛んだなあ‥‥‥でも、私も頑張らないとね!」

「ん‥‥‥頑張る‥‥」

「やってやりますよぉ〜」

「シア‥‥‥空回りしないようにね」

その間にも、ゴーレム騎士の数は増えていく。整列したゴーレム騎士たちは胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。

すっかり包囲され、緊張感が高まる。辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況。動いた瞬間、命をベットしてゲームがまる。そんな予感をさせるほど張り詰めた空気を破ったのは……


……巨体ゴーレムのふざけた挨拶だった。


「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」


「「「「「はあ?」」」」」


「「「「え?」」」」

男子と女子でそれぞれの反応をする。

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

実にイラっとする話し方である。しかも、巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げると、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。

と、その時。オスカーが前に進み出た。

「ミレディ?ミレディなのか?」

「んん?誰だい君ぃ〜」


「オスカー・オルクス。解放者の一人で、君の仲間だ‥‥‥!」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ええ?!」

「まさか生きてたなんて‥‥‥」

「待って待って。本当にオーくん!?」

「相変わらずのウザさだね。ミレディ」

苦笑いをするオスカー。

「ちょっとぉ!いきなりウザイはないでしょお!!」

「はは、ゴメンよ。ただ、変わってなくて良かったなあ‥‥‥って」

「うぅ‥‥‥いきなり感動すること言う‥‥」

「とりあえずだけど、君の神代魔法を彼らに授けてほしいんだ」

「私の神代魔法を?そりゃまた‥‥‥」

「盛り上がってるところ悪いな。俺たちは神殺し目的で大迷宮を攻略しているんだ」

「神殺しか〜。あのクソ野郎を倒してくれるの?」

「く、クソ野郎‥‥‥。まあそうだな」

思った以上に口が悪くてたじろいでしまったが、話を続ける。


「率直に言おう。君の神代魔法を授けてほしいんだ」

「うん、事情は分かったよ。でも、大迷宮は試練をクリアしないと駄目だから‥‥‥」

ミレディが殺気立つ。

「ここにいるゴーレム騎士全てと、私を倒してからだよ!!」

「‥‥‥だと思ったぜ」

なんとなくは予想できていたので、俺はツェリスカとアヴェンジャーを構えた。ハジメはドンナー・シュラーク、拓人は指揮棒を、蜂起はトンファー、聖は槍を、ユエとミーナは魔法を、シアはドリュッケンを構える。

「オーくんは見ててね。手を出したら多分速攻で終わっちゃうから」 

「分かったよ」

「‥‥‥‥それじゃあ、行くぜ?」

その言葉を引き金に、ゴーレム騎士と俺たちの大戦争が始まった。

「死ねやあ!」

ドパンァァァン!!

先手はハジメだ。目にも止まらぬ速撃で数体まとめて葬り去る。

「ホワッチャァァァア!!」

蜂起は真っ先にゴーレムの大群に突っ込んだ。

「援護しますぅ!!」

シアも敵中に飛び込む。近接格闘のエキスパートである二人は、一回殴るごとに複数体のゴーレムを吹っ飛ばしている。恐ろしいやつだ。

「撃ち方始め!!」

ドガンドガンドガンドガンドガン!!!

拓人は戦車砲を奥の方にいるゴーレム騎士に向けて発射。速攻で数体が消し飛んだ。

「拓人!榴弾に切り替えろ!聖は俺と来い!ユエ、ミーナ!ミレディに直接攻撃だ!無理はすんなよ!」

「あいよお!!」

「うん!」

「分かりました!」

「んっ!」

ドガアン!ドガアン!

キィィィィィィィィィィィィィィ‥‥‥!

「リャア!!」

ブォオン‥‥  ザシュッ!ザシュッ!

「榴弾に切り替え‥‥良し!撃てぇ!」

ドガンドガンドガンドガンドガン!!

「“破断”」

「“槍乱”」

‥‥‥後ろで魔法をぶち込む音が聞こえるが、無視する。とりあえず‥‥‥

「数だけはいるな!数だけは!!」

ゴーレム騎士は倒れた側から復活し、さらに召喚されるため、実質ノーカン‥‥‥いや、むしろマイナスだ。

「なら‥‥‥聖。しばらくみんなを仕切ってくれ」

「ん?いいけどなんで?」

戦いながら会話する。もちろん目には敵しか映っていない。

「このままじゃキリがない。だったら親玉を倒そうと思ってな」

「そういうことね‥‥‥分かった。無茶しないでね」

「助かる。ユエ、ミーナ!聖の援護へ行け!」

「あれあれぇ〜?いいのかなぁ?」

「むしろ一人の方がやりやすいんでね」

俺は一人でミレディゴーレムと相まみえる。

「‥‥‥‥‥‥」

ついでにツェリスカを宝物庫にしまう。

「おやぁ?そいつは相棒じゃないのかい?」

「どうせ効かないだろうが」

それだけ言って飛び上がる。と、その時である。

「ッ!?」

上から何かが降ってきた。

「アハハ。私の能力は重力操作。その辺の岩や天井を落とすなんて朝飯前だよ!」

「知るか!」

キィィィィィィィィィィ‥‥‥!

必要最低限だけ撃ち抜く。そして、ミレディゴーレムの胸部に張り付いた。

「この距離ならバリアは張れないな!」

「ちょっ!待ーー」

カチッ

キィィィィィィィィィィィィィィ‥‥‥!

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!

「‥‥‥‥やはり」

「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ」

ミレディゴーレムの銀色の鎧は難なく突破したようだが、その下にあった黒い鎧は無傷だ。ここまで恐ろしい硬度のものは、一つしかありえない。

「……アザンチウムか」

アザンチウム鉱石は、俺の装備の幾つかにも使われている世界最高硬度を誇る鉱石だ。薄くコーティングする程度でもドンナーやツェリスカの最大威力を耐え凌ぐ。道理で、傷一つつかないわけである。あのアザンチウム装甲を破るのは至難の業だ。

「いや、待てよ‥‥‥弾丸より拳の方が‥‥」

脳筋思考だが、それが最善だと思ってしまった。思ったら行動だ。

「んん?それもしまっちゃうのぉ?」

「いらねえわ」

「ふ〜ん?でもそれじゃあ装甲の突破は困難だよぉ?」

「フフフ‥‥‥だと思うだろ?」

「‥‥‥なんなのさ。その笑いは」

「さあな?フフフ‥‥‥」

「気に食わないなあ‥‥‥これで砕け散りな!!」

ミレディが赤熱化した右手を振り下ろして来た。俺はそれをギリギリで避ける。

「フフフ、ギリギリじゃないか。当たるのも時間の問題だよぉ?」

「どうだろうな?」

その後も拳を振るうミレディ。それを俺はすべてギリギリで避ける。途中からモーニングスターも使ってくるが、気にしない。すべてギリギリで避けた。

「ムムム‥‥‥ムカつくなあ」

「してやったり、とでも言っとこうか?」

「ムキーッ!!」

滅茶苦茶に拳とモーニングスターを振るうミレディ。やはりギリギリで避ける。

「‥‥‥こんなもんでいいかな」

ボソリと一言。そして‥‥‥。

「ドリャア!!」

「セイッ!!」

振り下ろした拳を初めて迎え撃った。

バギィ!!

「なっ‥‥!?」

驚いた声を上げるミレディ。ミレディの拳は木っ端微塵に砕けていたからだろう。

「わざわざ強化してくれてありがとうな」

「強化‥‥‥?そんなことは‥‥」

「‥‥‥随分と美味しい"風"だったぜ?」

「風‥‥‥? ‥‥!? まさか!」

「風を全部取り込んだのさ。わざわざ強化ご苦労さん」

「う、ウザい‥‥‥‥」

「お前が言うなよ‥‥“時空破断”」

呆れながらも俺は時空を歪めた。

ビキッ‥‥‥

「なな!? 装甲が!?」

「流石に時空を歪められたら保たないらしいな。アザンチウムも」

「な、なんて恐ろしい‥‥‥」

「さて、チェックメイトだ」

そして飛び上がる。トドメの一撃を食らわせるために、拳に全エネルギーを集める。

「くぅ‥‥‥でも、拳でアザンチウムを貫通するのは‥‥‥!」

「その慢心が命取りだって気がつけや」


ドガァァァァァァア!!!!


バキイッ!!

「‥‥‥そんな‥‥なんで」

「‥‥‥全てのエネルギーを拳に詰めれば、それだけ拳は固く、鋭くなる。それに加え、腰の回転、拳の螺旋回転、体重移動、位置エネルギー‥‥‥全てが正確に拳に乗ったとき、生身の拳でも岩ぐらいなら砕けるのさ」

「はは‥‥なんて戦闘センス‥‥‥」

その言葉を発した直後、ミレディゴーレムは後ろに倒れ、目の光が消え去った。

「‥‥‥」

ゲシッ

ミレディの身体を蹴って後ろに下がる。

クルンッ スタッ

さらに宙に浮き、一回転して地面に降り立った。

「コウ!」

「ん?聖か」

どうやら親玉を撃破したことで他のゴーレム騎士も消え去ったらしい。見れば全員が駆け寄ってくるのが見えた。

「ミレディ‥‥‥」

オスカーが少し悲しそうな目で見る。

「はは‥‥‥思った以上に強かったよ」

「なんかすまないな、オスカー‥‥‥」

「いや、いいんだよ‥‥‥いいんだ」

「ちょっとぉ‥‥‥そんな目で見ないでよぉ‥‥」

少しずつ弱々しくなっていくミレディの声。それを悲しそうに見つめるオスカー。

「最後で悪いんだが‥‥‥他の迷宮の場所を教えてほしい。失伝していて、ほとんどわかっていないんだ」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

ミレディは、ポツリポツリと残りの七大迷宮の所在を語っていく。中には驚くような場所にあるようだ。

「以上だよ……頑張ってね」

「ああ‥‥‥ありがとうな」

「君たちなら、神殺しもできそう‥‥‥かな。そんな気がするよ‥‥‥」

「‥‥‥まあ、番人に任せろや。必ずクソ野郎共を片付けてやるからな。まあ、俺の思ったように行動するとは思うけど‥‥」

「ふふ……それでいい……君は君の思った通りに生きればいい…………君の選択が……きっと…………この世界にとっての……最良だから……」

いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても、とても神秘的な光景である。

「‥‥‥必ず、あの世にクソ野郎共を叩き落としてやる。それを楽しみにしてくれ」

「うん‥‥楽しみに、してるよ。……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

その言葉を最後に、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

「さて‥‥‥行くか。なんか奥の壁が光ってるし」

俺は奥の壁に指を指し、そのまま歩き始めた。手にはミレディゴーレムの核の欠片を握りしめながら‥‥‥。



くぐり抜けた壁の向こうには……



「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」

「は?」

「どうしたの、コウ‥‥‥え?」

「‥‥‥やれやれ」

「「「はあ?」」」

「ええ?!なんですかこれぇ!」

「シア‥‥‥でも不思議ね」 

「‥‥‥‥‥‥‥」

ミレディが非常に軽い感じで話しかけてきた。うざったいが。


「あれぇ? あれぇ? テンション低いよぉ~? もっと驚いてもいいんだよぉ~? あっ、それとも驚きすぎても言葉が出ないとか? だったら、ドッキリ大成功ぉ~だね☆」

ちっこいミレディ・ゴーレムは、巨体版と異なり人間らしいデザインだ。華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い、白い仮面を付けている。ニコちゃんマークなところが微妙に腹立たしい。そんなミニ・ミレディは、語尾にキラッ! と星が瞬かせながら、俺たちの眼前までやってくる。

「……さっきのは?」

「ん~? さっき? あぁ、もしかして消えちゃったと思った? ないな~い! そんなことあるわけないよぉ~!」

ビキッ

青筋量産開始。

「光が昇って消えていったよな?」

「ふふふ、中々よかったでしょう? あの〝演出〟! やだ、ミレディちゃん役者の才能まであるなんて! 恐ろしい子!」

ビキッビキッビキッビキッビキッビキッ

テンション上がりまくりのミニ・ミレディ。比例してウザさまでうなぎ上りだ。俺は外していた仮面を今一度付けた。

ザッ ガチャッ

もちろん無言で。威圧しながら。

「え、え~と……」

なんか話しているが気にしない。ゆらゆら揺れながら迫る。

「‥‥テヘ、ペロ☆」

「‥‥‥‥‥‥‥」

ブチンッ!

「ああ‥‥‥みんな下がって」

聖が俺以外の人を一歩下げた。

ガシッ

頭を掴む。

「‥‥‥流石にキレた」

「ま、待って! ちょっと待って! このボディは貧弱なのぉ! これ壊れたら本気でマズイからぁ! 落ち着いてぇ! 謝るからぁ!」

メキメキメキメキメキメキ

「このまま愉快なデザインになりたくなきゃ、さっさとお前の神代魔法をよこせ」

「あのぉ~、言動が完全に悪役だと気づいてッ『メキメキメキ』了解であります! 直ぐに渡すであります! だからストープ! これ以上は、ホントに壊れちゃう!」

「‥‥‥はあ‥‥まったく」

俺はミレディを下にポイッ。

「あうっ!?もうオーくんしっかり教育してよぉ〜」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「スミマセンデシタ」

「ミレディ‥‥少しやり過ぎだって」

「ごめんごめん。それじゃあ授けるから魔法陣に入ってねぇ〜」

魔法陣の中に入る俺たち。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

「こいつは‥‥‥やっぱり重力魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、白髪ボーイとウサギちゃん二人、それに変な棒持った君も適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

イライラした声でハジメが返す。

「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君たちは……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。白髪ちゃんに金髪ちゃんと仮面くんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

「ふむ‥‥‥イメージが難しいな。とりあえず某骨のイメージで行くか」

とりあえず俺はその辺にあった岩に重力魔法をかけた。指をクイッと上に向ける。

バキッ!

岩が持ち上がって天井にぶつかり破裂した。鍛錬すれば恐ろしいことになりそうである。

「うわお。初っ端なのに中々にいいね。これならミレディちゃんの次に重力魔法使いになれるかもね」

「お褒めの言葉どうも。あ、そうだ。」

俺は思い出したかのようにミレディに手を当てた。

「んん?何すんの?痴漢?」

「黙っとけ‥‥‥“巻き戻し”」

折角なのでゴーレムから人間の姿に戻すことにした。ミレディゴーレムが光に包まれる。そして‥‥‥。

「ふえええ?!」

なんと金髪蒼眼の美少女が現れた!

「Oh‥‥‥黙ってれば美人」

「ちょちょちょ!?どういうことー!?」

「時を巻き戻したんだよ。オスカーと幸せに暮らすんだな」

「オーくんと‥‥‥?」

「オスカーがこれから先着いてきても退屈だろうからな」

実際はキャラ削減の((((殴

「まあ、とりあえず俺たちは神殺しをするが、ここをクリアした証として何か貰えないか?」

「分かったよ〜。人間の姿にしてくれたお礼ね。優しいミレディちゃんは珍しい鉱石もあげちゃうね☆」

そう言って指輪みたいアーティファクトと珍しい鉱石を多数渡してくれた。

「ありがとう。役に立たせてもらう」

「それじゃあお別れだねぇ。また会ったときはよろしくねぇ〜!」

そう言っていつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った。

ガコン!!

「トラップ!?」

その音が響き渡った瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面ではなく斜め方向へ鉄砲水の様に吹き出す大量の水は、瞬く間に部屋の中を激流で満たす。同時に、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流はその穴に向かって一気に流れ込む。

「トイレかよ‥‥‥とりあえず重力魔法使って天井に張り付こ」

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「てめ、この野郎!俺たちゃ汚物か! いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ! ふがっ」

「Oh my got‥‥‥」

「拓人‥‥英語は後にグボッ」

「ちょ、蜂起さガバア」

「‥‥‥天井に張り付くのって面白いね」

「とりあえず行くかぁ‥‥‥ウザかったから手榴弾投げよっかな」

「‥‥‥ハジメが投げてるから辞めてあげて」

「はいよ」

そして穴の中に飛び込む。その直後、後ろから「ひにゃああー!!」という女の悲鳴が聴こえたが‥‥‥。

「とりあえず激流下りだな。あいつら大丈夫かな」

幾分か水が引いてるのか、普通に呼吸しながら激流下りをする。たまにカーブがあるのでそこだけ気をつけながら自由気ままにズザーッと‥‥‥。

「あ、出口だ」

それっぽい穴?みたいなのを見つけた。そのまま飛び出す。飛び出た先は泉になっており、俺と聖は噴水のように持ち上げられた。

「あん?シアが人工呼吸されてるのか?」

俺は上空から拓人がシアに人工呼吸を施しているのを確認した。どうやらあの激流でシアは意識を失ってしまったらしい。拓人が人工呼吸してる理由は‥‥‥考えないでおこう。

スタッ

「おい、シアどうしたんだよ」

「シアちゃん!?」

着陸してシアの元へ駆け寄る。見た感じだと、顔面蒼白で白目をむいている。また、よほど嫌なものでも見たのか意識を失いながらも微妙に表情が引き攣っている。

と、その時。シアが水を吐き出した。水が気管を塞がないように顔を横に向けてやる拓人。体勢的には完全に覆いかぶさっている状態だ。

「ケホッケホッ……拓人さん?」

「あ、深い意味とかないからな?蜂起はミーナいるし、ハジメには白崎がいるし‥‥‥なんとなくだ」

「‥‥‥‥‥‥‥」

むせながら横たわるシアに至近から呆れた表情を見せつつも、どこかホッとした様子を見せる拓人。そんな拓人を、ボーと見つめていたシアは、突如、ガバチョ! と抱きつきそのままキスをした。まさかの反応と、距離の近さに避け損なう拓人。

「んっ!? んー!!」

「あむっ、んちゅ」

「Oh‥‥寝取りやがったか。まあいいや」

別になんとも思わない。これで拓人も新しい彼女ができるかと思うとぶっちゃけ嬉しかったりする。既に彼女いるとかいう理屈は聞いてない。

「って離せやボケェ!」

拓人が全力で蹴り飛ばした。


「うきゃぁああ!」


ドボンッ!


悲鳴を上げながら泉に落ちたシアを尻目に、荒い息を吐きながら髪をかき上げる拓人。俺は生温かく見守る。

「マ、マジかよ。蘇生直後に襲いかかるとか……流石に読めんわ」

「うぅ~酷いですよぉ~拓人さんの方からしてくれたんじゃないですかぁ~」

「はぁ? あれは歴とした救命措置で……って、お前、意識あったのか?」

「う~ん、なかったと思うんですけど……何となく分かりました。拓人さんにキスされているって‥‥‥」

「……いいか、あれはあくまで救命措置であって、深い意味はないからな? 変な期待するなよ?」

「そうですか? でも、キスはキスですよ。私、拓人さんに惚れました!!」

「待て待て。コウじゃないの?!」

「コウさんはよくよく考えたら無理ですぅ。聖さんとユエさんに、他にもいるって聞いたので‥‥‥」

「腰の軽い女だなおい」

「なあ聖」

「なに?」

「面白いな、これ」

「そうだね。映画より面白いかも」

拓人とシアが言い合いになってる側で
俺と聖は思わず見つめ合って笑ってしまったのだった‥‥‥。 
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