| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ペルソナ3 ケン と マコト

作者:hastymouse
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

後編

 
前書き
後編です。
天田君の相手役はハルちゃんという手もあったんですけどね。個人的にはP5の女性陣のなかではマコちゃんが一番のお気に入りでしたのでこうなりました。
ハルちゃんだとしたら、天田君がひたすら守って戦う感じになったのかな。
まあ、何か面白いことを思いついたら書いてみてもいいかもしれませんね。 

 
車が走っていた時間はそう長くなかったから、まだ巌戸台から出ていないだろう。
「声を立てるな。」と脅されて、何か尖ったものでつつかれる。騒いだら刺す、ということらしい。
私はそのまま担ぎ上げられた。建物に入った気配がする。そして床に転がされた。つるつるした感触からして、下は塩ビシートのようだ。
男達は何か相談をしているようだが、声は良く聞こえない。
いい加減たってから上半身を起こされると、縛られた体はそのままに頭の部分だけナイフで切り抜き顔を出された。
室内は何かの目的の広い部屋。
すぐ横にはホテルのようなダブルベッドがある。しかし傍らの壁や天井からは拘束具のような鎖が複数垂れ下がり、磔台のようなものも見える。まるで拷問部屋の様な異様な雰囲気だ。いったいどういう部屋なんだろう。ここでいったい何をするつもりなんだろう。私は思わず身がすくんだ。
隣でケンが同じように顔を出させられている。部屋にいるのは大高と金髪の土屋だけで、大男の姿は見えない。
大高は袋を切り抜き終わると、ナイフをベッドサイドの台の上に置いた。
「おもしれー部屋だろ。ここは大人がイケナイ遊びをする場所だ。ここで遊ぶ奴は悲鳴を上げるから防音が行き届いている。騒いでも外には聞こえねーよ。」
土屋が楽しそうに笑いながら言った。
「なんなら、ここにぶら下げてやろうか?」
土屋は壁から垂れ下がった鎖をつついてチャラチャラと音を鳴らす。
「まったく、こんな部屋借りやがって・・・ふざけてんのか!」
大高は苦々しげに毒づくと、私とケンの前にしゃがみ込み、鋭い目つきで見据えてきた。。
「さて、聞かせてもらおうか。なんで俺のことをこそこそつけていたのか。」
ここまで来てしまったら、下手にとぼけても無駄だろう。
けがをした老人のこともある。へたに怒らせてしまうと乱暴されるかもしれない。
しかし、土屋はともかく、大高はすぐに何か乱暴なことをするつもりはないらしい。まずは話をして時間を稼ぎながらチャンスを待つことにしよう。
腹をくくると、冷静さが戻ってきた。
「後を付けたのは、あなたが手配中の強盗だからよ。」
私は相手を真正面から見返すと正直に答えた。
男が顔をしかめる。
「どこで気がついた。」
「ポロニアンモールの喫茶店。お手拭きで顔を拭いたでしょ。あの時、サングラスとマスクを取ったからから気が付いたわ。」
「ちっ」男は舌打ちをした。
「あんなところからつけてきてたのか。」
「なんで子供が手配書の顔なんか知ってるんだ。」
土屋が天井から降りてきている鎖にぶら下がりながら訊いてくる。
「私のお父さんが、あなたたちを追いかけている警察官だからよ。」
私の言葉に二人は驚いたような表情を浮かべた。
「あなたに気づいた私は、後をつけながら連絡を入れたわ。少なくとも巌戸台で降りたところまでは警察に伝わっているわよ。ここはまだ巌戸台なんでしょ。」
私はペラペラと真実を告げる中に、さらっと嘘を混ぜた。伝えたのはポートアイランド駅までだ。しかし、もしこれを信じてもらえれば、相手の動きを牽制できる。
「自分の子供に探偵ごっこさせるとはな。大した警察官だ。」
大高は立ち上がると、吐き捨てるように言った。
「私が勝手にやったのよ。うまく通報すれば捕まえられると思って、調子に乗ってしまったわ。お父さんには後できっと怒られるわね。危ないことしたって・・・。
でも私からの連絡が無ければ、このあたりの警戒はますます厳しくなるわよ。とても逃げられないわ。」
男たちは顔を見合わせて、その後で私達から離れて何か相談を始めた。
「悪党相手に堂々としてるね。」
ケンが感心したように小声で言った。
「まあ、これであきらめて解放してくれるってことはないでしょうけどね。ここから動きにくくすることはできると思うわ。」
ケンは少し伸びあがって首をひねると、「もう9時過ぎだ。」と言った。
ベッドサイドにある時計を覗き込んだらしい。
お姉ちゃんの通報で、必ず警察が動いている。私からの連絡が無いから総動員で捜索しているはずだ。きっとこのあたりにも来るはず。なんとか時間を稼がないと。
「まあ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。きっとなんとかなる。」
ケンが落ち着いた声で言った。
その言い方には妙な余裕があって、私は違和感を感じた。「度胸がある」というだけだはなさそうだ。
「どういうこと?何かあるの?」
「ちょっと考えがあるんだ。ともかく今はできるだけ時間を引き延ばそう。」
詳しい話を聞く間もなく、男たちが戻ってくる。
「打ち合わせは終わったの?」
私が声をかけると、大高は「別に問題ない。予定通りだ。」と短く答えた。
「どうしてお年寄りばかり狙うような、卑怯なまねをするのさ。」
今度はケンが訊いた。
「卑怯? 正々堂々と強いやつに挑戦する強盗がどこにいる?俺たちは慈善事業をしてるわけじゃない。金をため込んでいて、しかも弱い年寄りを狙うのは安全で合理的だろう。」
「だからっておじいさんにあんな大けがさせなくてもいいだろ。」
ケンの声が怒りを孕む。大高は渋い顔をした。
「抵抗されてな。こいつがかっとなって殴り倒しちまったんだ。お前らも口に気を付けないとただじゃすまないぞ。」
大高は土屋を指さして言った。
それから少しあきれたような顔をすると
「それにしても、お前たち、この状況でなんでそんなに落ち着いてんだ? 小学生だろ。普通、怯えるとか泣くとかするもんだろう。」と言った。
「騒いでも無駄だと言ったのはあなたでしょう。もうこちらからは何もできないんだから、大人しくあなたたちの出方を見ているしかないわ。」
私が答えると、土屋がにらみつけてきた。
「なんか可愛げのねえガキだな。・・・ツラは悪くねーが。」
土屋は私の前に歩いてきてかがむと、片手で私の顎をぐいっと掴んだ。
指にギリギリと力がこもる。痛い・・・。
侮辱的な扱いに、私は涙目になりながら金髪をにらみ返した。
「気が強えーな。お前みたいな奴は泣かせてみたくなる。ちょうどベッドもあるしヒマつぶしにやっちまうか。」
「ガキ相手に何言ってやがる。」
大高が怒った声で言った。
「このぐらいの年なら、俺は十分いけるね。場所も場所だし、せっかくだから大人の遊びを教えてやろうぜ。」
「そんな時間はねえ!」
大高が怒鳴りつけ、私の顔から土屋の手を掴んで引きはがした。
「このあいだのジジイの件だって、お前が癇癪起こすからまずいことになったんだ。おかげでこっちは身バレして、指名手配までされちまった。ちったあ大人しくしてろ。」
土屋は口を尖らせて、すねたように離れるとそっぽを向く。
大高は怖い顔でこちらに向き直った。
「教えといてやる。さっきもう1人いたろ。あいつは俺たちの中で唯一面が割れてない。今は、車を遠くに捨てに行ってるが、もうすぐ別の運送用のトラックで戻ってくることになってる。それでこのホテルから出るのさ。
なあにバレはしない。あいつは本当に運送屋で、これから本当の仕事でトラックを走らせるんだ。
俺たちはその荷物に混ざるだけだ。
お前らはまだ解放できない。しばらく付き合ってもらうぜ。」
「いったいどこに逃げる気?日本のどこに逃げてもいずれ見つかるわよ。」
「だから日本じゃないとこにいくのさ。」
男はそこまで言うと、いきなり私とケンに猿轡をかませた。
もう話すことはもう無い、ということらしい。時間稼ぎもここまでか・・・
そこに放置されたまま、さらにしばらく時間が経って、ノックの音がした。
大高が除き穴から確認し、ドアを開ける。先ほどの大男が戻ってきたのだった。
「準備はできている。早く行くぞ。」
大男がドアを開けたまま二人に声をかける。それを聞いた男達は、こちらに向かって歩いてきた。

そして深夜0時になった。
照明が消え、大男が明けたドアから入ってくる月あかりだけになる。男たちもマコトも象徴化して棺に姿を変えていた。
影時間が訪れたのだ。
1日と1日の狭間にある隠された時間。この時間は適応できる人にしか認知することができない。
今ここで動けるのは僕だけだ。
僕は縛られたまま壁に寄りかかって立ち上がると、なんとかベッドサイドの台まで移動して、先ほど大高が置いたナイフを手にした。そして、切れるところからロープを切り、苦労して体を自由にする。
解放感に笑みがこぼれた。少し動いて縛られていた体をほぐす。マコトも自由にしてあげたいけれど、棺の状態ではどうしようもない。
ドアから出てみると、すぐ外が駐車場に面していた。
フロントを通さず、直接部屋に入れるようになっているらしい。会計とかどうしてるんだろう?と気になったが、とりあえず今は時間が無い。
道に出て周りを見回してみると、ラブホテルが並んでいた。思った通りここは白河通りだ。
こんないかがわしい部屋があるとしたらこのあたりしかないと思った。
ここからなら寮までそう遠くない。
道端に運送用の箱型トラックが止まっている。大男が乗ってきた車だろう。
僕は途中で見つけた自転車を借りて、寮に向かって走らせた。僕には少し大きいが、なんとか漕げる。
幸いシャドウに出会うこともなく、寮にはすぐにたどり着いた。
息を切らしながらドアを開けて駆け込むと、驚いたことに1Fロビーに寮生全員が集まっていた。
ここにいる全員が影時間の適応者で、人類の敵であるシャドウと戦う特別課外活動部のメンバーだ。
「天田君!」と風花さんが声を上げる。
みんながぼくに駆け寄って来た。
僕が夜になっても帰ってこないので、心配して起きていてくれたらしい。
口々に「大丈夫?」「どうしたの?」と話しかけてくる中で
「馬鹿野郎、ガキがこんな時間まで何やってやがった!」
と荒垣さんがすごい剣幕で怒鳴った。
「ごめんなさい。後でゆっくり謝ります。でも時間が無いんです。助けてください。」
僕が早口で必死に訴えると、荒垣さんは何か感じたのか目を見開いて口をつぐみ、みんなも静かになる。
「何があった。天田。」
代表して美鶴さんが口を開いた。
「今まで強盗に捕まって、閉じ込められてました。影時間になったので僕だけ抜け出してきたんですけど、まだ女の子があの場所に捕まっています。相手は3人です。女の子を助けないと。」
みんなが顔を見合わせる。また沈黙が訪れた。
あまりに突拍子の無い話に全員が戸惑っているようだ。
「ともかくそこに行きましょう。影時間が開けるまでもう余裕が無い。」
リーダーが口を切った。
「よし、天田、場所を教えろ。」美鶴さんが応じる。
「私はバイクで先行する。みんな後から追いかけてきてくれ。場所は山岸がフォローしてくれ。アイギスついて来い。」
「了解であります。」
影時間には全ての機械は静止する。この時間に動く機械は美鶴さんの特製バイクだけだ。
僕はヘルメットをかぶってバイクの後ろに乗った。
「しっかりつかまっていろ。」
バイクが影時間の街を失踪する。
その横を、同じ速度でアイギスさんが走ってついてくる。
(すごい。本当に人間離れしている。)
アイギスさんは人間ではない。普段は可憐な姿なのだが、シャドウとの戦いや、こういう場面では戦闘マシンとしての本領を発揮する。
はっきり言って、アイギスさんだけであの三人を制圧するのは造作の無いことだろう。
バイクはあっという間にホテルに着いた。
その後しばらくして、風花さんのナビに従い男性4人も駆けつけてくる。
そして、影時間が終わった。

強盗犯の男たちにしてみれば、影時間は存在していない。
大男が開けたドアからいきなり大勢駆け込んできたように思えただろう。
三人は、なんだかわからないうちにあっという間に拘束されてしまった。
縄を解かれ解放されたマコトも、状況が理解できず目をぱちくりさせている。
「どういうこと?」と聞かれて、僕は「ないしょ。」と片目をつぶって答えた。
美鶴さんが辰巳東交番の黒沢さんに連絡をとり、やがてパトカーが数台駆けつけてきた。
マコトのお父さんとお姉さんもいっしょに乗ってきて、マコト無事を喜んで彼女をを抱きしめた。
その姿を見て、僕はうらやましいと思った。

どうしても納得がいかない。
あの夜のできごとの記憶が、なんだかあいまいなのだ。
お姉ちゃんは、本当の危機に直面すると、人の記憶はあいまいになると言っていたけれど、本当にそうなんだろうか。
警察は既にあの場所まで突き止めていたらしい。大男がドアを開けたところで、変装して張り込んでいた警官隊が一気に突入してきた。そういうことになっている。
女性警官もいたようだけど、ラブホテルという場所だから、カップルを装っていたということなんだろうか。
しかし、それにしてはあまりに若過ぎなかったか? みんなまるで高校生のようだった。
それにケンはいったいいつの間に拘束をほどいて自由になっていたのか。それについてケンは何も教えてくれなかった。
なんだか化かされたような気がしてならない。
あの後、お父さんとお姉ちゃんからは、こってりとお説教された。
「市民の務めは通報まで、それ以上の危険な行為は逆に被害を増やすを危険性がある」ということ。
今回についても、警察だけで解決できたものを、私が首を突っ込んだせいで難しくしてしまった、ということだ。
もっともだと思う。
もし私がこうしたことで人を説得することがあったら、きっと同じように話すだろう。
確かに私は正常な判断ができていなかったのかもしれない。
でも、もしまた同じ状況になったとしたら、私は本当に同じ行動を取らずにいられるのだろうか。
もし自分の行動で犯罪を防げるとなったとき、踏みとどまれるだろうか。
力が欲しい。
もっと強くなりたいと思う。自分がすべきと思うことを迷わず実行できるように。何があっても自分の身を守れるように。
そして仲間が欲しい。ケンのような、本当に頼れる仲間が・・・。

後日、マコトから手紙が来た。
あの後、お父さんとお姉さんからすごく叱られたらしい。
沈着冷静なようでいて、火が付くと暴走してしまう熱いところがマコトにはある。
僕の方も、美鶴さん、荒垣さん、真田さんの3人からとことん説教されることとなった。
事件は警察が解決したということで発表され、僕らの名前は出されなかった。おそらくは桐条グループが手をまわしたんだろう。
そうでなくても影時間に起きたことは、事実と違って認識される。いつものことだ。
僕の携帯電話は駅に届けられていたし、あの夜借りた自転車も元の場所に返しておいた。
マコトの手紙によると、意識不明だった被害者の老人は意識を取り戻し、今はリハビリを受けているらしい。ともかくこうして事件は全て解決した。
マコトからの手紙には映画の招待券が同封されていた。
1枚で3名まで有効と書いてある。今回の冒険で手に入れた貴重なオタカラだ。無駄にはできない。
僕は券を手にすると、リーダーに付き添いをお願いするために部屋を出た。 
 

 
後書き
以上で完結です。いかがでしたでしょうか。
ピンチからの逆転(ただし反則ワザ)でした。
天田君はまた意外な誰かと組ませてみて活躍させたいですね。
引き続きペルソナの番外編は書いていきたいと思っています。
次はアイギス主役で考えてます。 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧