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アルゼンチン帝国召喚

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第九話「紛争2」

第九話「紛争2」
『問題ない。沈めろ』

上層部の命令は完結だった。フェイルナンが王城から戻り船に戻ってすぐに連絡を入れた。その結果以下の命令が数十分で届いた。パーパルディア皇国が相手というのも関係しているのだろうとフェイルナンは考えていたが上層部の命令をベインダーズに伝えた。因みに二人は軍に入る前からの友人であり気心のしれた仲であった。

「そうか。まあそうだろうなとは思った。詳細は伝えられているか?」
「いや、これだけだ」
「なら勿体ないがスティーグレイ・改(国産艦対地ミサイル)を使用してロングレンジで叩くか」
「情報を与えないためというのは理解できるがオーバーキルではないか?」
「この世界じゃ全ての兵装がオーバーキルだろうよ」

こうして艦対地ミサイルによる遠距離攻撃が開始された。上空へと撃ちだされるミサイルを眺めながらフェン王国について話し合う。

「しかし、フェン王国も面倒なことをするもんだな」
「そうだな。思わず感情をぶつけてしまったよ」
「外交官が感情を表に出すなよ。失格だろ?」
「そうだけどさ、明らかに俺たちとパーパルディア皇国を戦わせようという魂胆が見え見えだったんだぞ」
「気持ちは分からんでもないがな。小国が生き残るには大変な思いをしなきゃならんからな」
「それで戦わされる身にとっては不快だがな」
「それには同意するよ……と、そろそろ敵艦隊に命中するぞ」
「敵艦は確か帆船だったよな?きちんと起爆するのか?」
「安心しろ。10年前ならともかく現在の帝国の技術は高水準だぞ?木造船に命中しようときちんと作動してくれるはずさ……多分」

フェイルナンは最後の呟きに軽くため息をつくのであった。

「そう言えば敵船の救助はいいのか?」
「ああ、そこは今向かっているフェン王国の海軍がやるそうだ。流石に全て俺たちでやるのも、な?」







パーパルディア皇国皇国監査軍東洋艦隊の提督、ポクトアールは先ほどから通信が途絶しているワイバーンロード部隊について考えていた。

「(何故攻撃開始時の報告を最後に何も通信が入らない?通信機の故障か?それにしては一騎も戻ってきていない。普通何かあったのなら戻ってきても可笑しくない。予定では既に作戦を終え戻ってきている時間なのに……。まさか!全騎撃墜したのか!?)」

そこまでポクトアールが考えた時であった。見張り員が叫んだ。

「飛行物体接近!」
「飛行物体?ワイバーンか?まさか戻ってきたのか……?」
「い、いえ!それよりも早いです!」

見張り員の言葉を聞きポクトアールは双眼鏡を使い確認する。そこにはワイバーンなどよりもはるかに早い飛行物体がこちらに近づいてきていた。それも今からでは回避すらできないであろう速度で。

「!全艦隊回避しろぉ!」

ポクトアールは思わず叫ぶが直ぐに動けるほど帆船は万能ではない。高速で近づく飛行物体、艦対地ミサイルが迎撃を受ける事なく各帆船の横腹へと吸い込まれていく。
そして

「うおっ!?」

とてつもない爆発が起こりポクトアールは船から投げ出され海へと落ちる。突然の事に必死に海面へと向かい顔を出す。荒い息を整えつつ周りを確認する。

「な、なんだこれは……!?」

ポクトアールが見たのは圧倒的な蹂躙であった。22隻いた皇国監査軍東洋艦隊は1隻の漏れなく炎上若しくは沈みつつあった。中には完全に吹き飛び周辺に瓦礫しか残っていないモノもあった。
ほとんどの船員は船と運命をしたのだろうが甲板などにいた運がいい船員が同じように海を漂っていた。

「我々は……一体何を相手にしたのだ……?」

ポクトアールは偶々目の前を通った流木にしがみ付き恐怖で顔を青くするのであった。








「なんだこれは……!」

アルゼンチン帝国がロデニウス大陸に持つ直轄領に一人の男が降り立った。男は国交樹立をしたばかりのアルタラス王国からやってきた最初の船に乗っていた。しかし、彼は決してアルタラス王国の人間ではない。

「確かこの国は我々と同じ転移国家と言っていると聞いてはいたが……」

自国より技術力は上!
その考えが頭をよぎる。何故ならかつてジンハークと呼ばれていた都市、現在はニュー・サンラファエルと名付けられたこの場所は計画都市の整備が進みつつあり高層ビル群が完成しつつあった。ニュー・サンラファエルは完成後はロデニウス大陸直轄領の中心的都市となるため優先的に建造が行われている。
しかし、後へそれを知ったとしても目の前の男は驚いただろう。時刻にはこれだけの技術力はないのだから。

「それに港で見たあの巨大戦艦」

男は自国の最強の戦艦より大きかった艦、グレート・ディアボロス級原子力戦艦三番艦リヴァイアサンの圧倒的な武力に顔が真っ青になっていた。
自国と同じ転移国家を調べて来い。そうして送られてきた男だったが既にこの時点で本国に戻るなり通信するなりして報告を行いたかった。絶対にこの国とは争ってはいけない。それを教えるために。
男はその日のうちにアルタラス王国へと戻っていく。そこには男が所属するグラ・バルカス帝国の拠点があるからだ。
男が戻った後ロデニウス大陸直轄領には多数の諜報員が送り込まれやがて撤退していった。
グラ・バルカス帝国がアルゼンチン帝国に外交使節団を派遣してきたのはそれからすぐの事であった。
 
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