| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

曇天に哭く修羅

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二部
  追憶

 
前書き
またヒロアカで何か書こうかと思ってたんですが此方の方が気になったので。
 

 
《クリス・ネバーエンド》

龍帝学園に通う一年生の女子。

彼女の家は英国で随一の貴族。

代々が武人として名を馳せた名門。

【魔術師】に目覚める確率も高い。

同国で知らぬ者は居ない程だ。

その邸宅は正に城である。


夏のある日、クリスが6才の頃。

人生に転機が訪れた。


敷地内に在る広大な庭。

そこには三つの人影。


一人はクリス。


一人は7才の少女。

金髪に碧眼。

クリスと似た容姿。

名を《エリザ・ネバーエンド》

クリスの実姉。

右手には木剣。

この(よわい)にして騎士の風格が漂う。


そして最後の一人は10才の少年。

他の二人とは違い貴族でもなければ先祖に高名な武人を持つわけでもない。

魔術師を排出したことすら無いごくごく普通の一般家庭に生まれた正真正銘の一般人。


ただ、彼は7才の頃に《ナイアー=ラトテップ》が率いる【旧支配者(オールドワン)】の眷属によって家族を喪ってしまっている。

その時に魔術師と【超能力者】として覚醒。

周囲の敵を皆殺しにしてしまう。


発揮された力を目撃した軍によって彼の身柄は保護され厳しい戦闘訓練を受ける。

1年後の8才で少年は英国最強の超能力者となり、2年後の9才で英国最強の魔術師と軍から評価される程の域まで登り詰めた。

表の世界では知られることが無かったものの、英国の《神代蘇芳(かみしろすおう)》とも言われる才能と成長に目を付けたネバーエンドの当主に実力を買われることとなる。

目的は当主の娘二人にとっての刺激となるよう共同生活を送らせることだ。


その目論見は上手くいった。

クリスもエリザも彼を目標としている。

今は居ないもう一人もそう。


「《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》。見てなさい。私がクリスに勝つところを」


既に飽きるほど見ている。

今のクリスに勝ち目など無い。

それでもイリアスは期待していた。

クリスが一矢報いることを。


エリザの煽りで頭に血が昇ったクリスが木剣を振り上げながら突っ込む。


(冷静とは無縁だな)


イリアスがエリザに目を移す。

一つ違いと思えない落ち着き。

クリスは上段から木剣を振る。

彼女は勝てると確信したが思考は中断。

喉に強烈な痛み。

クリスは尻餅を着く。

6才のクリスが解らないのも無理はない。

解る方がおかしいのだ。

今の一撃が何なのか。


「能力と言うより性格の違いか」


エリザとクリスは師である父に闘争は初手を取った者が勝つ『先手必勝』ということしか教えられていなかった。

クリスはそこで考えることを止め、ひたすら先制することにこだわってきたのだが、エリザはそれが本当に正しいかどうか考えることを止めず、その末に『後の先』と言われるものを理解し実行できるよう励んできた。

思想の差が今の結果だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「まだまだぁッ!」


クリスは直ぐに立ち上がる。


(頑張りは認めるけど無理だクリス。今の君じゃあ勝てない。今はまだ(・・・・)、ね)


彼女はエリザを睨みながら突撃。


「呆れるわクリス」


エリザの目が細められた。

冷たいと錯覚するような気が放たれる。

寒気に襲われたクリスが止まってしまう。


「無様ね」


氷をイメージさせるエリザは右腕だけを持ち上げて勢い良く木剣を振り下ろす。

クリスは動けない。

回避や防御をしなければと理解しているのだがエリザへの怯えに思考がフリーズ。


「あ」


イリアスが見守る先でクリスは目を瞑る。

彼女の眉間に衝撃。

また尻餅を着いてしまう。

悔しいのか涙が溢れていた。

エリザは溜め息を吐く。


「本当に能無しねクリス。出来損ないだわ」



妹に掛けられる言葉は冷たい。



「イリアス。貴方も御父様に聞いたわね?」


姉妹の戦いを黙って観戦していた彼はエリザの問い掛けに対し応答する。


「英国の貴族はすべからく【古代旧神(エルダーワン)】の為に生き、古代旧神の為に死ぬ。それが責務であり運命だと聞いています」


彼は認めたくない考えだが。


「そう。私達の役目。でもこの娘には果たす力も資格も無い。クリスにはムシケラの生き方がお似合いよ。貴族の人生なんて似合わない」


言外に言っているのだ。

戦うことを辞めろと。


「地べたを這って負ける度に『弟分』やイリアスから慰められて泣きべそをかく弱虫に戦い続けなければならない時間は過ごせないわ」

(本来は私も其方側(そちらがわ)なんですが)


イリアスは好きで戦っているわけではなく、それしか生きる手段が無かったから軍に管理される魔術師として生きている。


(クリス、少し不味いな)


彼女の心は折れかけていた。


「ふざけないで! 私はあんたよりも強くなるッ! そうよ……。あたしだって強くなることくらい、出来るんだから……ッ!」


そう言ったクリスだったが諦めが生まれたことをイリアスは感じ取る。

しかし彼女は認めない。

必死に恐怖を抑え込む。


魔術師の武器【魔晄外装/ファーストブレイク】は本人の心を表すという説が有るのだが、これは恐らく正しいのだろう。

二人の戦いから数週間後。

クリスは【魔晄】を宿し、直ぐにファーストブレイクに目覚めて異能を有した。

多種多様な外装を生む力を。

しかしトラウマである姉の象徴とも言える『近接武器』の類いは未だに出すことが出来ず、クリスの成長に歯止めを掛けている。


イリアスの方はと言うと数年後に魔術学園へ入り、見事【魔神】となる。

だが何故か自国の古代旧神や英国軍と一人で戦いを繰り広げ、後に日本へ亡命した。


「何れ機会を見て奴を倒す」
    
 

 
後書き
イリアスは亡命前の時点で英国の古代旧神に勝てましたけどそれなりの力を出さなければならず、もしそうしていれば英国の被害が甚大になっていました。

というわけで知り合いの居る日本に来て修業しておりかなりパワーアップしています。
_〆(。。) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧