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おっちょこちょいのかよちゃん

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35 冬田美鈴、危機一髪

 
前書き
《前回》
 大雨の夜の中、かよ子は三河口らと共に杉山や長山の家族を救出し、さらに救出活動を続行する。すみ子は恐ろしいほどの胸騒ぎを感じて兄と共にその原因となるものを探しに行く。そして大野が心配でたまらない冬田は大野を探しに出た所、飛行機に乗る二人組に襲撃されてしまった!! 

 
 すみ子は先ほど、何かしらの爆発音とその火薬のようなものが光る様子が見えた。
「あれは、何・・・!?」
 その時、すみ子は体が熱苦しくなる思いがした。兄も同じである。
「すみ子、もしかしたら、『(やつら)』かもしれないな」
「行ってみよう、お兄ちゃん・・・!」
 すみ子は銃を下に発砲した。そして二人を包む球体は急速に上昇した。

 大野は何かの爆発の光を感じた。
「な、何だ?」
 雨で爆発の炎は数秒で消えてしまったが、大野の目にははっきりと見えた。
(もしかしたら・・・!!)
 大野はまさかこんな間が悪い時に異世界からの敵か、異世界とこの現世を繋げた人間が攻めてきたのではないかと思った。
 避難所として使用されている公民館へ人を下ろし、大野は再び出発する。
「父さん、母さん、ここで待っていてくれ!すぐに戻ってくる!」
「ちょっ、けんいち!!」
 父の声を聞く間もなく大野はすぐに爆発の正体を探りに草の石の力を使い、木の葉に自身を乗せて行った。葉と幹の付け根が伸びて行って蔓のようになり、大野は爆発場所へと急ぐ。

 かよ子達ももちろんその爆発を見逃してはいなかった。
「今の爆発って・・・!?」
 三河口は尋常ではない感触がした。北勢田も同じである。
「あいつらだ」
「え!?」
「健ちゃん、『あいつら』って!?」
「異世界からの敵か、異世界と無理矢理この世界を繋げた者が来たと思います。そしてこの雨もきっとそいつらの仕業・・・!!」
「ええ!?」
「公民館に運んだらあの爆発の場所まで行ってみましょう」
「そうね」
 皆は救出者を避難所へ運び終えると、すぐさま戦艦で爆発地へと向かった。

 冬田は二人組の男から尋問される。
「この清水には何か不思議な杖や護符があるんだろ?何も知らないのか!?」
「し、知らないわあ・・・!!」
「じゃあ、この羽根は何だ!?異世界からのだろ!」
(フローレンスさんから貰った羽根え・・・!!)
「し、知らないわあ!!」
「嘘つけ!この羽根を持っている者が異世界の事を知らないわけがない!吐かなければまずはこの羽根を貰って探し出す!」
「やめてえ、フローレンスさんから貰った羽根をお!」
「フローレンス!?やはりこれは俺達と敵対する世界からの羽根なんだな!!」
「あ・・・」
 冬田は口が滑ってしまったと思った。だが、もう遅い。
「言えないんだったらここで死んでもらおうか」
「い、いやああああ!!」
(お、大野くうん、助けてえ!!)
 冬田はもう生きて帰れないと思った。ところがその時、何かが噴射された。男達は硬直した。
「くそ、体が動かん!」
「そうなってんだ!?」
 冬田は何が起きたか自分でもわからなかった。その時、飛行機のドアから誰かが入って来た。一人は高校生ほどの男子だが、もう一人は見覚えがあった。嘗て大野達の秘密基地を乗っ取り、友達となった隣町の学校の女子・濃藤すみ子だった。
「お前ら。誘拐か!?」
「お前らこそなんだ!?」
「通りすがりだよ」
 その高校生はそう言うとすぐさま拳を二人の男の頬に突き付けた。二人はすみ子によって動きを封じられている為、迎撃もできずに殴られた。冬田はその隙に羽を奪還した。
「あ、貴女、いつかの・・・。大丈夫!?」
「ええ、大丈夫よお」
「私の銃で今この二人は5分だけ動けなくしたから今のうちに逃げよう・・・」
「ええ」
 三人は飛行機のドアから脱出した。すみ子は銃の引き金を引く。球体の膜が張られた。
「これで水の中に入ったり、空を飛ぶこともできるよ・・・」
 三人は飛行機から離れた。

 ブー太郎は雨音のせいであまり寝つけなかった。また、避難勧告も出ている。ブー太郎の住む家の地区は浸水を免れてはいたものの、屋根に穴が開くかというくらい雨の勢いは強烈なものであった。
(大野君と杉山君、大丈夫かなブー?)
 心配で眠れない自分とは対照的に、妹のトミ子は爆睡していた。と、その時、窓が光った。ブー太郎は雷かと思ったが、雷鳴はしていない。窓を見てみると、爆発したかのような光が見えた。雨なのですぐに消えてしまったが。
(も、もしかして・・・!?)
 ブー太郎も以前「次郎長」の他のメンバーに組織「義元」、クラスメイトの山田かよ子や長山治とその妹の小春と共にオリガという異世界からの女性や丸岡という謎の男と戦った事がある。もしかして彼らのような者が攻めてきたのかと思った。
「い、行ってみるしかないブー!」
 ブー太郎は石松から貰った水の石を持ち、家を出た。

 かよ子達は爆発のある場所へと急ぐ。そして、飛行機が見えた。
「こ、こんな雨なのに飛行機が飛んでる!?」
「何だって!?」
 杉山も疑い、目を丸くしてみた。確かに上空には飛行機が飛んでいる。そして杉山は何やら巨大な植物が移動している様子も見えた。
「あ、大野だ!」
「え、大野君!?」
 かよ子も驚いた。かよ子、杉山、長山は大野に手を振りながら叫んだ。
「お〜い、大野お!!」
「お、大野君!!」
「大野君、こっちだよ!!」
 大野もちょうど声に気づいた。葉の上から戦艦のデッキの上に降りる。
「杉山!?山田に長山も!どうしたんだ!?」
「俺達は向こうで何か爆発があったんでそこに向かってんだ!」
「まじか!俺もだよ」
「そ、それじゃあ、一緒に!」
「そうだな。それにしてもこれ、戦艦か?」
「うん、そうだよ!」
「山田の知り合いの人が出したんだ」
「凄いな」
 大野を戦艦の中に入れると、かよ子の両親の他、見知らぬ男子高校生や大人がいた。
「この人達は私の家の隣に住む人だよ」
 三河口が大野に近づいた。
「君が大野けんいち君か。俺は三河口健。山田かよ子ちゃんの隣の家に居候してる高校生だよ」
「宜しく。どうして俺の名前を知ってんだ?」
「ああ、それについては異世界の敵との戦いを通して知っているんだよ。君らによってオリガが倒された後逃げた丸岡に一泡吹かせたのは俺とこの友人だよ。このおばさんがこの護符によって出したアイテムの能力(ちから)を使ってね。ちなみにこの戦艦もおばさんが出したんだ」
「そうだったのか」
「俺もその友人も今何かしらの胸騒ぎを感じているよ。これはきっと異世界からの敵やその世界を無理に繋げた『組織』の人間が近づいてきたからに違いないと思うな。その場所が今爆発が起きた場所だよ」
「なら飛行機が飛んでいる所がもっと怪しいな!今すぐそこに行こうぜ!!」
「う、うん、そうだね!」
 皆は戦艦を飛行機のある方角へと進めた。その時、さりが窓から何かしらの物体が近づいてくるのを見つけた。
「何か近づいてくるわよ!」
「え!?」
 皆は窓越しにさりが見ていた窓の方向を確認する。透明な球体が水の中を浮いて動いている。そこには少女が二名、高校生ほどの男子が一名いた。
「ミカワ、あれ濃藤だぞ!」
「本当だな、濃藤の妹もいるぞ!」
「す、すみ子ちゃん!!一緒にいるのは・・・、冬田さん!?」
 かよ子はすみ子はともかく、なぜ冬田が一緒にいるのか謎に思った。
「兎に角、助けてあげよう!」
 利治の声で皆は救出にかかった。
(あの子達を助けてあげて・・・!!)
 さりはそう願うと、球体が戦艦の方に吸い寄せられるように近づいた。かよ子や三河口、杉山、大野、北勢田はデッキに出た。
「す、すみ子ちゃん!!」
「あ、かよちゃん・・・!!」
「濃藤、大丈夫か!?」
「ミカワに北勢田・・・。ああ、俺は大丈夫だよ」
 冬田は大野の姿を見ると、大泣きして飛びついた。
「お・・・、大野くうん!!うわああああああん!!」
「何だよ、冬田!?何があったんだよ!?」
 大野は迷惑そうに思いながら聞いた。
「わ、私い、あの飛行機の人達に捕まってえ、逃げてきたのお・・・。それで、杖とか護符とかあるかって聞かれたのお!それでこの人達が助けてくれたのよお」
「杖、護符・・・?」
 杉山ははっとなった。
「間違いない、奴等だ!!」
 かよ子も周囲の皆も驚かずにはいられない。かよ子は冬田が羽根を持っている事に気づいた。
「ふ、冬田さん、その羽根で私達を飛行機の所へ連れて行って!」
 かよ子は冬田に頼んだ。
「う、うん!」
 冬田は羽根を広げた。
「俺も行くぜ!」
「俺も!」
「僕も!」
 大野も、杉山も、長山も名乗りをあげる。だが、三河口が待ったをかける。
「待て!」
「な、何だよ?悪いのかよ?」
 三河口の言葉に杉山が異議を唱える。
「全員で一斉に行っても纏めて返り討ちになるだけだ。数名残って奇襲に回るべきだ」
「そ、そうだな」
「じゃあ、誰が行って誰が残る?」
「杉山君と大野君で真正面に行って、さりちゃんに付き添いをしてもらおう。何かあったら護符の力を活かしてもらう。さりちゃん、お願いできますか?」
 三河口は従姉に確認をとる。
「うん、いいわよ」
「すみ子ちゃん、君のあの球体はイマヌエルから貰ったその銃で作ったよね?」
「う、うん、そうよ・・・」
「ならすみ子ちゃんとかよちゃんで反対方向から狙うんだ。付き添いに杉山君のお姉さんにお願いしていいかな?」
「私?いいわよ」
「そして俺達はこの戦艦を使う。それでいいか?」
「三方から狙うって事だな」
 北勢田は理解した。
「冬田さんだっけ、君の羽根を大野君達に貸してあげてくれ」
「え、ええ、大野君の為ならいいわ!」
 冬田は羽根を大野に差し出した。
「サンキューな、冬田。絶対に返す!」
「うん、大野君・・・」
 冬田は好きな男子の役に立てた事が何よりも嬉しかった。長山や三河口、濃藤、北勢田、冬田、かよ子やさりの両親などは戦艦に留まった。作戦は開始された。 
 

 
後書き
次回は・・・
「三方向から襲撃せよ」
 「敵」を撃退する作戦を開始したかよ子達。まず、大野、杉山、さりが謎の飛行機に潜入する事に成功した。そしてかよ子、すみ子、杉山の姉が別方向から狙い、戦艦からは三河口や濃藤、北勢田、かよ子の両親達が遠距離攻撃の体制を敷く・・・。 
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