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剣を舞う男の娘

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2話

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 _?_サイド

 それは、12歳のある日のことだ。

「起きてください、朝ですよ」

 女の子の声が聞こえてくる。

 俺は寝袋からムクッと起き上がると、長い赤髪をした少女がそこにいて、彼女は焚き火で熱してた容れ物の中身をコップに入れて渡してきた。

「どうぞ」

「ありがとな」

 熱々のミルクを飲みながら、俺は少々この7年を振り返った。



 7年前、ど田舎の貧乏騎士爵家の九男に女神によって転生された俺は、このままでは人生が詰んでしまうと思い、双子の兄――ヴェンデリンことヴェル兄と一緒に魔法を独学で習得し、最短で独立するため、『冒険者予備校』に入学したのだった。

 まあ、その7年の間に俺は兄と別れて、極北の地に流れてしまったけどな。

 それはまたの機会にしよう。

 5歳の時の名前はヘルト・フォン・ベンノ・バウマイスターだったけど、今はヘルト・シュバルツ・フォン・シェルマイスっていう名前に改名した。

 極北の土地に流れ着いたとき、記憶が曖昧になってしまって、そのまま、名前を改名した。シェルマイスは5歳の時に剣を教えてもらった師匠の名前から取ったものだ。



 まあ、そんなことはほっといて。

 この世界では王家の法によって、15歳にならないと冒険者ギルドに入れないし。魔物の領域にも入れないのだ。

 だけど、俺は極北の土地から王国南部の冒険者予備校に向かう最中で知らない間に魔物の領域に入っていたけどな。



 あと、自己紹介の時。

「ヘルト・フォン・シュバルツ・バウマイスター。名前の通り、一応は隣のバウマイスター家の『九男』ですが、幼少の頃、海に流されて、記憶が曖昧になので、今はヘルト・シュバルツ・フォン・シェルマイスと言います。よろしく」

 幸い、魔法の才能と剣の才能があったおかげで中級クラスの魔法使いとして認められて『特待生』試験も難なくクリアした。あと、そこで、ヴェル兄と再会できた。

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 三人称サイド

 ヘルトがミルクを飲み終えたところで、

「――じゃあ、そろそろ行きましょうか」

「そうだな」

 ヘルトは着替えを終えて、そのまま、行動を開始した。



 森の中を歩いてる中。

「『特待生』といっても、学費が免除するだけで、生活費は自分で稼がないといけないよね」

「俺としては授業が午前中だけというのが緩すぎると思うんだが・・・」

「それはね」

 ヘルトと一緒にいる少女はルビア・フォン・エルステイン。

 彼女はヘルトの疑問を教えてあげた。

「授業が少ないのは、アルバイトで生活費を稼ぐためって先生が言っていたわ」

「なるほど」

「そういえば、シェルマイスは・・・」

「ヘルトで良いよ。俺の名前は師匠の名前を捩ってるだけだから」

「そうなの。じゃあ、私はルビアで構わない」

「よろしく」(^_^)

「・・・よ、よろしく」(◎-◎;)ドキッ!!

 ルビアは頬を紅くしながら、ヘルトと握手をした。

 握手する際、彼は彼女が顔を紅くするのか分からなかった。



 ちなみにルビアの実家は人口1000人ほどの村を有する準男爵家で財政は平凡らしい。エルステイン家の長女らしいけど、女の子という理由で家を継げずに魔力持ちなので魔法使いとして将来は冒険者を目指してるらしい。

 あと、妹がいて、近い自分を追いかけるように冒険者の志すそうだ。何でも、妹も魔法使いの素養があるらしい。



 2人はあるポイントまでやって来たところで

「そろそろ、事務所が教えてもらった辺りだと思うけど・・・流石にここまで来れば、他の冒険者がいないな」

「そうだな・・・ん?」

「どうした、ヘルト・・・」

「――静かに」

 ヘルトはなにかを勘付いて、探知魔法を周囲に展開する。

「『探知魔法』か・・・私も扱える。貴方ほどの範囲は無理だな」

「こればかりは場数だからな。俺は海に流された土地からここに来るまでに実戦経験を積んでるだけだよ」

「なるほど。今のは、その経験からくるのだな」

 探知してると

「――いた。あの木立の向こう」

「分かった」

 ヘルトはルビアと一緒に走っていき、彼が発見したポイントにやってきたら、猪が自然薯を探してるのか土を耕していた。

「大物ね」

「・・・だな」

 弓に矢を携えるヘルトとルビア。

 その矢には、ヘルトが矢に『ブースト』をかけて――。2人同時に矢を放ったが、急所じゃないところに刺さる。

「驚くかな」

「いや・・・どうやら、もの凄く怒って突進してきた」

(猪突猛進かな?)

 ヘルトは1回はそう思ったけど、振り切って猪を仕留めることに集中した。

(むしろ、正面を狙えて好都合かな)

「ルビア、もう一回『ブースト』しよう」

「ええ」

 又もや、2人同時に矢を放ち、今度は猪の脳天に突き刺さった。

 ブギャアア――・・・ッと断末魔をあげたのだった。

「スゲぇな。脳天に命中してる」

 倒れた猪を視ながらヘルトは呟く。

「ルビアって弓の腕も良いんだな」

「ヘルトの『ブースト』のおかげよ。私、炎系統の魔法は得意だけど、他の魔法は人並みなのよ」

「いやいや、人並みに扱えるだけマシだよ。俺なんて、師匠が鬼だったから全属性の魔法を習得したんだよ」

「良いわね。私も誰かに魔法を教わりたかった」

「まあ、基本は独学だからな・・・ッと、さっさと仕舞おうか」

「そうね」

 ヘルトは魔法袋に猪を吸い込ませていく。

 吸い込んだら、

「それじゃあ、この調子で狩っていこうか」

「そうね」

 今度はルビアが『探知魔法』を使用し、周囲を調べる。

「見たところ、この辺り一帯は小動物が結構いるわね」

「どうやら、狩りのポイントは当たりのようだな。それじゃあ、行こうか」

 といった感じでヘルトとルビアは狩りを再開した。



 ――2時間後

 この2時間での収穫物を確認しあう。

「ウサギが10羽に、ホロホロ鳥が4羽か・・・結構狩れたな」

「これだけ狩れたら、夕飯も豪勢ね」

「そうだな・・・――ん?」

「どうかしたの・・・ッ!」

「気が付いたか?」

「ええ、街よりに東400メートル。狼か、それに近い反応が14」

「それに人の反応が2つだな。後味が悪いから、助けに行くか。『身体強化』できる?」

「もちろんだ」

「じゃあ、行こうか」

 ヘルトとルビアは収穫物を魔法袋に仕舞い込み、その後、『身体強化』魔法を掛けて、先ほど確認したポイントに向かう。



 確認したポイントにやってくると、2人が目にしたのは、14匹の狼が2人の女の子に迫ってきてる。

「2人とも女の子だな」

「同じ《《女の子》》として死なせるのは忍びないわ」

「じゃあ、俺は安全確保」

「私は狼ね」

 2人は討伐の段取りをし、行動を開始する。

(『土壁魔法』)

 ヘルトは魔法を行使し、2人の女の子の周りに土壁を形成する。

「これで・・・終わりよ!!」

 ルビアの周りに複数の小型の火焔球が形成され、螺旋状に回転しながら一斉掃射された。

 螺旋状に回転してる火焔球に貫通され、狼の大群は焼け焦げ貫通され、そのまま絶命した。

 何故なら、脳天を貫かれてるからだ。

 ヘルトはルビアの魔法の腕を視て、

「見事」

 と拍手を送った。拍手を送った後、土壁を解除すれば、ポカンとしてる2人の少女。

 その2人にルビアが

「あれ、この2人・・・見覚えない?」

「あるな・・・クラスメイトじゃない」

 ヘルトは2人に近づいて、

「大丈夫?」

 無事かどうかの確認をする。

「だ、大丈夫だけど・・・貴方は確か、同じクラスのヘルトよね。バウマイスター家の九男・・・」

「ああ、そうだよ。今はシェルマイスの姓に変えたけどね」

 艶のある黒髪に鈍い紅眼で、サーコートとベレー帽が特徴でルビアよりもスタイルの良い美少女がレオノーラ・フォン・ランカスター。騎士爵家であるランカスター家の次女で魔力持ちの剣士である。(なお、これはヘルトの調べた結果である)

「その・・・ありがとう」

 照れながらお礼を言った。

(ツンデレ系か?)

 ヘルトはレオノーラをそんな風に思った。



「ありがとね、ヘルトくん」

「いきなり、名前呼びか!?」

「あれ、悪かったかな」

「いや、別に構わないよ」

 次にお礼を言ってきたのは腰まである長い銀髪に銀眼で拳闘士っぽい服装をしてる美少女がシャオ・フォン・フー。彼女も騎士爵家のフー家の次女で『魔闘流』の特待生らしい。何でも、魔力持ちで超近接戦闘を好むという話だ。

(そういえば、シャオもレオノーラと同じ理由で冒険者を目指してるんだったな)

 とヘルトは思い出す。そこにルビアが

「そろそろ、街に戻りましょう」

「そうだな。換金所が閉まるからな」

 といった感じでヘルトたちはブライヒブルグへ戻り、換金所で獲物を換金してもらって、銀貨18枚も手に入った。

 ヘルトは18枚の銀貨を視て思ったことは

(一人頭9枚か)

「銀9なんてアルバイトじゃないわね。わざわざ遠いところに行った甲斐があったな」

 ルビアは銀貨を見て、普通じゃないことを口にする。



 その後、レオノーラやシャオと交えて、夕食を共にした。

 内容は豪勢な料理ばかりである。

「それにしても、高いメニューばかりね」

「いいじゃん。これぐらいはさ」

 ルビアは料理を視て、豪勢なところに気を配り、レオノーラは

「私たちまで悪いわね」

 お礼に近いことを言うも、ヘルトは

「良いよ、代わりに全部、狼の毛皮を貰ったんだ。遠慮しなくていい」

 返礼を言って、そのまま、夕食を口にし始める。

 見た目は女の子同士のトークに見えるのはご愛嬌ということで――。



 夕食を食べながら、レオノーラは

「それにしても、魔法って凄いね」

「私も至近距離で視たのはヘルトくんとルビアのが初めて」

 魔法のことをかねがね口にしてるとルビアは

「そうよね。魔法って反則に近いものね」

「1つ聞くけど、2人はどうやって魔法を使えようになったの?」

「まさか、独学とか・・・」

 レオノーラとシャオからの質問にヘルトとルビアは

「私は独学ね」

「――っていうか、そんなに気になるのか?」

「気になるよ! だって、魔法の特待生ってヘルトくんとルビアに、隣のクラスのヴェンデリンだけだよ! そもそも、ちゃんとした魔法を扱える人なんて1000人に1人だよ」

「私も魔力を持ってるけど・・・魔法を扱えなかった」

「私もレオノーラと同じ」

 2人の話を聞いて、ヘルトは

「へぇ~」

 漏らしてたら、続きを聞くかのように2人が・・・いや、ルビアも交えて3人が話を促してくる。

 なので、ヘルトは7年前に出会った死人である師匠――アーヴリル・シェルマイスという男性こと師匠()の話をし始める。

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後書き
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