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戦国異伝供書

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第七十六話 美濃に進みその四

「わしはな」
「戦は何かあるものですか」
「左様、水鳥の音が急に騒がすこともあろう」
「源平の戦ですな」
「そうしたこともある」
「若しああしたことがあろうとも」
「驚いてな」
 そうしてというのだ。
「我を忘れてはな」
「戦には勝てぬですな」
「他にも頭に松明が付いた牛の群れが襲ってきてな」
 またしても源平の戦の話だった、木曽義仲が平家の軍勢に対して仕掛けた奇策であり彼はこれで勝っている。
「戸惑ってはじゃ」
「いけませんな」
「そうじゃ、己を見失えば」
 その時はというのだ。
「負けるわ」
「そうした者こそ」
「だから何があろうともな」
「対する覚悟をですな」
「しておる」
「それでは」
「六角家を誘いだすぞ」
 近江の北、浅井家の領地にというのだ。
「よいな」
「それでは」
「して殿」
 宮部も言ってきた。
「兵達の飯ですが」
「うむ、常にふんだんにな」
「食わせますな」
「そうして戦になればな」
「戦ってもらいますな」
「存分にな」
 その為にもというのだ。
「そうしてもらうからな」
「常にですな」
「食ってもらう、お主達もじゃ」
 新九郎は笑みを浮かべそうして宮部に話した。
「よいな」
「はい、飯をですな」
「ふんだんに食え、その為にじゃ」
「兵糧も多く用意しましたな」
「高い銭を出してまで勝ってな」
 そうしたこともしてというのだ。
「用意したのじゃ」
「それも戦に勝つ為ですな」
「全てな、若し飯がなくてはな」
「戦えませぬな」
「満足な兵糧がなくては戦どころでなく」
 それにというのだ。
「いつもたらふく食えば」
「力も出ますな」
「そうじゃ、だから兵達全てにな」
「ふんだんに食わせますか」
「常にたらふくな、飯を食う兵は負けぬ」
 新九郎はこうも言った。
「ではな」
「飯をですな」
「我等も食おう」
 ふんだんにというのだ。
「是非な」
「それでは」
「我等もそうさせて頂きます」
「飯を食います」
「ふんだんに」
 こう話してだった、浅井家の軍勢は飯をふんだんに食いつつそのうえで美濃に向かっていた。だが斎藤家は。
 これといって動かずだった、逆に六角家が動いてきた。新九郎はその二つの報を聞いてそうして笑みを浮かべた。
「よし、わしの読み通りじゃ」
「六角家が来ましたな」
「その数二万五千」
「そして斎藤家は動かず」
「ただ守りを固めているだけです」
「うむ、そしてな」
 新九郎はさらに話した。 
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