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戦国異伝供書

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第七十六話 美濃に進みその一

               第七十六話  美濃に進み
 新九郎はまずは小谷城に兵を集めさせた、それは最早浅井家が集められるだけの兵を全てというものだった。
「殿、兵が集まりました」
「これで一万一千になりました」
「それだけの数になりました」
「うむ、ではな」
 家臣達の報を聞いてだった、新九郎は確かな声で述べた。
「これよりじゃ」
「出陣ですな」
「いよいよ」
「そうされますな」
「そうする、美濃に向かう」
 この国にというのだ。
「そうする」
「美濃ですか」
「あの国ですか」
「あの国に進まれますか」
「うむ」
 笑みを浮かべてだ、彼は家臣達に答えた。
「そうするぞ」
「わかり申した」
「では美濃に向けて出陣しましょう」
「これより」
「斎藤家は大逆の家である」
 新九郎は美濃を治めるこの家のことも話した。
「そうであるな」
「全く以て」
「主君を追い出し父を殺した家です」
「まさに代々大逆の家です」
「あそこまで悪しき家はありませぬ」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「我等はな」
「これよりですな」
「美濃に兵を向け」
「そのうえで」
「その大逆の家を正す」
 戦を挑みそれに勝ってそのうえでというのだ。
「その為の出陣じゃ」
「ではですな」
「これより殿ご自身が兵を率いられ」
「美濃に向かわれますな」
「そうする、では行くぞ」
 見れば新九郎も家臣達も皆既に紺色の浅井家の具足に服そして陣羽織を身に着けている。足軽の具足や陣笠そして旗も同じ色だ。
 新九郎は紺色の浅井家の軍勢の中におり自ら紺色の鞍の馬の背に乗ってそのうえで軍配を振るって出陣を命じた。
 出陣して暫くしてだった、彼は家臣達に問うた。
「よいか、近江のことはな」
「常にですな」
「殿の下に」
「届けることですな」
「そうせよ、よいな」
 こう言うのだった。
「お主達もわかっていよう」
「無論」
「若し動きがあれば」
「その時は、ですな」
「我等も動く時じゃ」
 まさにその時がというのだ。
「だからな」
「はい、ではです」
「まずはですな」
「軍勢を美濃に進ませますな」
「そうしますな」
「そうする、ただ美濃に入ることになっても」
 例えそうなってもというのだ。
「戦にならぬし若し戦になれば」
「その時は、ですか」
 海北が言ってきた。
「干戈を交えることは、ですな」
「避けたい、斎藤家には四人衆がおり」
 この国を支える四人の家老達がというのだ。
「何でもまだ若いが恐ろしい御仁がおるという」
「と、いいますと」
「竹中半兵衛殿というらしい」
 新九郎はこの者の名前も出した。 
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