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曇天に哭く修羅

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第一部
  Wrath

 
前書き
スペック差が酷い。
_〆(。。) 

 
顔面への一撃を食らった翔が宙に浮く。

それを紫闇が飛んで追う。

鳩尾(みぞおち)に肘。

翔は背中から落ちる。

しかし地に着く前に蹴り上げ。

再び顔に拳。

脊髄への前蹴り。

真横から投げ倒す。

手刀が首を打つ。

《立華紫闇》の一気呵成(いっきかせい)な猛攻。

今まで溜め込んでいたものを爆発させるように見違えるような大暴れだ。


「ははははははははははははははッッッ!!!」


《橘花 翔》から漏れるは歓喜と愉悦。

それが止まらない。

紫闇も止まらない。

追撃が途切れない。

一方的に殴る。

一方的に蹴る。

一方的に投げる。

もしも紫闇が翔から同等の威力を持つラッシュを受けていたらもれなく戦闘不能。

なのに翔は無傷。

二人にはそれほどの差が有った。


「これは……想像以上だ……」


翔は時間に干渉した紫闇の速度に迫る。

そして素で追い抜いて見せた。

紫闇が手に入れた新しい力でも着いていけないほど速く移動して翻弄する翔。

残像を追うのがやっと。

足捌きは五感の知覚が不能な俊敏さ。

腕は第六感でも認識外。

紫闇が空振るとカウンターが飛ぶ。

翔が攻撃に使っているのは左腕だけだと解っているのに何をやっているのか解らないほど迅速な一撃が正確に命中する。


「うおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」


紫闇が不甲斐なさに怒り吼えて求む。


(力が足りない。もっとだ)

『危ない』

(もっと寄越せ。これじゃまだ駄目だ)

『危ない』

彼奴(あいつ)()るにはもっと力が要る)

『でも』

(例え死んでも良いから───)



「力を寄越しやがれッッ!!!」


『……解った』


【魔晄外装】に走る青いライン。

それが一層強く輝くと、まるで真っ青な血液を思わせるように魔晄(まこう)の粒子が噴出する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

今まで何とも無かった怪我が。

気が狂いそうなほど。

頭が顔が首が肩が腕が掌が胸が腹が尻が金的が太腿が脹脛が足裏が指が。

内臓に至るまで全て痛い。

兎に角痛い。

死んだ方がましだ。

しかし力は得た。

翔は止まっている。

倒れ込みたい気持ちを抑えて武舞台の床を踏み砕きながら接近すると全力で殴り飛ばす。

だが速度に関しては双方にこれと言った程の差は付いていないようだ。

返礼に殺到した翔の左拳は紫闇の意表を突いて回避を許さず直撃。

ただでさえ痛い【異能】を行使する代償の痛みに攻撃を受ける痛み。

紫闇は激痛で発狂しそう。

しかし何だ、それがどうした。


「きぃあああああああああああッッッ!!!」


気が()れたように声を出す紫闇。

その裂帛(れっぱく)な気合いはまるで示現流の猿叫(えんきょう)を思い起こさせるほど苛烈。

吼えた紫闇は突撃。

顔を殴り、腹に膝、左の脇腹に右のボディを放って全弾クリーンヒットさせるも間髪を入れずに翔から左の打ち下ろし。

脳天に横拳が落ちて衝撃。

目には大輪の花火が咲いた。

足下がぐらつく。

それが何なのか。

紫闇は逃げない。

一歩も退かず。

意思が痛みを超える。

本能で動く。

中段蹴りの【禍孔雀(かくじゃく)】が翔の腹へ炸裂。

爆発し黄金の粒子が舞った。


「俺としては満足している。この試合中で立華がここまで出来るようになるとは思っていなかったからな。だが向かって来ると言うのなら応えさせてもらおう」


紫闇の背筋に寒気。

そのジャブは見えない超速。

しかも斬撃のように切れる。

両の肘、肩、首筋と血が噴き出す。


「耐えたぜ橘花ァッッ!!」


紫闇の後ろ回し蹴りは翔の腹筋に命中。


「それがどうした?」


翔は魔晄の光を放つ左のストレートを一直線にぶつけて紫闇を白銀の中へと呑み込んだ。
 
 

 
後書き
第一部終わったらどうしようか悩む。

何度も書いてますけど真面目に。
_〆(。。) 
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