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曇天に哭く修羅

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第一部
  覚醒

 
前書き
原作一巻分も終盤です。
_〆(。。) 

 
《立華紫闇》は武舞台に倒れている。

左手の【古神旧印(エルダーサイン)】も光の筋となって《橘花 翔》の元へ流れ出していた。


「う……」


失神していた紫闇が意識を取り戻すと黒かった魔晄は通常の白銀に戻り、『鬼』の狂気も消え去って人間の正気に戻っていた。

しかしそんなことはどうでも良い。


(10カウント中。まだ終わってないぞ!)


立ったところで全てを打ち砕かれた自分に勝ち目が無いことなど理解している。


「それでも」


諦めるわけにはいかなかった。

ここで折れたら以前と同じ。

だから絶望していても立つ。

敗北を確信しようと抗う。



「……力が欲しい」

『もう少し、もう少し』


紫闇の頭に響く声。

何時の頃からか聴こえてきた。


(これで終わりなんて嫌だ)

『門が今、』


翔と自身の為に何かを得たい。


『開く』


直後、真っ白な空間。

気味が悪くて巨大な黒門。


「あれ? 会場に居たよな俺?」


紫闇は以前にも此処へ来た。

試合が気になる彼が見る門の前に黒い(もや)が現れて人の形となっていく。


「そういうことか」


紫闇の目前には黒い髪の紫闇。

彼を見て理解する。

試合での体調不良。

謎の幻聴。

時が止まったような感覚。

この存在が原因。

理由は解らないが悟った。

そもそもこいつは何だ。


「どうでも良いか。お前は俺に『力』をくれるんだろう? なら早く寄越せ。魂と交換でも構わない。終われないんだよ。あいつを、《橘花 翔》をがっかりさせたくないんだ」


紫闇の願いにうっすら笑ったもう一人の紫闇は左腕を向けて視界を塞ぐ。

次の瞬間、視界は武舞台に戻っていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(体が熱い)


頭も割れるように痛む。

紫闇はそれが心地良い。

熱狂の観客。

叫ぶ実況。

自分に期待する翔。

何もかも頭から消し飛ぶ。

内からは言の葉が漏れ出す。

紫闇の意思に関係なく。


七門ノ一(ヴィルス=ヨグ)


翔が(すく)む。


混沌の解放(ナル・シュタン)


驚きに目を見開く。


我は虚無の貌に名を刻む(ヴォルグン・ナル・ガシャンナ)


紫闇の前に立つ彼は震えた。


大気よ唸れ(ヴオ・ゾルディス)


翔は冷や汗を(ぬぐ)う。


時よ止まれ(イルイス・カルラ)


顔には恐怖が浮かぶ。


刻む我が名は(ウルグルイ・ゼェム)


何故か紫闇には全てが遅く。


“風に乗りて、歩む者(イタクァ・ザ・ウェンディゴ)


翔は無意識に後ろへ跳ぶ。

紫闇の言葉が紡がれた結果何が起きたか。


(……我が事ながら自覚無ぇー)



周囲の時間が凍り付く。

紫闇は熱や痛みが抜けると【魔晄外装】の赤いラインが青色に変化した。

もう一人の自分から得た力の使い方を直感的に理解しながら翔を睨む。


「次はお前が絶望する番だッ!!」



後方に飛び退()きながら停止する翔へと飛び掛かり顔に殴り込んでいく。

蹴って割れた床の破片を置き去りにして。
 
 

 
後書き
原作を見て紫闇の能力に思ったこと。

何で風のイタクァで時間?

クアチル・ウタウスが居るぞ。

チート系ならまあ解るんですけどイタクァの名前出したんなら風系にしといた方が。

原作のパワーインフレからすると、個人的に時間能力の覚醒は終盤が良かった。

原作が進んでいった場合、恐らく紫闇は最終的に7つ目くらいまで能力を覚醒するはずだったんだろうなあと思っています。

作者さんが書いてる今の作品も設定の一部に7が使われているところからすると。
_〆(。。) 
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