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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep20戦技教導隊~to recieve training 3~

†††Sideなのは†††

私が目指したのは、戦技教導隊っていう部署に所属する教導官。私の砲撃魔導師としての実力なら年齢に関係なくきっと通用するって、クロノ君からお墨付きを貰った。私の魔法が役立てるならって思って、本局航空武装隊と両方に籍を置く形で局入りを果たした。

「おはよう、なのはちゃん、お待たせ~!」

「あ、おはようございます、ロザリーさん!」

フェイトちゃんのお家のトランスポートからアースラ経由で本局のトランスポートホールに到着した私は、同じ教導隊4班のロザリーさんに挨拶を返した。
ロザリーは愛称で、本名はロザリンダ・ベルトーネさん。私の研修先として配属された第4班の中で唯一魔力非保有の局員さんで、第4班の事務官を担当するおっとりしたお姉さん。黒色のロングストレートヘアで、目元が長い前髪で隠れてるから感情が読みにくいけど、とっても明るい性格なお姉さんだ。

(目が細すぎて、睨まれてるって勘違いされるから隠してるって話だけど、綺麗で格好いい目つきだなって私は思ってる)

「じゃあ付いて来てね」

「はい!」

ロザリーさんの後ろを付いて教導隊のオフィスに向かう。本当はもう私ひとりでもオフィスに行けるんだけど、ロザリーさんが私を迎えに行きたいっていうことで、今も迎えに来てもらってる。でもそれが嬉しかったりする。トランスポートホールでシャルちゃん達と別れるから、オフィスまでは独りきり。その間は無言になって寂しいから、ロザリーさんとお話できるのは助かる。

「そう言えば、なのはちゃん。今日の仕事、ミッド首都航空隊との演習なんだけど・・・」

「あ、はい」

教導隊の仕事は、私たちが教導を請け負った相手と行う演習での仮想敵役や技能訓練。想定される敵の能力や陣形をシミュレーションしてのものだから、今までやってきた事や考えた事もない飛び方や戦い方することもあって、これが結構面白い。

(時々やるシャルちゃん達との模擬戦でも、ちょっとずつだけどシャルちゃんやルシル君に墜とされるまでの時間が延びた)

あと他にも、局の技術部や一般の魔導端末メーカーの開発した魔導師の新型装備の試験運用、それに新しく組み立てられた戦闘技術の実践テスト。それらをさらに昇華させるための研究などなど。割とやる事が多かったりする。

「今日の演習相手の中に、セインテスト候補生がいるみたい」

「・・・あー、今月から首都航空隊での研修が入ってるって言ってました・・・」

先月までは地上の首都防衛隊で研修だったんだけど。ちょっとタイミングが悪かったな~。でも海鳴組での模擬戦とは違って教導隊と航空隊の演習だから、ルシル君も好き勝手に動けないはず。そこを突けば簡単には負けない・・・と思う。

「ま、戦うことは確定しているから、その時はなのはちゃんにお願いすると思う。でも単独で突っ込めなんてうちの班長、アレッタ三佐は指示にしないだろうから、みんなで倒そうね?」

「が、頑張ります!」

それからロザリーさんと楽しくお喋りしつつ到着した教導隊のオフィス。オフィスに入る前に「高町なのは、入ります!」一言挨拶してから入室。続けて「ロザリンダ・ベルトーネ、入室します」ロザリーさんも入室した。

「お、来たな。おはよう、高町、ベルトーネ」

「「おはようございます、アレッタ三佐」」

オフィス内は各班ごとに間仕切りで仕切られてる。私とロザリーさんは4班の区画に入って、すでに丸テーブルに着いていた4班の班長を務める、スポーツ刈りの赤い頭が目印のデミオ・アレッタ三佐に挨拶を返す。

「あれ? 今日は私たち2番乗りですか? エスティさんとヴィオラさんは・・・?」

4班の教導官は、アレッタ三佐とエスティ・マルシーダ二尉とヴィオラ・オデッセイ二尉の3人。戦技教導官は、空戦魔導師の中でも選りすぐりのエリートにしかなれない。って、私は別にエリートというわけじゃないんだけど・・・。

(私のような、がっつり砲撃特化かつ高魔力量の空戦魔導師は少ないみたい。その点から教導隊に入ったらどう?ってことで、私の砲撃技術が役立つならと選んだ志望部署・・・)

「マルシーダは手洗い、オデッセイはまだだな。まぁ始業開始までまだ時間がある。お前たちも、何かやっておきたい事があったら今のうちに済ませておけ」

「ではお茶を用意してきます」

「あ、私も手伝います」

「ありがとう、なのはちゃん。じゃあお願いしようかな」

ロザリーさんと一緒にオフィスにある給湯室に向かう。教導隊は6班あって、教導官と事務官合わせて40名で、給湯室には個人用のコップがずらりと並んでる。私とロザリーさんは棚から4班のコップだけを取り出して、沸かしたお茶を注ぐ。そして共用のトレイにコップを載せて、再び4班テーブルに戻ると、そこにはさっきまでは居なかった2人の姿があった。

「お、戻ってきた! おーっす、高町ちゃん、ベルトーネさん!」

右手を軽く挙げて挨拶をしてくれたのはマルシーダ二尉。ウルフカット?っていう髪型をした若い男の人。見た目はちょっと怖いけど、見た目じゃ判らないとっても気さくで優しいお兄さん。

「おはよう、なのはさん、ロザリーさん。お茶、ありがとう」

「「おはようございます!」」

ロザリーさんの持つトレイからコップを取って、テーブルの上に置いていくのはオデッセイ二尉。薄い黄色のショートポニーテールを揺らしながら、私の座る席の前にも桜の花びらが掛かれたコップを置いてくれた。

「お。始業チャイムだな。では、全員着席。ミーティングを始める」

「「「「はい!」」」」

テーブルに着いて、事務官のロザリーさんがテーブルの中央にモニターを展開して、本日のスケジュール表を映し出した。

「ミッドチルダ首都航空隊との演習を行います。期間は1週間。首都航空隊は総勢28名。その内の半数14名が交替部隊になっており、さらにデイシフト7名とナイトシフト7名に分かれています。先方のシフト調整により、本日は1030時から1130時、1400時から1500時の2回の演習となります」

「仮想敵としての演習ということでいいんだな?」

「はい、三佐。通例の演習です」

「ふむ。何か特記事項はあるか?」

「特記事項と言うほどのものかは判りませんが、今月の頭より同隊にルシリオン・セインテスト・フォン・フライハイト候補生が研修として入隊しています」

ロザリーさんがそう言うと、三佐たちが一斉に私を見た。マルシーダ二尉が「高町ちゃんの同郷の子だっけ?」と聞いてきたので、「はい。私よりすごい射砲撃魔導師です」って答えた。

「出身は管理外世界の97番だったわよね?」

「魔法文化が無いのにすごい高ランクだよな。高町ちゃん、セインテスト君、あと・・・」

「シャルロッテ・フライハイトちゃん、八神はやてちゃんですね。全員がAAA以上で、ミッド出身だけどフェイト・テスタロッサ・ハラオウンちゃんもいますね。そんな彼女たちは、出身地にちなんで海鳴組と呼ばれてます」

海鳴組っていう名前は気が付けば付けられてたって感じだけど、私たちはそれを気に入ってた。私たちの絆を言葉に出来てるようで嬉しいんだ。

「そんなセインテスト君は、魔導師ランクS+、魔力の最大出力に至っては局魔導師内でトップ3に入ります」

「まぁ首都航空隊も、研修にやってきているセインテスト候補生を単独で突出させるとは思えないが・・・」

「魔力量で強さが決まるってわけじゃないことを、教導隊として教えてやらないといけないですよね」

マルシーダ二尉が、ニッヒッヒ!ってイジの悪そうな笑顔を浮かべた。実際、私とフェイトちゃんは、陸士訓練校で実際に経験した。魔力量も上で、フェイトちゃんと2人がかりだったにも関わらず、私たちは1人の教官に負けた。それに、この4班での研修でも私は手玉に取られちゃって、アレッタ三佐に負けちゃった。

「そんなこと言って返り討ちに遭っても知らないわよ?」

「・・・大丈夫さ。・・・たぶん」

それから朝のミーティングを終えて、本局の民間次元港からミッド首都クラナガンの中央次元港に移動した私たち4班は、公共バスで地上本部近くのバス停へ。そこから地上本部のセントラルタワーに入ると、「あ、お待ちしていました!」って1人の女性局員が駆け寄ってきた。

「首都防衛隊所属、リエッセ・ヒノ一等空尉です。午前中の演習でお世話になるチームBの班長を任されています。隊を代表して、ご挨拶させていただきます!」

ヒノ一尉(アクセントが日本のそれだけど、偶然だよね?)が敬礼して、私たちも「お願いします!」敬礼を返した。そして私たちはヒノ一尉の案内で外にある演習場へ。そこには武装隊共通のバリアジャケットに変身し終えてる魔導師6名がビシッとした佇まいで居た。

(あ、ルシル君は居ないんだ・・・)

ちょっと寂しいような、でも嬉しいような。マルシーダ二尉も小さく「あー、居ないんだな」ってポツリと呟いた。そんな私やマルシーダ二尉の様子を察したようで、「セインテスト候補生なら、今はチームCとして哨戒任務中ですよ」ってヒノ一尉が教えてくれた。

「セインテスト候補生の参加する演習は明日からなので、その時はお願いしますね。では、早速お願いできますか、アレッタ三佐」

「ええ、判りました。では各員、デバイスを起動し、防護服着用せよ。ブレードロッド、起動」

アレッタ三佐のデバイスは、武装隊共通の杖形のストレージデバイスを個人用にチューンした物で、石突には実体刃を装着してる。

「ブラストガナー、セットアップ」

マルシーダ二尉のデバイスは拳銃形で、名前はストレージデバイス・“ブラストガナー”。かなり大きな拳銃だ。

「レーヴェンゲブリュル、仕事の時間よ」

オデッセイ二尉のデバイスは槍型のストレージデバイス・“レーヴェンゲブリュル”。オデッセイ二尉の身長は160cmほどで、“レーヴェンゲブリュル”はもっと長い170cm。それでも軽々振り回して繰り出す連撃はすさまじい。
アレッタ三佐とマルシーダ二尉とオデッセイ二尉のデバイスは専用機だけど、バリアジャケットは武装隊共通のものを着用してる。武装隊の人たちは基本的に同系魔法を使うから、バリアジャケットも共通で問題ないみたい。でも私は専用のあの白いバリアジャケットだ。ちょっと特殊な魔法(特に防御系がね)を使うから、こっちのバリアジャケットでいいとOK貰った。

「ではヒノ一尉」

「はい。チームB、飛行魔法発動!」

ヒノ一尉の指示に「了解!」と応じたチームBの隊員さん達が一斉に空に上がって、編隊を組んで空に翔け回り始めた。それを見たアレッタ三佐の「俺たちも上がるぞ。4班、出撃!」という号令に、私たちも「了解!」と空へと上がった。

『10秒後から演習開始ということでお願いします』

『了解です。各自、時間合わせ。3、2、1、今!』

演習時には手首に装着するように決められてる腕時計のタイマーをセット。演習は基本的に1時間の中で休憩を何度か挟んで行うことになっていて、今回も例に漏れずだ。腕時計から小さいモニターが展開されて、カウントダウンが始まる。

(0になった瞬間、演習開始だ・・・!)

残り3秒、2、1、0。その瞬間、数十mと離れて編隊飛行をしてた隊員さん達がヒノ一尉の「構え!」という指示の下、一斉にデバイスをこちらに向けてきた。そして初歩中の初歩の砲撃魔法、フォースカノンを発射。

「散開!」

アレッタ三佐の指示で私たちはバラバラに回避。そこに「射撃魔法!」が飛来。ソレらは回避先を予想して放たれたもので、ちょうど回避行動を終えた直後に私の間近にまで迫ってきてた。

≪Round Shield≫

“レイジングハート”がシールドを張ってくれたおかげで直撃は免れたけど、その魔力弾は攻撃用じゃなくて「目潰し!?」としての効果を持っていて、強烈な発光をした。私は戦闘中にも関わらず右腕でひさしを作って、さらに目も瞑っちゃった。

『高町候補生! 下方に5m急速降下!』

『りょ、了解です!』

視界が利かない中、オデッセイ二尉からの指示に従って急降下。直後に頭の上を何かが通り過ぎたような風が吹いた。

『高町候補生、視界はどうか!?』

任務中だから普段の敬称じゃなくて、今の階級である候補生と付けて私を呼ぶマルシーダ二尉の念話に、問題ありという意味の『ネガティブ!』って答える。全然見えないわけじゃないけど、チカチカして魔力攻撃なのか違うのかの判別がちょっと難しい。

(目潰しなんてシャルちゃん達との模擬戦で使われることないから油断した・・・!)

“闇の書”事件の際にヴィータちゃんから1発貰ったけど、あれは本当に強烈だったから私もフェイトちゃんも一切の動きを止めてちゃって、ヴィータちゃんを逃がしちゃったんだよね。

『了解! マルシーダ、高町候補生のフォローに入ります!』

『『了解!』』

『お、お願いします!』

視力が低下してることで集中砲火を受けるかもしれなかった私は、マルシーダ二尉と“レイジングハート”のおかげで、それから何度か攻撃はされるも直撃は1発もなかった。

≪マスター。私がロックオンします。アクセルシューターを準備してください≫

「うん、お願い!」

――アクセルシューター・バニシングシフト――

≪ロックオン完了です!≫

“レイジングハート”の機能で複数の対象をロックオンして精密狙撃を行う、アクセルシューターのバリエーションの1つ、バニシングシフトを発動。

「『高町、射撃魔法いきます!』シューット!」

アレッタ三佐たちに注意をしてから、“レイジングハート”から14発の誘導操作弾を発射。防御か迎撃かをしないと、ロックオン効果によっていつまでも追撃を続ける。ヒノ一尉たちもそれを察して、迎撃ないし防御魔法で対処し始めた途端、アレッタ三佐から『総員、攻撃!』という指示が入った。私のシューターへの対処で生じる隙を突く戦術だ。

「(目はもう見える!)了解! ショートバスター!」

≪Shoot!≫

砲撃としての射程や威力を犠牲に発射速度や砲速を引き上げた、対ルシル君のために作り上げた魔法を連射する。アレッタ三佐とマルシーダ二尉も射撃魔法を放つ。近接戦に優れたベルカ式の騎士であるオデッセイ二尉は、私たちの追撃にも対処しきったヒノ一尉へ突進。

「ナーゲルシュラーク!」

オデッセイ二尉は“ レーヴェンゲブリュル”の全体に魔力付加しての打撃魔法を繰り出した。対するヒノ一尉は左手に持つデバイスの柄で、振り下ろされた一撃を受けた。打撃力が強化されて、元よりデバイス同士の打ち合い専用のベルカ式デバイスと、あくまで魔法発動用の媒体なミッド式デバイスじゃどうなるか決まりきってた。ヒノ一尉のデバイスが真っ二つになって弾き飛ばされて、地上に向かって落下。

(決まった・・・?)

“レーベンゲブリュル”をくるりと縦に回して、柄の下部分による打撃という追撃をしたんだけど、素手だったはずのヒノ一尉の両手には、1m半くらいの柄の先端にかなり大きな八面体のあるハンマー型のデバイスが握られてた。柄と柄が激突して激しい火花を散らすと、2人は弾かれるようにして後退。

『退け、オデッセイ!』

――ソニック・レイ――

『急ぐんだ!』

――ラピッドバレット――

弾かれた直後で体勢が整ってないオデッセイ二尉に向けて、隊員さん達が射砲撃を発射。アレッタ三佐とマルシーダ二尉の迎撃に続き、私も「薙ぎ払います!」ってわたし本来の砲撃魔法ディバインバスターを発射して、隊員さん達の射砲撃を薙ぎ払った。
それで一旦仕切り直しみたいになって、教導隊と航空隊とでまた編隊飛行に戻った。そして優勢に立てるような位置取りをするために円を描いてたところで・・・

「サイレン!?」

「アレッタ三佐、演習の中断を!」

「了解! 全体止まれ!」

アレッタ三佐の指示で私たち教導隊はスピードを落としてその場で停止して、ヒノ一尉に入った通信の内容に聞き耳を立てた。どうやら広域指名手配犯とその仲間が、首都上空に現れたとのこと。

「教導隊の皆さん! すみませんが我々にスクランブル要請です! 皆さんは本部内で待機を願います!」

「判りました。ご武運を」

アレッタ三佐の敬礼に倣って私たちもヒノ一尉たちに敬礼した。ヒノ一尉たちも「ありがとうございます! チームB出撃する!」と敬礼した後、一斉に空に上がって現場に向かって飛び去って行った。

「あの、私たちは待機なんですか・・・? お手伝いとかしなくていいんでしょうか・・・」

私がそう言うと、マルシーダ二尉が「そっか。高町ちゃんは知らないのか」と嘆息した。それは私に対しての嘆息じゃないみたいで、その視線は地上本部に向けられてた。

「戦技教導隊は各部隊の演習相手としていろんな部署に重宝されているけど、本局の部署だ」

マルシーダ二尉のそんな当たり前な話に、どうしてそんな話をしたのかが解からない私は小首を傾げた。するとオデッセイ二尉が「ミッド地上本部の上層部は、本局が嫌いなの」と肩を竦めると嘆息しつつ首を横に振った。

「ああ。だから俺たち本局の魔導師が、地上の航空隊に代わって手柄を立ててしまうような真似が気に入らないんだ。だから俺たちには協力要請を出さなかった」

地上本部と本局の確執をここで初めて知った私は、ちょっと悲しくなった。同じ管理局なのに、どうして協力が出来ないのかなって。まだ10歳になったばかりの子供な私には解からない大人の事情というものがあるんだろうけど・・・。

「しかし、情報だけは寄越してくれたようだ」

アレッタ三佐がそう言って私たちの間にモニターを展開してくれた。そこには広域指名手配犯のプロフィールが表示されていた。元管理局員でありながら、マフィア・アルタコミュニティの構成員。スパイするために管理局員試験を合格して、正式な局員として務めていたんだけど。実はマフィアのスパイだってことがバレて逃亡。そして指名手配を受けた、と。

「これまでに首都防衛隊が何度か逮捕に動いているが、手配犯を含め連中はそれなりの航空魔導師のようだな」

「ミッドの地上部隊の中じゃ有名だったようですね。防御と結界に優れた後衛魔導師。その所為で逃走を許しているようですね」

「防御系での結界で自身や対象を覆うことで、通常の防御魔法より強力な効果を発揮できるのね。余程強力な攻撃魔法かブレイク系じゃないと破れないわね」

アレッタ三佐たちの話に耳を傾けてると、ヒノ一尉から現場映像が送られてきた。モニターにはヒノ一尉たちと、手配犯とその仲間が空戦を繰り広げてる様子が映し出された。ヒノ一尉たちはとても強い。だけど手配犯の結界魔法が厄介で、一尉たちの攻撃を完全防御していて、しかも発動中でも移動が出来るって優れもの。

「どうしよう、逃げられちゃいます・・・!」

手配犯たちの動きはヒノ一尉たちを挑発するような感じで、その嫌がらせみたいなのが違法飛行の動機なのかも。スパイに気付かれたから逃げることになって、その恨みをああして挑発して晴らしてるみたいな。

「「「あ」」」

「??・・・あっ、ルシル君!」

ヒノ一尉のチームBと合流した別のチーム(確かチームCだよね)の8人の中にルシル君の姿があった。チームCのリーダーらしい隊員さんと何やら言葉を交わした後、ルシル君だけが突出した。

――屈服させよ汝の恐怖(コード・イロウエル)――

「「「っ!!?」」」

隊員さん達の攻撃なんて効かないって余裕を見せて空を飛び回る手配犯たち5人。そのうち手配犯のすぐ側に大きい魔力の円が描かれて、そこから銀色に輝く巨大な右腕が伸びてきた。アレはルシル君のイロウエルっていう魔術だったはず。

「デケェ!」

「捕まえた・・・!」

イロウエルは手配犯を親指と人差し指で摘むように捕まえて、そのまま結界を押し潰して破壊。すると他4人を護ってた結界も解除された。手配犯が指2本で確保されて、さらに自分たちを護ってた結界が消えたことで動きを止めた4人の背後に、イロウエルよりかは小さな円が展開された。

――噛み砕け汝の凍牙(コード・マトリエル)――

円から出てきたのは氷の龍で、4人をパクッと食べた。ルシル君がイロウエルと氷の龍を解除すると、手配犯は気を失ってるようでぐったりしていて、4人は凍結封印状態だった。

「うお、マジか!」

「す、すごい・・・」

ヒノ一尉たちが手配犯と、凍結封印が解除された4人に手錠を掛けた。それでもう終わりだ。

「三佐。明日、セインテスト君の居るチームCと演習ですよね。俺、休んでいいですか?」

「却下だ」

「魔力量の差で強さは決まらないって豪語していたのは誰? まぁ気持ちは解かるけど」

「忘れた。高町ちゃん、頼りにしてる」

マルシーダ二尉が私の肩に手を置いて、ちょっぴり素直に頷けないことを言ってきた。でも私は「はいっ!」強く頷いた。私も心のどこかでルシル君に勝ちたいって思ってるから。 
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