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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第65話

~オスギリアス盆地~


「それで?何でお前がヴァイスラント新生軍(れんちゅう)に協力しているんだ、ヴィータ。」
「……ミルディーヌ公女とは個人的に面識があってね。元々”殲滅天使”との交渉でメンフィル・クロスベル連合の私に対する処遇についての決着がついたら、彼女に接触するつもりだったのよ。」
「そういえば…………さっきミュゼちゃんは魔術らしき”術”を使っていましたけど、もしかしてクロチルダさんが?」
ジト目のクロウに対して苦笑しながら答えたクロチルダの答えを聞いたトワはある事を思い出してクロチルダに訊ねた。
「ええ、少しだけど彼女が今よりも幼い頃に私が指南したわ。……恐らくだけど彼女ならば、その気になればエマもそうだけど私も超える”魔女”になれたかもしれないわ。」
「ええっ!?」
「ハッ、オカルト方面にまで才能があるとかつくづく化物じみた女だな、あの”ゆるふわ”は。」
「そうね。それこそミルディーヌ公女が”本気”になればレンも超える”才女”になれると思うわよ?」
「やれやれ…………つくづく驚かされるね、ミュゼ君の”才”には。――――――それで話を戻しますけど、どうしてヴァイスラント新生軍に?」
クロチルダの話を聞いたトワは驚きの声を上げ、アッシュは鼻を鳴らし、レンは意味ありげな笑みを浮かべてそれぞれエリス達と共に鉄道憲兵隊が連行される様子を見守っているミュゼに視線を向け、アンゼリカは溜息を吐いた後表情を引き締めてクロチルダに問いかけた。

「………”情報収集”よ。――――――メンフィル・クロスベル連合側―――いえ、リィン君達の動きを知る為にもね。」
「……確かにリィン達の動きはこの戦争の”今後の動き”でもあるから、それを知る為にはメンフィル・クロスベル連合側に”伝手”を作る必要はあるな。」
「そだね。”殲滅天使”達は黒の工房の”本拠地”を見つけるまでの”期間限定の協力者”の上、”特異点”関連以外の情報に関しては完全に教えるつもりはないものね。」
クロチルダの説明を聞いたクロウは真剣な表情で同意し、クロウの言葉に頷いたフィーはジト目でレンに視線を向け
「ハッ、堂々とスパイする事を許すとか案外甘いんだな、メンフィル・クロスベル連合(てめぇら)は。」
フィーに続くようにアッシュは嘲笑してレンに視線を向けた。
「クスクス、あくまで”現時点でのメンフィル・クロスベル連合側の敵はエレボニア帝国政府”なのだから、現状は”中立勢力”扱いされている”紅き(あなたたち)”に協力している”深淵”のお姉さんがヴァイスラント新生軍に協力する事への”対価”としてメンフィル・クロスベル連合(レンたち)の情報収集した所で何も問題ないし…………――――――そもそも、今後の戦争の展開に”紅き(あなたたち)が介入した所で結果は変わらないと現時点のメンフィル・クロスベル連合側は判断しているもの。”」
「……………………」
「まあ、実際エルミナ皇妃は紅き(わたしたち)の事を”小物”扱いしていたからねぇ。」
意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたトワは複雑そうな表情で黙り込み、アンゼリカは疲れた表情で答えた。

「――――――そういう訳ですので別にヴィータお姉様が貴方達を裏切った訳ではありませんから、どうかご安心ください。」
するとその時ミュゼ達がトワ達に近づいて声をかけた。
「あら、もう出発かしら?」
「はい。先程リィン大佐から鉄道憲兵隊の別働隊との戦闘も終えたと連絡がありましたので。」
「リィン君達が…………あの、別働隊との戦闘はどんな”結果”に終わったの?」
クロチルダの問いかけに答えたミュゼの話を聞いたトワは複雑そうな表情をした後すぐに表情を引き締めてミュゼに問いかけた。

「鉄道憲兵隊が展開していた4機の高射砲の内2機は”大破”させて残りの2機は無傷で鹵獲、味方側の被害は死者・重傷者共に”ゼロ”にした上で、敵側の被害の死者は大破させた高射砲を操作していた者達を除けば重傷・軽傷の違いはあれど全員”捕縛に留めた”との事だ。」
「そうですか…………」
「犠牲者を最小限に抑えているんだから、やっぱり今もわたし達の知っているリィンのままのようだね。」
(クスクス、数日後に行われる”リィン隊を含めた灰獅子隊”による”軍事作戦”を知っても果たしてそう言えるかしらねぇ?)
オーレリア将軍の説明を聞いたアンゼリカは静かな表情で呟き、安堵の表情で呟いたフィーの言葉を聞いたレンは意味ありげな笑みを浮かべていた。
「ふふっ、ベルフェゴールさん達からの話で伺ってはいましたけど、本当にⅦ組に戻っていて何よりですわ、クロウさん。」
「ま、これもメンフィル・クロスベル連合側についたあのリア充シスコン剣士や皇女さん達のせいでもあるんだがな。」
「ク、クロウ君。」
微笑みながら話しかけたアルフィンに対してジト目でアルフィンを見つめて皮肉で返したクロウの態度にトワは冷や汗をかいた。

「”リア充シスコン剣士”…………?今の話の流れからしてその言葉を示す人物はリィン大佐の事でしょうが、シスコンは”シスターコンプレックス”として”リア充”とは何なのでしょう……?ランディさんやフォルデ中佐も時折リィン大佐の事をそう言っていましたが…………」
「――――――?」
「フフ、後で教えてあげますね。」
アルティナはクロウの言葉を聞いて不思議そうな表情で首を傾げ、アルティナに続くようにアルティナの傍に現れて謎の機械音を出したクラウ=ソラスの様子にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中エリスが苦笑しながら答えた。
「よう、黒兎。話には聞いてはいたが、以前と比べるとかなり”変わった”みたいだな。今のお前は以前の”人形”みたいなお前とは大違いだぜ。」
「…………そうですね。それについてはわたし自身が一番自覚しています。――――――それも全てリィン大佐達とミリアムさんのお陰です。今まで受けた恩を返す為にも…………内戦での罪を償う為にも……そしてミリアムさんのように失いたくない為にも、わたしはリィンさん達を守ります。」
「アルティナちゃん……」
「クスクス、深淵のお姉さんも黒兎の事を少しでも見習ったら?」
「フウ………ここぞとばかりに痛い所を突いてくるわね。」
「フフ、こんな可憐で小さな騎士(ナイト)ができたリィン君達はつくづく羨ましいよ。」
「紅き(わたしたち)側じゃないのは残念だけど……いつかリィン達を取り戻す方法を見つけて、リィン達を取り戻したその時はもう立派な”Ⅶ(わたしたち)”の一員だね。」
「……………………」
クロウに話しかけられて答えた後決意の表情を浮かべたアルティナの様子を見たトワが驚いている中意味ありげな笑みを浮かべたレンに話を振られたクロチルダは疲れた表情で溜息を吐き、アンゼリカとフィーは静かな笑みを浮かべ、フィーの言葉を聞いたエリゼは一瞬だけ眉を顰めたが何も答えず目を伏せて黙り込んでいた。

「……………………」
「フフ、お会いするのはこれが初めてになりますわね、アッシュ・カーバイドさん。――――――貴方に関しての話も既に伺っています。”紅き翼”の新たなる一員になった事…………心より感謝いたします。」
「皇女殿下…………」
静かな表情で自分を見つめるアッシュに対して感謝の言葉を述べたアルフィンを見たクルトは父親であるユーゲント皇帝を直接銃撃した人物に対してのアルフィンの接し方に驚いていた。
「別にアンタに礼を言われる筋合いはねぇ。――――――俺は今回の件の”落とし前”をつける為にも紅き(こいつら)側にいるだけだ。」
「それで構いませんわ。今回の戦争の件に関して、貴方なりの納得した決着をつける事…………”かつてのエレボニア皇女として”心より祈っておりますわ。」
「………………………………」
アルフィンの応援の言葉に対してアッシュは目を伏せて黙り込んでいた。

「………皆さん、捕虜の回収も終えたようですし、私達もパンダグリュエルに帰還しましょう。」
「あ…………ま、待ってください!まだ皇女殿下にもそうですが、ステラさんにも聞きたい事があるんです!」
そしてステラが帰還を促したその時トワが呼び止め
「え…………」
「……………アルフィンさんはわかりますが、今まで面識のなかった私に何の話を聞きたいのですか?」
トワの言葉を聞いたアルフィンが呆けている中ステラは眉を顰めてトワ達に問いかけた。

「それは勿論リィン君の事です。その…………知っての通り、リィン君達は今はメンフィル・クロスベル連合側ですが、ステラさんも”その選択は本当にリィン君達にとってよかった”と思っているんですか?」
「何を今更な事を…………カレル離宮でも伝えたように、リィンさん達がメンフィル帝国の戦争相手であるエレボニア帝国側に所属している紅き(あなたたち)側につけば、リィンさん達の将来が危うくなる可能性は十分に考えられる上、最悪の場合はリィンさん達だけでなくご家族まで”反逆罪”を疑われる可能性もあったのですから、元々メンフィル帝国所属であるリィンさん達がメンフィル帝国軍側につく事は正しい――――――いえ、”当然”です。」
「それは”メンフィル軍人としての答え”でしょ?わたし達が聞きたいのはリィンがメンフィル軍の訓練兵時代に所属していたクラス―――黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の訓練兵達の中でリィンの”相棒”であった事から最もリィンの事をよく知っているステラ・ディアメル個人に聞いているの。」
トワの質問にステラが呆れた表情で答えるとフィーが真剣な表情で指摘した。
「!何故黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の名や私がリィンさんのパートナーであった事を貴女達が…………――――――いえ、大方一時的に貴女達に協力しているレン皇女殿下達に聞いて教えて頂いたのでしょうね。先程の問いですが…………”私個人としても同じ答え”です。」
「っ…………!その…………やっぱりリィン君達の将来を考えた上での答えになるんですか……?」
フィーの指摘に目を見開いたステラはすぐに気を取り直して答え、ステラの答えを聞いたトワは辛そうな表情で唇をかみしめた後ステラに問いかけた。
「それもありますが貴女達は”逆の場合”を考えた事はなかったのですか?」
「”逆の場合”……?」
「……もし、リィンさん達が”紅き翼”の一員として貴方達とともに活動をすれば、リィンさん達はいずれメンフィル帝国軍の知り合い―――特に訓練兵時代で知り合った私達を含めた先輩や友人、そして知人と刃を交える事になったでしょうし、最悪の場合はエリゼさんとも刃を交える事で”お互いを想い合っている兄妹が争うという最悪の事態”に発展する可能性もあったのですよ?」
「そ、それは…………」
「……ま、シスコンのあいつなら間違いなく”本気”で戦うことができねぇし、そのことで悩みまくるのが目に見えているな。」
「ん…………一応聞いておくけど、もしそんなことが起こってもエリゼはわたし達側につく気はないんだよね?」
アンゼリカの疑問に答えたステラの指摘にトワが辛そうな表情で答えを濁している中、複雑そうな表情で語ったクロウの推測に頷いたフィーはエリゼに訊ねた。

「――――――当たり前です。私はメンフィル帝国皇女リフィア・イリーナ・マーシルンの”専属侍女長”としてリフィアに忠誠を誓っているのですから、その忠誠を裏切るような事は決してありません。」
「姉様……」
「……僕はエリゼさんの気持ちは理解できます。皇太子殿下お付きの護衛を任された時…………例えどのような苦境があろうとも、命に代えても皇太子殿下をお守りするつもりだったのですから……」
「クルトさん……」
エリゼとエリゼの答えに同意しているクルトの様子をエリスとアルフィンはそれぞれ複雑そうな表情で見守っていた。
「ましてや今回の戦争……ハッキリ言って”エレボニアに勝ち目は万の一つもありません。”メンフィル・クロスベル連合とエレボニアを和解させる事が絶望的かつ昔の戦友達や家族を敵に回し、挙句祖国から”反逆者”扱いされた可能性も十分に考えられるという”リィンさん達自身にとっては救いようのない未来と結果”が訪れる可能性があったのですから、今回の戦争に関してリィンさん達が紅き(あなたたち)側につく等ありえませんし、リィンさん達自身もそのことを自覚していますから、”リィンさん達が今回の戦争で紅き(あなたたち)の元に戻ってくることは絶対にありえません。”」
「…………っ。」
「……………………」
「ハッ、結局はてめぇら自身の身が可愛いからって事じゃねぇか。」
「だが、それが正論であり、今の私達にはそれを否定することはできない…………リィン君達は”エレボニア帝国の戦争相手であるメンフィル帝国を祖国としているメンフィル帝国人”だからね。」
「ったく、オレが言うのもなんだが、正直オレの時よりも厳しいだろうな、リィン達の件は。」
ステラの指摘にトワとフィーが辛そうな表情を浮かべている中、アッシュは鼻を鳴らして皮肉を口にし、アンゼリカは重々しい様子を纏って答え、クロウは疲れた表情で溜息を吐いた。

「うふふ、そういえば”Ⅶ組”のメンバーに”トリシャ・レーグニッツ”の親類がいる事はステラは知っていたかしら?」
「ええ、リィンさん達から”Ⅶ組”の面々について教えて頂いた時に。」
「”トリシャ・レーグニッツ”…………?」
「フム、名前からして間違いなくマキアス君の関係者なのだと思うのだが……」
「もしかして…………マキアスの話にあったマキアスやマキアスのお父さんが昔お世話になっていた従姉の事?」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの問いかけにステラが頷いている中、トワは不思議そうな表情で首を傾げ、アンゼリカは考え込み、マキアスの事情をある程度知っていたフィーは真剣な表情で訊ねた。
「はい。――――――ちょうどいい機会ですし、マキアス・レーグニッツさんへの伝言をお願いします。『アーサー兄様との婚約破棄後のトリシャ様についてマキアスさんが知らない真実がありますので、その件を知りたいのでしたら今回の戦争後にメンフィル大使館を通して私に連絡を取るか、レン皇女殿下達から教えてもらってください』と。」
「こ、”婚約破棄”……!?」
「しかもその相手を”兄”呼ばわりしているって事は、もしかして貴女はマキアスが”貴族嫌い”になった”元凶”の妹なの?」
ステラのマキアスへの伝言を聞いたトワが驚いている中フィーは真剣な表情でステラに問いかけ
「”元”です。メンフィル帝国に亡命した時点で、実家とは絶縁しています。」
フィーの問いかけにステラは静かな表情で答えた。

「……それでトワさん達はわたくしにも話があるとの事ですが……やはり、わたくしがメンフィル帝国の”処分”を受け入れた事やメンフィル帝国側に所属した件ですか?」
「いえ…………その件に関してはオリヴァルト殿下は既に納得なされている上皇女殿下ご自身の意思との事ですから、今の私達はその件についてこれ以上口を挟む権利はありません。――――――私達が聞きたいのは皇女殿下がヴァイスラント新生軍の”旗印”になられた件です。」
「俺が言うのもなんだが、内戦の件でいろいろと思う所がある元貴族連合軍だった連中の”大義名分”になっちまって、本当によかったのか?」
複雑そうな表情を浮かべたアルフィンの問いかけに静かな表情で否定したアンゼリカは表情を引き締めてアルフィンを見つめ、クロウは疲れた表情でアルフィンに尋ねた。
「――――――はい。皆さんもご存じのようにヴァイスラント決起軍を結成した”総主宰”はわたくしが信頼しているミルディーヌですし……かつては貴族連合軍の一員として戦っていたオーレリア将軍達もミルディーヌの考えに賛同し、エレボニアを正す為に祖国であるエレボニアに刃を向ける覚悟をされていますし……―――そして何よりも帝位継承権をもつアルノール皇家の一員であるわたくしを旗印としているヴァイスラント新生軍の存在によって、呪いに侵されたエレボニアの民達に”迷い”が生じる事で一人でも多くの民達がエレボニア帝国政府の言いなりにならない”切っ掛け”になるのであれば……と判断し、ヴァイスラント新生軍の”大義名分”になる事を決めました。――――――そしてそれがわたくしの”エレボニア皇女としての最後の務め”でもあります。」
「「姫様……」」
「殿下…………」
「フフ…………」
決意の表情で答えたアルフィンの様子をエリスとミュゼ、クルトが静かな表情で見守っている中、オーレリア将軍は静かな笑みを浮かべて見守っていた。

「…………わかりました。今の話はオリヴァルト殿下にもお伝えしておきます。」
「ええ。――――――それとセドリックの事…………よろしくお願いしますわね。」
「――――――ベルフェゴールさん、お願いします。」
「はいは~い。――――――それじゃあね♪」
アンゼリカの言葉にアルフィンが頷くとステラはベルフェゴールに視線を向けて声をかけ、声をかけられたベルフェゴールは転位魔術を発動してステラ達と共に転位でパンダグリュエルに帰還した。

「―――さてと、わたくし達もお暇しますので、”特異点”の件、陰ながら応援していますわ。」
「待ってくれ、ミュゼ君。今回捕虜にした鉄道憲兵隊は戦争が終わるまでどうするつもりなんだい?幾ら何でも現状ヴァイスラント新生軍が彼らをパンダグリュエルにずっと幽閉することには無理があると思うのだが。」
そしてミュゼもオーレリア将軍とクロチルダと共に去ろうとしたその時、アンゼリカが呼び止めて訊ねた。
「今回捕虜にした者達に関しては半分に分けて、メンフィルとクロスベル、それぞれに処遇を任せる手筈となっている。」
「え……?ど、どうしてメンフィルとクロスベルにヴァイスラント新生軍が捕らえた捕虜達の処遇を……」
「…………なるほどね。ヴァイスラント新生軍による今回の作戦はエレボニア帝国の戦力を低下させると同時に、”活動資金の獲得”も目的だったのでしょうね。」
オーレリア将軍の説明を聞いたトワが不思議そうな表情をしている中、既に察しがついたレンは小悪魔な笑みを浮かべて推測を口にした。

「ハア?なんで連中を捕まえる事で、そこのゆるふわ共の金稼ぎに繋がるんだ?」
「”お金稼ぎ”……――――――!ま、まさか…………メンフィルとクロスベルに捕虜の処遇を委ねる事で、ヴァイスラント新生軍の捕虜によって発生する労力や浪費をなくす所か、エレボニア帝国政府に両帝国に捕虜の返還の際に発生すると思われる捕虜達の”身代金”を政府に支払わせることで、エレボニア帝国政府の資金も浪費させる事、そしてその”身代金”をメンフィル・クロスベル連合と山分けする事が目的なの……!?」
「なるほどな……ギリアス達にとって今の状況での戦力の低下は可能な限り避けたいだろうから、その低下した戦力を金で取り返すことができるのだったら、実行するかもな。――――――例の”国家総動員法”で、平民、貴族関係なくエレボニアの民達から財産を吸い上げている金を使ってな。」
レンの推測を聞いたアッシュが困惑している中察しがついたトワは信じられない表情でミュゼを見つめ、クロウは不愉快そうな表情で呟き
「フフッ、ちなみに例えエレボニア帝国政府が捕虜の返還を諦めたとしても、両帝国は今回の戦争が終結するまで捕虜達に何らかの労働をさせて、ヴァイスラント新生軍(わたくし達)は両帝国より捕虜達の労働力という”人件費”を支払ってもらえる手筈になっていますわ。ですから、帝国政府がどのような判断をしようとわたくし達にとっては”利”しかありませんわ♪」
「ハッ、捕虜にした連中を働かせた上、そのアガリを自分達の懐に納めるなんざ、さすがは平民達から金を搾り取っている”お貴族様”ってか?」
「ちょ、ちょっと待って!捕虜に強制労働させる事は国際法で禁じられているよ!?」
ミュゼの説明を聞いたアッシュは鼻を鳴らして皮肉を口にし、あることに気づいたトワは真剣な表情で指摘した。

「確かに国際法では禁じているようだけど…………―――それは”国際法に加入している国であることが前提”でしょう?」
「……そういう口ぶりをするってことはメンフィルは国際法に加入していないの?」
意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの言葉を聞いたフィーは真剣な表情で問いかけ
「当り前よ。メンフィルの”本国”は異世界なんだから、もしメンフィルが国際法に加入すれば、”本国”にもそれを守らせなければならないって事にもなるから、メンフィルにとってはデメリットだらけのものに応じる訳がないでしょう?」
「……なるほどね。そしてクロスベルは最近建国されたばかりの国家で、建国してすぐにエレボニアとの戦争に突入したから、当然国際法に加入するなんて話は挙がっていないだろうから、現状クロスベルも国際法に加入していないだろうね。」
「そ、そんな…………それじゃあミュゼちゃん達は投降したミハイル少佐達を騙したってことになるじゃない…………!」
小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いて重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの話を聞いたトワは悲痛そうな表情でミュゼを見つめた。
「クスクス、”騙した”とは人聞きが悪いですわね。”ヴァイスラント新生軍は国際法を守っている”のですから、取引によってメンフィル・クロスベル連合に預けられた捕虜達がどのような処遇を受けるかについてまで、責任を負う義務はありませんもの。――――――それではわたくし達も失礼しますわ。」
「フッ……今回の戦争、内戦の時のような”甘さ”は通じない事を心に刻んでおくことだな――――――有角の若獅子達よ。」
トワの言葉に対して意味ありげな笑みを浮かべて答えたミュゼは揚陸艇へと向かい、ミュゼに続くようにオーレリア将軍もトワ達に声をかけた後ミュゼの後を追って行った。

「ったく、さすがお前の知り合いだけあって、まさに”類は友を呼ぶ”だな。」
「失礼ね。これでも彼女よりは良心はある方だと思っているわよ?――――――それはともかく、数万手先を見極める、鉄血宰相にも劣らぬ指し手………彼女だったら”結社”の使徒すら務まるかもしれないわね。」
二人が去った後ジト目のクロウに見つめられたクロチルダは呆れた表情で答えた後苦笑しながら離陸し始めたミュゼ達が乗る揚陸艇に視線を向けて推測を口にした。
「ク、クロチルダさんにそこまで言わせる程凄いんですか、ミュゼちゃんの”指し手”としての能力は……」
「つくづくあのカイエン公の姪とは思えない人物だね。――――――それよりもリィン達やメンフィル・クロスベル連合の件で何か分かった事とかないの?」
クロチルダの推測を聞いて仲間たちとともに血相を変えたトワは信じられない表情で呟き、静かな表情でカイエン公とミュゼを思い浮かべたフィーは気を取り直してクロチルダに訊ねた。

「メンフィル・クロスベル連合はクロイツェン州の復興の件でまだ本格的な侵攻は中断しているようだけど……どうやらメンフィルの”本国”からの更なる援軍や物資が近日中に到着するらしくてね。それらが到着次第、本格的な侵攻を再開するみたいよ。」
「ということはエレボニア帝国政府による”焦土作戦”で稼ぐ事ができた時間もそれ程残っていないということですか…………ちなみにリィン君達の件はどうなのでしょうか?」
クロチルダの説明を聞いた真剣な表情で考え込んでいたアンゼリカは話の続きを促した。
「公女の話によると、リィン君達の部隊は近々先行部隊として既に到着していたメンフィル本国からの援軍の部隊と合流して”本隊”とは別の軍事作戦が行われることになっているとの事よ。――――――最もその軍事作戦がどのような内容で、合流する先行部隊の詳細等については公女達もまだ知らされていないそうだけどね。」
「そうですか…………」
「リィン君達の件は気にはなるが今は黒の工房の本拠地の捜索に集中すべきだね。」
「……だな。――――――そんじゃ、さっさと楔を打ち込んでオルディーネ達を呼び寄せてエリンに戻ろうぜ。」
リィン達の事を知ったトワが複雑そうな表情を浮かべている中静かな表情で提案したアンゼリカの言葉に頷いたクロウはトワ達に促した。
(クスクス…………リィンお兄さん達がこれから行う予定の軍事作戦の内容を知ったら、Ⅶ組―――特に”紫電”はどんな反応をするのでしょうね?――――――何せ”リィンお兄さん達の次の軍事作戦によって北の猟兵達は皆殺しにされることになるのだから。”)
一方その様子を見守っていたレンは不敵な笑みを浮かべていた。

その後、”特異点”に楔を打ち込んだトワ達はクロチルダに見送られてオルディーネの”精霊の道”によってエリンの里へと帰還した――――――

 
 

 
後書き
というわけで今回の話でラマール編は終わりで、予告している外伝となるリィン達とジェダル達の活躍予定の内容はもうわかったかとwwそれとエウシュリー新作、今度はまさかの天使ヒロインが多数かつ睡魔がメインヒロインっぽいですから、楽しみですねww……ただ戦女神3orリフィアを主人公にするかつリウイ達が登場する幻燐シリーズの続編は一体いつになったらだすんでしょうねぇ~~~~(ガックシ)
 
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