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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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069話 文化祭編・開催3日目(04) 謎のエミヤの真実と決着

 
前書き
更新します。 

 
side 衛宮士郎



俺は今、誰も近寄りそうもないどこかの屋上で謎のエミヤと対峙していた。
その当の謎のエミヤは無言で立っていて俺を干将莫邪を構えながら牽制している。

「■■■……」
「お前は、俺、なのか……? アーチャー……いや、エミヤ……」

俺はそう問いかける。
しかし、まだ叫ぶほどでもないが、謎の唸り声を発していて、会話にならないし、本当にバーサーカーなのでは?という疑問に晒される。

「お前が、なんでそこまで俺に執着するのかは分からない…。だが、ネギ君達の手伝いの邪魔をするというのなら早々にご退場願おうか」
「……■ギ……?」

そこで初めてまともらしい返答を聞けたような気がした。
もしかして奴もネギ君の事を知っているのか…?
だが、次の瞬間に謎のエミヤから黒い感情が噴出しだしてきたので何事かと思う。

「…■■……ネ■……■ギ……ナ■……ッ!! ■■■ーーーーーッ!!」

その叫びはまるで怒髪天を突くかのような強烈なもので、ついには俺に殺気に似たなにかの圧をぶつけてくる。
そして深く腰を落としていつでも駆けだせるような態勢になり、

「……わかった。存分にやり合うとしようか! エミヤ!!」
「■■■■■ーーーーーッ!!!!」

そして始まる殺し合いという殺陣。
奴は干将莫邪をまるで鈍器を扱うかのように振り回してくる。
俺はそれをいつもの構えで迎撃するようにしている。
バーサーカーという気質を放っている通り、まるで隙だらけの攻撃の連続。
受け流すのは容易いだろう。
だが、そう簡単に事は運ぶわけでもなく、

「■■バー…エ■ジ!!」

そう言葉を発した瞬間、やつの干将莫邪は強化形態のオーバーエッジになった。
力で押し切ろうという魂胆か?
これほど戦術というものがない戦いをする相手というのも初めてだな。
今まで相手をしてきた敵はなにかしらの余裕や考えがあった。
あの、聖杯戦争のバーサーカーですらさえ姉さんのいう事を狂化されながらも、それでも強烈にしかし力強く戦っていた。
だというのに、今の奴は俺達投影魔術師の強みでもある戦術眼がまるでない。
さらには、あちらはどうかは分からないが、俺の干将莫邪は全て遠き理想郷(アヴァロン)を取り込むことによって、存在強度、そしてそのものの概念すらも強化されている。
だから結果は、

「ほら!」
「■……ッ!?」

俺が振り下ろした干将によっていとも容易く強化されているはずの干将莫邪も簡単とはいかずとも破壊できる。

「お前にもなにかしら強みはあるであろう。しかし、俺とてこの世界に来てからも修行はしてきたんだ! だから貴様に負けてやる道理もない!」

そう言って干将莫邪が砕けてしまい、投影もすぐにしないでがら空きになっている奴の顔の仮面めがけて莫邪を振り下ろした。
おそらく、あのスクナもどきと同じでその仮面に何かしらの細工が仕組まれているのだろう?
それを砕けばもしかしたら機械化されているであろうとカットされているエミヤの意識は取り戻すかもしれない。
だが、やつの反応速度の方が少し速かったらしく、仮面の右側だけを切り取るだけに留まった。
それでも、それでエミヤの右目だけが露出した。
しかし本来俺の瞳は投影の酷使で銀色に変色しているはずだというのに、このエミヤの瞳は金色に光っていてどこか機械的な感じも見て伺えた。
超のやつ、まさか脳内までも機械に改造しているわけではあるまいな……?

そんな俺の心配もよそに、おそらく制御装置であったのだろう仮面が多少ではあるが壊れた影響もあってか奴は頭を手で押さえて苦しみだしていた。

「■■■……ッ!!」

…………さて、こんな惨めな姿の奴をこのままにしておいても精神衛生上大変よろしくない。
さっさと楽にしてやるか。
そう思い莫邪を振り下ろそうとしたのだが、



―――ギンッ!


「なに……?」

なんと、振り下ろしたのにかかわらず今度は自意識があるかのように即座に投影していた剣で防いでいた。
それだけならまだよかった。
だが、次の瞬間俺の脳裏に電流が走ったかのように何かの光景が連想されていく。
なんだ、これは……ッ!?
こんな現象は初めてだ!
激しい頭痛がしだしてくる。
そしてそんな俺を意に介したのか謎のエミヤはスッと立ち上がってその金色の瞳を光らせながら無表情で何度もキレのある剣戟を俺に叩きつけてくる。

「くっ!?」

激しい頭痛がする中でなんとか受け止めはするが、それでも剣を打ち付けるたびになにかのビジョンが頭の中に流れてくる。
そしてなんとか鍔迫り合いにまで持ち込んだ瞬間だった。







俺の意識は違う場所に飛んでいた。
まるで過去を見せられているかのようにイメージ映像が視覚を通して脳内に流れていく。
そこにはまほら武闘会で見たネギ君の父、ナギ・スプリングフィールドの姿が映っていた……。





◆◇―――――――――◇◆



士郎が今見せられているのは恐らくこの謎のエミヤの過去の光景なのだろう。
士郎は体を動かそうとしてもまるでエヴァの誰かの夢を覗き見るかのような感覚を味わい、ただただ見せられていた。
映像の中でナギは、

『……よお。俺の無茶苦茶な召喚儀式で呼ばれてきたもの好きな正義の味方は誰だ…?』
『…………』

どうやらナギがエミヤを召喚したのだろう光景が映し出されているのだが、士郎はそれを見て思った。

(魔法陣も滅茶苦茶で適当なものでサーヴァントを呼んだっていうのか……? エヴァに施した登校地獄といい、ナギという人物はどうやら力押しが性分みたいな奴なんだろうな。理知的なネギ君とはまるで正反対だな……)

『…………』
『なんだよ。黙りこくって……少しは喋ったらどうだ……?』

だが、召喚されたはずのエミヤは口を動かしているだろうが、言葉になっていなかった。
どころか、ナギの滅茶苦茶な召喚で下半身が腕も含めて透けていて使い物にならない状態であった。

(あれではなんとか念じて投影すればできるだろうが、戦いに関しては絶望的だろうな……)

士郎はその光景を見て思わずそう感じていた。
正式にサーヴァントを呼ぶ呪文も知らないで下級の英霊とはいえ、それでも世界の守護者であるエミヤを呼んだ代償はやはり大きかったようだ。
ナギはそれで仕方がなく読唇術を使用してエミヤが発したい言葉を読んでいた。

『……なるほどなぁ。さすがの俺でも英霊クラスを呼ぶとなると中途半端になっちまうって訳か。すまねぇな、エミヤ。お前をうまく使いこなせそうなマスターじゃなくてよ…』

そう自身を皮肉るナギであったが、それでもエミヤは喋れはしないが言葉を紡ぎ、一言『気にするな』と言った。

『そっか……しかし、どうすっか。少しでも戦力が欲しかったんだが戦えないんじゃ仕方がねぇしな』

というナギに対して、エミヤは『必要な武器は投影する』と言った。

『そうは言うがな、お前さんの武器でも通用しないかもしれねーぜ? 俺達の戦っている相手は…ライフメーカーっつう奴なんだが、あと一歩のところなんだぜ』

ナギは笑みを浮かべながら、そう語っている。
それを聞いていた士郎は、

(ライフメーカー……? そいつがナギさんが倒そうとしている敵…。そしてそのためにエミヤを召喚した…?)

記憶の中でエミヤは『それでも世界の敵なのだろう…? ならば私の力は役立てられるはずだ』というが、

『いんや。お前さんはいざって時のためにここ麻帆良に封印することにしたわ。もしかしたらお前さんを俺よりもうまく扱える奴が現れるかも知んねーしな。
…………それより、少しだけだが俺の話を聞いちゃくんねーか? 俺には“アリカ”っていう……まぁ、どっかの国のお姫様って認識してくれ……そいつとの間にネギっていうガキが生まれたんだ…。きっと容姿は俺に似たんだろうが、性格は姫様の方にいくんだろうなって思うが、まぁいい』

ナギはそう言って言葉を切り、

『いつか、奇縁で機会があるんならネギとも会えるかも知んねー。分からんが…。
そん時はネギの力になってやってくれ…。きっと、俺はきっとおそらくライフメーカーとの戦いで……』

それ以上は言葉にはしないが、それでもなにかが伝わったのだろうエミヤは険しい顔になる。

『まぁ、なんだ…。呼び出しておいてたまったもんじゃねーとは思うが、封印させてもらうぜ? 未来を頼んだぜ、エミヤ…』

ナギはそう言ってエミヤを強引な術式で麻帆良の世界樹に封印した。
そこで一回、エミヤの意識は暗転する。







…………


…………………


…………………………



しばらくの眠りについていたエミヤだったが、ふと意識が浮上する感覚を味わう。
目を開くとそこにはシニョンが似合う少女、超 鈴音の姿が映されていた。

『……うむ。考えなしで封印を解いてしまたが、なにかの幽霊?カナ…?』
『…………』

それで再度エミヤは語りかけようとしたが、

『あいや。あいにく読唇術は苦手な部類ネ。でも、なにか伝えたいのかはわかたよ。こういうのもなんだが、自由に動ける体が欲しいネ?』
『…………』

それに無言で頷くエミヤ。
だが、それは超の術中に嵌ったとも言える。

『わかたネ。でも、何の存在かわからないものを自由にさせておくのもアレネ。かわいそうだとは思うが私と出会てしまた自身の運の無さに泣くといいネ』

しばらくして霊体であるはずのエミヤの魂と体を機械の体で覆っていき、最後に自由意志を奪うための仮面を付けられる。
それで内面で抵抗はできても超に従う道具となり果てた。








…………それから少し経過して、少し顔が強張っている超が姿を見せて、

『驚いたネ…。まさか君の正体は世界の守護者で名を『エミヤシロウ』というネ。合ってるカ…?』

内面でなぜそれを?と思うエミヤだったが、この世界にまだ生きている方の衛宮士郎がイリヤとともにやってきたという話を聞かされて、自由に動けないにしてもなんとか抵抗した結果、

『分かた分かた。君はエミヤ先生と戦いたい。それでOKネ? 茶々丸の記憶データを見させてもらたから君とエミヤ先生の間の確執もなんとなく分かるヨ』

なにを知った風な口を……と思うが言葉に出せない悔しさが記憶越しに伝わってきて、思わず士郎は、

(本当に超はある意味すごいな……。エミヤをここまで服従させてしまうなんて……。)

『機会は作るネ。そこで君の想いをエミヤ先生にぶつけてくるがイイサ』

超のその言葉とともに意識は次には、初めて士郎と対峙した時まで移されて記憶が終了する。
そしてそこまで来て士郎の意識は再浮上していき、



弾かれた。



「ぐっ!?」

尻もちをつくが、どうやら先ほどの鍔迫り合いからそんなに時間が経過していないのを周りの喧騒から察した士郎は、いま目の前で自壊覚悟でエクスカリバーを構えているエミヤを見て現実に引き戻された。

「■■■…………ッ!!」
「そうか……。お前は悔しかったんだな…。せっかく召喚されたというのに力になることができなかった不甲斐ない自身に対して…。俺に記憶を見せたのも、想いを引き継いでほしいのだろう……?」

そうエミヤに問う士郎。
それでエミヤは威嚇してきていても無言で頷いた。
士郎はあっていてよかったと思った。
もしかしたらエミヤの目的かもしれない『自分殺し』というのをしてくるかもしれないと思ったからだ。
だが、もうエクスカリバーを投影してしまったのか時間もそう残されていないらしい…。

「お前の想い…俺が引き継ごう……。だから、もう眠れ…」

そして士郎はあるものを投影する。
それは丸い球状の物体だった。
それを手の甲に合わせるように浮かばせて、


「―――――後より出でて先に断つもの(アンサラー)……」

それはかつて出会ったバゼットに見せてもらい解析した現代に残る使い捨ての宝具。
そのワードを唱えた瞬間に士郎の腕に玉から流れてくる紫電が走るが、構うものかと思いつつ、もうすでにエクスカリバーを構えて魔力が充填しているのか放つだけのエミヤに向けて標準を合わせた。

約■さ■た(■■ス)―――――勝■の剣(カリ■ー)ーーーッ!!」

極光がついに放たれてしまった。
こんなところで放てば街への被害は甚大なものだろう。
しかし、それを打ち消すものをすでに士郎は投影していたために、最後のワードを言い放つ。

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!!」

それは後出しで相手の攻撃をキャンセルして迎撃の剣を放つある意味反則的な宝具。
そしてエミヤの放ったエクスカリバーはキャンセルされて、フラガラックがエミヤの心臓を貫いていた。
やられたのだという自覚がエミヤの中に生まれて、そこで初めて笑みを浮かべつつ、







「衛宮士郎……。ナギと、ネギという息子の事を……頼んだぞ……」
「お前に言われるまでもない……。ネギ君の助けには必ずなってみせる」
「ふっ……では、そろそろお役御免のようだな…。理想を抱いて溺死だけはするなよ…? イリヤも必ず守れ…さらばだ」

そしてエミヤはついに消滅したのであった。






◆◇―――――――――◇◆






違う場所でも、言峰と戦っていたランサーとイリヤだったが、エミヤが放ったひと際大きい輝きを横目にしながらも、

「さっきからなにかの体術をしかけてくるが、身体が溶けていっているてめぇの腕なんぞ俺に効くものか! さっさと退場しな!! 刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)ッ!!」
「ぐふっ!?」

ランサーに心臓を貫かれて言峰は体を急速に溶かせながらも、

「フフフ……私の腕もまだまだまんざらではないと思っていたのだがな……。まぁ、いい…いつかまた相まみえようか。ランサー、イリヤスフィール…」

そして完全に溶けて分身体の言峰はその場から消えたのであった。

「もう……嫌になるわ。またコトミネと戦う羽目になるって考えると…」
「ちげぇねー……まるでゴキブリだな」

嫌そうな表情を二人とも隠そうとせずにそう呟いていた。
そんな時に、先ほどの光が放たれた方をランサーは見て、一言。

「士郎もなんとかなったみたいだな。どうやらあの小僧の救援にいくみたいだな」
「そう……(シロウ、気を付けてね)」

空が飛べない二人はもう観戦ムードに入ったのであった。



そして事態は最終局面へと入っていく。


 
 

 
後書き
決着がつきました。
謎のエミヤの事もなんとか解決しました。

あ、話は変わりますが、月詠の苗字って『(いわい)』って名前だったんですね。
なんとなく調べたら分かって安堵しました。 
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