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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第二百四十四話

 
前書き
家のWi-Fiが死んだ…。にじさんじ欠乏症で腕が震える…くそっ…やっぱりにじさんじはクスリだったんだ。 

 
「もう1つ………いや、一人だけ見て欲しい子が居るの」

「………………やっぱりか」

'原作'に於いて、ラウラともう一人デザインベイビーが登場する。

出自は一切不明。作中で明かされたのは名前と使用ISの能力のみ。

作中では束さんの従者を務めていた、彼女の名は、確か…………。

束さんが席を立つ。

向かった先は、通路を挟んで向かいの部屋。

同じく小部屋があり、仕切られたガラスの向こうには一本のカプセル。

その中の少女は、ラウラにも円香にも似ていた。

「彼女は?」

「『ラウラ・ボーデヴィッヒ』の初期ロットの1号。って言えば分かる?」

「ああ、うん。だいたいわかった」

束さんがホロウィンドウをフリックしてこちらに渡した。

ローレライ計画のレポートの一部のようだ。

彼女は一番始めのクローン体に姉さんの塩基配列パターンを複写した結果生まれた存在。

「Loreley Klon Erst……呼び名はエアストか……」

データを読んでいて気になる点が幾つもあった。

「この子、目が………」

「うん…失明してるみたいだね。原因はナノマシン。
試作品の…それこそ開発途中のヴォーダンヴォージェの試験に使われたみたい。
ナノマシン自体も起動できてないね」

「他の子は?」

「ローレライは半分以上、かな。中には胎児の状態から投与して定着させようとしてたのもあったよ。その結果は半々」

「チッ……」

神にでもなったつもりかよ…。

溶液に満ちたカプセルの中の彼女は黄金の瞳を見せることはなく、ピクリとも動かない。

……………………動かない?

束さんは彼女を"一人"と言った。

ならば魂があるはずではないのか?

「束さん? この子はどういう状態なの?」

「さぁね」

さぁねって………。

「忙しくて彼女の状態を確認できていないんだよ。
極秘とはいえ軍の施設とかFTのラボとか20くらいは潰したんだから。
その後始末とか、ここの受け入れ準備整えたりね。
安定化作業の設定とか諸々終わらせてから魂の有無を全部確認して………。
この子をこっちの部屋に移したのもついさっき」

「お疲れ様」

「でも面倒なのは確かだよね……。 私じゃフォールドリングは使えないから、精神ダイブには大掛かりな装置を準備しないといけないし」

「コア使えばいけるんじゃないの?」

「うん……出来なくはないけど……」

ん? なんか歯切れが悪いなぁ。

「私は他人の心に触れられるほど器用じゃないから」

「そんな事無いと思うんだけどなぁ」

右の人差し指にフォールドリングを量子展開して、ホロウィンドウを弄る。

カプセルが徐々に傾き、やがて水平になった。

こぽぽぽぽ……と溶液の水位が下がる。

半分ほどの水位になった辺りでカプセルの蓋を開ける。

隣に簡易ベッドを展開して、その上に彼女を寝かせた。

けっこう体大きいな…。

140はある…。

………………これだけ成長した時間の全てを、彼女はシリンダーの中で過ごしていたのか。

「束さん、注射器」

「正気?」

「勿論。この子を目覚めさせる」

束さんから受け取った空の注射器を自分に刺し、シリンダーを引く。

注射器が血で満たされていく。

最大まで引いた注射器を抜く。

それを彼女の腕に刺す。

彼女の中に吸血鬼の血が入っていく。

闇や陰ではあるが、生命エネルギーの満ちた血だ。

それに加え、少し残しておいた血を閉じた瞼の上に落とす。

「これで肉体魂共に十分なエネルギーで満たされたはず……」

部屋に備え付けの椅子を持ってきて、腰掛ける。

「始めますか……」

リングを嵌めた右手で彼女の右手を握る。

溶液に濡れてはいても、その手には確かに生の暖かみがあった。

目を閉じ、コアのシステムを起動する。

全身から力が抜け、肉体と意識の繋がりが微かな物になる。

階段を一段一段降りるような、それでいて自由落下のような感覚。

落ちた先は薄暗い世界だった。

数十メートル四方の空間。

「これは驚いたな」

どこかの大学の研究室のような一室。

いちいち物が大きい。

俺の数倍はありそうな椅子。

ビルみたいな机。

しかし各部のディテールはのっぺりしており、動きそうもない。

そんな世界に俺以外にもう一人。

「こんにちは。Herr Perfekt」

「からかわないでくれ妹よ」

俺の数倍の大きさの椅子の縁に腰掛ける影。

人の形をした黒い何か。

それが彼女の己の認識。

きっと自分の姿を見たことがないのだろう。

そして、自分以外の存在も。

「この世界は、記憶の中の世界か?」

「はい。ヴォーダンヴォージェを打たれる前の、微かな記憶ですよ」

「………話せるんだな」

「聞こえてはいましたから。私は何一つ能動的に動くことはできなかった。
でも受動的な行動ならば幾らでもできた
今は見えないけど、聞くことはできた」

彼女が椅子から飛び降りる。

ふわり、と水中を泳ぐように降りてくる。

その黒い影に歩み寄る。

「お前をこの部屋から連れ出す」

「はい」

「お前がいったいどれだけの時をここで過ごしたかは、俺には想像もできない。
お前は出たくないと願うかもしれないが、連れ出す。これは俺の勝手だ」

黒い影の手を握る。

曖昧な、水を掴んでいるような感触。

その手を引き、抱きしめる。

「世界へ!」














意識が浮上する。

カチリと何かが嵌まるように、肉体と精神の繋がりが確立された。

………………背中がやわっこい…。

「束さん、器用だね」

束さんが俺を膝の上に乗せていた。

しかも意識が無いのをいいことに、耳やら尻尾やらを弄りまくっている。

「でっしょー?」

まぁ、それはいいとして…。

握っていた彼女の手が微かに動いた。

彼女が瞼を上げ、黄金の瞳が顕になる。

「おはよう。妹よ」

「……ぉ…は…ござ…い…ます」

「無理しなくていいぞ?」

「い…え…だいじょ…ぶ…です」

「目は見えるか? 体は痛くないか?」

吸血鬼の血というエリクシルを打ったとはいえ、今まで一度も動かなかった体だ。

しかし俺の心配を他所に、彼女は手をついて体を起こした。

「………」

彼女は自身の手をじっと見つめる。

握ったり開いたり。

「…動く」

「おーい? あんま無理すんな?」

「大丈夫です。動かし方も、話し方も、わかります」

以外と流暢だなと思ったが、円香もそうだった。

……吸血鬼の血万能すぎない?

副作用やべーけどもさ。

「えーと…あとやらなきゃいけないのは…えー…ヴォーダンヴォージェをいったん除去して…気功と……えー……あとは部屋と………ふきゅ?」

これからやることを考えているとポンと上から束さんにつつかれた。

「先ずは服でしょ?」

「あ、うん」

円香の予備の服を出す。

「はいこれ。取り敢えずパンツ。上何がいい? ワンピース? シャツとズボン?」

と聞くと彼女は首を傾げる。

そんでもって後ろから束さんに小突かれた。

「いっ君。出てって」

「え?」

「いいから、出てけ。もうちょっとデリカシー持とうか」

「………わかった」

たぶんパンツ手渡したのがダメだったんだろうなぁ。

「じゃ、俺はあっちの部屋居るから束さんあとよろしく」

束さんの膝から浮き上がり、部屋を後にした。

side out











「はぁ…。君はわかんないだろうけど、あれは普通じゃないからね」

束が手を伸ばす。

「くーちゃん、こっち来て」

「?」

「君の名前はクロエ・クロニクル。クローン・エアストだから縮めてクロエ。
そして君から全てのローレライが始まったが故にクロニクル。
こじつけだけど、いい名前でしょ」

「はい。わかりました」

束が己の手を掴んだクロエを引っ張る。

ふわりと体が浮く。

それと同時に、束の着ていた服が消え去る。

ぽふん、と束の胸にクロエが飛び込む。

「?」

「君は生きている。ここに居るのは君を産み出した科学者達が居たからだ。
だからクローン・エアストというコードを否定しない。それも含めて君だから」

束がぎゅっと円香をだきしめる。

「どう?」

「どう、とはどういう意味ですか?」

「暖かいでしょ?」

「はい」

「くーちゃんも暖かい。生きてるから」

side out











「……………………………束さんすげー」

クローン達のヴォーダンヴォージェ除去オペレーションやらを進めながら隣の部屋をマルチスコープで覗いていると、束さんとクロエが抱き合った。

それにしても、クロエ・クロニクルか。

やっぱりそうだよなー。

「いっか…今考える事じゃないか」

二人が抱き合ってる光景をああいいなぁとか思いながら、作業を続けた。
 
 

 
後書き
正直、ラウラとマドカのクローン達の扱いは迷ってました。でもこういう形が一番いいと私は思ったのです。
それはそれとして手の震えが止まらない。 
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