星河の覇皇
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第七十三部第四章 風雲急その二
「だからだ」
「見ていることですか」
「まずはな、ではだ」
「細部まで見ていることですか」
「研究してな、戦史研究課の仕事か」
エウロパ軍の中のというのだ。
「これは」
「主にですね」
「おそらく学ぶことが多い」
その戦史研究課の者達はというのだ。
「彼等にとってもな」
「そして我がエウロパ軍にとっても」
「そう思っている、君達もそう見ているな」
「はい」
プロコフィエフは否定せずに答えた。
「そう見ています」
「やはりそうか」
「はい、この戦争もです」
「大いに学ぶところがあるな」
「間違いなく」
「ではだ」
「はい、この戦争につきましては」
「国交がない為観戦武官は送れない」
このことはエウロパのネックだった、国交がない相手には武官を派遣することも出来ないからである。これは文官も同じだ。
「だからそれは出来ないが」
「しかしですね」
「サハラでの戦争ではそうしてきたが」
「いつも通りですね」
「これまでのサハラでの戦争でそうしてきたが」
「マウリアからですね」
ここでこの国の名前を出したのだった。
「情報を提供してもらいますか」
「そうなる、マウリアから教えてもらおう」
「そうしますか、そしてそのことについてですが」
「総統閣下がだな」
「はい、あの方が仰っています」
国家元首即ち彼等の最高司令官である彼がというのだ。
「出来れば我々もです」
「マウリアの協力を得てか」
「はい、マウリアの軍人ということで」
この表向きでというのだ。
「ある程度肌や髪の毛の色素を変えて」
「そうしてか」
「幸いマウリア人はコーカロイドです」
上位のカーストの者はだ、これはアーリア人がインド亜大陸に入ってからのことだ。彼等は元々白人だったのだ。
「ですから」
「それでだな」
「薬物で色素を増やし」
この時代ではこうした変装技術もある。ただし捜査でそうした薬物の変装は見破ろうと思えば見破ることが出来る。
「そのうえで」
「マウリア軍の武官に変装してか」
「その目で観戦し」
さらにとだ、プロコフィエフは話を続けた。
「サハラの現状もです」
「その目で見るべきか」
「そう言われています」
「そうか」
「長官はどう思われますか」
「そこまでお考えとは」
ギルフォード、彼がというのだった。ここでまずは。
「思わなかった」
「総統閣下が」
「そうまで思った、しかしな」
「よいお考えですね」
「知ることには貪欲でなくてはな」
「戦争もですね」
「勝つことは出来ない」
まさに敵を知り、だ。タンホイザーも軍人であり敵を知ることの重要性は熟知しているのだ。そのうえで敵と戦っているのだ。
「敵を知り戦場を知る」
「そうしてこそですね」
「戦場の状況はその都度変わる」
タンホイザーの中にある確かな考えだ。
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