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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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055話 文化祭編・開催2日目(02) まほら武道会・本選開始 その2

 
前書き
更新します。 

 


さて、次は古菲と龍宮の試合か。
体術が武器の古菲はともかく主に銃器関係を取り扱う龍宮はなにを出してくるのやら…。
そう考えているうちにネギ君から「古老師!!」やら「龍宮隊長!!」という叫びがあがる。
…しかし古老師はともかく隊長とは…? 思わずツッコミそうになるのを耐える。
そして龍宮は「隊長はやめよう…」と少し汗を流しながら先に舞台に上がっていった。
古菲はまだ待機席に残っていてネギ君達と会話をしている。
しばらく話が続いて終わったのか俺の方に近寄ってきた。

「士郎老師!」
「やぁ古菲。先ほどネギ君にも聞かれていたが龍宮に勝てる見込みは?」
「難しいアルな…士郎老師だったらなにがくると思うアルか?」
「…暗器が妥当だろうな。あのいかにも中にはギミックがたくさん詰まってますといった感じのコートが気になる。とりあえず俺から言うことは一つ、油断せずに全力でいけ。古菲はまだこちらに入りたてなのだから実戦を生き抜いてきた龍宮はなにをしてくるかわからんからな。実際俺もその場で使えるものはただの木の棒でさえ使った事がある」
「うむ、わかったアルよ。助言感謝感激アル♪」

そう言って古菲は遅れて舞台に上がった。
そこで朝倉の実況が響き渡る。

『お待たせしました!! お聞きください、この大歓声! 本日の大本命、前年度「ウルティマホラ」チャンピオン!! 古菲選手!!』

それと同時に観客が一斉に騒ぎ始めて主に格闘家達から「菲部長―――!!」という熱狂的なファンの声も聞こえてくる。

「やはり古菲は人気が高いな…」

そう一人呟きながら朝倉のマイクによる叫びに似たアナウンスを聞く。

『そして対するは、ここ龍宮神社の一人娘!! 龍宮真名選手!!』

二人の名前が挙がり終わった時には既に二人から魔力とは違う気のようなオーラが沸きだっていた。
そしてまだ開始されていないのか会話をしている。

「……いいのか? ここで私に負ければお前のファン達がガッカリするぞ?」
「 “我 只 要 和 強 者 闘(私が望むのはただ強者との戦いのみ)”…名声にこだわりはないアル。それより真名、手加減などするでナイヨ?」
「無論だ。もとより戦闘における私の選択肢に手加減などというものはない」

それで会話は終了しさらにお互いオーラが上がる。
そこにやっとというべきか朝倉が『それでは、第四試合…Fight!!』という言葉を上げた。
そして古菲は構えを取ろうとしたがふと龍宮の手に目を向けた。そこにあったのは…

「500円の硬貨…?」
「え? どうかされましたか士郎さん?」
「いや、刹那…まさかとは思うが龍宮はらかん―――…」

と、俺がすべて言い終わる前に開始同時に古菲は突如“パンッ!”という鈍い音とともに体を後ろに仰け反り、舞台に倒れ、転がり、そのまま動かなくなった。
朝倉の『さあライフルの名手という龍宮選手。チャンピオンを相手にどう戦うのか……』という言葉が言い終わる前に古菲は吹き飛ばされていたのだから相当の早撃ちだったようだな。
観客はいきなりの事に騒然となり静まる。

『こ……ここ、これは一体――ッ!? 開始早々、突然古菲選手が吹き飛んで……!?』

という朝倉のアナウンスにより観客も含めて騒ぎ出し始めた。
そこにネギ君の「古老師!!」という悲鳴じみた叫びがあがる。

「…士郎さん、先ほどの続きですが“羅漢銭”で間違いは無いですか?」
「そうだな。しかしいきなり頭部直撃は痛いな。なにかの暗器は使うと見ていたがまさか硬貨を使ってくるとは…」

そこで解説の席で豪徳寺薫というリーゼントの不良っぽい生徒から羅漢銭の説明が入り茶々丸もそれに対応している。
そして朝倉が解説をすべて聞き終わると理解したのか、

『優勝候補、トトカルチョ人気№1の古菲選手からあっさりとダウンを奪いました!! 無名の“羅漢銭”龍宮選手、強い!!』

そういいながらもカウントを取る辺りはしっかりと仕事をしているなと感心しながら、

「だが古菲もただやられていただけではないな」
「ええ。当たる直前に後ろに跳んで衝撃を緩和していましたからそれほどダメージはないでしょう」
「…む、立ち上がったか。さてここから本番だな。しかし…龍宮よ。お前はその腕に500円の硬貨をいくつ仕込んでいるんだ? 今見た限り袖の中から一気に20枚は取り出したぞ」
「後で回収でもするのでしょうか…? それはともかく龍宮の奴、あれを連射する辺り相当仕込んでいそうですね?」
「ああ。なんとか古菲は避けきれているが反撃の手を掴めないでいる。これは苦戦しそうだな…」
「士郎さんはすべて弾くか掴むという大胆な行動をしそうですね?」
「よくわかったな?」
「士郎さんの事ですから、最近はもうそれくらいでは驚かなくなってきたので…」

そこにアスナがおずおずと話しかけてきたので「なんだ?」と返事を返した。

「あの、二人ともー…? 真剣な顔をしながらなにさりげなくとんでもないこと呟いているのよ?」
「あ、アスナさん。別になにも特別な事ではないですよ? 実際私が模擬戦で放つ暗器の類はすべて士郎さんは掴んで逆に使われてしまう事がザラですから」
「…シロウサン、アナタハニンゲンデスカ?」
「棒読みで喋るな…落ち込むから。それに古菲も裏の修行を積めばそれくらいできるようになるぞ? それよりそろそろ試合に集中しよう」

そして黙って見学をすることになり見ているが龍宮の連射もすごいがそれをまだ一般人レベル(表世界では最高レベル)の古菲が避けるのもまた凄い光景だ。
『す、凄まじい攻撃!! 羅漢銭の連打。まるでマシンガンのようだーーっ!』という朝倉の言葉どおり、まるでマシンガンのごとく古菲が避けた硬貨は地面を削っていく。
しかし古菲はこのままではジリ貧だと思ったらしい。
「ほいっ!」という掛け声とともに呼吸を整え立っていた場所から瞬時に龍宮に接近した。
そして肘鉄をしたがそれはいとも容易くかわされた。だがそれで終わりではなくすぐさま体制を変えて龍宮の腕を掴み、懐に入り込んだ。

「やった!! 接近戦!!」
「今の瞬動か!?」
「いえっ、あれはおそらく八極拳の活歩という……」

ネギ君達が古菲の接近におおいに盛りあがっているところ悪いと思ったが、

「―――いや、判断を誤った。もっと慎重にいくべきだったな」

俺の静かな声に、でも全員は振り向きすぐさま古菲の方を見た。
そして龍宮は言った。
曰く、

―――私に苦手な距離はない

と、同時に古菲の顔の下から覗かせた一枚の硬貨によってまるで古菲は人形のように空に打ち上げられた。
周囲はどよめき、ネギ君達も騒ぎ出す。
しかし気にする素振りも見せず龍宮は手を抜かず立ち上がろうとした古菲の体の追撃としてあちこちに硬貨をぶつけていく。
それによって次々と痛手をもらう古菲に周囲から非難の声が聞こえるがやはり龍宮は力を緩めない。
そしてついに横になって古菲は倒れてしまった。
さすがの古菲ももう諦めの目になっている。
…どうやら負けを認めようとしているようだ。
しかしそこでネギ君から、

「くーふぇさん! しっかりーーッ!!」

という激励の声とともに古菲の目に再び光が宿る。
そしてネギ君以外の観客、選手ともに続いて声を上げだす。
…完全に悪役だな、龍宮。
そこでとどめとばかりに龍宮は硬貨を打ち出したがそれは突如すべて弾き落とされた。
なにが起こったかというと古菲は腰につけていた長めの布を使いすべて弾いたのだ。
さすがの龍宮も目を見開く。
それが油断に繋がり古菲は布を自在に、まるで蛇のようにしならせて龍宮の腕と顔を同時に拘束した。

「フフ……ようやく捕まえたアル……弟子の前で情けない姿は見せられないアルヨ」

古菲はそういって額から流れる血を舌で舐めながら言い切った。
思わぬ逆転だな。あれはただの布ではないと思っていたが最後の切り札みたいなものか。
まるでマグダラの聖骸布……………考えるのをよそう。頭の中に“…ゲット”という単語が響く。
それはともかく、

「古菲はアレを最後の手にするようだな」
「ええ。もうまともに体を動かすことはできないでしょうから…」

俺の呟きに律儀に返してくれる刹那に感謝しながらまた目を向ける。
すると巻きつけられた布はすぐさま龍宮によって硬貨で破られた。それによって周囲がまたざわめく。
だがそこで終わりではないらしく古菲は布をしならせてまるで腕の延長線のように打撃を叩き込む。

「布の槍!!」
「おおおっ、珍しいモンを!!」

と、ネギ君と小太郎は驚きの表情をしていた。

「布槍術か…俺もたまに使う事があるが古菲が使えたとはな。だが隙は大きいな。龍宮は避けると即座に硬貨を打ち出してカウンターを決め込んでいるからまったくといっていいほどダメージを与えきれていない…」
「そうですね。ですが致命傷だけはしっかりと避けるところ古もなにか考えがあるのでしょう。なにかを狙っているようです」
「あのさー…士郎さんと刹那さん、解説席に座った方がいいんじゃない? あのリーゼントなんかよりよっぽど向いていると思うわよ?」
「「いやいや…いざ解説となると―――……」」

アスナの言葉に反論しようとしたら、そこで俺と刹那の言葉が重なる。そしてまたもや「む…?」と同時に首を捻ってしまった。

「…さすがパートナーね。息もピッタリだわ」
「「………」」

反論の言葉も出ない。少し二人して落ち込みながらも舞台は最終局面に入る。
古菲の放った布が龍宮の腕に巻きつき一気に引き寄せられて龍宮も焦り顔になる。
さらにチャンスなのか古菲は布を捨ててしまった。かわりに拳を握り締めて両手に力をこめた。
最後に龍宮の胴に古菲は手を添えた。
龍宮も硬貨を地面に散ばせながらも一発古菲のお腹に硬貨を叩き込んだ。
それによって相打ちのような形になったが先に古菲が手を添えたままガクンと両膝をついて周囲が静かにざわついた。

「決まったな…」
「はい、古の勝利で…」

古菲が負けたと思っていた面々は俺と刹那に振り向いた。
だが俺は二人を見ろと視線を促がす。
瞬間、古菲の添えられた手から浸透頸によって衝撃が伝わり龍宮の背中の布地が盛大に爆ぜた。
そして龍宮は無言でドサッと地面に倒れてしまって動かなくなった。
一瞬の空白は朝倉のアナウンスによって塗り替えられた。

『ダウン!! 龍宮選手ダウンです!! カウントをとります。1……2……』

カウントなど不要だろう? もう見た限り龍宮は動きそうに無い。

『――10!! 古菲選手勝利ーー!! 龍宮選手を下し2回戦に進出です!!』

カウントは終了して古菲の勝利が確定し盛大に周囲が騒ぎ出した。
とうの俺たちも古菲の場所に向かっていた。

「古老師!」
「おお、弟子よ」

古菲は満身創痍でよろめきながらも、しかし格好悪い姿は見せられないという感じで平然そうに皆と向き合って話し合っている。

「スゴイです!! 龍宮さんに勝つなんて」
「いやー、どうアルかな? 何のかんのといって、真名は手加減してくれた気がするヨ」
「え、そうなんですか?」

元気に振舞っているが、俺が気づいていないと思ったか?

「はぁ~…それはいいが古菲。腕が折れているというのに次の対戦は難しいのではないか?」
「えっ!? え、えーと……何のことアルか?」
「嘘をつくのはよろしくない」
「そうやで?」

俺はおもむろに古菲の腕を優しく持つ。小太郎も便乗して突付いていた。
すると「あひぁいっ…!?」といった小さい叫びを古菲は上げた。これが決定打となったのか、

「ええーーっ! お、折れてるんですか古老師!?」
「いやーー、まーその……」
「大変じゃないバカッ! すぐ救護室にー!」

と、古菲は医務室に強制連行されていった。
「まだ大丈夫アルよー!」という叫びが聞こえてきて少し笑みを浮かべながらもふと舞台を見るとすでに龍宮の姿は消えていた。
タンカで運ばれているところは見ていない。
…と、いうことは一人で誰にも悟られないように消えたということか。狸寝入りもいいところだ。
…それに少し違和感を覚える。龍宮は手加減をしていたというより、むしろこうなる事をあらかじめ想定していたような…。そんな感じだ。
本来の彼女ならあのようにじわじわと責める性格はしていないだろう…。
これは、もしかしたら龍宮は超鈴音側の人間かもしれないな…。
俺はそう考え姉さんにその旨を念話で伝えた後、自然を装い遅れて救護室に向かった。


 
 

 
後書き
士郎と刹那語りが続きます。 
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