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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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044話 魔法世界での一時とネカネの片思いと…

 
前書き
更新します。 

 



──Interlude(1)


士郎とタカミチを送った後、アーニャと学園長は話しに夢中になっていた。

「ねぇねぇ! おじーちゃん! シロウさんてすごいわね! あんなものを作り出せる上にタカミチさんよりも強くて、しかも魔法世界のお偉い人達にも認められた鍛冶師なんだから!」
「そうじゃの。士郎殿には下げる頭も足りんほどじゃしな。のお、ネカネ…ネカネ?」
「…………」
「ネカネお姉ちゃん…?」

メルディアナ学園長とアーニャはネカネに話しかけたが返事は返ってこないことを不思議に思い、よく二人で顔を覗き込んでみると…。

「シロウさん…」

士郎の名を呟きながらまるで恋する乙女のような…いや、まさに恋する乙女の表情をして顔を赤く染めていた。
それを見て学園長とアーニャは、

「…駄目だわ」
「落ちたのう…」

二人して複雑な顔をしていたそうだ。



──Interlude(2)



その頃、麻帆良でも乙女の直感を素晴らしいほどにイリヤとこのかは感じ取っていて普段よりエヴァの修行では身が入っていたそうだ。
今にもイリヤはこの場に士郎を召喚して拿捕しようかと思っていたらしい。
…士郎、南無。



Interlude out──



タカミチとともにゲートをくぐった俺はおもわず呆気にとられてしまった。
そこは既に地球という枠から外れたまさに異世界…
地球では見られない建造物や、飛行船が空港内を飛び交っていてとても盛んなものだ。
そこでタカミチに声をかけられやっと現実に戻ってくると、

「士郎にとっては壮観だろう…まさにここは地球とは別離した世界だからね」
「ああ、確かに…それに俺達の荷物も細長い一つの小箱に納まっているというのだからさすが魔法世界といったところか」
「そうだね。さ、手続きしてさっさと向かうとしようか。ここを出ないとさすがの士郎でも魔術は使えないだろう?」
「いや、そんなこともないぞ。やはり構造が違うから影響はないらしい。それにもし封印されたとしても破ろうと思えば簡単にできそうだがな…」
「物騒な事は言わない方がいいよ?ここは監視も厳しいからね」
「了解した」

それで早速受け付けに行き荷物が入ったケースを受け取って手続きを済ませた。

「はい、これで登録は完了いたしました。タカミチ・T・高畑様に衛宮士郎様」
「ありがとう、いつもすまないね」
「ありがとうございます」
「いえ、仕事ですからお気遣いなく…それより高畑様、もしかして衛宮士郎様は今世界で噂の『鍛冶師エミヤ』でございますか?」
「そうだよ。今回はメガロメセンブリアの領主との顔合わせで士郎を連れてきたんだ」
「まぁ! そうだったのですか! 衛宮様、ぜひ握手してくださいませんか? 領主と直接会われるなんてとてもすごいことですから」
「あ、ああ…」

それで俺は接客対応の人と握手をした後、気恥ずかしくなりすぐに空港から出た。
そしてやっと一息ついて、

「はぁ…なぁタカミチ。今更だが俺はそんなにすごいものを作ったのだろうか?」
「当然だよ。瞬間的に魔法を切り払うアーティファクトなんてそうそうお目にかかれないし…
切れ味、強度もおそらく世界ではトップクラスのものだと僕は聞いているからね。あくまで試作の段階の話だけど…」
「おいおい悪い冗談だろう? では本作りをしたものは評価はそれ以上ということになってしまうのか?」
「おそらく、ね…いやぁ、領主の驚く顔を見るのが楽しみだよ。ところで士郎、もう体の方は大丈夫になったかい?」
「ああ。回復に魔力を集中させたから少しばかり魔力不足がちだがもう通常の動作は問題ない」
「そうか。しかしすごい回復力だ。鞘の恩恵はすごいね」
「まぁな。それとこれ以上はこの話は帰るまで禁止にしよう。さすがに気づかれたらたまったものではない」
「そうだね。それじゃこちらでも飛行船が手配しているはずだから行くとしようか」
「ああ」

その後、飛行船に乗って俺とタカミチはゲートの近くにあったメガロメセンブリアの街のさらに中心にある首都に向かい領主が待つ城まで向かった。
そこでもやはりタカミチは有名なようで歓迎を受けていた。
そして代表の間まで通されて色々身体チェックされていたがなんなく通された。
だが、やはり国の代表ともあり命が狙われる危険性もあるので何重にも張られた防御結界で間は封鎖された。
領主自身も顔は見せてくれないが先に送られていた俺の作成した武具達をえらく評価してくれた。

「これでさらに世界の安定と治安を守っていける事が出来ます。感謝しますよエミヤ殿」
「いえ、もったいなきお言葉…しかし自分の作成したものを評価していただき感謝します」
「いいですよ。それより契約のサインを致しましょうか。あなたほどの実力ある鍛冶師はぜひとも我が国の力になることでしょうから」
「…はい」

そして直々に契約のサインももらい俺はいくつか条件付きでメガロメセンブリア専属の鍛冶師の一人となった。
その条件というのは、タカミチ同様にまず人助けと職務を優先したいから依頼がある場合、時間がかかっても構わないかという物。
それに領主は快く了承してくれた。
さすがに俺のプライベート時間も裂かれたらたまったものではないからな。
どうやら隣にいるタカミチも誇らしげだが、しかしどうも俺はやはりこのような場は合わないと思った。
まるで魔術協会に突き出されているようで心を落ち着かせることで精一杯だったからだ。
その後も武具の説明などの資料を黒塗りの部分も多々あるが渡したり、何名かの鍛冶師からはどうやってこのようなものを作ったのか聞かれたが話すわけもいかないのでタカミチと一緒に「企業秘密です」と受け応えしておいた。
そして外に出るとたまっていた息を一気に吐き出した。

「どうしたんだい、士郎? やっぱり緊張したのかい?」
「ああ、まぁそれもあるんだが…ああいう場所はどうしても魔術協会と被ってしまいまるで死刑台に立たされている気分だったよ」
「あー…そうか。それは悪いことをしたかな?」
「いや、大丈夫だ。こちらでは魔法も隠匿されていないようだから投影を見せなければそうは捕まらないだろう。アーティファクトの力ともいっておけばそれで済む話だしな」
「そうか。士郎のアーティファクトは士郎の心象世界とリンクしているから何度でも武器を取り出せるんだったね」
「そういうことだ。さて、用は済んだことだしまだゲートが開くには後一日あるのだろう? これからどうする?」
「そうだね…観光でもするかい?」
「それもいいか。お土産を買っていくのもいいし…」
「よし、それじゃ…」

タカミチが話を切り出そうとした時、こちらでも使えるらしい携帯がなった。
それにタカミチは出てみると次第に真剣な表情になってきた。
そして携帯を切ると、

「すまない、士郎。観光は後でいいかい? 仕事が入った。どうも麻薬取引の現場をおさえたという話ですぐに向かって欲しいとの事だ」
「そこは…?」
「ここからちょっと遠い場所だ。転移ポートまで時間もかかるから士郎はここで―――…」
「水臭いぞタカミチ。“来たれ(アデアット)”…」

俺は『剣製の赤き丘の千剣』を発動してその上に乗った。
カードのオマケ効果で自然と俺の姿はいつもの聖骸布の外套を纏った姿に変化していた。まったく便利なものだ。
そしてタカミチに手を伸ばし、

「乗れ、これならすぐに向かう事が出来る。時速はおそらく先ほどの飛行船より早いだろう」
「士郎、ありがとう。では向かうとしようか。場所は僕が案内するよ」
「了解した。では飛ばすぞ!」

タカミチを乗せてすぐに千剣で空を駆けて、何度も飛行船を追い抜きながら目的地に向かった。
そして麻薬組織を壊滅する際に使った俺の固有技法『錬鉄魔法』―――結局、いい名が思いつかず姉さんとエヴァがこれに決めた(他の魔法使いにはこれで通せとのこと)―――で、
タカミチが使う『咸卦法』とともにたった二人ですぐに制圧したことから『最強コンビ』の名を轟かせてしまった。
その後、またいくつかの組織を制圧して観光は出来なかったもののなんとかお土産は買えたので良しとしてゲートを通り地球に戻ってきた。


◆◇―――――――――◇◆


そして帰りにまたお土産も持参してネカネさんのところに向かうとちょうどネギ君の手紙が届いていたらしく目を通していた。
タカミチには先に飛行機の手配でドネットさんと連絡を取っているらしいのでこの場にはいない。

「あ…あら、シロウさん。帰ってこられたんですね」
「ええ、領主との契約も済ませた後、いくつかタカミチと違法組織も制圧していて寄り道はしましたがね…それよりネギ君の手紙ですか?」
「ええ。今から見ようと思っていたんです。一緒に見ますか?」
「でしたら拝見させてもらいます」

それで俺もネカネさんの隣に座ったらなぜか顔を赤くしていた。熱だろうか?
それから映像が流れ出し、まずは挨拶から始まり日ごろの話などをしていてその中に中間テストの話題も出て俺は「ああ…」と相槌をした。
クラスは三位となかなか好成績だがアスナが最下位だという話になって、そこでやはりアスナがネギ君を取っちめようと飛び出してきたが間が悪い。
アスナも手紙越しで挨拶をしてまた日常の話になったが、

『そちらに今前に話したとても強い士郎さんが行っていると思うからお姉ちゃんも仲良くしてね。とてもいい人だから』

と、つい吹きそうになった。
ネギ君は今俺がこの手紙を見ていることは知らないだろう。
なかなかに気恥ずかしいことをいってくれる。

「ふふ…シロウさんはネギにとても信頼されているんですね」
「まぁ、なにかと騒動は起こしては助けていましたから…」

二人して苦笑いを浮かべた後、手紙を再生したがそこでネギ君の顔は少し真面目と言うか暗くなった。
それでなにかを言いかけたがやはり話すのをやめたのだろう。話を紛らわしていた。

『追伸、新しい友達が出来ました。コタロー君ってゆー子です。今度紹介するね。それじゃまた』

それで手紙が終了して終止元気そうなネギを見て顔を綻ばせていたが俺の方に向いて、

「…あの、シロウさん。ネギになにかあったのですか? あの子が私に隠し事するなんてそうそうないですから…」
「そうですね。話してもいいのか迷いどころですが…」
「構いません。もしそれでネギになにか言われたら私が庇いますから」
「別に言われるのは慣れていますから構わないですがありがとうございます。では…」

それで俺は直接ではないが知っている限りであの雨の夜の話をネカネさんに聞かせた。
悪魔の襲来で捕らわれたアスナ達…
皆を救いにいくために戦いにいったネギ君と小太郎…
そして真実の姿を現すヘルマンという悪魔…
そして昔の傷口を開かれて魔力暴走を起こしてしまったネギ君…
それから仲間の助けもありなんとか倒すことはできたがとどめは刺さなかったこと…
…すべてを話し終わったときにはネカネさんも顔を青くしていた。

「ネギにそんなことが…どれだけ辛い気持ちだったのでしょうか」
「…それは俺にはわかりません。ですがネギ君はそれを糧に成長したことは確かなことです」
「シロウさん…ネギのこと、まだお願いしてもよろしいですか? きっとネギは今心の中で泣いています。私もできればすぐに向かって一緒に泣いてあげたい…でもそれはできませんから」
「わかりました。俺なんかでよければいつでも…そうだ。ネギ君の携帯の電話番号を教えときます。これならいつでも会話できるでしょうから」
「ありがとうございます。あの、それでシロウさんのもよろしいですか?」
「ええ、いいですよ」

番号を書いた紙をネカネさんに渡したところでちょうどタカミチが戻ってきて飛行機の手配が済んだとの事なので俺はネカネさんに一礼してから向かおうとした。
だがそこで呼び止められて、「また、いつでも来てくださいね。歓迎します」と言われたので俺は微笑で「はい」と答えてタカミチの場所に向かった。



──Interlude(3)



士郎達を見送ったネカネは見えなくなるまで手を振っていたが、その後はもうすごいものであった。
まだ故郷に残っていたアーニャはとても顔を綻ばせているネカネを遠くから見て学園長にこう言葉を残した。

「ねぇ、おじいちゃん…ネカネお姉ちゃんを少しどこかに当分は閉じ込めておいた方がいいんじゃないの? このままだと狂喜乱舞までしちゃうかもしれないよ?」
「むぅ…そうじゃのう。検討しないといけないかもしれん。これでは授業にも支障をきたすかもしれん」
「お姉ちゃんをあそこまでしちゃうなんて…シロウさんってただものじゃないわよね。そのシロウさんもシロウさんでお姉ちゃんの気持ちは気づいてなかったみたいだし…」
「恋は突然というからの。片思いとは…ネカネも若いものじゃ」
「そうだね…」

二人はもうすでに狂喜乱舞を始めてしまったネカネを見て盛大にため息をついた。



Interlude out──

 
 

 
後書き
ネカネさん、陥落。 
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