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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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011話 ゴーレムとフードの男

 
前書き
更新します。 

 


Side 衛宮イリヤ


さて、なんとかシロウをごまかしてまくことができたわ。
こんな面白いことに乗らないなんて損もいいとこね。
それで集まったのはいいんだけれど……先生のネギをつれて来てよかったのかしら?

(ねえアスナ? ネギを連れてきて大丈夫だったのかしら?)
(大丈夫ですよ。いざとなったら魔法で助けてもらいますから)
(いえ、そうではなくてね……まあいいわ。でもそれは期待しないほうがいいわよ?)
(え? どうしてですか?)
(だって今ネギはどういうわけか魔法を自己封印しているようだし……)
(ええ!?)
(気づいてなかったの? はあ、しかたがないわね。もしなにかあったら補助程度だけど助けてあげるわ)
(あ、ありがとうございます)

「アスナ? イリヤさん? どうしたん?」
「いえ、なんでもないわよ、コノカ。それじゃいくとしましょうか」
「そうやね」

コノカが話しかけてきたのでうまく話を切り上げた。
それから図書館島内部を進んでいるんだけれど、

「それにしてもほんとうにすごいわね、ここの図書館」
「ええ。これでもここはまだ地下三階に位置してるですよ」
「そうなのユエ? それよりネギがあからさまにトラップがありそうな本棚をあさろうとしているけど大丈夫?」
「あ、ネギ先生。ここは厳重に保管されている本ばかりですから不用意に……」

と、ユエが言った先から本棚の隙間から矢が飛び出してきた。
これはすごいわね。感心している場合ではないけれど……でも大丈夫そうね。カエデが突き刺さりそうなのをすぐに掴んでいたから。
学園長の話を聞けば日本で有名な忍者らしいし。
そんなことよりユエ? 先ほどから飲んでいる『抹茶オレンジ』? はおいしいのかしら?

「罠がたくさんしかけられていますから気をつけてください」
「ええ!?」
「死んじゃうわよ!」
「でもシロウならこんな場所は軽々と突破しそうね?」
「どういう意味ですか、イリヤさん?」

あ、いけない。つい軽いなんて口走ってしまった。
それはシロウの魔眼並みの解析能力があればどんな些細なトラップも見逃さないでしょうし、なんて言えないから。
ここはうまく話はそらさなきゃ。

「ここに来る前はシロウと私は世界を旅していたからどんなトラップも見分ける能力が自然とついてしまったのよ」
「そうですか。ふふふ……今度お暇がありましたら士郎さんも誘ってみましょうか。そうすればこの図書館島も……」

あ、あれ? 余計火に油を注いでしまったかしら?
なぜか無表情みたいだけど背後から赤いものが見えるわ。

「あの、ところでみなさんはなんでこんな場所に来たんですか……?」
「あら? ネギはアスナから聞いていなかったの? なんでもこの図書館島には見るだけで頭が良くなるとか言う本があるらしいわよ?」
「え!? そんな本がこんな島国に存在しているんですか?」
「それはなぁネギ君。ここは世界でも一番の規模を持つ図書館なんよ?」
「そ、そうなんですか。って、アスナさん!」
「う゛ッ!?」

(あれだけ魔法には頼らないといっていたのに……それで僕も期間中は魔法は封印したんですよ?)
(ごめんごめんネギ、でもこのままだと大変なことになっちゃうから今回は許して……)
(大変なこと?)

そこでネギはもしかして自分の最終課題のことではないかと勘違いだが感動しているようだった。

さて、ここでこんなだからこの先どんなトラップが待っているのか楽しみだわ。
それにシロウが守ってくれてるし。

(それよりイリヤさん)
(ん? なにかしら、アスナにネギ?)
(あ、はい。気になっていたんですけどイリヤさんの着ている赤いコートからすごい魔力を感じるんですけどそれは一体?)
(やっぱりネギは気づいたのね? それはそうよ。これは聖骸布から編み込まれたコートなんだから)
(せ、聖骸布から!?)
(セイガイフ……? なにそれ?)
(知らないんですかアスナさん! 聖骸布っていったらキリスト教でイエス・キリストや聖人の遺骸や遺物などを包み込んだという魔法世界でも数少ない超がつくほどの一級品のマジックアイテムですよ!?)
(え!?)
(ネギは物知りね。そうよ。これはシロウの戦闘着の予備だからいわば私とシロウをつなぐものね)
(士郎さんの戦闘着!? それじゃ士郎さんはここに来る前はもしかして……)
(ええ。普段着としてずっと着ているものよ。シロウは強いんだけど対魔力が弱いからほぼ全身に纏っているわ。でもこちらでも一級品ということはすごいものなのね)
(ええ、それはもう……こちら?)
(なんでもないわ。こちらの話だから)
(はあ……よくわからないけど士郎さんは相当の実力者ってことだけはわかったわ)
(ええ。それじゃそろそろ行きましょうか? 前を歩いているみんなに気づかれてはまずいから)

それからユエを先頭にどんどん進んでいくんだけど色々すごいものが見れたわね。
まずマキエだけど、トラップに引っかかって落ちたまではいいんだけど(よくありません)持っていたリボンを使って柱に結び付けて、そしてそのリボンはマキエの体重に耐えているのだから身体能力もさることながらリボンの耐久性にも驚くものがあるわ。
お次は古菲とカエデ。倒れてきた本棚のトラップを蹴りでやりすごし、それで本の雪崩が起きたら一つ残さず拾い上げていたものだ。
……自身達は運動神経がいいといっていたがただの中学生がそれだけで済まされるほどのものなのかしら?
でも、それに比べて今の魔法を封じているネギは足手まといと言ってもいいでしょう。
普段の運動能力は魔法で補っていたって言うからほんとに魔法便りなのね。
シロウですら戦闘かそこらでしか滅多に使わないのにまだまだやっぱり子供ね。

ユエに従い一回休憩室で休むことになったけどなんでこんなものが普通にあるのかしら?
ネギとアスナはなにかしら絡まれているようだったがアスナの一方的な話の打ち切りで終わっていた。
そしてまた進路を確保しながら奥へと進んでいっているんだけど、魔法で守られているとはいえ貴重な書物が水に浸かっているのを見てなんて怠惰なことなのだろうと頭を悩ました。
ユエの言うとおり確かにもうこれは人外魔境という言葉がそのまま体現しているような場所だわ。
その後もありえないことに地下に湖があって下半身を濡らしながら進んで、本棚の崖下り、1mもない通路を進んでいくという難問もあり本当にありえないという思考が私の頭の中で広がっていった。
さすが異世界……侮れないわね。

「ゆ、夕映ちゃんまだなの……?」

狭い道を進んでいく中、アスナが弱気な発言をしていたが、

「もうすぐです。この区域には大学部の先輩もなかなか到達できません。中等部では私たちが初めてでしょう……ここまで来れたのはバカレンジャーの皆さんの運動能力のたまものです。おめでとうです。さあ、この上に目的の本がありますよ」

ユエがあまり見せない笑みを見せてヘッドライトを消したので、みんなも消すとユエが指差したほうから明かりが見えてきた。
そしてついに目的地についた。その着いた先には今まで通ってきた狭い道が嘘のように広い大空洞が広がっていて、空洞の先には二体の石像が左右に分かれながら立っていた。

「……すごいわね。本当にここは日本なのかしら?」
「ラスボスの間アルヨ!」
「す、すごすぎる――――!!」
「魔法の本の安置室です……」

みんなそれぞれが騒いでいる中、やはりユエが一番感動していたのか目をキラキラと光らせていた。
そこにネギが声を上げた。

「あ、あれは!?」
「どうしたの、ネギ!?」
「あれは伝説のメルキセデクの書ですよ! 信じられない! 僕も見るのは初めてです!!」

へえ……メルキセデクね? 確かにあれからはすごい魔力を感じるけど、やっぱりもとの世界とは作りが違うみたい。
あっちでは原型は本ではなく武器関連で概念武装になりはてていたから。
でもね、ネギ……普通に伝説のとか魔法にかかわる単語を普通に口走るのはいただけないわ。
私がため息をついていると全員がトラップのことも忘れて走り出していて見事トラップに引っかかる光景を見て、

「やれやれ……もうしょうがないわね!」

私もみんながいる地面に降り立つとそこにはなんというか、ツイスターゲーム?のようなものが配置されていた。
そしてあっけにとられていると左右に並んでいた石像が動き出して、

「ネギ! 来るわよ!」
「は、はい!」

私は後で関わったものには悪いけど記憶は消す方針で魔術を起動しようとしたんだけれど、

「フォフォフォ……この本が欲しくば……ワシの質問に答えるのじゃ―――!』

なっ……この声にこの魔力、なんでこの石像から聞こえてくるのよ?よく見ればレイラインのようなものが感じるわね。

「なにをやっているのかしら?コノエ『さあ始めるぞい!』」
「だからコノ『では第1問!』……」

……上等じゃない、コノエモン。
私を無視するなんて……帰ったらどうしてやろうかしら? ふふふ……。
どうやら私の考えていることが顔に出ていたのか少し声が震えているようだったけどもう許してやんないんだから。

『「DIFFICULT」の日本語訳は?』
「えええ!?」
「なにそれー!」
「みなさん! 落ち着いてください! ツイスターゲームの要領でやればきっと大丈夫ですから!」

へえ……落ちついているのね? さすが先生といったところね。
それからバカレンジャーの五人が次々と回答していくのを見ていたのかコノエモンは焦ったのか、まるで作為を感じるような問題を出していき五人をどんどん絡ませていった。
……本当に食えないじーさんね。どう料理してやろうかしら?

『さて最後の問題じゃ! 「DISH」の日本語訳は?』
「ホラ! 食べるやつの!」
「メインディッシュとかいうやろ?」
「わかった!『お皿』ね!」
「『おさら』OK!」

正解ね。だけどここ一番で失敗をするなんて……まるでリンのようね?
『おさら』じゃなくて『おさる』になるなんて、

「違うアルヨ―――!」
『フォフォフォ!残念ハズレじゃ!』
「アスナのおさる―――!!」
「いやああ―――!!」

そうして一体の石像が槌を振り下ろしてきて地面を叩き壊した。
落ちていく中、冷静になりながらも私は心の底から思った。
『覚悟しておきなさいよコノエモン……? この代価は大きいんだから』


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮士郎


……遅い。あきらかに遅い。姉さんは一体どこでなにをしているんだ?
もうそろそろ11時は過ぎるだろう。
レイラインにも応えてくれないしなにかあったのか?
すると突然、扉を叩く音がして開いてみるとそこには青い顔をした宮崎と早乙女がいた。

「よかったです。士郎先生、助けてください!」
「まずは落ち着け。なにがあったんだ?」
「そ、それなんですけど……」

それから二人に事情を聞いて、

「なんだと!? みんなとネギ君、それに姉さんが図書館島に入っていってなにか事故が起こったのか音信不通になったというのか!?」
「はぃぃ……」
「そうか…………とりあえず二人は今日はひとまず帰って休んでくれ。俺は明日みんなに事情を知らせたらすぐ姉さん達を探しにいこうと思う」
「……わかりました」

二人を帰らせた後、

まったくなにをしているんだ、姉さんは?
いや、姉さんだからか?久しぶりに遊び心が出たのかもしれない。
しかし魔法を使うなとネギ君にいった矢先にこれでは信用がなくなるぞ、アスナ?
ネギ君は事情も話さず連れていったって言うし……。



そして翌日、


「……と、いうわけで俺は授業が終わり次第探しに行ってくる。
だからみんなは今いないもの達のことを聞かれても決して喋るんじゃないぞ?
ネギ君のクビもかかっているのだからな。その間、しっかり勉強をしているんだ。では以上でHRを終了とする」

用件だけをすばやく伝えて俺はそうそうに寮へと戻り、まだ昼間だが黒いボディーアーマーを着て、赤い聖骸布によって編まれた外套を纏って外にでると、

「刹那?」
「士郎さん、私も着いていってよろしいでしょうか?」
「別に構わないが、授業はどうした?」
「学園長に無理を言って早退してきました」
「そうか。で、早退の理由はこの間の鍛練時に聞いたこのかの事か?」
「……はい」
「わかった。なら俺は止めないさ。幸い明日は休みだ。地道に探して行こう」
「は、はい!」
「では図書館島に急ぐぞ!」
「わかりました!」

そして俺と刹那は一直線に木々を抜けながら目的地まで向かっていった。
着いた場所はこれはすごいというばかりの建造物が立っていた。

「刹那、道案内できるか?」
「いえ、私もここに来たのは初めてですので……」
「そうか。なら俺のそばから離れないことだ。いつトラップが発動するかわかったものではないからな」

それで俺と刹那は宮崎達に教えてもらった裏道から中に入っていき、そして入った瞬間その本の量に驚愕していた。

「すごいな、これは……」
「はい……」

っと、ただここで驚いていてもしかたがないな。
とりあえずは宮崎から受け取った地図を開いて現在位置を確認しながら先へと進んでいった。


◆◇―――――――――◇◆


Side 桜咲刹那


お嬢様を助けに士郎さんと図書館島内部へと入ったのですが、正直いってほんとうにこの図書館はなんなんだろうと深い悩みがグルグルと頭を回っていた。
いけない…………しっかりせねば!
何のためにここに来たのか思い出せ桜咲刹那!
私はひるんだ心に克を入れて士郎さんとともに次々と地下へと進んでいった。
ですがそこで私は士郎さんの意外な一面を見ました。

「いちいち正当な道を進んでいくのは面倒だ。一気に突っ切るぞ! 投影開始(トレース・オン)!」

士郎さんは一度その場にとどまり始動キー……あちらでは暗示のようなものといっていた、呪文を唱えて、手に握られていたのは鎖の先に釘が突き出ているまるで縛り上げるような表現がとても似合っている武器を作り出した。

「刹那、少し移動を早くするからすまないと思うが抱えていくぞ!」
「え? きゃ!?」

士郎さんは突然私を片手で支えてもう片方の手で釘剣を放ち、それは天井に突き刺さりジャングルジムよろしく一気に何百メートルある道のりを短縮してしまった。
……ですが、事前に私を抱えるということは言っておいてほしかった。
抱えている間、あまりの恥ずかしさで反論の声も上げることができなかった。

「よし、到着だ。ん? どうした刹那? 黙り込んでしまって……」
「……い、いえ、なんでもありません」

どうやら意識してやってはいないようだ。
士郎さんはよくみなさんの相談ごとには適切にアドバイスしていますが自分の事に関しては無頓着なのですね。
……いわゆる鈍感。

「そうか。では先に……むっ!?」

え? いきなりどうしたんでしょうか?
いきなり士郎さんからいつもの表情が消えて戦意を体から出している。
これが戦場での士郎さんの顔……。

「……刹那、先にこの目的地までいっていてくれ。お前なら軽くいけるだろう?」
「は、はい。それは可能ですが……なにが?」
「俺は相手をしなければいけない奴がいるみたいでな」
「ッ! 敵ですか!?」
「それはまだわからない……だが、警戒を解いたら一般人なら意識を根こそぎ奪われるかもしれないほどの威圧感を相手は放ってきている」
「わ、私にはそんなものはなにも……」
「当然だ。相手は俺にだけ的確に威圧を放ってきているのだから刹那が気づかないのもうなずけることだ。ともかく先にいっていてくれ。この敷地にいる以上は敵ではないだろうしな」

そんなものは私には感じられない。それだけ士郎さんは気配を読むのが優れているのだろうか?
いや、それより士郎さんがこれほど警戒するほどの相手とは一体?
だから、それを聞いて私も加勢しようとしたのだが士郎さんの大きい背中がまるで『行け!』といっているようで私は頷くしかできなかった。

「……わかりました。ですがすぐに追いついてきてください」
「約束は守る」

私は歯がゆい気持ちになりながらも士郎さんが追いついてきてくれることを切に願いながら道を進んでいった。


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮士郎


「…いったか。さて、そろそろ出てきてくれてもいいのではないかね?」

刹那を見送った後、俺は威圧を放ってきている謎の人物のいる方角を向いて即座に干将・莫耶を投影し構えた。
するとその謎の人物の気配は突如後ろから感じて刹那に鍛練がてら教えてもらい最近やっと会得できた“瞬動術”という歩法を用い10メートルは離れた。
そして俺がいた場所には全身を白いフードで隠し口だけかろうじて見えるあからさまに怪しい人物が立っていた。

「何者だ……?」
「ふふふ、なかなかの反応速度ですね? 気配を気取られる気も見つかる気も更々なかったのですが……実力はタカミチ君以上はありそうです」
「? なぜタカミチさんのことを知っている……? それと俺の目をごまかしているつもりのようだが貴様、実体ではないな? 大方本体は違う場所で今のお前は空間移動の応用で幻か、あるいは実体があるように見せているところから忍びが使う影分身みたいなものか?」
「ほぅ? なかなかどうして……瞬時にそこまで見破るとは私も驚きましたよ。『異世界からの旅人さん』……」
「ッ!? どうしてそのことを貴様が知っている!?」

まさかあの時のことがばれたのか?
いや、しかし……ただ確信して言えることはこいつが相当の実力者だということだ。

「怖いですね。そんな睨まなくてもよろしいでしょうに?」
「そうもいかなくなったのでな。嫌でも理由は吐かせてもらう。いざとなれば本体ごと消滅させる手もいくらか思いつくからな」
「……これは先ほどの評価は訂正しなければいけませんね? あなたはもしかしたら全盛期のエヴァンジェリンを凌ぐ力を持っていそうです」
「からかっているつもりか……?」
「いえいえ、本心からの言葉ですよ。それよりエモノは下げてくださると助かります。私は別にあなたと敵対する気はありませんから」
「確かにそのようだな。先ほどの威圧感はもうまったく感じない。それに最初から敵意というものはなかったようだしな」
「洞察力もすごいようですね? ふふふ……あなたのことがますます知りたくなりましたよ衛宮士郎さん」
「……名前もとうにお見通しか。では一つ聞かせてもらう。貴様は何者だ? どうやら敵ではなさそうだがまだ俺には信用がおけない部分がある」
「あ、そうでしたね。一方的に話を進めて申し訳ございません」

すると謎の男はフードの頭部分をとった。そこから出てきた顔は中性的でまるで女性のような端正な顔立ちをしていて、髪の毛は長くはないが、左肩に纏めている髪以外は肩の上から少し離して切りそろえられているといった感じだ。
そしてずっと笑みは絶やしていない。
なぜだ? この男からはあの毒舌シスターことカレン・オルテンシアと同じ気配を感じるぞ?

「私の名はアルビレオ・イマというものです。以後お見知りおきを。
役職はこの図書館島の管理をするものと認識してくださって結構です。
あ、でも今はクウネル・サンダースと名乗っておりますのでクウネルと呼んでください」
「はぁ……クウネルか。サンダース? それってカーネ―――……」


「それ以上はいってはいけませんよ?」
「!?」


俺はなぜか反射神経をフルに駆使してとっさにクウネルの鋭い視線を避けた。
なんだあの極上の笑みは? 本気で寒気がしたぞ!

「わかっていただけたようですね。では次になぜ私があなたのことを知っているかというとですとね? 近衛学園長にあっさり教えていただきました」
「はぃ!? な、なにを考えているんだあの妖怪爺!? あれほど他人には秘密を守ってくださいと頼んだのに! ふふふ……やはりここはあの計画を実行に移すべきか?」
「どうやらお困りのようですねぇ? 平気ですよ? 私以外には多分話してないと思いますから」

地面に手をついている俺に極上の笑みで話しかけてきたクウネルの表情を見た瞬間、確信した。
こいつは人を罵ることが三度の飯より大好きなカレンと同類だと!
だからクウネルとはまともに会話をしようとしても無駄だと判断し即座に話を変えることにした。

「……それで? なぜ今俺に接触してきた? ただ世間話がしたいというだけではないのだろう?」
「察しがいいですね? はい。学園長の話を聞いて興味を持ちまして本人がやってきたとあってつい知的好奇心を抑えることができなかったもので」
「それで? 本当はなにが目的だ?」
「きついですね? もっとやわらかく生きたほうが得ですよ?」
「すまんな。これが地でね」
「そうですか。ふふふ……やはりあなたは面白い方です。では本題ですがぜひあなたの過去を覗かせてもらいたいのですが。異世界の魔法、そちらでは魔術ですね?とても興味がありまして」
「それは断固として断る。あいにくだが俺はまったくの他人に話せるような過去は持ち合わせていないのでな」
「そうですか。それは残念です…………では代わりに衛宮イリヤさんの記憶を覗かせていただきましょうか?」


………………こいつは今、なにをいった?
姉さんの過去を覗くだって?それは……生まれる前から聖杯として調整を受けて一生を終える運命だった過去を覗くということなのか?
それだけは、許すわけにはいかない。
そんな悲しい過去を知られたら姉さんは……。


「ッ!! クウネル……一つだけいっておく。俺の記憶はどれだけ覗いても構わない。だが、姉さんの記憶を覗こうとするならば俺は貴様を……殺す!!」

できるだけの殺気をこめて瞬時にクウネルの首筋に刃を突きつけた。

「!? (これほどとは……どうやら少し踏み込みすぎたようですね? この方はやるといったら確実にやる人のようです)」

それからしばし時間が止まる感覚があったが、

「わかりました。残念ですがイリヤさんの記憶は覗かせていただくのはやめておきます」
「そうか。ならいい」
「……ですが私はなにも衛宮さんの記憶は諦めたわけではありませんよ?」
「ッ!……なかなかにせこいな」
「褒めても何もでませんよ?」
「決して褒めてなどいない。だがさっき言ったことは訂正させてもらうが俺の記憶も見せるわけにはいかない。これも間接的に姉さんの過去にかかわってくるからな。だから見たければそれ相応の覚悟を持って挑んで来い。
では俺は連れが先で待っているので行かせてもらう」
「そうですか。そうそう、君のお姉さんとネギ君達は無事ですからご安心を……」
「なに……?」

クウネルは俺の疑問にすらすらと答えてくれた。あらかた聞き出したのでもう行くことにした。

「嘘か真かわからんが……今はその言葉を信じてやろう。ではな」
「はい。またお会いしましょう」
「俺は二度と会いたくはないがね」
「つれないですね?」
「…………」

やはり気に食わない奴だ。



◆◇―――――――――◇◆



アルビレオ・イマは士郎が消えた後、


(ふう……振られてしまいましたか。残念ですね。
彼はとてもあの方に似ていたのでもう少しからかいたかったのですが。
それと学園長には頼まれていたことは失敗と、お伝えせねば。
久しぶりに私の暇を埋めてくれる人が現れてくれました。
ですが、まだその時ではなさそうなので私は休養しているとしましょう)


そしてアルビレオ・イマはその姿を消した。
 
 

 
後書き
今一最後の部分が覚えていない内容なんですよね。なにかの伏線だったのは分かるんですが。
 
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