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ヘルウェルティア魔術学院物語

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第十一話「結果」

「いよいよ発表ですね」
「う~、緊張する~。アンネはどう?」
「……別に」
「もう、アンネは平常運転で羨ましいな、このこの~」
「あはは、レギーナさんあまり突かない方が」

入学してから初めての定期テストから七日が経過した。この間は先生たちが試験を集計し順位を決めている最中だった。そして、今日のHRに結果が一斉に公表される。生徒が一か所に集まらないようにするためか各クラスごとに記した紙が貼られる。

「私はどのくらいの順位なんだろ~。400くらいかな?」
「……ここは420人いるから400~420の間。一月程度でそこまで変わっているはずがない」
「んもう!そんなことわかってるよ~。いいじゃない。夢を見たってさ~」
「見るだけ損」
「う~!」

何時ものメンバーとなったルナミスさんとレギーナさん、アンネさんは結果について話している。が、実際はレギーナさんが高望みしてアンネさんがそれに何時もの様子で突っ込みルナミスさんが苦笑しているだけだった。

「……多分順位にそこまで変動はない。あるとしたらエルナンくらい」
「あ~、確かにね。噂になってるもんね。『Gクラスの生徒が二重魔術を使って演習場を半壊させた』って」
「毎日の様に聞きに来てましたね。正直、迷惑でしたけど」
「ははは、ごめんね」

三人の言葉に俺は苦笑いで謝罪する。実際、Gクラスの教室前には毎日の様に他クラス、それもAクラスやBクラスの人たちが集まっていたからな。教室に出入りが出来ない状況にまで陥って最終的にディートハルト先生の一喝で収束したんだけど。
因みにクラスメイトは誰がやったのかあかさなかった。何でも見下してくる他クラスの人たちに一泡ふかすことが出来たとかで。まだ入学してから一月しか経っていないが既にGクラスへの侮辱が行われていたらしい。とは言えそれは例年より少ないらしい。入学初日の騒動がその原因らしい。

「お前ら、HRだぞ。さっさと席付け~」

そこへディートハルト先生が一枚の大きな紙をもってやって来る。どうやらあれが結果の記された紙だろう。

「さて、お前らも気になっている定期テストの順位が出たぞ。それを今から張り出すから見たい物は好きに見ればいい。今日は他に連絡事項はないからな。これでHRは以上だ」

ディートハルト先生はそれだけ言うと紙を貼り教室を後にする。ルートヴィヒ先生が出て行ったあとクラスメイトはこぞって前に集まり自分の順位を確認している。とは言え俺たちはGクラス。その順位も下から数えた方が早い。いや、ワースト20はほぼGクラスしか埋まっていないだろう。

「あった!私405位か~。殆ど最下位じゃん」
「……」
「私はえっと……。よ、415位……」

三人は自分の順位を見て三者三様の様を見せている。さて、俺も確認するか。二重魔術の件から恐らく上位だとは思うけど。どれどれ……

1位エルナン・ハルフテル(G)
2位カール・フォン・アルタウス(A)
3位ウィリアム・アーサー・ハインドマン(A)
4位ヒルトルート・フォン・ペーペル(A)
5位……

「い、1位ぃぃぃぃぃぃっ!!!!????」
「「「「ええぇぇぇぇぇっ!!!???」」」」」

まさかの順位に俺は驚きのあまり声を上げる。2位から21位までAクラスで埋まっている中1位はまさかのGクラス。これに驚くなという方が無理であった。俺はてっきり100位前後と思っていた。しかし、よくよく考えれば全クラスのテストは同じ演習場を使って行われていた。そして演習場を半壊させるほどの威力の魔術を使った物はいなかった。精々が的を破壊しつつそのまま後方の壁まで直撃させた奴がいたくらいだ。
そいつは確か学年主席のカール・フォン・アルタウスだったな。つまり、2位の奴と言う事になる。今頃他のクラスでもちょっとした騒ぎになっているだろう。

「す、すげぇ!Aクラスどころか学年主席をも抜いて1位……」
「もしかしたら俺たちも……」
「俺、Gクラスに入って諦めてたけど希望が見えてきたよ!」
「早速魔術の強化をしなくちゃ!」

クラスメイトは俺が1位を取った事実を喜んでくれた。同時に自分たちにも伸びるチャンスがあると感じたようだ。別にそれが悪い事ではない。魔術師は向上心が命だからな。この調子で皆も頑張って欲しい。

「す、すごいです。エルナンさんがここまでの実力者だったなんて」
「凄いな~。私も1位になりたい!」
「……おめでとう」

ルナミスさん、レギーナさん、アンネさんの順に声をかけてくれた。ルナミスさんは敬意、レギーナさんは羨望、アンネさんは分からないが本心から言っているのは理解できた。アンネさんはいつも無表情で何を考えているのかは分からない。知っているのはレギーナさんと同じく帝国貴族で家ぐるみで仲が良い事ぐらいだ。
さて、1位を取った事は意外だったが取ってしまったものはしょうがない。諦めて注目の的になるか。心配なのは嫉妬に駆られてよからぬことをするような生となり教師が出て来ないかという点だ。人間は大なり小なり嫉妬や恨みなどの負の感情を持っている。それを抑えられるかは人それぞれだが中には負の感情のままに動く者もいるだろう。
なんにせよそう言った者たちが現れない、最悪でも俺以外のクラスメイトに手を出さないことを祈るばかりだな。
 
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