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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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キミが産まれた日(雪音クリス誕生日記念)

 
前書き
遅れちゃったけどギリ完成、クリスちゃん誕生日記念回だァァァッ!!

黒井さんありがとう!貴方のアイディアのお陰で、ここまでいいものを書くことが出来ました!
どうぞお楽しみください!! 

 
もう、すっかり見慣れてしまったベッドで目を覚ます。

時刻は朝の7時半、とっくに起床時間だ。

クリスは欠伸をひとつして、身体を起こすと部屋を見回す。

いつもなら起こしてくれる筈の彼の姿を探し、ゆっくりとベッドを降りた。

「ジュンくん……?」

寝室のドアを開けると、聞こえて来たのはチン!というトースターの音。

鼻腔を擽る香りに導かれ、クリスはリビングへと足を運ぶ。

「──はい、はい。ありがとうございます……。これでよし、と」
「ん……ジュンくん……」
「ああ、クリスちゃん。おはよう」

何処かへと電話を入れていた恋人は、こちらを振り向くと、いつも通り爽やかに微笑んだ。

「おはよ……」

寝ぼけ眼で彼女は、ゆっくりと純に近付き、その背中に両腕を回した。

同棲し始めて以来、日課とかしている朝のハグ。純もスマホを仕舞うと彼女の背中に腕を回して抱き寄せ、その銀色の髪を優しく撫でる。

「今日くらいはと思って、起こさなかったんだけど……ゆっくり眠れた?」
「今日、くらいは……?」

不思議そうに首を傾げるクリス。
その反応に、純はハッとなる。

「そっか……。じゃあ、今で言ってあげないとね」

そのまま隠して、サプライズにする事も出来たのだろう。

しかし、純は敢えてその選択肢を捨てる事にした。

今朝から始まるのは特別な一日だと、自覚してもらいたかったからだ。

今日という日が何の日か、二度と彼女に忘れさせない為にも……。

「ハッピーバースデー。お誕生日おめでとう、クリスちゃん」

「え……?……あ……」

寝惚けていた意識が一気に覚醒し、クリスの顔に驚きが広がる。

「今日は12月28日、クリスちゃんの誕生日だよ。思い出してくれた?」
「そうだ……今日、あたしの誕生日なんだ……」

思い出した瞬間、彼女の瞳が潤む。

純はより一層、深く彼女を抱き締めると、そっと、耳元で優しく囁いた。

「泣くにはまだ、早過ぎるよ。ほら、朝ご飯冷めちゃうし、顔洗って来たら?」
「なっ、泣いてねぇよ……ッ……。泣いてねぇ……こんな朝っぱらから泣くやつがいるかってんだ……」
「そっか……。クリスちゃん」

顔を上げ、こちらを見上げてくる彼女を真っ直ぐに見つめて、純は微笑む。

「今日は特別な一日になる。約束するよ」
「……うん。……楽しみにしとく……」

こうしてクリスの誕生日が、幕を開けた。



「イィィィィィィィヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ!!」

クリスの楽しげな叫び声が、晴天の空に広がる。

やって来たのは遊園地。乗っているのは絶叫マシーン代表、ジェットコースターだ。

「いや楽しいなこれ!!」
「お気に召したみたいだね」
「ああ!!もっかい乗りてぇ!!」
「なら、もう一回並ばなくちゃ。ジェットコースターはこの遊園地で一番人気のアトラクションなんだから」
「えぇ!?マジかよ~……。待つくらいなら次行こうぜ!」

いつもはクリスをエスコートする純だが、今日のクリスは思いっきりはしゃいでいる。

なので、エスコートするのではなく、彼女に引っ張られる形で遊園地を回っていた。

「次はあれにしようぜ!」
「コーヒーカップか……。あんまりはしゃいで、回し過ぎないようにね?酔ったら大変だから」
「分かってるって!ほら、行くぞ!」



数分後。コーヒーカップを降りたクリスはフラついていた。

「やべぇ……ちょっとはしゃぎ過ぎた……」
「だから言ったじゃないか……」
「おう……。次からもう回さねぇ……」

忠告されていたにも関わらず、ついついハンドルを回し過ぎてしまったクリスを、純は困ったような笑みで見つめる。

「っと!?」

その時だった。
フラついていたクリスの足が縺れる。

クリスがバランスを崩すより先に動いたのは、純の方だった。

「ッ!クリスちゃんッ!」

一瞬でクリスの二の腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。

次の瞬間には、クリスは純の身体に寄り掛かる状態になっていた。

「大丈夫かい!?」
「へっ!?あっ、おう……大丈夫……だぞ……///」

顔を覗き込んでくる彼の顔が近い。
クリスは真っ赤になりながらも、彼を見つめ返さずにはいられなかった。

「一旦、どこかで休もうか?」
「そ、そうだな……。喉乾いたし、丁度いいんじゃねぇか?」
「じゃあ、あそこのベンチに座ろうか」

今度は純に手を引かれ、二人は暫く休憩するのだった。



その後も、二人は様々なアトラクションを楽しんだ。

「ひぃぃぃぃぃッ!?」
「クリスちゃん、大丈夫?」
「ジュンくん!!ああああたしの手を離すなよ!?絶対離さないでくれよぉぉぉぉぉ!?」
「分かってるさ。僕がクリスちゃんを置いていく訳がないだろう?」

お化け屋敷では、オバケが苦手なクリスがひたすら絶叫しながら純の腕にしがみついていた。

「どうしたの、クリスちゃん?」
「いや……ジュンくん、全然違和感ないっていうか……むしろ似合ってるなって……」
「ありがとう。クリスちゃんの方こそ、今、凄く可愛いよ」
「かっ、かわっ……!?」

メリーゴーランドでは、白馬に乗る純が人目を引く程の親和性を発揮したり。

「美ン味ぇ!!このパフェすっげぇ美味いぞジュンくん!!」
「そんなに?なら、僕も一口……と、その前に。クリスちゃん、口にクリーム付いてるよ?」
「えっ!?どっちだ!?ここか!?」
「取ってあげるから、じっとしててね」

昼食にしようと入ったレストランでは、遊園地の名物、通称「究極のパフェ」を二人で堪能したり。

最後に乗った観覧車から、沈む夕陽を眺めたり……。

二人は時間の許す限り、遊園地を思うがままに楽しんだのであった。



「それでは、ごゆっくり」
「うわぁ……すげぇ……」

夜。一旦自宅に戻り、着替えた二人がやって来たのは、窓際席からの夜景がとても綺麗な、少しお高いホテルのレストランだった。

店を紹介してくれたのは、見守り隊職員の一員。デート向きな高級店にも通じたエージェント・マーガレットこと、尾灯さんだ。

しかもドレスコード適応店舗。なので二人は今、フォーマルな服装で向かい合っている。

特にクリスが着ているイブニングドレスは、了子が前日に見繕っておいたもの。

ワインレッドのドレスは、彼女が纏うシンフォギアと同じ赤でありながらも、何処か貞淑な雰囲気を醸し出す。

「夜空と、夜景と……お洒落したクリスちゃん。うん、やっぱり画になるね。とても素敵で、綺麗だよ」
「そっ、そう言う純くんだって……その……その…………かっ……かっこいい……と思う……」

一方、純は純白と紺碧のタキシードだ。

前々から、こういう場に備えて用意していたらしく、皺一つ見当たらない。

彼の整った顔立ちと相まって、常に全身から醸し出している王子様オーラも、心做しか増幅されている。

今の彼なら、たとえ相手が歳上でも笑顔一つでコロッと墜としてしまうだろう。

そんな彼の笑顔は、自分一人だけに向けられている。
それだけでクリスの心臓は高鳴ってしまうのだ。

「ありがとう。クリスちゃんにそう言ってもらえるのが、一番嬉しいよ」

(だぁぁぁかぁぁぁらぁぁぁ!!そーいうのは反則すぎんだろっていつも言ってんじゃねぇかぁぁぁ!!)

店の中で叫ぶ訳にもいかないので、心の中に押し留める。

いや、店の中でなくとも、彼の笑顔の前には得意のツンデレは無力だ。

どう誤魔化そうとしても、本心を包み隠さず露わにしてしまう魔力が、そこには存在していた。

「失礼します。こちら、オードブルになります」
「へっ!?あっ、どうも……!」
「どうも、ありがとうございます」

突然、声を掛けてきたウエイターに驚き、肩が跳ねる。

テーブルに並べられた料理に、クリスは姿勢を正して純の方を見る。

「……ん?どうしたの?」
「え、や、その……ジュンくん、随分手馴れてるなって……」
「ううん、そんな事ないよ。こういう店、来るのは本当に久し振りなんだ」
「久し振り?」
「父さんが昔、1度か2度、仕事の関係で連れて来てくれたくらいでさ。マナーなんかも昨日、一昨日で調べただけだし……」

それで動揺もせずにここまで出来ているのだから、クリスは驚きで口を開いてしまう。

「よくそんな短期間で身に付けたな!?」
「当然だよ。だって、クリスちゃんを緊張させる訳にはいかないだろう?僕がエスコート出来るよう、最大限に備えておかなくちゃね」
「あっ、あたしの為に!?……そっか……ははっ、やっぱりジュンくんはすげぇな……」

純の王子様ムーブは、こうしてどんどん磨きがかかっていくのだろう。

クリスと再会する。その夢は叶ったが、彼の夢のゴールはそこではない。

”クリスにとっての王子様でいる為に“、彼は未だ己を磨き続けているのだ。

あらゆる分野に手を伸ばし、必要なあらゆる技を磨き、クリスの事を常に慮り、その心を叶える為に努力する。

純は今でも、夢に向かって歩いている途中なのだ。

「あたしも、頑張らねぇとな……」
「クリスちゃん?」
「なんでもねぇよ。冷める前に食べちまおうぜ!」

そして二人は、運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。

前菜から始まり、スープ、魚料理、口直しのソルベ、肉料理と、次々に皿が運ばれてくる。

値が張る分、その味は絶品だ。

味わいながらも純は、その味を盗……もとい再現出来ないものかと思案していた。

「ジュンくん、もしかして、これ家でも作れないかって思ってたりすんのか?」
「バレてるか……。流石はクリスちゃんだね」
「まあな」

以前とは比べ物にならない程のテーブルマナーで、周りを汚す事無く綺麗に食事しながら、クリスは純の方を見つめる。

「ここの料理、確かに美味いけどよ……あたしの一番は、やっぱりジュンくんの作るモンだから……」
「クリスちゃん……」
「だから、その……。その……えっと……」

肝心な所で吃ってしまう。
クリスは心の中で、自分自身を必死に鼓舞していた。

(頑張れ……!頑張れよ、あたし!ジュンくん以外に聞かれることはねぇんだ!別にあいつら居ねぇんだし、ここは素直に言うべきだろ!?ぶちかませ!!)

息を深く吸い込んで、そして吐き出す。

何とか心を落ち着けると、クリスはその言葉を伝えた。

「だから、これからもずっと変わらない、ジュンくんの味でいてくれ!あたしが救われた味は……あたしを暖めてくれるあの味は、ジュンくんだけにしか出せないんだから!!」

「クリスちゃん……」

……自分がつい、大声を出してしまった事に気が付き、慌てて周囲を見廻す。

見れば、周りに座っている紳士淑女は、温かい視線をこちらに向けている。

勢いで立ち上がってしまったのも含めて恥ずかしくなり、席に座り直す。

彼に恥をかかせてしまったんじゃないか?

迷惑をかけたんじゃないか?

不安と共に彼の顔を見ると……

口をポカンと空けた、驚いたような表情でこちらを見つめていた。

何秒して、純はクスッと笑う。

「……ふふっ、そっか。クリスちゃんにとって、僕の料理はそんなに美味しいんだね」
「え、や、その……」
「心配しなくても、ここの店の味をそのまま再現しようってわけじゃないよ。ちょっとレパートリーを増やす参考にするだけさ。僕の味付けは、僕だけのもの……クリスちゃんにとっての世界一なんだからね」
「ッ!?……さっ……サラッと付け足すなよ……恥ずかしいじゃねぇか……」

頬を赤らめながらそっぽを向くクリスを、純は微笑みながら見つめる。

ああ、なんて可愛らしいんだろう。

素直じゃないけど。喋り方もぶっきらぼうだけど。

それでも一途で、優しくて、誰かを思いやれる。

そんな君はやっぱり、僕にとってのお姫様だよ。

……そんな微笑ましい二人を、向かいのテーブルに座るドレス姿の美女が見つめる。

胸元を飾るマーガレットのブローチに仕込んだ隠しカメラで二人の様子を撮影しながら、彼女はグラスをくゆらせた。

「爽々波の王子様と、雪の音のお姫様。二人の祝福されし道行に乾杯……なんてね」

見守り隊職員、二人にこの店を勧めた張本人である尾灯春菊はそう呟くと、一人、グラスを傾けるのだった。



夕食を終え、帰路に着く二人。
タクシーを降りてから、クリスは純に手を引かれながら、今日という一日を振り返っていた。

(楽しかったな。ジュンくんと二人っきりで、色んな事して……。何だろうな、忘れていたものを思い出せたような……とても懐かしい気分だ……)

両親を亡くし、自由を奪われ、捕らわれてから何日経ったか分からなくなって……。

以来、色んなものを忘れてしまっていた。

繋ぐ手の温かさ、心安らぐ場所。いつしか自分の産まれた日さえも……。

でも今年、色んな人達との出会いを経て、そして純との再会が切っ掛けになり、それらを思い出す事が出来た。

そして今日は大好きな人から、自分が産まれた日を精一杯、心ゆくまで祝ってもらった。

こんなに幸せな事があるだろうか?

(また、沢山貰っちまったな……)

貰った幸せの分だけ、自分も周りに感謝を返して行こう。

そして、自分も誰かに幸せをあげられる人間になろう。

クリスは心の中で、固く誓うのだった。



「う~、寒ッ!」
「正装の上から着込んでても寒かったね……。お風呂沸かさないと……」

自宅に着くと、二人は早速風呂に入る。
互いの身体を洗いあい、冷えた身体を温めると、厚手のパジャマに身を包んで髪を乾かす。

風呂から出ると、純は自室に置いていた紙袋を持って、クリスの前に立った。

「改めて、クリスちゃん。誕生日おめでとう!」
「この期に及んでプレゼントまであんのか!?」
「うん。やっぱり、渡しておきたくて……」

クリスは紙袋を受け取ると、ぎゅっと握り締める。

「あたしにとっては、今日という一日そのものが既にプレゼントみたいなもんだけど……。でも、ありがとな。開けてもいいか?」
「いいよ」

紙袋を開けると、そこに入っていたのは新品のマフラーであった。

「マフラー?でもこれ……長くないか?」
「うん。このマフラー、実は二人用なんだ」
「ッ!?それって……」
「そう。恋人マフラーって知ってるよね?二人で一枚のマフラーを共有するアレ。このマフラーは、その為のものなんだ」
「わっ!態々その為に用意したのか!?」

驚くクリスに、純は笑顔で頷く。

「そうすれば、クリスちゃんを最大限に温めてあげる事が出来るからね。それに、このマフラーは僕から君への誓いの印でもあるんだ」
「誓いの印って……」
「もう君を離さない。僕と君は切れない繋がりで結ばれているんだ……ってね」
「ッ!?///」

クリスの顔は、今日一番真っ赤に染った。

それも当然だ。臆面もなく言い切ったが、その言葉は……プロポーズも同然ではないか。

同時に、それはクリスが望んでいた言葉でもある。

同棲を始めた頃、何度も悪夢に魘されては、純に抱き締めてもらう事で確かめていた。

”あたしはもう、独りじゃない“と。

涙を必死に堪えようとして、両の瞳を潤ませながらも笑顔を向ける。

こんなに嬉しい誕生日、一生忘れてやるもんか。

「ジュンくん……ありがとう。あたし、今、世界で一番幸せだ」
「その言葉は、もっと先に取っておいた方がいいよ?」
「ああ、そうかもな……」

涙を拭い、クリスは純に抱き着く。

その胸に頬擦りすると、上目遣いに彼を見つめる。

「ジュンくん……これからも、あたしの王子様でいてくれるか?」
「そんなの、聞くまでもないだろう?クリスちゃんを世界で一番幸せにする。それが僕の夢なんだから」
「ん……。なら、あたしも……ジュンくんの事、幸せにする。ジュンくんから貰った幸せと同じ分だけ……いや、それ以上を返せるお姫様になる」
「うん。クリスちゃんからのお返し、楽しみにしてるよ」

クリスと純は、互いにじっと見つめ合い、微笑み合う。

心と心で深く繋がっている二人を、妨げられるものなど存在しない。

この先の未来も、二人で手を取り合い、支えあって進んでいく。

そんな二人を、部屋の隅に置かれた仏壇に立てられた夫婦の写真は、柔らかな微笑みを向けながら見つめていた。 
 

 
後書き
改めて、クリスちゃん。お誕生日おめでとう!!
純くんとお幸せにね!!

これにて、今年の書き納めとします。
それでは皆様、また来年お会いしましょう! 
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