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戦国異伝供書

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第六十九話 善徳寺にてその二

「あの方は野心はおありでもな」
「あくまで幕府の中の方ですな」
「甲斐の守護であられな」
「代々甲斐におられ」
「甲斐の方じゃ」
 まさにそうなっているというのだ。
「甲斐から離れられぬしな」
「甲斐の守護のままですか」
「他に領地は持たれてもな」
「信濃の様に」
「やはり甲斐におられ」
 そうしてというのだ。
「天下もな」
「甲斐の守護そして管領として」
「治められる」
「それが武田殿ですな」
「あの方はそうした方じゃ、そしてな」
「長尾殿ですな」
「あの方についてもわかるな」
「はい」
 元康は飲みつつ応えた、彼も家臣の者達もかなり飲んでいるがあまり酔ってはいない、雪斎との話をしそれを聞いてそこに心がいっているからだ。
「まさに生まれもった」
「才をお持ちの方であられるな」
「軍神とも毘沙門天そのものと言われますが」
「まさにであるな」
「そう感じました、あの方は極めて純粋な方で」
「正しき心をお持ちの方であるな」
「悟りを開いたと俗に言われますが」
 元康はこうも述べた。
「まさにです」
「そうした方であられるな」
「随分とお酒が好きと聞きますが」
「はっはっは、拙僧以上というな」
「そこでご自身のことを言われますか」
「つい言ってしまった、しかしな」
 それでもと言うのだった。
「話を戻るとな」
「あの方は」
「まさに悟りを開かれた様に清んでおられ」
「そして戦については」
「持って生まれた才の持ち主であられる」
「兵法書を読まずとも」
「霍去病の様な方じゃな」
 雪斎は輝虎をこう評した。
「言うならば」
「漢の武帝に仕えた」
「知っておるな」
「はい、史記に出ておりました」
「そうであるな、霍去病もな」
「兵法書を読まずともでしたな」
「戦がわかっておった」
 自身が使える武帝に兵法書を読むことを進められたが戦の場は常に変わるのでそうしたものを読んでも意味がないと言ったのだ、つまり既に戦がわかっていたのだ。それも兵法書よりもさらにだったのだ。
「そうであったな」
「恐ろしい話だと思いました」
「若くしてそうであってな」
「若くして亡くなりましたが」
「長尾殿はその霍去病将軍じゃ」
 戦において生まれついての才があるというのだ。
「そして霍去病は気配りはなかった」
「兵達や周りへの配慮は」
「そうしたものは一切なかった」
「不遜だったとも書かれていますが」
「うむ、裏表がなくな」
「そうした方でしたな」
「しかしな」
 雪斎はこうも話した。
「長尾殿は気配りが違う」
「家臣の方々にも兵達にもですな」
「そして民達にも」
「戦は多いとのことですが」
「常に見事に勝たれるだけでなくな」
「政もですな」
「そちらも出来る家臣の方々もおられてな」
 このこともあってというのだ。 
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