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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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処罰

<バハラタ周辺>

洞窟を出ると、既に辺りは夜に覆われており、グプタとタニアを連れて町まで歩く事はムリとの結論に達したので、聖なる川付近の森で野営する事になった。
本来ならばリュカが野営の準備を率先して行うのだが、洞窟内で大量の返り血を浴びた為、アルルが「今日は私達が野営の準備をしますから、リュカさんは先に川で水浴びをしてきて下さい」との薦めに促され、一人水浴びをしている。


グプタとタニアはこれまでの疲れからか、二人身を寄せ木にもたれ座りウトウト船を漕いでいる。
その為野営の準備は、新たに仲間に加わったカンダタとアルル達が和気藹々行っている。

「しかしアンタ等…変なバランスのパーティーだよな!」
アルル達若者4人を見つめカンダタが不思議そうに呟いた。
「何や、その失礼な口調は!?」
「すまんすまん…ただリュカの旦那が居なく、アンタ等4人だけのパーティーだったら、俺はロマリア地方で盗賊稼業を続けて居たと思ってな…」

「それは俺達だけだったら弱くて、カンダタ盗賊団には勝てなかったと言いたいのか!?」
少し不機嫌な口調でウルフが問い返す。
「今のお前等なら分からねぇーが、シャンパニーの塔で出会った時のお前等だったら、絶対に負ける事は無かったと言い切るぜ!」
リュカが居ないと、未だにダンジョン探索に恐怖するアルル達には反論が出来ないでいる。

「お前等を卑下する訳では無いんだが、お前等4人だけのパーティー構成なら、バランスが良いんだ…ただし、低レベルでのバランスだがな!………あの人はお前等みたいな低レベルのパーティーに、居るべき人じゃないと思う!何なんだ、あの人は?」
カンダタの言い分は当然で、疑問も当然である。
アルル達はカンダタに、リュカの事を大まかに説明した。



「………はぁ~……そんな凄い人生を送っている人なのか…」
「今の話はリュカさんから聞いた話で、ほんの一部だと思うわ。私達だってリュカさんの全てを知っている訳では無いのよ…」
カンダタの感嘆の溜息に、アルルが補足する。

「だが、これであの人がアンタ等と連んでいる理由が分かった!あの人にしたら、別にアンタ等じゃなくても、世界を旅するヤツだったら誰でも良かったんだな!お前等と組んだのは、偶然だったんだ…運が良いな、お前等!」
「そうね…運は良いわね…リュカさんが居なかったら、アリアハンで死んでいたでしょうからね…私達は…」
アルルの自虐的な言葉に黙り込むウルフ達…


「あれぇー?どうしたのみんな黙り込んじゃって…?ウルフのギャグが滑ったの?ダメだよウルフ!君は突っ込み要員なんだから…」
水浴びを終えたリュカが、明るい口調で戻ってくる。
「違うよ!!ギャグを言ってないし、滑ってもない!大体何だよ突っ込み要員って!リュカさんがボケるから突っ込んじゃうんだろ!真面目にしててくれれば、俺だって突っ込まないよ!」
リュカの軽口に思わず突っ込むウルフ…
「ほら!完璧な突っ込みじゃん!」
「なっ……!!」
言葉を失うウルフ…それを見て、アルルが腹を抱えて笑い出す。
そして、それに釣られてハツキ・エコナ・カンダタも笑い出す。
むくれていたウルフでさえ笑い出し、みんなの笑い声でグプタとタニアが目を覚ましてしまった。
二人が起きた所で丁度食事となり、その日の夜は更けて行く…



<バハラタ>

「お祖父ちゃん!!」
昼にはバハラタに帰ってきたアルル達は、脇目も触れず黒胡椒屋へ入って行く。
そして中にいたターゲル老人へ泣きながら抱き付くタニア!
「おぉ…タニア!良かった…無事で本当に良かった!!」
「ターゲルさん…ご心配をお掛けしました…」
「おぉ、グプタも…お前達が無事で本当に良かった!!」
ターゲルとタニアとグプタ3人が、抱き合い・泣き合い・喜び合っている。

暫く喜びを噛みしめるとアルル達に向き直り、深々と頭を下げて礼を述べる。
「勇者様…誠にありがとうございます!貴女様のお陰で、私は2人を失わずに済みました。感謝に絶えません!」
「じいさん…まだ感謝には早い………もう一つ、やる事が残っている…」
何度も頭を下げるターゲルに、リュカが真面目な口調で感謝を遮る。

「ハツキ…ナイフを貸して…」
リュカはハツキから聖なるナイフを借りると、カンダタの首根っこを掴み力ずくでターゲルの前に跪かせる!
「ちょ、何だ「うるさい!お前は黙れ!」
カンダタの抗議の声を遮り、ターゲルにナイフを渡す。

「じいさん、この男が今回の誘拐事件の首謀者だ。コイツの言い分を信じれば、今回の誘拐で、孫娘に危害を加える事はしなかった様だが、誘拐した事実は変わらない。勇者アルルは、この男が改心したと思っており、今後の旅の仲間に加えるつもりだが…」
突然のリュカの行動に、誰もが声を出せないで居る。

「じいさん…アンタ等家族を苦しめた男は、今後も生き続ける…しかしアンタには罰を与える権利がある!その権利を行使するチャンスは今だけだ!アンタの心に悲しみを与えた男を罰したいのなら、そのナイフで喉を切り裂け…」
ターゲルの顔から血の気が引く…
リュカが冗談を言っている訳でないのが分かるから…
皆も息をするのを忘れ、固唾をのむ。


少しの間だが、沈黙が世界を支配した…
そしてターゲルが口を開く…
「お若いの…私には彼を罰する事は出来ないし、そんな覚悟もありません…タニアとグプタが無事に戻って来ただけで、悲しみも憎しみも消え去りました…彼への処罰は勇者様に委ねます…」
ターゲルは優しい顔で微笑むと、ナイフをハツキに手渡し、アルル達全員に頭を下げる。

「…良かったなカンダタ…ターゲルさんが優しい人で…命拾いしたな!」
カンダタの首根っこを掴んでいた手を離し、冷たい瞳で呟くリュカ…。
そして皆が一斉に息を吐き、安堵に包まれた!
カンダタだけは脂汗をかいているが…

「勇者様…これをお持ち下さい」
和やかな雰囲気になった時、ターゲルがアルルに大きめの袋を手渡した。
「お約束の黒胡椒です。もし足りないのであれば何時でもお越し下さい!今後一生、貴女様からは代金は取りませんので…」
「ありがとうターゲルさん」



黒胡椒を受け取ったアルル達は、黒胡椒屋を後にする…
そして宿屋へと向かう中、ウルフがリュカに確認の為尋ねてみる…
「なぁリュカさん…本当はターゲルさんがカンダタを殺す事はないと思ったから、あんな事をしたんだよね!?」
完全に単なる確認だ…ウルフはそう信じてる。

「………いや、きっと殺すと思ったんだけどねぇ~…予想が外れた。残念だったなぁ~」
何時もの軽い口調で嘯くリュカ。
多分嘘だ…ウルフの思いが正解であろう…
きっとそうに違いない………はず……と思う…



 
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