レーヴァティン

　だが英雄は城を囲むだけでまだ攻めなかった、それで言うのだった。
「迂闊に動いた者は斬る」
「そうしますね」
「そうだ、それよりもだ」
　謙二にも応えて話した。
「俺達はだ」
「ここは、ですね」
「そうだ、攻める用意をな」
「整えていきますね」
「迂闊に攻めてもな」
「攻め落とせる城ではないですね」
「それはもうわかっている」
　熊本城がそれだけの堅城であることはというのだ、本丸にある五層七階の黒い天守閣を見ての言葉である。
「既にな」
「だからですね」
「まずはな」
「攻める用意ですね」
「そしてそれが整ってな」
「それからですね」
「攻める、だから今は用意をする、そして」
　英雄はさらに言った。
「南、薩摩の方から来る敵軍にもな」
「備えておきますね」
「九州の連中の数は少ない、ならな」
　どうしてくるかもだ、英雄は話した。
「奇襲か敵を誘き出し」
「そのうえで、ですね」
「叩くかだ」
「ではそちらも」
「動かない」
　まずはというのだ。
「城を攻め落としてだ」
「その後で、ですね」
「攻めるが」
　それでもというのだ。
「今はだ」
「迂闊にはですね」
「攻めないことだ」
「それでは」
　謙二も頷いてだった、そのうえで。
　今は攻めなかった、英雄は攻めるよりも今は城を囲み攻める手筈を整えていった、それは内密に行われ。
　その中で英雄は兵達にも言った。
「囲みの奥においてだ」
「用意をですね」
「それを進めていきますね」
「今は」
「そうだ、敵にはだ」
　決してというのだ。
「見えない様にしろ」
「承知しました」
「敵には名内場所においてです」
「ことを進めていきます」
「そうしていきます」
「そのことも守れ」
　絶対にと言うのだった。
「いいな、若し見られるとな」
「そこからですね」
「見破られますね」
「そうなってしまいますね」
「だからだ」
　そうなるからだというのだ。
「今はな」
「抑える」
「そしてそのうえで」
「ことを進めていきましょう」
「怪しまれてもいい」
　これはいいというのだ。
「だがな」
「見付かることはですね」
「それは避けなくてはならないですね」
「断じて」
「怪しまれる位なら何でもない」
　例えそうなってもというのだ。