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架空戦記~東洋海戦争1941~

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第二十五話「東洋海海戦・5」

~神星ルドワ帝国side~
「司令!命令違反した艦全てが撃沈しました!」

「何っ!?」

見張り員の報告にミリアは驚愕する。当初こそ命令違反を犯したバイスタを怒りこそしたがそれで葦原皇国を足止め(バイスタは倒すつもりでいた)してくれるなら、と怒りを沈めた矢先の事であった。

「まだ離脱してから数分しか経っていないぞ!?」

「そ、それが…。敵の砲撃の命中率が異様でして…。最初の数発は外れていたのですがその後はほとんど命中しそのまま…」

見張り員の報告にミリアは絶句する。神星ルドワ帝国の海軍とてそこまでの命中率はない。精々が敵と自身が動いていない時のみである。そんな事はまずないので意味はないが。

「…」

「司令、このままでは…」

ミリアに艦長がおずおずと言う。葦原皇国が海戦に参戦した事によって数の優位は覆った。質の面でも葦原皇国は神星ルドワ帝国を上回っているのは明白であった。

「…葦原皇国が間に合うのは想定外であった」

「はい」

「本来ならアビン合衆国とイハワ王国を相手するだけでよかった」

「はい」

「そのために持てる戦力の全てを投入したはずだった」

「はい」

「…撤退する。前方に展開する艦を殿にする」

「了解しました」

撤退の命令をするミリアは手を握り唇を噛みしめて悔しそうにしていた。しかし、ミリアには悔しさを噛みしめている時間はない。ミリアの乗艦するバグナ級第四戦艦の近くに水柱が立つ。葦原皇国が放った砲撃であった。

「葦原皇国海軍が急速接近中!」

「急ぎ反転し撤退するぞ!後方の揚陸艦にも通信を入れて置け!」

「はっ!」

「しかし…葦原皇国は一体どれだけの戦艦を作り上げたのだ…?」

「水柱の勢いから明らかに41cmは超えていますな。最悪研究中の48cmすら超える可能性も…」

「いや、48cmの試射を見た事があるが明らかにそれ以上だ」

「なら50cm越え…?」

艦長はミリアの推測に顔を青ざめる。最新鋭戦艦であるバグナ級ですら積んでいるのは41cm連装砲三基であり葦原皇国は最悪の可能性として自分たちよりも一回りも大きい砲を実践配備している可能性があるのだ。

「あくまで可能性の話だがな。とは言えこれではっきりした。葦原皇国は我々(・・)より(・・)優れた(・・・)戦艦を(・・・)持って(・・・)いる(・・)

その事実は今後の計画を左右する程強烈であった。今まで葦原皇国は神星ルドワ帝国と同等若しくは僅かに下回っている程度と判断されていた。しかし、実際は神星ルドワ帝国を上回っている。これでは前提そのものが崩れるのだから。

「これは直ぐにでも陛下に報告するべきです!」

「分かっている。その為にも生きて帰らなければ…」

ミリアは殿となって敵艦隊を阻止する前衛を反転しつつあるバグナ級第四戦艦の戦闘指揮所から見ながらそう呟くのであった。
 
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