八条学園騒動記
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第五百四十二話 朝早くだったのでその一
朝早くだったので
博士がライゾウそしてタロと共に研究室に入るとそこには野上君がいた、野上君は丁度フレスコを拭いていたが。
博士達を見てこう言った。
「あっ、お帰りなさい」
「うむ、只今じゃ」
博士は野上君に挨拶を返した。
「野上君も元気そうじゃな」
「この通りです、ただ」
「ただ。何じゃ」
「今回も急に帰られましたね」
野上君が言うのはこのことだった。
「しかもまだ朝の六時ですよ」
「ああ、そうか」
「今日はたまたまこっちで寝泊まりして」
「朝早く起きたのじゃな」
「五時に起きまして」
それでとだ、野上君はフレスコを置いて博士に話した。
「ご飯を食べて歯を磨いて」
「それでか」
「はい、今はこうしてです」
「フレスコを磨いてか」
「奇麗にしています」
こう博士に話した。
「これからお部屋の掃除とかです」
「左様か」
「あと簡単な実験とかお」
「しようと思っておったか」
「高校の化学の授業でやるみたいな」
「そのレベルのか」
「はい、実験をして」
それでというのだ。
「楽しもうと思っていました」
「そうであったか」
「留守番してても」
特にという口調でだ、野上君は話した。
「他にすることないですからね」
「わしがおらんとな」
「はい、僕基本博士の実験とか開発とか観て」
「突っ込むな」
「まあ観るだけで」
それでというのだ。
「何もしないですけれどね」
「わしの実験はわしでやってな」
「助手は、ですね」
「観てもらう、わしのやることは人間の社会では犯罪であることが多い」
もっと言えばほぼ確実にそうである。
「だから手伝わせるとな」
「罪に問われるからですね」
「時代によってはわしと一緒におるだけでな」
人類史上最悪のテロリストとされる博士とだ。
「罪に問われたこともある」
「実際僕も捕まる恐れありますよね」
「連合では大丈夫じゃが」
実は連合では博士の助手は博士の碌でもない所業に突っ込みを入れる大事な立場として必要な存在とされている、その突っ込みの分博士が動きが止まることもあるからだ。
「しかしな」
「時代に場所によっては」
「異端審問の時代なぞな」
「あの時の欧州ですね」
「もうそれこそじゃ」
博士と共にいればというのだ。
「魔女とされてじゃ」
「火炙りですか」
「連合の処刑の様な拷問のフルコースの後でな」
「あの滅茶苦茶な」
「あの拷問の時点で死んだ者も多い」
それに耐えきれずだ、とかく異端審問の拷問は酸鼻を極めた。
「そしてな」
「僕もですか」
「あの頃の欧州ならな」
間違いなくというのだ。
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