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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第54話

~隠れ里エリン・ロゼのアトリエ~

「クスクス、予想通りとはいえ、歴代の”黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)”の中でも稀にある将来有望な人材ばかりのリィンお兄さん達の世代の”黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)”の喧嘩を買うなんて、相変わらずⅦ組のみんなは怖いもの知らずよね♪」
「れ、”歴代の黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)の中でも稀にある将来有望な人材ばかり”という事はさっきの”黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)”の人達はただでさえエリート揃いだという”黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)”の訓練兵の人達よりも更に様々な面が優秀という事なのでしょうか?」
エーデルガルト達が退室した後小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの言葉が気になったトワは不安そうな表情で訊ねた。
「当然よ。――――――”蛇の使徒”であった”蒼の深淵”のお姉さんなら、”黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)”の強さもある程度感じ取れたのではないかしら?」
「フフ、ここでわざわざ”結社”出身の私に話を振るなんて随分と皮肉な事をしてくれるわね。――――――まあ、貴女の言う通り、彼らは武術に関して専門家でない私でも感じ取れたわ。どの面々も執行者候補に挙がってもおかしくないレベルの強さの上、特に”副級長”の三人と”先輩”の三人はどの人物も”執行者”レベルと言っても過言ではない強さでしょうね。」
「何ですって!?」
「ぜ、全員が結社の”執行者”候補に挙がってもおかしくない上、”副級長”と”先輩”の6人は”執行者”レベルって…………!」
「…………確かに副級長と先輩の面々はどの人も他の人達よりは明らかに違うレベルの強さだった。…………わたしの推定だともしかしたら、ゼノやレオとも互角に渡り合えるかもしれない。」
「そしてそのような使い手達の纏め役であり、かつては”剣鬼”とも呼ばれていた頃のリィンの”本気”は一体どれほど強かったというのだ…………?」
「…………少なくてもセシリア将軍の話ではその頃のリィンは”鬼の力”とやらを自在に扱えなかったのだから、純粋な”八葉一刀流の剣士”としての実力なのであろうな。」
「ハハ…………エレボニアとは”格”が違うだけあって、一般兵どころか訓練兵の時点で”差”をつけるなんて、さすがはメンフィルだねぇ。」
レンに話を振られて答えたクロチルダの答えを聞いたその場にいる全員が血相を変えている中サラは驚きの声を上げ、マキアスは信じられない表情をし、フィーとラウラは真剣な表情で呟き、アルゼイド子爵は静かな表情で分析し、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。

「……………………」
「どうしたんだい、アリサ君?そんな暗い顔をして。」
一方暗そうな表情を浮かべて黙り込んでいるアリサに気づいたアンゼリカはアリサに声をかけ
「あ、はい…………さっきの人達――――――”灰獅子隊”の人達の宣戦布告に対して、勢いで反論したとはいえ、あの人達もリィンの事を形は違えど”大切な仲間”として想う気持ちは私達と同じなのですから、ひょっとしたら協力し合う事もできたんじゃないかって思って…………」
「それは…………」
「アリサさん…………」
アリサの話を聞いたガイウスとエマは辛そうな表情をし
「――――――悪いが俺はそうは思えないぜ。」
「ク、クロウ君…………?どうしてクロウ君はそう思ったの…………?」
しかしクロウは否定の答えを口にし、それを聞いたトワは不安そうな表情で訊ねた。

「連中は”軍人”で、俺達は”士官学院生”だ。ましてやⅦ組が結成された目的は黒獅子の学級(ヒュライン・クラッセ)とやらとは全然違う上、トールズと違って”メンフィルの軍人になることを前提の教育”を受けた連中と俺達じゃあ、思想を含めた何もかもが”違う”。――――――ギリアスの野郎に復讐する為に結成した”帝国解放戦線”のリーダーをやっていた俺も正体を偽る為にトールズの学生をやっていたからこそわかるぜ。――――――連中と俺達は相容れない関係だってな。」
「クロウ…………」
「例えで挙げるとすれば七耀教会と結社、遊撃士と猟兵といった”水と油”の関係なのでしょうね…………」
「そうだな…………ましてや軍は”上の命令が絶対”だから、”軍人”である彼らとわかり合える事は厳しいだろうな…………」
「フン、俺達の前を阻むのならば何者であろうと今まで通り協力して超えるまでだ。」
クロウの説明を聞いたエリオットは複雑そうな表情をし、複雑そうな表情で推測を口にしたトマスの推測にミュラー少佐は頷き、ユーシスは鼻を鳴らして静かな表情で答えた。

「うふふ、それじゃあそろそろ肝心のセドリック皇太子の件についての話をしましょうか♪」
するとその時レンが手を叩いてその場にいる全員を自分に注目させた。
「セドリックの…………先程もその話を聞いた時から気にはなっていたけど、もしかして宰相殿達によって虜囚の身になった上操られているセドリックの救出の件かい?」
「ええ。――――――単刀直入に言うと、”紅き翼”のこれからの方針として、セドリック皇太子の救出を最優先にするのだったら、その間だけメンフィルが”紅き翼”を支援してあげるって事よ。」
「ふええっ!?メンフィル帝国が紅き(わたしたち)に支援を…………!?」
「…………何故メンフィル帝国はそこまで皇太子殿下の身を案じておられるのでしょうか?幾ら”ヴァイスラント新生軍”に対する義理を果たすにしても、メンフィル帝国がそこまでする義理はないと思われるのですが。」
オリヴァルト皇子の質問に答えたレンの答えにその場にいる全員が血相を変えている中トワは驚きの声を上げ、アルゼイド子爵は真剣な表情で訊ねた。

「クスクス、その方が”戦略的な意味でメンフィル・クロスベル連合にとって有益”だからよ。」
「そ、それってどういう事なんですか…………!?」
レンの答えを聞いたエリオットが困惑した様子で訊ねたその時
「…………恐らくは”紅の騎神”の”起動者(ライザー)”である皇太子をアンタ達が奪還する事で、敵――――――エレボニア帝国政府の戦力を下げられるからじゃないかしら?」
「そしてあわよくばメンフィルの軍門に降っている皇女を”紅”の起動者(ライザー)にする為かもしれぬの。」
「そうね…………紅の騎神(テスタ=ロッサ)は他の騎神と違って、起動者(ライザー)の条件が”アルノール皇家の血を引いている事”だから、アルフィン皇女を紅の騎神(テスタ=ロッサ)の起動者にする事も可能でしょうね。」
「あ…………っ!」
セリーヌとローゼリア、クロチルダの推測を聞いたアリサは声を上げた。

「半分正解で半分間違いね。メンフィル・クロスベル連合にとっての敵――――――”鉄血宰相”の陣営から”紅の騎神”という戦力をオリビエお兄さん達に奪わせて戦力の低下を狙う事は正解だけど、アルフィン卿を紅の騎神(テスタ=ロッサ)の起動者にする事までは考えていないわよ。レン達メンフィルは”紅き翼”がセドリック皇太子を奪還するまでの過程として必ず見つける必要がある”セドリック皇太子の幽閉場所”の特定が目的なのよ♪」
「”皇太子殿下の幽閉場所”…………常識に考えればカレル離宮かバルヘイム宮だと思われるのですが…………」
「いえ、”星杯”での出来事を考えると恐らく皇太子殿下の幽閉場所は相当特殊な場所だと思われます。そしてその特殊な場所とは…………」
「――――――”黒の工房”の拠点の一つ、もしくは”本拠地”か。」
レンの説明を聞いたユーシスが戸惑いの表情を浮かべている中トマスとローゼリアはそれぞれ真剣な表情で推測を口にした。
「正解♪”黒の工房”の拠点――――――できれば”本拠地”を潰す事ができれば、鉄血宰相に協力している黒のアルベリヒを含めた黒の工房の勢力にとって大ダメージになるから、メンフィル・クロスベル連合にとっても都合がいいのよ♪」
「その口ぶりだとあたし達が皇太子殿下の救出の為に黒の工房の本拠地で暴れ回っている隙に、破壊工作をするつもりのようね…………」
説明を続けたレンの話を聞いてメンフィル・クロスベル連合の狙いを悟ったサラは真剣な表情で呟いた。

「そっちにとって皇太子の奪還は”学院の関係者であるオリヴァルト皇子の身内を助ける事”が”紅き翼”の役割でもあるのだから、皇太子の奪還の件に関しては特に異存はないと思うのだけど?」
「それはそうなのだが…………」
「かつてルーファス卿がアルバレア公の逮捕を私達に委ねたように、あからさまに私達を有効活用する思惑が見え見えだねぇ…………――――――って、よく考えてみたら”蒼のジークフリード”だったクロウなら”黒の工房”の”本拠地”を知っているんじゃないかい?」
「その名前は俺にとっては黒歴史だから、呼ぶなっつーの…………――――――それはともかく、”黒の工房”の”本拠地”についてだが転位で移動していたから、正確な場所は俺でもわからねぇよ。」
レンの指摘に反論できないガイウスが複雑そうな表情をしている中、疲れた表情で溜息を吐いたアンゼリカはある事に気づいてクロウに訊ね、訊ねられたクロウはアリサ達が知りたい情報は知らない事をアリサ達に伝えた。
「…………その件についてだが、妾に一つ試そうと思っている方法がある。」
「ほ、本当ですか!?」
「だ、だけど黒の工房――――――いえ、地精の”本拠地”は…………」
「800年前に魔女の眷属(アタシ達)と袂をわかっているって話なんだから、アンタでもわからないんじゃなかったの?」
するとその時ローゼリアがある申し出をし、それを聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中マキアスは驚きの声を上げ、エマとセリーヌは戸惑いの表情でローゼリアを見つめた。

「うむ、いまだに(よう)として掴めぬ場所じゃ。霊視を退ける小細工でもしておるのか、あるいは別次元に隠れておるのか――――――しかし”エレボニアに存在する”ことが確かならば、一つ試せそうな手があってのう。」
「”黄昏”の影響か、今のエレボニアでは霊脈がかつてない程乱れてしまっています。その中に、異常なまでに霊力が乱れた”特異点”というべき場が幾つか発生していることが騎士団の調査で判明しました。」
「妾の霊視によれば、エレボニア各地に合計7つほどの特異点が現れておる。クロイツェン、ノルティア、ノルド。そしてサザ―ラント、ラマールじゃな――――――あと2箇所はまだ見出せておらぬが。」
「それら計7つの”特異点”全てに霊的な”楔”を打ち込んで固定できれば――――――霊脈を通じて何処かにある”空白”地点を突き止められると思うわ。」
「…………要するに超広範囲への霊的なアクティブソナーのようなものね。」
「なるほどな…………工房自体ではなく”霊視できない場所”を突き止める…………現状その方法に賭けるしかなさそうだな。」
ローゼリア、トマス、クロチルダの説明を聞いて理解したアリサとユーシスは納得した様子で呟いた。

「フフ、でもあまり期待しない方がいいわよ。あくまで可能性レベルだもの。」
「残る2箇所の位置は不明…………成功率は多分、そこまで高くないけど、ユーシスの言うようにそれに賭けるしかないね。」
「フフ、我らが手分けすれば必ずや成し遂げられるはずだ。」
「ああ…………っ!」
それぞれ希望を持っている様子のⅦ組の面々にクロチルダは苦笑しながら釘を刺し、フィーとラウラの言葉にマキアスは力強く頷いた。

「うふふ、早速今後の当面の方針が決まりそうでよかったわね♪」
「ハッ、正しくは”そっちにとっても都合がいい”だろ?」
「えっと………先程レン皇女殿下は皇太子殿下の救出を目的として活動している間はメンフィル帝国がわたし達を支援してくれるという話ですけど、その支援は具体的にはどのような支援なんでしょうか?」
小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの指摘に鼻を鳴らしたクロウはジト目でレンを見つめて指摘し、トワは真剣な表情でレンに訊ねた。
「”紅き翼全体”――――――要するにカレイジャスにいる他のトールズの生徒や教官達の分を含めた食料や生活必需品、カレイジャスを動かす為に必要な燃料の無償補給に加えてⅦ組やその協力者達の新たな武装を用意してあげる――――――ウィルお兄さんに作ってもらう特別な武装をね♪」
「ウィ、”ウィル”ってもしかして何度かオリヴァルト殿下の話に出てきた…………」
「異世界の匠の王――――――”匠王”か。」
「ハハ、ウィル君が作るチート武装は間違いなく今後の戦いに役立つと思うよ。」
「そうだな…………武装としての性能は当然として、彼に特注した武装はいずれも古代遺物(アーティファクト)クラスと言っても過言ではない魔法効果も秘めた武装になる事はほぼ確実だろうな。」
「フフッ、今の話を聞いて守護騎士(ドミニオン)の一人である副長殿は内心回収したいと思っているのではなくて?」
「アハハ~、確かに古代遺物(アーティファクト)を管理している星杯騎士団に所属している身からすれば今の話は正直複雑に思っていますけど、”匠王”に限らず異世界の鍛冶技術は技術に魔法技術も取り込んでいる影響なのか、古代遺物(アーティファクト)のように何らかの魔法効果を持つ武装が一般の市場にも出回っているという話ですから、星杯騎士団(われわれ)が回収する権利なんて当然存在しないんですよ~。」
レンの説明を聞いたエリオットは目を丸くし、アルゼイド子爵は静かな表情で答え、苦笑しながら答えたオリヴァルト皇子の意見にミュラー少佐は頷いて答え、クロチルダに話を振られたトマスは冷や汗をかいて苦笑しながら答えた。

古代遺物(アーティファクト)クラスの武装…………一体どんな武装なんだろうか…………?」
「ま、少なくても今私達が使っている武装と比べると遥かに性能はいいだろうね。」
「ん。あの”劫焔”の魔剣ともまともにやり合える魔剣を作れるほどの技術者なんだから、間違いなく今のわたし達の戦力を向上させてくれるだろうね。」
ガイウスの疑問に対して答えたアンゼリカの推測に頷いたフィーは真剣な表情で答えた。
「それと”特異点”とやらを見つける為にエレボニアの各地に回る必要があるとの事だから、元エレボニア帝国領だった現メンフィル帝国領での活動を許可してあげるわ。」
「”元エレボニア帝国領だった現メンフィル帝国領”というとセントアークやユミル、そしてバリアハートを含めたクロイツェン州等と言った百日戦役と今回の戦争で得たゼムリア大陸のメンフィル帝国領ですか………」
レンの話を聞いたユーシスは複雑そうな表情で呟き
「フム…………ユミルでも活動できるという事は、シュバルツァー男爵閣下達にも面会してもいいのかな?」
「…………まあ、活動を認めている以上レン達メンフィルもオリビエお兄さん達がメンフィル帝国領であるユミルやユミルの関係者達に危害を加えない限り活動内容を制限するつもりはないけど…………念の為に聞いておくわ。何の為にシュバルツァー男爵夫妻に面会するのかしら?まさかとは思うけど、トヴァルお兄さんみたいにまたシュバルツァー男爵夫妻に何か余計な事を吹き込んで、シュバルツァー男爵夫妻がメンフィル帝国政府に対して今回の戦争を和解して欲しい嘆願でも送らせるつもりかしら?」
オリヴァルト皇子の質問に対して静かな表情で答えたレンは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて訊ねた。

「ハハ、そんなあまりにも厚かましすぎる事は死んでもできないよ。シュバルツァー男爵閣下達にはリィン君やエリス君の件も含めて他国の貴族であるにも関わらず、エレボニアの内戦では随分と迷惑をかけてしまったからね…………その謝罪と内戦でリィン君が協力してくれたことにアルノール皇家が感謝している事、今回の戦争の件も全ての元凶は私達アルノール皇家とエレボニア帝国政府だから、”ユミル襲撃”の件で戦争が勃発してしまった事で私達の事を気にせずに今のシュバルツァー男爵閣下達の祖国であるメンフィル帝国がこの戦争に敗戦しない事を願って欲しい事、そして”処罰”の件でリィン君に仕える事になったアルフィンをシュバルツァー家の使用人だろうと、リィン君の愛人だろうと、どんな立場でもいいからシュバルツァー家の一員として暖かく迎えいれて欲しい事をお願いする為だ。」
「フゥン?その口ぶりだとオリビエお兄さんはアルフィン卿をアルノール皇家の一員に戻す事は考えていないのかしら?」
レンの質問に対して苦笑したオリヴァルト皇子は静かな表情で答え、オリヴァルト皇子の答えを聞いたレンは意外そうな表情を浮かべて訊ねた。
「ああ。メンフィル大使館でパント臨時大使の話を聞いてからずっと考えていたが、”処罰”の件はアルフィン自身が望んだとの事だし、何よりも今もそうだが戦後のアルノール皇家が内戦の件で感謝と謝罪、両方の意味でリィン君に差し出せる”報奨”や”賠償”は”帝国の至宝”と称えられ、”エレボニアで最も尊き血”を引くアルフィンを差し出す事くらいしか思いつかないんだ…………」
「で、殿下…………!?」
「畏れながら意見をさせて頂きますが、内戦の件でリィンにアルフィン皇女殿下を差し出す事はさすがに問題があると思われるのですが…………第一トールズの一員であり、殿下がエレボニアの”第三の風”を吹かす為に結成した”Ⅶ組”であるリィンや我々が内戦終結に貢献するのは当然の事なのですから報奨等は必要ないと思われます。」
オリヴァルト皇子の意志を知ったユーシスは驚き、ラウラは困惑の表情で意見をした。

「確かに”リィン君はエレボニア帝国の士官学院の学生ではあったが、それ以前に彼はメンフィル――――――他国の貴族であり、軍人でもある”のだから、そのような”エレボニアにとっては客人の立場”でありながら内戦を含めたエレボニア帝国内で起こった問題解決に貢献してくれた彼に相応の報奨を与えるのがアルノール皇家――――――いや、”エレボニア帝国の義務”だ。そうでなければ周りの人達――――――特に彼をトールズに留学させてくれたリウイ陛下達メンフィル帝国に”示し”がつかないし、納得してくれないよ。」
「貴族や軍人がそれぞれの活躍が称される事で陞爵や昇進するのと同じようなものという事ですね…………ラインフォルトグループ会長であるイリーナ会長の娘のアリサ君も今の殿下の話については理解できるだろう?」
「はい…………社員や幹部の人達が功績を上げてもそれが正当に評価されない――――――つまり昇給や昇進されなければラインフォルトグループに愛想をつかせて離職するのと同じように、例え今回の戦争の件が無かったとしても、メンフィル帝国から留学してきているリィンが内戦で活躍した件を正当に評価しなかったエレボニア帝国とリィンを留学させたメンフィル帝国の関係が悪化するという事ですよね…………」
「…………ま、エレボニア――――――というか鉄血宰相はリィンを”正当に評価するどころか、利用するつもり”満々だったもんね。」
「そして実際にそんな事が起これば、”黄昏”の件がなくてもエレボニアとメンフィルの国家間の関係が悪化して、遅かれ早かれエレボニアとメンフィルの戦端が開かれる事になったでしょうね…………」
オリヴァルト皇子の話をすぐに理解したアンゼリカに話を振られたアリサは複雑そうな表情で同意し、静かな表情で答えたフィーの言葉に続くようにサラは重々しい様子を纏って推測した。

「それとこれを君達に伝えるのは心苦しく思っていたのだが…………君達Ⅶ組――――――いや、”紅き翼”が目的の一つとしているリィン君とセレーネ君がⅦ組に戻ってもらう件だが、最低でもリウイ陛下、もしくはシルヴァン陛下からリィン君達が紅き翼の一員として活動する許可を取る事ができなければ、かつてのクロウ君のようにリィン君達がⅦ組に戻ってもらう事を目的とする事は止めて欲しい。――――――これはエレボニア帝国皇子として…………そして私個人の両方の意志としての”要請”だ。」
そしてオリヴァルト皇子はアリサ達Ⅶ組にとって驚愕の要請を口にした――――――
 
 

 
後書き
ここでまさかのオリビエがⅦ組にとって裏切り行為かもしれない要請をしました(冷や汗)その理由については次の話で判明します。…………まあ、今までの話の流れから既に理由を察している人達もいると思いますがww

 
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