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シルバーマンジム のビスケット・オリバ

作者:咲さん
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始動するビスケット・オリバ

 
前書き
バキ道でビスケット・オリバの死亡が有力視されているので追悼の意味で投稿します 

 
【ビスケット・オリバ】はキューバ系アメリカ人でアリゾナ州立刑務所に収監されている囚人である。そんな彼が何故日本にいるのか?それは刑務所内での特殊な立場によるものだった。
【ミスター・アンチェイン(繋がれざる者)】と呼ばれる彼には刑務所を自由に出入りできる権利が認められている。犯罪者を捕獲する能力に長け、その功績と能力を見込まれ刑務所での刑罰と拘束を免れていた。彼を閉じ込めておける部屋も戦力も無いという理由もあるが。

そんな彼は日本での仕事の合間に通えるジムを探していた。
「ここにするか」


【シルバーマンジム 】は世界的に有名なジムで会員数も多くトレーニング器具も充実した国内最大手のジムである。ここならばある程度満足出来るトレーニングも出来るだろう。と足を踏み入れた。


街雄鳴造はアメリカへの留学を経てスポーツ理論を学びトレーナーとしてもボディビルダーとしても一流の人間である。そんな彼だからこそ目の前の人物の肉体に驚きを隠せずにいた。

身長は180cmを少し超えた程度であろうか。シルバーマンジムではボディビルダーやプロ格闘家が多く在籍している為、平均的な身長と言える。問題はその筋肉にあった。

(大胸筋がまるで臀部のようだ…上腕筋が頭よりデカい。ここまで発達した筋肉は見たことがない…一体どんなトレーニングをすればここまでの厚さに?)

驚きつつもトレーナーとしての仕事をする為に声を掛ける。

「こんにちは!シルバーマンジムのトレーナーの街雄です。ビスケットオリバさんはトレーニング経験者ですか?」

「仕事柄体力が必要でな。人並みにはしてるゼ。」

どう考えても人並みのトレーニングで付くような筋肉ではないと考えつつも、質問を重ねていく。

「普段はどのようなトレーニングをしていますか?」

「ヘリと引っ張り合っている」
冗談で言っているのだろうと笑いながら、そろそろトレーニングを始めようかと意識を切り替える。

「まずはベンチプレスから始めてみましょうか!何キロから始めますか?」

「600で良い」

耳を疑う。また冗談だろうかと顔を見るが顔は笑っておらず、本気で言っているのだと分かってしまった。
現在ベンチプレスの世界記録が500kgであり、その記録でさえ科学的に不可能と言われていた記録である。それに加えて更に100kgも上乗せして上げるなどスポーツ理論を学んでいた街雄としてはタチの悪い冗談としか思えなかった。トレーニング中の事故の防止はトレーナーの大事な仕事である。許可出来ない、と言おうとした所でビスケットオリバの肉体が改めて目に入る。
(何故だろう…彼なら軽々と上げてしまうような気がする…)
街雄自身人並み外れた肉体を持っているが、その筋肉からは未だ感じた事のない言葉で表せぬオーラや凄味を感じた。

「分かりました。チャレンジしてみましょう。」



重量が重量なだけにベンチプレスの補助は3人で行う事になり、手の空いているトレーナーを呼び補助を手伝ってもらう。下手をすれば怪我をするだけでなく命に関わる可能性もあり、自然と緊張感が高まっていく。まるで大会前の様な緊迫した雰囲気に周りの注目も集まり、人垣が出来てきた。
「何してるんだ?」「ベンチプレスだとよ」「記録でも取るのか?」「凄え筋肉だなァ」
そんな人垣の中に奏流院朱美もいた。
奏流院朱美は重度の筋肉フェチである。ボディービル大会を巡り様々な筋肉を見てきた。そんな彼女からしてもビスケット・オリバの筋肉は理解不能であった。
(彼は一体何者なの…?)
一目見た瞬間から感じたイメージ。まるで何十メートルもの筋肉の塊が無理矢理人の形に収められたかのような映像を幻視した。
「準備が出来ました」
その言葉で思考を中断し、これから起こる事を全て目に焼き付けんと意識を切り替え見た光景は


「フンッ」


そんな特に力を入れた様子がない気合の入れ方で600kgもの重量を軽々と持ち上げるビスケット・オリバの姿であった。

街雄達トレーナー含め周りの野次馬は驚きで言葉を発する事が出来ずに固まる。
そんな反応を気にすること事もなくビスケットオリバが行ったのは

更に二回目を行う事であった。
確かにベンチプレスをトレーニングとして行うならば2度目3度目と続けるのは当たり前の事である。
しかし世界記録を軽々と超えた重量をトレーニングとして使うというのは想像も出来ず、一度で終わりだと思い込んでいた面々は言葉を失う。

そうして時間が経ち100回を区切りに小休止に入るビスケットオリバ。未だにギャラリーは晴れることはなかった。
「次はスクワットでもやるか」
その一言で周りが色めき立つ。周りの期待を受けスクワットを始めようとしたその瞬間、彼の携帯電話の呼び出し音が鳴り響いた。
「悪いな街雄サン。仕事が入っちまった。」
そう言いシャワー室に向かうビスケットオリバを見送りながら街雄は思う。今日の驚きを、感動を忘れることは無いだろうと。

こうして謎の怪力無双ビスケット・オリバはシルバーマンジムで伝説となるのであった。

尚、トレーニング風景を撮影していたジム会員によって流失した映像が主にネットで拡散され、大きな話題になったとか。 
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