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教会の狼男

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第三章

「それもね」
「迷惑じゃなかったらいいですね」
「まあいいでしょ、しかし今夜は」
 美里はここで夜空を見上げた、クリスマスの夜だが雲一つない奇麗な夜空だ。そしてその夜空の真ん中に。
「月が奇麗ね」
「夏目漱石ですね」
「ええ、けれど今はね」
「アイラブユーじゃないですね」
「もうそう言う仲じゃないでしょ」
 交際、それも同棲しているからだというのだ。
「じゃあね」
「別の意味ですか」
「そう、ここはね」
 まさにというのだ。
「そのままの意味で」
「見事な月ですね」
「そうね、この月なら」
 それこそというのだ。
「イルミネーションもね」
「色褪せますね」
「本当にね、じゃあ」
「今からですね」
「教会に行きましょう」
 こう言ってだった、美里は文彦を教会まで連れて行った、そして酔った足で歩いて十分程度でだった。
 小さな、一軒家に近い教会を見た。看板に住所をそのまま名前にした教会がある。その教会の前に来てだった。
 二人は扉を開けたがここでだった、美里は文彦に話した。
「今私達普通にね」
「入りましたね」
「ええ。、お邪魔しますと言ったけれど」
「チャイム鳴らしましたし」
「戸締りしてなかったし」
「教会とか戸締りしてないですか」
「お寺とかいつも開いてるけれど」
 来る者は何時でも来られたし、これは神社や天理教の教会も同じだ。常に人がいてそれで応対をしてくれるのだ。
「それと同じね」
「そうみたいですね、じゃあ」
「神父さんかシスターさんをね」
「お呼びしますか」
「そうしましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 二人は誰かいませんかと呼ぶとだった、そこに。
 神父の服を着た男が来たがその男は。
 茶色の毛で覆われ顔は狼だった、美里はその神父を見て言った。
「狼男?」
「パーティーのメイクそのままですかね」
 文彦もこう言った。
「これは」
「そうみたいね」
「ですね」
「いや、夜はです」
 その神父が困った顔で言ってきた、渋い大人の男の声だ。
「シスターに任せていますが」
「そうなのですか」
「今シスターは司祭様のところにお手伝いに行っていて」
「貴方がですか」
「残っていたのですが。クリスマスのミサが終わってゆっくりしていました」
「ミサが終わって」
「これまで飲んでいました、神の血を」
 つまりワインをというのだ。 
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