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雪国

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第二章

「だからな」
「有給取れたのね」
「すぐに行かないと駄目か」
 家のある神奈川からだ。
「そうしないと駄目か」
「行かないと私知らないわよ」
「お前一人でも大丈夫なんだな」
「お料理も洗濯も出来るから」 
 家事は大丈夫だというのだ。
「だからね」
「行って来い、か」
「即刻ね、いいわね」
「わかったよ」
 本当に今日から有給だった、部長は奥さん連れ戻すまで有給でいいとまで言った。
「じゃあな」
「行ってらっしゃい」
「それじゃあな」
 こうしてだった、俺は一人荷物をまとめてそのうえで神奈川から秋田に向かった。女房の実家のある本庄まで言った。
 だが暖冬の筈なのにだ、秋田県は流石は秋田県だった。
 本庄は一面雪だらけだった、神奈川では雪なんて滅多に降らないので俺は一面の雪に苦労しながら女房の実家を目指した。
 そして何とか女房の実家に来るとだった。お義父さんが呆れた顔で出て来てそのうえで俺に言ってきた。
「話は聞いているよ」
「どうも」
「全く、君もデリカシーがない」
 こう俺に言ってきた。
「娘と話す前にだ」
「その前にですか」
「少しいいか」
 俺にこうも言ってきた。
「わしからも話がある」
「そうですか」
「娘は今家にいる」
「会わないって言ってますね」
「当然だ」
 言うまでもないという返事だった。
「今もカンカンだぞ」
「本当に言った瞬間すぐに殴ってきました」
 拳でだ、俺の左頬に女房のギャラクティカマグナムが奇麗に決まった後で右頬にブーメランテリオスが炸裂した。
「一瞬で」
「当然だ、女の人に禿とかな」
「言うものじゃないっていうんですね」
「君が言われたらどうだ」
「特に気にしないです」
 俺の場合はだ、今はふさふさでも将来はわからないから覚悟はしている。
「別に」
「君はそうでもな」
「女房は違っていて」
「女の人はな」
 それこそというのだ。
「怒る」
「男以上に」
「そうだからな」 
 それでというのだ。
「今もカンカンだ」
「お話してくれた通りに」
「だが。ここまで女房を連れ戻しに来たな」
「周り全員から言われまして」
 女房がいなくなった瞬間にだ、その日のうちに話を聞いた娘が親戚中に言って三日後には娘の友達が妹さんだという部下のOLの一人が会社中に伝えた。後は人の噂に戸口は立てられず伝わるのは風より速いという感じだった。
「それで、です」
「君で行こうとは思わなかったわ」
「思う前にでした」
 正直本当にその前にだった。 
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