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戦国異伝供書

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第六十五話 伊賀者その十

「ですから」
「それではでおじゃる
「はい、それでは」
「わかったでおじゃる」
 これが義元の返事だった。
「和上に任せるでおじゃる」
「それでは」
 雪斎は義元に応え外のことも進めていった、そうして。
 竹千代にはこう話した。
「外と戦のことはな」
「相手をですか」
「よく知らねばな」
 そうせねばというのだ。
「出来ぬ、内の政もであるが」
「外と戦は」
「さらにじゃ」
「相手のことをですか」
「よく知り動きや考えもな」
 こうしたものもというのだ。
「よく知ってな」
「そのうえでことを進める」
「言うなら将棋や囲碁でな」
「そうしたもので、ですか」
「相手の動きをよく見てな」
「そして考えもですか」
「読んでじゃ」
 その様にしてというのだ。
「こちらは動き」
「勝っていくものですか」
「うむ、しかしな」
「しかし?」
「外のことはこちらが総取りするものではない」
「その利を」
「うむ、相手もじゃ」
 そちらもというのだ。
「お互い利を得て時として和す」
「そうしたものですか」
「そうじゃ、それでこそ相手も攻めてこぬしな」
「憂いがなくなりますか」
「だから武田殿とも北条殿ともな」
「恨まれぬ様にですか」
「していき」
 竹千代にさらに話した。
「こちらもじゃ」
「利をですな」
「得るのじゃ」
「そうしていきますか」
「それが外の政じゃ、覚えておくことじゃ」
「わかり申した」
「そして相手を知るにはな」
 それにはともだ、雪斎は話した。
「わかるであろう」
「はい、和上は僧の方々のつてを使われていますが」
「お主はじゃ」
「半蔵、伊賀の忍達をですな」
「使ってな」
 そのうえでというのだ。
「相手のことをよく知るのじゃ」
「わかり申した」
 竹千代は雪斎の言葉に素直に頷いて応えた。
「さすれば」
「その様にな」
「していきまする」
「さすればな」
「相手のことを知ることが出来」
「ことをよく進められる」
「左様じゃ」
 こう竹千代に話した、ここで彼に茶に餡子を周りにふんだんに重ねたぼた餅を出してそのうえで勧めた。
 そして二人で茶とそのぼた餅を食べつつさらに話した。
「だから殿もじゃ」
「それがしが半蔵を家臣に迎えたことを喜ばれたのですか」
「左様じゃ。どうも今川家はな」
「忍はですか」
「弱いからな」 
「そこにですか」
「お主が忍を迎えた」
 それがというのだ。
「当家の大きな力になるからじゃ」
「それ故に」
「殿も喜ばれてな」
「そしてですか」
「拙僧もじゃ」
 雪斎自身もというのだ。
「喜んでおるのじゃ」
「そうなのですか、では」
「その服部という者しかと使う様にな」
「そうします」
「大事にせよ、人はじゃ」
 まさにというのだ。
「お主にとって最大の宝となる」
「だからこそ」
「金銀や武具や書よりもな」
「人はですな」
「宝じゃ」
 それだというのだ。 
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