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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ

作者:かびちゃ
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第二話 ステータスプレート

次の日、俺たちは下山し、ハイリヒ王国というところに連れてかれた。どうやら光輝たちがこの世界を救うことにしたらしいので、戦闘訓練をするためにも王国の騎士団に鍛えてもらうそうだ。

俺は持ち物を確認してみる。直前まで持っていた改造エアガンとその弾、制服のポケットに入っていたシャーペンと消しゴム、手帳、護身用の針といったところだ。シャーペンは数本入っていたので、女子の何人かに渡して護身用にした。一応替えの芯もある。


下山し始めてだいたい三十分ぐらいだろうか。俺たちは山を完全に下り、町を抜けて王宮までやってきた。
王宮には、いかにも王様という身なりをした人と、王女様、その娘さんと息子さんがいた。

そして自己紹介される。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。

その後はご飯を食べ、騎士団長のメルド・ロギンスから銀色のプレートを一つ渡された。

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

要するに生徒手帳みたいなものだ。ついでにライトノベルなんかでよくあるステータスを表示できるとのことだ。

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

聞き慣れない単語に光輝が質問した。

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属たちが地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

なるほど、納得いく説明だ。俺は針に指を刺し、出てきた血をプレートに擦りつけた。

すると……

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緋鷹幸 15歳 男 レベル:1

天職:時の番人

筋力:400

体力:350

耐性:200

敏捷:250

魔力:150

魔耐:110

技能:時止[5秒][+瞬間停止]・巻き戻し[1分]・霊力変換・全属性適正・暴走[+覚醒]・魔力操作・魔力自動回復・護身術・徒手空拳適正・マイナスG耐性・空間制圧能力・身体能力強化・射撃・威圧・言語理解

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表示された。どうやら俺は、時を操れるらしい。試しにやってみる。確証を持たせるため、ペンを投げてから能力を発動させた。すると‥‥‥

「お、おお〜。ホントに止まった‥‥‥」

5秒はあっと言う間なためすぐにペンは動き出す。しかしこれは、戦闘においてとてつもないアドバンテージだ。時を止めている隙にパンチを数発入れて離脱することも可能だ。射撃も1秒に二発撃てるので、そのうちとんでもないことになりそうである。

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

俺は‥‥‥ぶっちゃけいらない。最低限の軽い防具があればいい。

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

俺のは‥‥‥多分珍しいやつだ。多分。拓人や蜂起のステータスも見てみた。すると‥‥‥

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林拓人 15歳 男 レベル:1

天職:指揮の番人

筋力:50

体力:200

耐性:300

敏捷:20

魔力:400

魔耐:100

技能:指揮[軍隊指揮][物理指揮][魔法指揮]・魔力操作・複合魔法・魔力自動回復・言語理解

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恷蜂起 15歳 男 レベル:1

天職:記憶の番人

筋力:300

体力:220

耐性:200

敏捷:250

魔力:200

魔耐:100

技能:記憶操作[抹消][書換][植付]・中国拳法適正・魔力操作・魔力自動回復・先読・言語理解

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全員の転職が〇〇の番人だった。思わず顔を見合わせる。何か、特別な意味がありそうである。

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

平均が10ならば、俺たちは‥‥‥チートだ。技能も恐ろしい能力だと思われるものが揃っている。


メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……


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天之河光輝 15歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

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オール100だった。普通に見れば中々にチートなはずだ。しかし、俺たちの能力が高いからか、あまり驚かない。

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。

‥‥‥俺たちは既に団長レベルなのは内緒だ。

俺の順番になったので、プレートを団長に手渡す。

「どれどれ‥‥‥‥‥‥‥なんだと!?」

叫ぶ団長。驚いたのはクラスメイトだ。

「ど、どうしたんですか?」

「ば、番人‥‥‥まさか‥‥‥‥ステータスも自分以上のが多くある‥‥‥」

やはり番人は特別な意味があるらしい。その後続けざまに拓人と蜂起が見せたのだが、やはり驚愕していた。

「そうか‥‥‥君たちが‥‥‥‥‥そこで待っててくれるか?あとで案内したいところがある」

「あっはい」

その後も団長はステータスを見ていく。そのうちに南雲の番になった。なんか微妙な顔つきをしている。すぐに団長も微妙な顔つきになった。

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

歯切れ悪く南雲の天職を説明するメルド団長。それに南雲をイジメている男子が食いつく。

檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

ウザい。とてつもなくウザい。俺は一発でブチ切れた。

「‥‥‥‥おい檜山」

「あ、なんだ‥‥‥‥ぐっ‥‥」

威圧で黙らせる。

「テメエ‥‥‥殺すぞ」

「い、いや。別になにも」

「殺 す ぞ ?」

「スミマセンデシタ」

「そこで嘲笑っていたお前らもだ。妙なことをしたら‥‥‥殺す」

恐ろしいぐらいの剣幕で捲し立てる。

「それとな‥‥‥千秋と若芽も非戦系だからな?弱い人には大きく出て強い人には媚を売る。越後屋かってんだ。ウザったいんだよ」

俺はもう一度檜山を睨み、拓人たちの元へ戻った。その後は淡々と進み、俺たちはメルドさんに倉庫みたいな場所へ連れて行かれた。

「実はな‥‥‥番人の天職を持つ者が現れたら渡すように言われたアーティファクトがあるんだ」

なんと専用のアーティファクトがあるらしい。

「拓人‥‥‥君は指揮だな?この指揮棒を使ってくれ」

「うん、もろ指揮者だわ」

「蜂起‥‥‥君にはこのペンとノートだ。ここに書き込めば効果が発動するらしい」

「デ○ノートみたいだな」

「最後に、幸。‥‥‥君には、この装備一式だ」

「ん‥‥‥?」

俺はその装備を見たことがあった。悪の組織に連れ去られ、無理矢理肉体を改造され、人類の自由と平和を守るために戦った、哀しき戦士の姿だ。

「仮面‥‥‥ライダー?」

そう、その装備は仮面ライダーの姿をしていたのだ。完全に装着するタイプのようだが‥‥‥。

「この装備は、どうやら風を受けると起動するらしい。ベルトに装備一式が収納されるみたいだが‥‥‥試してみてくれるか?」

「はい‥‥‥」

ガチャ

ベルトが吸い付くように俺の腰回りについた。

「風、ねえ‥‥‥とりあえず『変身』できない‥‥‥は?」

ガシャン‥‥‥ガシャン‥‥‥‥ガシャン


収納された装備が体に展開していく。あっと言う間に顔から下は装備で包まれた。さらに‥‥‥‥

「ファッ!?どこから出てきた!?」

どこからともなく仮面が現れたのである。どうやら鼻から顎の部分とそれより上の部分で分かれるらしい。

俺はヘルメットの要領で上半分を被り、鼻からした‥‥‥クラッシャーとでも言っておこう。クラッシャーを装着した。

カチッ‥‥‥‥

装着が完了した。メルドさんも初めて見たらしい。驚愕した顔をしている。

装備の着心地は中々のものだ。暑くも寒くもないし、動きやすい。

「メルドさん、何か固いものをお願いします」

「固いもの?これとかはどうだ?」

メルドさんは近くにあった鉄の板をよっこらしょと持ち上げる。

「ようし‥‥‥!」

力を込める。すると‥‥‥


ガシャン!

目のライトが光った。力が充填する。

「セイッ!!」

バギィ!!

「‥‥‥‥‥(驚愕)」

俺は鉄の板を殴ったところ、簡単に板が折れてしまった。

「これは‥‥‥すごいな‥‥‥」

俺は思わず、そう零すのだった‥‥‥‥。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さらに二週間が経過した。 俺のステータスは現在こんな感じだ。

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緋鷹幸 15歳 男 レベル:10

天職:時の番人

筋力:600

体力:500

耐性:350

敏捷:400

魔力:300

魔耐:150

技能:時止[7秒][+瞬間停止]・巻き戻し[1分]・霊力変換・全属性適正・暴走[+覚醒]・魔力操作・魔力自動回復・護身術・徒手空拳適正・マイナスG耐性・空間制圧能力・身体能力強化・射撃・威圧・言語理解

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止められる時間が少しだけ伸び、能力も底上げされた。ハジメ‥‥‥南雲も能力が少しだけ上がったらしい。錬成できる範囲が広がったのを見せてもらった。ハジメは剣だけで戦うのではなく、錬成で身動きを封じてから剣でトドメを刺す戦い方にしたらしい。これには騎士団も感心していた。

「‥‥‥時止!」

俺は時を止める練習をしていた。練習すればするほど止められる時間は長くなる。ちなみに俺たち番人組は魔力操作というものがある。これのおかげで魔法陣や長ったらしい詠唱をしなくても魔法を発動できるのだ。

「っと‥‥‥あいつらまたハジメに何かしてるな」

俺は止まった時の中で、今にも蹲ったハジメを蹴ろうとする檜山を見つけた。ビキビキと青筋が立つ。俺は止まった時の中を移動して檜山の真後ろに立つ。俺は既に変身しているので、檜山の後頭部を軽く殴る。軽くとは言っても鉄板を簡単に折る拳だ。並大抵の威力ではない。


「そして時は動き出すってね‥‥‥」

時間の流がもどる。すると檜山が前のめりに吹き飛んだ。丁度白崎たちも駆けつけたとこらしい。あ然とした顔でこちらを見ている。

「バカは言っても分からないんだな。お前ら、俺が稽古してやるよ‥‥‥‥」

「え、いや俺はいいよ‥‥‥」

「ア゛ア゛! ?」

威圧も発動させる。許すつもりは毛頭ない。

「テメエ等覚悟しろよ?」

反論すらさせないほどの怒りを込める。かつて俺は、イジメのせいで聖を失った。二度と、あんな目に合う人が消えてほしいが故の行動だ‥‥‥‥。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。俺はハジメと一緒に部屋へ戻る。

「前途多難だと思ってんだろ?」

「まあね‥‥今日もあのザマだったし」

「ま、あのあと締め上げたからしばらくは大人しいさ」

「‥‥中々に凄かったけどね‥‥思い出すのも怖いや」

その時、コンコンと扉がなった。時間的にはもうかなり遅い。ハジメが身構え、俺も臨戦態勢を取るが、それは杞憂に終わった。

「南雲くん、緋鷹くん、起きてる? 白崎です。ちょっと、話したいんだけど‥‥‥いいかな?」

「ファッ!?」

「Oh‥‥‥まあいいや。開けてやれ」

「う、うん‥‥‥‥いやなんでやねん」

関西弁でツッコミを入れたハジメ。俺も白崎の姿を見て納得した。白崎は、純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの姿だったからだ。無防備すぎて怖い。

とりあえずハジメが中に招き、俺が備え付けの紅茶モドキを入れる。ついでに洋菓子みたいなのもあったので併せて出す。白崎は嬉しそうに食べてる。ハジメはむせた。それを愛おしげに見る白崎。

「んて、話したいことって?」

俺が問う。ハジメはその声で我に返ったみたいだ。

「明日の迷宮だけど……南雲くんたちには町で待っていて欲しいの。教官たちやクラスの皆は私が必ず説得する。だから! お願い!」

「南雲くんたち、ねえ。俺とハジメ、拓人、蜂起のことか?」

「うん‥‥‥‥‥」

「えっと……確かに僕は足手まといとだは思うけど……流石にここまで来て待っているっていうのは認められないんじゃ……」

「俺は連れ出されそうだぞ?」

「違うの! 足手まといだとかそういうことじゃないの!」

「‥‥‥何かあるな。話してみろ」

「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢をみて……南雲くんたちが居たんだけど……声を掛けても全然気がついてくれなくて……走っても全然追いつけなくて……それで最後は……」

俺は察した。ハジメも察したらしい。あえて答えを促す。

「最後は?」

「……消えてしまうの……」

「……そっか」

「しかし‥‥所詮夢は夢と片付けられそうだな‥‥‥」

「そうだよ。夢は夢だよ、白崎さん。今回はメルド団長率いるベテランの騎士団員がついているし、天之河君みたいな強い奴も沢山いる。むしろ、うちのクラス全員チートだし。敵が可哀想なくらいだよ。僕は弱いし、実際に弱いところを沢山見せているから、そんな夢を見たんじゃないかな?」

「それでも‥‥‥心配なの‥‥‥‥離れてしまいそうで‥‥‥」

「そっか‥‥‥それでも……それでも、不安だというのなら……」

「……なら?」

ハジメは若干恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐに香織と目を合わせた。

「守ってくれないかな?」

「え?」

「お前なあ‥‥‥それ男子が女子に言うセリフじゃないよな‥‥‥‥」

「あはは‥‥‥でも、実際そのぐらい弱いからさ」

「そう‥‥‥か‥‥‥うん、分かった」

香織は決然とした眼差しでハジメを見つめた。

「私が南雲くんを守るよ」



(おいおい‥‥ヒロインとイケメンが真逆じゃんか‥‥)


思わず毒づいてしまうのだった‥‥‥‥。
 
 

 
後書き
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次回もお楽しみに!! 
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