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星河の覇皇

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第七十三部第一章 野心家のはじまりその二

「ただ優れた資質とカリスマだけでなくね」
「謀略もですね」
「頻繁に使ってきてしかもね」
「成功させてきたのですね」
「現に彼のこれまでの政敵の多くは失脚しているわ」
「そうなのですか」
「アウトカースト政府や政党の中でね」
 同じ政党の中でも政争はある、権力闘争というものは同じ組織の中でも起こり勝ち抜かなくてはならないものなのだ。
「次から次によ」
「失脚ですか」
「急死はいないけれど」
「それでもですか」
「動けなくなったり急病になったりは多いわね」
「急病ですか」
「そう、急病よ」 
 伊東はあえて言った。
「例えば梅毒になったりね」
「梅毒ですか」
「わかるわね」
「そうしたこともする方ですか」
「普通あの病気は発病するまで数年かかるわ」
 この時代でもこの病気は存在している、性病は感染力は弱いが人間の煩悩や本能からどうしてもなくならない病気なのだ。
「けれどあるわね」
「はい、病気も仕組みを変えられます」 
 小柳は暗い顔になり伊東に答えた。
「発病を早めたり症状を変えたり」
「現代の、マウリアの医学では早期に完治出来ない症状ならね」
「足止めが出来ますね」
「梅毒はもう死ぬ病気ではないわ」
 この時代ではだ、二十世紀中頃までとは違い。
「あと結核もね」
「その病気もですか」
「何故か彼の政敵で急に罹った人がいるわ」
「梅毒にもですね」
「そして入院してね」
「政治的な動きが止まり」
「その間に彼は前に進んだのよ」
 前を阻む政敵が急病でその前にいなくなった時にだ。
「これでわかるわね」
「そうした謀略も使う方ですか」
「ええ、私はこうした謀略は使わないわね」
「はい、確かに」 
 実際にだとだ、小柳も答えた。
「総理は買収等を使われますね」
「金銭を主にね」
「あらゆることで」
「買収は楽なのよ」
「相手を抱き込むには」
「それに良心の咎めも殆どないわ」
 良心がない者はまずいない、伊東についてもこれは同じだ。それこそ相当な人格障害者でもない限り人間には良心が存在する。
「お金や欲しいもの、異性や同性を以てね」
「買収してですね」
「抱き込むのよ、そうすればね」
「容易にですね」
「進められるわ、けれど彼はね」 
 ジャバル、彼はというと。
「手段を選ばないわ」
「病気にまでさせるとは」
「買収も使っている様だけれど」
「その他にもですね」
「そうしたこともしているわ」
「褒められた手段ではないですね」
「ええ、私から見てもね」
 謀略も得手とする伊東からもとだ、小柳に話した。
「そう思うわ、私はね」
「病気を使うことは」
「そこまでは出来ないわ」
「総理は買収が主ですね」
「あれが一番楽だしね」
「そうですね、ですが」
「それが有効でも相手を病気にさせることは」
 性病なり結核なりにというのだ。 
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