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ヘドロ

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第五章

「ちょっと飲んで死ぬ」
「終戦直後実際に出回ってたんだってな」
「あんなの飲んだら」
「死ぬからな」
 それでというのだ。
「それを飲んでる奴もいるからな」
「それで死ぬ奴も出てますね」
「そうだよ、それで腐った中にいるとな」
 それで、だった。
「どんどんな」
「腐っていって」
「酷くなる一方だな」
「はい、本当に」 
 見ればそこも問題だった、マンションの住人達はその行いはどんどん醜悪なものになっていた。殺人もバラバラ殺人になり覚醒剤はどんどん濃くなり暴力もさらに増えていた。
 それでだ、唯和はこうも言った。
「もう屑ばかりでも」
「屑の中のな」
「屑になってますね」
「そんな中にはな」
「もう屑でもですね」
「入りきれないものだよ」
「腐り過ぎてですか」
「だからこれまで入って来た様な連中もな」
 凶悪犯あがりや人間の屑と呼ばれる連中でもというのだ。
「次第いな」
「寄らなくなるんですね」
「そうだよ、腐り過ぎてな」
「それで今いる連中は、ですか」
「どんどん腐ってな」
 そしてというのだ。
「これまたどんどんな」
「碌でもない死に方していって」
「そのうちな」
「誰もいなくなるんですね」
「都の人が言うにはもうすぐだよ」
「いなくなりますか」
「ああ、全員な」 
 マンションの中の住人達がというのだ。
「だからな」
「もう少し見ていくことですね」
「そうしていこうな」
「それじゃあ」
 唯和は達也の言葉に頷いた、そして実際にだった。
 マンションの中ではそれからも殺し合いが続き薬物や酒、性病そして不潔さ故の悪質な病気で住人達が死んでいってだった。
 遂に都庁の方から連絡が来た。
「遂にな」
「一人ですか」
「ああ、いなくなったらしい」
「そうですか」
「言ったろ、腐ったところはな」
「余計に腐ってですね」
「最後にはな」
 それこそというのだ。
「誰もいなくなるんだよ」
「そういうものですか」
「臭い沼地ならまだ生きものはいるんだよ」
 ここで達也や唯和にこうも言った。 
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