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戦国異伝供書

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第六十四話 婚礼の話その五

「やがてはと考えておりますので」
「そういいうことでおじゃるな」
「ですから尚更です」
「手塩にかけて育てているでおじゃるな」
「彦五郎様と共に」
「彦五郎も頼むでおじゃる」
「承知しておりまする」
「ではな、そして竹千代の室は誰か」
「関口殿の」
 雪斎は義元の今の問いに静かな声で答えた。
「如何でしょうか」
「あ奴のとなると」
「はい、殿の妹君の」
「娘であるからな」
「竹千代は今川家の縁戚ともなります」
「そうでおじゃるな」
「彦五郎様の従兄弟となり」
「しかも麿の姪の婿となり」
 義元は自分のことからも話した。
「血はつながっていないとはいえ甥になる」
「はい、そうしたことも考えまして」
 そのうえでというのだ。
「拙僧は考えておりまするが」
「よいことでおじゃる」
 義元は雪斎に笑って答えた。
「和上の考え、そこまでとは」
「思われなかったですか」
「いつも深く広く先の先まで考えているでおじゃる」
「さもないとです」
「何も出来ぬでおじゃるな」
「政も戦も」 
 そのどちらもというのだ。
「そうしてです」
「麿にも話してくれるでおじゃるな」
「そうなのです、では」
「その様にするでおじゃる」
「さすれば」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 雪斎は義元と共に竹千代の妻にする者の話をしていった、そして雪斎の言う通りに決まると義元はすぐにだった。
 竹千代を駿府城の茶室に呼びそこで雪斎と二人で彼に話した。
「そなたの正室が決まったでおじゃる」
「どなたでしょうか」
「関口刑部少輔の娘でおじゃる」
「関口殿となりますと」
 竹千代は義元のその話を聞いて驚いて言った。
「殿の」
「ほっほっほ、その通りでおじゃる」
 義元は竹千代の驚きに余裕の笑みで応えた。
「麿の妹の娘即ち姪でおじゃる」
「左様でありますな」
「つまりお主はでおじゃる」
「殿の身内にですか」
「なってもらうでおじゃる」
「何という光栄」
「彦五郎とも従兄弟になるでおじゃる」
 こうもなるというのだ。
「どうでおじゃるな」
「全く以て」
「そう思うでおじゃるな」
「まことに」
「ではでおじゃるな」
「はい、夢野様なお話ですが」
「夢でないでおじゃる」
 義元は竹千代にこのことも断った。
「ではでおじゃる」
「はい、その縁談で」
「そなたは正室を迎え」
「これからは」
「今川家の身内として働いてもらうでおじゃる」
「そして」
 雪斎も竹千代に言ってきた。
「元服であるが」
「はい」
「正室を迎えると共にな」
「そちらもですか」
「しようぞ」
 優しい声での言葉であった。 
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