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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第49話

~隠れ里エリン・ロゼのアトリエ~

「な――――――」
「ええっ!?あの娘って確かヘイムダルの夏至祭で起こったテロで乱入して”帝国解放戦線”を圧倒していたメンフィル帝国皇女の…………!」
「何ですって!?という事はアンタがあの”殲滅天使”レン・マーシルン皇女…………!?」
「それ以前に何でアンタが外界から閉ざされているこの隠れ里にいるのよ!?」
「おお……っ!小悪魔属性の仔猫ちゃんとは新鮮で最高じゃないか…………!」
「アンちゃん…………驚く所が間違っているよ…………」
「ったく、こんな状況でもいつも通りの反応をするとか、もはや呆れを通り越して感心に値するかもな、ゼリカのそういう所は…………」
「…………ハハ…………まさかここで”西ゼムリア通商会議”以来の再会になるとはね。確かこの里は特殊な方法でしか出入りできないはずなのに、一体どうやって私達がいる所を探し当てた上、この場に現れる事ができたんだい、レン君?」
レンの登場に仲間達がそれぞれ驚いている中ミュラー少佐は驚きのあまり絶句し、アリサとサラ、セリーヌがそれぞれ信じられない表情で声を上げている中、興奮した様子で声を上げるアンゼリカの様子に脱力したトワとクロウは呆れた表情で呟き、オリヴァルト皇子は呆けた後疲れた表情でレンに問いかけた。

「うふふ、探し当てるもなにも”魔女の眷属(ヘクセンブリード)は今回の戦争限定で、メンフィル帝国と協力関係を結んでいて、その関係でメンフィル帝国の学者や軍の関係者がエリンに滞在している”から、わざわざオリビエお兄さんたちを探すような事はしていないわよ?」
「へ、”魔女の眷属(ヘクセンブリード)は今回の戦争限定で、メンフィル帝国と協力関係を結んでいるって…………!」
「そ、そういえば見慣れない人達が里に随分いる事が気になっていましたが、まさかその方達がメンフィル帝国の…………!?」
「………………………………」
「――――――一体どういう事なのよ、ロゼ!?」
レンが口にした驚愕の答えに仲間達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは信じられない表情で声を上げ、エマは不安そうな表情で呟き、クロチルダは複雑そうな表情で黙り込み、セリーヌは厳しい表情でローゼリアに問いかけた。
「…………その小娘は”協力”等と言ったが、事実上この里は妾も含めてメンフィル帝国に隷属しているようなものじゃ…………」
「”隷属”とは人聞きが悪いわね~。ちゃんとロゼもそうだけど、里の人達にもメンフィル帝国に協力するかしないかの”選択権”は提示した上、奴隷みたいに何らかの作業を強制していないわよ?」
セリーヌの問いかけに対して重々しい様子を纏って答えた後苦々しい表情を浮かべて自分を見つめるローゼリアの言葉に対してレンは呆れた表情で指摘した。

「フン…………里の者達の半数を”本国”とやらがある異世界に幽閉した上、メンフィル帝国の関係者達にこの里にある知識を根こそぎ吸収させている上、長である妾を”戦場”に駆り出す”契約”を結ばせておきながら、よくもそのような白々しい戯言を口にできるものじゃの。」
「何ですって!?」
「さ、里のみんなの内の半数が異世界――――――メンフィル帝国の本国に…………!?しかもお祖母(ばあ)ちゃんが”戦場”に駆り出される”契約”を交わしたって…………!一体何があったの、お祖母ちゃん!?」
レンの指摘に対して鼻を鳴らして苦々しい表情を浮かべて答えたローゼリアの答えにセリーヌは血相を変えて声を上げ、表情を青褪めさせたエマはローゼリアに問いかけた。

「オリビエお兄さん達はロレントの大使館でパパの代理を務めているパント卿と会談する経緯でアリシア女王達とも面会したわよね?その時にアリシア女王達から内戦の間にメンフィルが要求した1度目と2度目の要求内容は教えてもらっているわよね?」
「は、はい…………それが今の話とどう関係しているんでしょうか…………?」
エマの様子を見て自分達に問いかけたレンの問いかけに対してトワは不安そうな表情で答え
「うふふ、1度目と2度目、そして3度目のメンフィルの要求内容を全て知る事ができたオリビエお兄さんやⅦ組のみんなは不思議に思わなかったのかしら?――――――”3度目の要求内容には1度目の要求からあった蒼の深淵の身柄引き渡しがなくなっていた事”に。」
「そ、そういえば…………」
「…………確かに今思い返してみると、3度目の要求内容には”蒼の深淵”の件はなくなっていたね。」
「同族を大切にするメンフィル帝国――――――いや、”闇夜の眷属”の”特殊性”を考えるとメンフィル帝国はエリスの拉致やリィンへの脅迫に関わっていたクロチルダさんの事を絶対に許さないと思われるのだが…………」
「!…………まさか、メンフィル帝国は内戦でメンフィル帝国に対して犯した深淵殿の罪を許す代わりに、この里に協力関係を結ばせたのでしょうか?」
レンの指摘に対して心当たりがあるマキアスは不安そうな表情を浮かべて呟き、フィーとガイウスはクロチルダに視線を向けて複雑そうな表情で呟き、事情を悟ったアルゼイド子爵は真剣な表情で自身の推測をレンに問いかけた。

「そうじゃ…………その小娘――――――いや、メンフィル帝国はどのような手段を使ったのかわからぬが外界から閉ざされているこの里の場所を把握した上、結界まで破り、その小娘が軍を引き連れてこの里に押し入り…………内戦で犯したそこの放蕩娘の重罪やメンフィル帝国が執行する予定である放蕩娘の処罰内容を妾に説明し、放蕩娘が犯したメンフィル帝国に対する罪を許して欲しければ、今回の戦争に協力する事を突き付けたのじゃ…………」
「…………ちなみに私がその件を把握する事ができたのも、長殿から接触があった際に教えてもらった為、その件に関してもリィン君達の件同様”後の祭り”だった為私――――――いや、七耀教会も何もできなかったのです…………誠に申し訳ございません…………」
レンの代わりにローゼリアが重々しい様子を纏って答え、トマスは複雑そうな表情で説明を続けた後エマとセリーヌを見つめて頭を下げて謝罪した。


1月5日――――――

~魔の森~

「――――――それっ!」
レン率いるメンフィル軍が見守っている中魔女の眷属(ヘクセンブリード)が扱っている転位石の前で集中していたペテレーネは自分達の侵入を阻んでいた魔女の眷属(ヘクセンブリード)の結界を解除した。
「うふふ、これで結界は完全に解除できたけど、魔女の眷属(ヘクセンブリード)は一体どんな歓迎をしてくれるのかしら♪」
その様子を見守っていたレンは小悪魔な笑みを浮かべ
「レン、何度も言ったけどくれぐれも最初から手荒な真似をするような事は控えてね?」
「うふふ、わかっているわよ♪――――――総員、これより魔女の眷属(ヘクセンブリード)の隠れ里に突入する。万が一相手から攻撃を仕掛けてきても、レンの命令があるまで防御に徹するように。」
ペテレーネの念押しに対して答えたレンは振り返ってメンフィル軍に指示をし
「仰せのままに(イエス)、我が(マイロード)!!」
指示をされたメンフィル軍は力強く答えた。

~エリンの里・ロゼのアトリエ~

「バカな…………!?妾の結界を破るとは、あの神官は何者じゃ…………!?ク…………っ!」
一方結界が破られる様子を遠見の魔術で確認したローゼリアは信じられない表情で声を上げた後、慌てた様子でその場から転位した。

そして数十分後、ペテレーネが解除した転位石を使ってエリンの里に転位したレン達が里の広場に到着すると、ローゼリアのアトリエに強力な結界が展開されていた。

~広場~

「へぇ?うふふ、レン達の侵入に気づいてすぐに対応した事には褒めてあげるけど…………――――――レン達を迎撃するつもりなのか、追い出す仕掛けをしているのか知らないけど、隠れていないで出てきたらどうかしら、魔女の眷属(ヘクセンブリード)の長さん!――――――レン達の目的は”蒼の深淵”の事についてだから、この里に危害を加えるつもりはないわよ!」
ローゼリアのアトリエを見て、すぐにローゼリアが里の者達を全員自分のアトリエに避難させてアトリエに結界を展開した事を悟ったレンは興味ありげな表情を浮かべた後、大声で自分達の目的を告げた。
「あの放蕩娘の件で、”軍”を引き連れてこの里に何をしにきた――――――小娘!先に言っておくが、放蕩娘(ヴィータ)はこの里には戻ってきておらんぞ!」
するとローゼリアが転位魔術でレン達の前に現れてレン達を睨み
「ふふっ、それくらいはわかっているわよ。――――――初めまして。メンフィル帝国皇女が一人、レン・H・マーシルンと申します。此度は結社”身喰らう蛇”の”蛇の使徒”の第二柱にして、この里の出身者でもある”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダがエレボニアの内戦の間に我が国の領土で犯した罪についての件でお話があって、訊ねさせていただきました。――――――まずは落ち着いた場所で詳しい話をさせて頂いて構いませんか、魔女の眷属(ヘクセンブリード)の長殿?」
ローゼリアの睨みに対して静かな笑みを浮かべて答えたレンは上品な仕草で会釈をするとともに自己紹介をし、不敵な笑みを浮かべた。


~現在~

「そ、そんな…………そもそもメンフィル帝国はどうして、姉さんの件でお祖母ちゃんや里のみんなを巻き込んだのですか!?」
事情を知ったエマは悲痛そうな表情を浮かべた後レンに問いかけた。
「クスクス、エリンの里――――――いえ、魔女の眷属(ヘクセンブリード)は”身内”から”犯罪者”を出したんだから、当然その犯罪――――――ましてや国家間の関係を悪化させた挙句、貴族の関係者を拉致する”凶悪犯を出してしまった事に対する責任を取る事”を”身内”にも求められるというのがメンフィル――――――いえ、ディル=リフィーナの”常識”よ。で、結社の最高幹部である”蒼の深淵”がエリスお姉さんたちの件に反省してメンフィルに自首するなんてことはまずありえないから、”蒼の深淵”の代わりに”蒼の深淵”の身内である魔女の眷属(ヘクセンブリード)に責任を取ってもらうことが”筋”でしょう?」
「お言葉ですが、幾ら異世界では”常識”だからと言って、その”常識”を”異世界とは常識が違うゼムリア大陸”に押し付けるのは理不尽ではないでしょうか?」
レンの答えを聞いたアルゼイド子爵は厳しい表情でレンに指摘した。

「そうね。戦争状態になっているエレボニアはともかく、帝国政府や軍にも知られないようにひっそりと生きてきた一族にまでは強制する事でない事は否定しないわ。―――だから、ロゼ達にもちゃんと”逃げ道”は用意してあげたわよ?”魔女の眷属(ヘクセンブリード)が蒼の深淵との関係を断絶する”のだったら、エリスお姉さんたちの件に対する責任は問わない事を。――――――勿論、エリスお姉さんたちの件でメンフィルの標的(ターゲット)になった蒼の深淵がメンフィルに捕まった際は”どのような末路”が待っているかを教えた上でね♪」
「ま、”末路”って、もしエレボニア帝国が1番目と2番目の要求にあったように、クロチルダさんの身柄をメンフィル帝国に引き渡した場合、クロチルダさんはどうなったんですか…………?」
レンの説明を聞いてある部分が気になったマキアスは不安そうな表情で訊ねた。
「うふふ、パント卿達と会って、”異世界での処罰方法としての常識”を知る事ができた貴方達だったら、大体察する事ができるでしょう?――――――重犯罪を犯した女性の犯罪者に対する処罰方法は死ぬよりも辛い処罰方法はどんな処罰方法なのかを。」
「”重犯罪を犯した女性の犯罪者に対する処罰方法は死ぬよりも辛い処罰方法”という事はまさか…………!」
「間違いなく”娼婦落ち”だろうね。」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの問いかけを聞いてすぐにそれぞれ察した仲間達が血相を変えている中ラウラは厳しい表情で声を上げ、フィーが厳しい表情でその続きを口にした。

「大正解♪ロゼ達は里を捨てて、”結社”みたいな七耀教会も”外法認定”するような集団に所属した”蒼の深淵”なんて見捨てればよかったのに、”蒼の深淵”の処罰方法と、後ついでに結社の”盟主”達がレン達メンフィルに抹殺された事を説明してあげると『頼む…………妾の首と引き換えに放蕩娘(ヴィータ)の罪を許してやってくれ…………』って、魔女の眷属(ヘクセンブリード)の長としての毅然とした態度から一気に弱弱しい態度になった上青褪めさせた顔で頭まで下げたのよ♪――――――アハハハハハッ!エマお姉さんや黒猫さんにもその様子を見せてあげたかったわ♪」
「………………………………」
「ハハ…………宰相殿やロックスミス大統領を嵌めた”西ゼムリア通商会議”の時すらも比較できないくらいの相当えげつない交渉だったようだね…………」
「ハッ、”交渉という名の脅迫”じゃねえか。あのギリアスの野郎ともいい勝負をしているんじゃねぇのか?」
「お祖母(ばあ)ちゃん…………」
「ロゼ…………――――――ヴィータ!今の話を聞いても、アンタはユミルでやらかした事に対して何も思わないの!?」
説明をした後おかしそうに声をあげて笑ったレンの話にローゼリアは反論せず重々しい様子を纏って黙り込み、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の言葉に続くように鼻を鳴らして答えたクロウは厳しい表情でレンを睨んでレンに対する皮肉を口にし、ローゼリアをエマと共に辛そうな表情で見つめたセリーヌは怒りの表情を浮かべてヴィータに問いかけた。

「今更言っても信じられないだろうけど、今は心の奥底から後悔しているわ…………まさか、エリス達の件で私の代わりに婆様や里のみんなに責任を取らせるなんて全く想定していなかったもの…………だから、その”ケジメ”をつける為にも今回の件に貴方達に協力する事を決めた上、クロウの件を知ったメンフィルがクロウの命を狙わないように”星杯”から戻った後、婆様に”殲滅天使”に繋ぎを取ってもらって”殲滅天使”と交渉したのよ…………」
「何故そこでクロウが出てきて、クロチルダさんはメンフィル帝国がクロウの命を狙うと思っていたのですか…………?」
「――――――!!”西ゼムリア通商会議”にはメンフィルのVIPも参加していたから、恐らくはその関係じゃないかしら?当時、オズボーン宰相達の命を狙った”帝国解放戦線”がオルキスタワーにも襲撃したと話よ。」
「あ……………………」
「ガレリア要塞でS(スカーレット)が言っていた、ノルドでも暗躍したG――――――ギデオンがクロスベルでのテロ活動で殺された件か…………」
「…………確かに国際会議に出席する”一国の代表”の命を狙ったテロリストのリーダーには”死罪”が求められてもおかしくはないな。」
複雑そうな表情で答えたクロチルダの答えを聞いてある事が気になったアンゼリカの疑問に心当たりをすぐに思い出したサラは真剣な表情で推測を口にし、それを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中トワは呆けた声を出し、ガイウスとユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。

「そ、それよりもクロウさんの件で姉さんがレン皇女殿下と交渉したと言っていましたけど、一体どのような交渉内容――――――いえ、”司法取引”が行われたのですか………?」
「ロゼ達の状況を考えると間違いなく相当悪辣な条件をヴィータに呑ませたのでしょうね。」
不安そうな表情を浮かべたエマの質問に続くようにセリーヌは目を細めてレンを睨み
「”悪辣”とは人聞きが悪いわね~。蒼の深淵の件で既にロゼ達が代わりに償っているんだから、クロウ・アームブラストの件に関する司法取引として、蒼の深淵に呑んでもらった対価は蒼の深淵が犯したメンフィルに対する罪と帝国解放戦線リーダーであるCがクロスベルに対して犯した罪をCの代わりに償う事だけど、その償い方は”常識的に考えて当然かつ、相当穏便な内容”にしてあげたわよ?」
「な、何でそこでメンフィルだけでなく、クロスベルまで関係するんですか!?」
レンの答えを聞いたマキアスは信じられない表情で声を上げてレンに訊ねた。

「あら、”紫電”のお姉さんも言っていたように”帝国解放戦線”は”西ゼムリア通商会議”でテロ活動を行ったのだから、そのリーダーである”C”をテロを起こされたクロスベルが”犯罪者扱い”して当然でしょう?蒼の深淵はそれも想定した上で、レンにクロスベルへの説得も含めて”司法取引”したのよ♪」
「それは…………」
「それで肝心の”司法取引”の内容はどのようなものになったのでしょうか?」
レンの正論に対して反論できないガイウスが複雑そうな表情を浮かべている中トマスは真剣な表情で訊ねた。
「エリスお姉さんたちの件に関する蒼の深淵のメンフィルに対する贖罪はこの戦争が終わった後、シュバルツァー家の人達全員に謝罪した上でエリスお姉さんの拉致とリィンお兄さんへの脅迫の件に対する”謝罪金”をシュバルツァー家に支払う事よ。迷惑をかけた本人やその家族に誠心誠意謝罪した上で、”謝罪金”を支払うのはこの世界でも”常識”でしょう?」
「それは…………」
「確かにロゼ達の時と比べると不気味なくらいにまともな内容ね。」
「どうせ謝罪の仕方がわたし達が知らない異世界のとんでもない方法だったり、謝罪金がものすごく暴利だったとかいう”オチ”があるんでしょ?」
レンの問いかけに反論できないエマが複雑そうな表情で答えを濁している中、セリーヌは警戒の表情でレンを見つめ、フィーはジト目で指摘した。

「失礼ね~。謝罪する時は”土下座”で謝罪する事と、謝罪金に関しては蒼の歌姫(ディーバ)として稼いでいて今も残っているお金を”全額”シュバルツァー家に支払う事だけよ?」
「ど、”土下座”で謝罪するって…………」
「し、しかも謝罪金は蒼の歌姫(ディーバ)の稼ぎを全額って…………!金額は間違いなく最低でも数千万…………もしかしたら数億ミラになりますよ!?」
「そ、そうだよね…………?クロチルダさん――――――蒼の歌姫(ディーバ)は帝都一のオペラ歌手として有名でオペラ歌手としての稼ぎも当然帝都…………ううん、エレボニア帝国で一番で、僕達が特別実習の時に出会ったクロチルダさんが泊まっていたホテルも帝都では最高級のホテルだったし…………第一、持っていたお金を全て渡したら、クロチルダさんは一文無しになってしまうじゃないですか…………」
レンの説明を聞いたトワが不安そうな表情で呟いている中、信じられない表情で声を上げたマキアスの推測に頷いたエリオットは心配そうな表情でクロチルダに視線を向けた。

「あら、”ヴィータ・クロチルダ”の場合”綺麗なお金”はなくなっても”汚いお金”――――――”蒼の深淵のお金”は残っているでしょう?」
「”綺麗なお金”と”汚いお金”…………?一体どういう意味なのだ?」
「わざわざ”蒼の深淵の金”って言い直したんだから、”結社からもらっていた給料”は残っているって意味なんじゃねぇのか?」
レンの指摘の意味がわからないガイウスが困惑している中、クロウが呆れた表情で推測を口にし、それを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「け、”結社からもらっていた給料”って…………」
「まあ結社も裏の組織だったとはいえ、幹部や構成員達を”ただ働き”をさせるみたいな事はさすがにしていないだろうねぇ。」
「そうね…………ましてや”蛇の使徒”は結社では”盟主”に次ぐ最高幹部だったのだから、それこそ月に数百万ミラとかもらっていそうよね。」
「…………確かに言葉通り蒼の歌姫(ディーバ)の稼ぎは”表の世界”で堂々と稼いだ”綺麗なお金”になるな。」
我に返ったアリサはジト目で呟き、アンゼリカは苦笑し、サラは疲れた表情で、ユーシスは静かな表情で呟いた。
「フム…………だとしたら”執行者”時代のヨシュア君やレーヴェ君も、実は結構な高給取りだったかもしれないね♪」
「少しは場と状況を考えてから発言しろ、この阿呆が…………!」
からかいの表情で呟いたオリヴァルト皇子の発言にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中、ミュラー少佐は顔に青筋を立てて指摘した。

「うふふ、お金の件もそうだけど、シュバルツァー家は大切な家族が拉致された事で内戦が終結するまで、精神的な意味で多大な負担をかけたのだから、それらに対する最大限の謝罪として”エリス・シュバルツァー嬢の拉致を指示した超本人である蒼の深淵が土下座で謝罪する事は当たり前でしょう?”」
「……………………」
「…………………幾らクロウの為とはいえ、よくアンタはその条件を呑んだわよね?謝罪金に関してはアンタにとってはそんなに痛くなかったでしょうけど、”土下座”で謝罪するなんてプライドが高いアンタにとってはそっちの方が屈辱だったのじゃないかしら?」
レンの問いかけに何も答えられないエマが複雑そうな表情で黙り込んでいる中、セリーヌは静かな表情でクロチルダに問いかけた。
「言ったでしょう…………リィン君達の件に関する責任は取るし、ユミルでの件に関する”ケジメ”もつけるって………………盟主(グランドマスター)に忠誠を誓ったとはいえ、私が原因で私がやった事とは無関係の婆様や里のみんなにまで迷惑をかけたのだから、その”元凶”としての責任を取るくらいの良心はあるわよ…………」
「姉さん…………」
「全く、この放蕩娘が…………」
「…………ちなみに先程の長殿やレン皇女殿下の話では、メンフィル帝国は魔女の眷属(ヘクセンブリード)が深淵殿が犯した罪を肩代わりする代償として、今回の戦争に限り、”魔女の眷属(ヘクセンブリード)がメンフィル帝国に従う形での協力関係”を結んでいて、その条件の一つとしてこの里の民達を異世界に幽閉して人質にしているとの事ですが…………何故そのような事を?」
セリーヌの問いかけに対して寂しげな笑みを浮かべて答えたクロチルダをエマとローゼリアが複雑そうな表情で見守っている中、アルゼイド子爵は真剣な表情でレンに訊ねた。

「え?だって、犯罪者――――――それも”犯罪組織の最高幹部”を庇ったのだから、また魔女の眷属(ヘクセンブリード)の中から同じような犯罪を犯す人が出たり、メンフィルに報復したりする可能性は無いとは言えないでしょう?そんな人達が出ない予防策かつメンフィルを絶対に裏切らないという”保証”を用意するのは当然だと思うのだけど?」
「だからと言って、罪も犯していない人達を”人質”にして幽閉するなんて、どう考えてもこのゼムリア大陸にとっては道理に反しているわ。遊撃士協会が知れば、間違いなく人質の解放を要求するだろうし、人質の救出の為にも動くかもしれないわよ。」
アルゼイド子爵の指摘に対して不敵な笑みを浮かべたレンの答えを聞いたサラは厳しい表情で反論した。
「クスクス、現在本国に滞在している魔女の眷属(ヘクセンブリード)の人達は”人質”じゃなくてあくまで、”文化交流”の為に滞在しているだけよ?リィンお兄さん達の時みたいにどこかにずっと”待機”させ続けるよう命令は出していないし、メンフィル本国の様々な場所を見て回ってもらったり、異世界の事についても学んでもらっているわよ?――――――遊撃士協会はそれを知ってもなお、”人質”と言い張れるかしら?――――――ましてや今回の戦争の件で、”ユミル襲撃”関連でメンフィルに対して強く出られない遊撃士協会が。」
「ユ、”ユミル襲撃”の件で遊撃士協会が強く出られないって…………」
「アルフィン皇女殿下の件で、トヴァル殿が降格・左遷処分された件か…………」
「!まさか…………ユミルの件で遊撃士協会に責任を追及して、トヴァルを降格させた上オレドに左遷するように誘導したメンフィル帝国政府の関係者はアンタだったの!?」
レンの指摘にアリサが不安そうな表情をし、ラウラが重々しい様子を纏って呟いた後、ある事に気づいたサラは厳しい表情でレンを睨んで声を上げた。

「またまた大正解♪遊撃士協会に限らず、レマン自治州を含めたノーザンブリアを除いた西ゼムリアの自治州、そしてレミフェリアの代表者と交渉してエレボニア帝国との様々な取引を停止させる事――――――”大封鎖”を実行させたのよ♪――――――クロスベル側の外交を担うルイーネお姉さんと一緒にね♪」
「な――――――」
「西ゼムリアの各自治州やレミフェリア公国がエレボニア帝国との様々な取引を中止させる”大封鎖”って…………!」
「そんな事になったら、エレボニアの経済は大混乱して、市民達の生活にまで滅茶苦茶影響が出るじゃないですか!?」
「しかもその件にルイーネさんが関わっていたなんて…………」
レンが口にした驚愕の事実に仲間達がそれぞれ血相を変えている中ミュラー少佐は絶句し、トワとマキアスは信じられない表情で声を上げ、ガイウスは複雑そうな表情で呟いた。

「クスクス、できればエレボニアへの食糧の輸出も止めてエレボニアを完全に干上がらせたかったけど、さすがにそれをしたら遊撃士協会が”民間人の保護”を盾にして七耀教会あたりと協力して”大封鎖”を解かせる政治介入をしてきて、面倒な手間がかかる事が目に見えていたから、食糧関連は手を出していないけどね♪」
「ハハ…………まさか、メンフィルがかつてエクリアさんの祖国――――――”カルッシャ王国”にやられた”大封鎖”とやらをこの世界――――――それもエレボニア相手に実行するなんてね…………ちなみにミルディーヌ君はそれも知った上で、君達と協力関係を結んでいるのかい?」
小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの言葉を聞いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた後レンに訊ねた。
「ええ。――――――ちなみに元々”大封鎖”は今回の戦争が終われば解かれるという条件にしたんだけど、そこに”大封鎖”を解く交渉にミルディーヌ公女も関わっていた事をレン達や交渉を解いた国や自治州が口裏を合わせる手筈を整えるという条件をミルディーヌ公女が出して、それをパパ達が承諾したけどね。おかげでレンはあっちこっちに飛び回っていたから、クロスベルでの迎撃戦や太陽の砦での様々な勢力による”2度目のアルスターの民達への襲撃”に対する反撃(カウンター)に参加できなかったのよね~。」
「何…………っ!?まさかミルディーヌ公女は…………っ!」
「”大封鎖”を解く交渉に関わったという”手柄”をミルディーヌ公女が手に入れる事で、戦後のエレボニアの自分の立場をより強固なものにする為にそのような条件を出したのだろうな…………」
「それってほとんど自作自演(マッチポンプ)のようなものじゃない!」
「まあ、実際に”大封鎖”をしたのはメンフィル・クロスベル連合でミルディーヌ君は直接関わってはいないから、厳密には違うが…………やれやれ、トヴァルさんの件といい、目の前の仔猫ちゃんはミルディーヌ君に劣らないとんでもなく智謀に溢れた仔猫ちゃんのようだね。」
「”仔猫”どころか、どう考えても”悪魔”の化身のようなものだろ…………」
レンの説明を聞いてある事を察したユーシスは厳しい表情をし、重々しい様子を纏って呟いたアルゼイド子爵の推測に続くようにアリサは厳しい表情を浮かべて声を上げ、疲れた表情で呟いたアンゼリカにクロウは呆れた表情で指摘した。

「話を戻すけど…………クロスベルは”帝国解放戦線”による”西ゼムリア通商会議”でのテロの件でヴィータにどんな贖罪を肩代わりさせる事にしたのよ?」
「クロスベル側はもっと穏便な方法で納得してくれたわよ?――――――戦後、蒼の歌姫(ディーバ)でもある蒼の深淵が帝都クロスベルで歌姫をする事――――――要するに”オペラ歌手”としての所属を変えてもらうだけよ。」
「ええっ!?クロチルダさん――――――蒼の歌姫(ディーバ)の所属がクロスベルに!?」
「何でそんな事になったんですか!?」
セリーヌの問いかけに対して答えたレンの答えにエリオットは驚きの声を上げ、マキアスは信じられない表情で訊ねた。
「うふふ、新興の国であるクロスベルにとってはそっちの方が”利益”になると判断しただけの話よ。――――――”アルカンシェル”と”蒼の歌姫(ディーバ)”の二枚看板があれば、それを目的にクロスベルに観光しに来てクロスベルにお金を落としていけば、クロスベルの収入も増えるでしょう?――――――将来的には”アルカンシェル”と”蒼の歌姫(ディーバ)”の共演も実現するかもしれないから、その時が来るのが楽しみだと思わない♪」
「え、えっと………確かにそれはそれで期待ができるかもしれませんけど…………」
「大問題ですよ!確かに西ゼムリア大陸でも有名な劇団であるアルカンシェルと蒼の歌姫(ディーバ)の共演なんて正直言って見たいですけど、エレボニア一とも称された蒼の歌姫(ディーバ)がエレボニアからいなくなる事の方が大問題です!」
「そうだよ!エレボニアから蒼の歌姫(ディーバ)がいなくなるなんて、帝都――――――ううん、エレボニアにとってもとんでもない損失だよ!」
レンの指摘にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中トワは困った表情で答えを濁し、それぞれ必死の表情で主張したマキアスとエリオットの様子にアリサ達は再び冷や汗をかいて脱力した。

「アンタらねぇ…………ヴィータの正体を知ってもなお、未だによくそんな暢気な反応をしていられるわよね…………」
「ア、アハハ…………そ、それよりも”星杯”にもレン皇女殿下がいましたけど、もしかして私達と一緒に”星杯”に向かったお祖母ちゃんを助ける為ですか?姉さんの件で、お祖母ちゃんもメンフィル帝国軍に協力する事になっているという話ですし…………」
我に返ったセリーヌがジト目でエリオットとマキアスを見つめている中、冷や汗をかいた苦笑したエマはレンに訊ねた。
「な――――――”星杯”にレン皇女殿下が…………!?」
「そういえば、聖獣と戦っていたオリヴァルト殿下達の窮地の際に上空から謎の攻撃が降り注いで、それがオリヴァルト殿下達を救ったな…………」
「恐らくその攻撃はエヴリーヌ君によるものだろう。結界の起点を破壊した”矢”はエヴリーヌ君の戦い方である魔力によって形成された矢の上、聖獣の足を破壊した(クラフト)も私が知っている限りエヴリーヌ君しか扱えない(クラフト)のはずだからね。」
「エヴリーヌ…………”魔弓将”か。どこから狙撃したか知らないけど、”魔弓将”はとんでもない狙撃者(スナイパー)のようだね。弓矢による超長距離で百発百中させる精度に加えてゼムリアストーンの武器でも破壊できなかった聖獣の足を破壊できる程の破壊力もあるのだから。」
エマの話を聞いて新たな事実を知ったミュラー少佐は信じられない表情で声を上げ、ユーシスは”星杯”での出来事を思い出しながら呟き、オリヴァルト皇子の話を聞いてエヴリーヌの能力を分析したフィーは真剣な表情でレンを見つめた。

「クスクス、別にその件でレン達に感謝する必要はないわよ?せっかく協力を取り付けたロゼを失う損失を出さない事を含めた様々な”打算”があったから、オリビエお兄さんたちが”星杯”に突入した後レンもエヴリーヌお姉様と一緒に”星杯”に潜入して状況を見守っていて、オリビエお兄さん達がピンチになったから、”仕方なく”手を貸してあげただけよ。」
「じょ、”状況を見守っていた”って…………だったら、どうしてあの時隠れての援護じゃなく、堂々と姿を現してオリヴァルト殿下達を助けてくれなかったんですか!?」
「そうですよ…………!遠距離からの攻撃だけでも、オリヴァルト殿下達の状況を変えてくれたんですから、もしレン皇女殿下達の加勢もあったらミリアムも死ななかったのかもしれないんですよ…………!?」
レンが”星杯”にいた事を肯定した事にその場にいる全員が血相を変えている中マキアスは厳しい表情で反論し、マキアスに続くようにエリオットは悲痛そうな表情で指摘した。
「何で”敵国”の関係者の為に、レン達がそこまでしてあげないといけないのよ。オリビエお兄さんたちを”二回も”助けた上、テスタ=ロッサによる白兎への攻撃を妨害する狙撃も行ったんだから、むしろ十分過ぎるわよ。」
「そ、そんな…………まだ子供だったミリアムちゃんがあんな最後を遂げたのに、レン皇女殿下はどうしてそのような冷たい事が言えるのですか………?」
「そういう人物なんだよ、レン君は…………自分の”身内”以外に関してドライな判断をする可憐な見た目とは裏腹に強靭な心を持っているのさ…………」
「”強靭”っつーか、”冷酷”って言うべきじゃねぇのか?」
興味なさげな様子で冷たい答えを口にしたレンの答えに悲しそうな表情で指摘するトワにオリヴァルト皇子は疲れた表情で答え、クロウは呆れた表情でレンを見つめた。

「フン…………ヴィータの件に関する交渉の際に”金の騎神”の件を妾に何も教えずに黙っていた癖に、よくも”協力関係を結んでいる”とぬけぬけと言えるものじゃの。」
一方ローゼリアは鼻を鳴らして不愉快そうな表情でレンを見つめて指摘した。
「別にその件でレンは嘘をついていた訳でもないし、黙っていた訳でもないわよ?”ロゼと交渉した時点ではエリスお姉さんは金の騎神の起動者(ライザー)になっていなかったのだから。”」
「え…………という事はやはり、エリスさんが”金の騎神”の”起動者(ライザー)”になったタイミングは…………」
「リィン君達がメンフィル帝国政府の手配でメンフィル帝国に帰還させられた後、メンフィル帝国軍側についてからですか…………」
「一体いつにエリスは、金の騎神の起動者になったのよ?」
ローゼリアの指摘に対して心外そうな表情で答えたレンの答えを聞いたエマは目を丸くし、トマスは真剣な表情で考え込み、セリーヌは目を細めて答えを要求した。

「メンフィル・クロスベル連合、そしてエステル達とセリカお兄さん達が協力してアルスターの民達を”太陽の砦での2度目の襲撃”から守った後よ。」
「ええっ!?じゃあ、カレル離宮での暗黒竜との戦いの前日のタイミングにエリスちゃんは金の騎神の起動者になっていたんですか!?」
「そういえば、あの時リィンは『エリスにとって騎神を操縦する戦闘は暗黒竜との戦闘が初めて』と言っていたな…………」
「2度目の襲撃の後に、一体何があって、エリス嬢が金の騎神の起動者になったのでしょうか?」
レンの答えを聞いたエリオットは驚きの声を上げ、ラウラは考え込みながら呟き、アルゼイド子爵は真剣な表情でレンに訊ねた。そしてレンはエリスが金の騎神の起動者になった経緯を説明した。

「まさかそのような条件で”試しの場”がクロスベルで具現化していたなんて…………」
「しかもそれが”碧の大樹”が関わっていたなんてね。」
「”碧の大樹”は因果律の操作の目的の為に作られた”零の至宝”による”奇蹟”の産物ですからね…………もしかしたら、そのあたりも関係しているかもしれませんね。」
「そうね…………それこそ、”碧の大樹”が具現化している間に”零の至宝”が今後に起こる出来事を”識って”、そうなるように因果律を操作したかもしれないわね。」
「おまけにエリス君と一緒に攻略したメンバーはリィン君達どころかリウイ陛下達にセリカさん達、ヴァイス達に加えてエステル君達とロイド君達とかどう考えても超過剰戦力じゃないか…………」
「…………恐らくプリネ皇女殿下達まで”準起動者”になった理由は金の騎神を手に入れる際に、リィン達と共に攻略した事が関係しているのだろうな。」
事情を知ったエマは驚き、セリーヌは目を細め、トマスの推測にクロチルダは同意し、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、ミュラー少佐は静かな表情で呟いた。

「…………それでレン皇女殿下は一体何の為にこの場に現れたのでしょうか?」
「うふふ、レンがここに来た目的は二つ。一つは”光の剣匠”さん――――――いえ、”レグラム地方領主アルゼイド子爵家”の当主とその跡継ぎが揃っているから、聞きに来たのよ。”アルゼイド子爵家”は故郷であるレグラムの為にメンフィル帝国に帰属するかどうかを。」
アルゼイド子爵の問いかけに対してレンは不敵な笑みを浮かべて答え
「な――――――」
「ラ、ラウラと子爵閣下――――――”アルゼイド子爵家”がレグラムの為にメンフィル帝国に帰属するかどうかを聞きに来たって、一体どういう事ですか!?」
「!まさか…………レグラムは既にエレボニアの侵攻を開始したメンフィル・クロスベル連合によって占領されているの!?」
レンの答えにラウラが絶句している中アリサは不安そうな表情でラウラとアルゼイド子爵に視線を向け、ある事を察したサラは厳しい表情でレンを睨んだ。

「確かにエレボニアの侵攻は開始したけど、”メンフィル・クロスベル連合もそうだけど、ヴァイスラント新生軍はレグラムに危害を加えていないわよ。”」
「そ、そんな…………もう本格的な侵攻が始まっていたなんて…………」
「…………だけどレン皇女殿下は”メンフィル・クロスベル連合もそうだけど、ヴァイスラント新生軍はレグラムに危害を加えていない”と、気になる事を口にしたね。」
「ああ…………まるでメンフィル・クロスベル連合やヴァイスラント決起軍以外の勢力がレグラムに危害を加えたように聞こえる口ぶりだったが…………」
「しかも、”ヴァイスラント決起軍”の事を”ヴァイスラント新生軍”とも言っていたけど、どういう事?」
「「……………………」」
レンの答えを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中トワは顔色を悪くし、アンゼリカとユーシスは真剣な表情で考え込み、フィーはレンに続きを促し、レンの話からこれから話される内容がどんな内容なのかを察していたトマスとクロウは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「クスクス、その様子だとどうやら事情を知っている”匣使い”や”C”からまだ教えてもらっていないようね?――――――エレボニア帝国政府の指示によって帝国正規軍がクロイツェン州全土で”焦土作戦”を行った事を。」
そして困惑しているアリサ達の様子を見回したレンは不敵な笑みを浮かべてクロイツェン州が故郷であるラウラやアルゼイド子爵、そしてユーシスにとって凶報となる事実を口にした―――――― 
 

 
後書き
今回の話で判明したレンちゃんの暗躍その一!魔女の眷属(ヘクセンブリード)を支配下においた!暗躍その二!トヴァル追放に関わっていた!暗躍その三!エレボニアの物資が不足するようにルイーネと共に他国に”大封鎖”を行わせる交渉をしていた!…………これだけでも十分過ぎるのに、まだレンちゃんの暗躍は残っています(ぇ)
 
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