| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

曇天に哭く修羅

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一部
  肉体言語

 
前書き
_〆(。。) 

 
「たしか紫闇って『禍孔雀(かくじゃく)』みたいなの使ってたよな。あの拳が光る必殺技。今どうなってるか見せてほしいんだけど」


立華紫闇(たちばなしあん)》は《永遠(とわ)レイア》に頼まれると【魔晄/まこう】を拳に集めるイメージを行い拳を黄金に輝かせる。

これには《黒鋼焔(くろがねほむら)》も目を丸くした。


「確かに禍孔雀の第一段階だね。この技は黒鋼流の【練氣術】で戦う場合だと三羽鳥の『音隼(おとはや)』や『盾梟(たてさら)』に並ぶ、基本にして奥義の一種なんだけど。でも思い通りに爆裂できないと明かり代わりにしかならないよ?」


その通り。

使えなければ意味は無い。


「刻名の生徒から助けた時に使ったよね? 辺りの魔晄を察知してたから判る。あれが偶然じゃなかったら僕としては嬉しい。修業は次の段階から厳しくなるからね。そっちの方に時間を割きたいんだ」


紫闇は二人の期待に応えようと突きを放つが迫力の無い音と共に拳の煌めきは失われた。

もう一度試すが結果は同じ。


「うーん。まだ制御できないみたいだね」

「むしろここまでが順調すぎたからな」


そう言ってレイアと焔が禍孔雀を使う。

轟音と共に黄金色の粒子が拡散する。

これが格の違いだろうか。

悔しい紫闇は何度も突きを繰り出すが爆裂の規模は変わらず魔晄を消費して息を切らす。


「紫闇はこれまで黒鋼に弟子入りしてきた人間と比べて何年も早く、死にもせず、無事にここまで辿り着いてるんだ。焦る必要なんか無い」

「兄さんの言う通りさ。じっくり行こう」


紫闇は決意する。

禍孔雀を修得して【龍帝学園】に戻り、馬鹿にしていた連中へ目にもの見せてやろうと。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


紫闇が黒鋼に弟子入りして二週間。

まだ禍孔雀を覚えていない。


「これで初級は終わり。もう一段階上の修業だ。具体的に何をするかと言うと、精神の修養と組み手による戦力の底上げかな」


焔の言葉に紫闇の心が痛む。

佐々木青獅(ささきあおし)》と戦ってボコボコにされたことを思い出したからだ。


「今の紫闇は少しだけ黒鋼の技が使える一般人ってとこかな。戦力や内面は出会った頃と同じ。けどそれも仕方ない。実際に戦わないで強くなれる人間は居ないよ。鍛えて能力が上がることは有ってもね」


そういう焔だがレイアやエンドは例外。

実戦をせずに頭の中でイメージし、架空の相手とバトルをするだけで強くなれる。

一通り相手の戦い方を見ることが出来ればそれだけで問題が無いのだ。

しかしそんな彼等であっても実際には戦闘をこなして経験を積み重ねた。

そうすることでイメージだけの戦いに実戦の経験を加えて一段と早く成長していく。

紫闇は焔の正論にぐうの音も出ない。


(俺は英雄になる)


紫闇は不安を抑え組み手を申し込む。

焔は笑みを浮かべて魔晄防壁を全身に張ると、【魔晄外装】は出さずに深呼吸。

今の彼女は獰猛さを隠さない凶暴な獣が牙を向いたように恐ろしい。

紫闇は恐怖しながら外装を出す。


「基本的には盾梟(たてさら)の訓練と同じで常に魔晄防壁を張るんだ。そして攻撃は盾梟で防ぐ。でないと防ぎ切れないから。それじゃあ左拳で顔を殴るからね」

「組み手なわけだから焔の攻撃を躱しても良いけど今の紫闇には先ず無理だから兎にも角にも防御と予測に絞った方が良いぞ」


紫闇はレイアの助言を耳に入れる。

焔はゆっくりと構えた。

紫闇は彼女の動きを見逃すまいと凝視して攻撃に耐えられるよう踏ん張っておく。

刹那、焔の姿が消失。

時を飛ばしたかのように紫闇の前へ。

瞬く間に彼女の左拳が炸裂した。

嫌な音が口の辺りから響く。

焔の宣言通り顔面だ。

次に激痛。

間違いない。

これは───


(顎が折れた)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


声を出す(いとま)は無い。

焔は直ぐに紫闇を投げ倒し馬乗りになる。

そして悪魔のように口の端を上げて拳を作りながら手の指をポキポキ鳴らす。

腕が振り下ろされた。

殴る、殴る、殴る。

紫闇の鼻が折れ、歯が折れ、頬が折れ、目が見えなくなっても容赦なく躊躇(ちゅうちょ)なく躊躇(ためら)わず拳の爆撃を降らせ沈黙させてしまう。

『粉骨砕身』という四文字熟語を人間の体で表すかの如く全く(もっ)て無感無情に攻撃を止めず紫闇の意識を奪い去った。


「これ、大丈夫かなぁ。体は意外と簡単に治せるけど心はそうもいかないよ? やっぱり最初は僕が戦った方が良かったんじゃ」

「兄さんは甘いからね。元々からして黒鋼のやり方はこんなものさ」


気が付くと紫闇は自分の足で立ち、対峙していたのだが違和感が(ぬぐ)えない。

体に怪我一つ無いのだ。

明らかに重症だったのに。


「ほら気を抜かない。相手に集中」


焔の髪に付いた鈴飾りから音がすると再び彼女の左拳が飛来するが今度は回避する。

しかしこれはまぐれ。

紫闇は何かを考えることも出来ず、無意識にメチャクチャな動きで対応を行う。

命の危機を感じた彼は自身が出来る可能性が有る攻撃の中で威力が最も高いものを本能的に選んだのか禍孔雀のイメージが脳裏に走る。

しかし放たれた黄金の右拳は未完成であり、掴んだ焔の左手で『ポン』と鳴ったのみ。

技の失敗を見届けた焔の長い黒髪は陽炎のように揺らめき左脚が撃ち上がった。

それは紫闇の右太腿(ふともも)に命中。

エネルギーが不足なく伝わり接触した面から『メシャメシャメシャ』と響き出す。


「大腿骨粉砕骨折って感じかな?」


焔が呟くと紫闇がふらつく。

バランスを崩して倒れ伏す。

またもや猛烈な痛み。

勝手に涙が溢れ手が患部(かんぶ)に添えられる。

紫闇は再び動けなくなってしまった。
 
 

 
後書き
エンドのイメトレは【刃牙】のダメージまで喰らう[リアルシャドー]

レイアのイメトレは【終末のワルキューレ】『史上最強の敗者(ルーザー)』《佐々木小次郎》が使う想像と先読みの[千手無双]
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧