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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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立花響バースデースペシャル
  雨の上がった世界

 
前書き
シリアス100%で2万文字は、流石に誕生日記念としてはどうかとも思って書いた日常パート。
短編三本立てでお届けいたします。
久し振りにブラコンSAKIMORIも出るよ! 

 
 ・姉としての苦悩
 
 私の名前は風鳴翼。私立リディアン音楽院の3年生にして、アーティスト活動を営む18歳。その傍ら、特異災害対策機動部二課所属のシンフォギア装者としてノイズと戦い、世の陰から人々を守るのが務めだ。
 そんな私は今、その特異災害対策機動部二課の職員寮までやって来ている。
 今日、ここへとやって来た理由はひとつ。最近、自身が通う学園の寮を引き払い、此処へと移り住んだ可愛い弟……翔の様子を見るためだ。
 二つ歳下の弟、翔は姉妹校である私立アイオニアン音楽院の1年生。
 私の事を自慢の姉だと誇ってくれる、婿にやるのが勿体ないくらいの弟だ。
 大抵の事はソツなくこなす弟だが、まさか、思い立って一人暮らしを決意するとは……。
 職員寮には藤尭さんや、顔見知りの職員もいるから、寂しがっては居ないだろうが……それでも、やはり姉としては心配だ。
 と、いうわけでいざお宅訪問!推して参るッ!
 
 チャイムを鳴らして返事を待つ。しばらくして、ドアが開けられた。
「翔、元気にして──なッ!?」
 ドアを開けて現れたその人物に、私は驚いて飛び退いた。
 何故なら、ドアを開けて私を出迎えたのは弟ではなく、まさかの人物だったからだ。
「どちら様……って、なんだ。翼さんか……」
「立花ッ!?」
「翔ならお昼作ってるとこ……。何か用?」
「な……な……何故お前がここに居るッ!?」
「……何故も何も、ここはわたしの帰る場所なんだけど……」
 その言葉に、私は余計に困惑した。
 
「どっ!どどどど同棲、だとぉ!?」
 取り敢えず、昼食を馳走になった後、私は向かいのソファーに座る翔からその話を聞き、思わず叫んでしまっていた。
「うん。姉さん知らなかったの?」
「まっっったく聞き及んでいなかったぞ!私はただ、お前がこの職員寮に移り住んだという話しか……」
 と、ここまで言って気が付く。そういえば、私に翔の引越しを教えてくれたのは……。
 緒川さあああああああああんッ!あなたの仕業かぁぁぁぁぁぁぁぁッ!
 いつもと変わらない微笑みを浮かべながら謝罪してくる顔が浮かんだ。あなたって人はぁぁぁぁッ!

「……ま、まあいい。確かに、立花の件については聞き及んでいる。お前が支えてやろうと言うのも頷ける。……頷けるのだが……ッ!」
 私の視線は翔から、そのすぐ隣へと移る。
「お前達、近過ぎるだろうッ!」
 そこに座っているのは……いや、ただ座っているどころか、これ見よがしに翔の左腕にくっついているのは、ようやく特異災害対策機動部二課へと正式に加入した元はぐれ装者。立花響だ。
 今日もいつもと同じグレーのパーカーに身を包み、相変わらずのジト目をこちらに向けてくる。
「……翔は、わたしの……だから……。たとえ、相手が翼さんでも……渡せない……」
 そう言って立花は、より一層自身と翔を密着させる。

 具体的には、翔の腕を……その……お、押し当てているというか……挟んでいる、というか……。かっ、絡み付いている……そう言うべき状態だった。
「ッ!なっ、ななななな何をしているお前達ッ!」
 思わずソファーを立ち上がり、二人を指さす。いや、流石にこれはいかんだろう!?嫁入り前の娘が何をやっている!
「ひ、響さん……!?あの、何か当たって……」
「……当ててんの……バカ……」
「なッ!?なんのつもりの当てこすりッ!?」
 立花のやつ、意外に独占欲強いぞ!?
 普通姉を前にここまでするか!?いや、しないだろう!!
 このままではこの2人、いずれ一線を越えてしまうのも時間の問題なのでは……?
 止めなければ……。姉として、防人としてッ!弟が道を踏み外す事は防がねばッ!

「ええい立花!翔から離れろ、近過ぎる!」
 同じソファーに座る二人の間に割って入る事は出来ない。私は翔の右腕を掴むと、そのまま引っ張った。
「渡さない……!翔はわたしのだ……!」
 だが立花も負けじと翔にしがみつく。くっ、強情な!
「あいだだだだだだ!痛い!姉さん!響さん!痛いってば!」
「翔、すまないがもう暫く堪えてくれッ!」
「我慢して……。翔は……わたしが……ッ!」
 両腕を引っ張られ、翔が悲鳴を上げる。
 ここは耐えてくれ、翔!これもお前の為だ!
「な……なんでさぁぁぁぁぁッ!」
 
 休日の職員寮に、翔の悲鳴が轟いていたが、今日も二課は平和であった。
 
 ∮
 
 ・わたしの、わたしだけの……
 
「……」
 響は今、ムスッとした表情でそれを見ていた。
 視線の先には、同年代くらいの見知らぬ少女──おそらく通行人だろう──に話しかけられている翔がいる。
 一見、道を聞いているだけなのだが、響はその少女の様子に不信感を抱いていた。

 あれは道を聞いていると見せかけて、翔を狙って逆ナンを仕掛けていると響は判断していた。
 道を聞くだけにしては長い……。というか、なぜスマホを使わない?
 翔の親切心を弄び、誘惑を仕掛ける逆ナン女に対して、響は苛立ちを募らせる。
 溜め息をひとつ吐くと、響はズカズカと足音を立てながら翔の隣へと歩み寄った。

「だから~、分からないから連れてって欲しいんだってば~」
「さっきも言ったけど、僕は連れを待ってるんだって……」
 翔も相手が逆ナンを仕掛けていることに気が付いているようで、少し困った顔をしていた。
 響は翔の腕を掴むと、逆ナン女の顔を思いっきり睨み付けた。
「翔はわたしのだ……。気安く近寄るな……ッ!」
「ひっ!?」
 ひと睨みで逆ナン女を怯ませると、響はそのまま翔の腕を引いて歩き去る。
 ……いつもの5倍の強さでその腕を掴んで。

「痛い痛い痛い!響さん痛いってば!」
「なんでわたしが怒ってるのか、自分の胸に聞いてみたら……?このスケコマシ……」
「そんなつもりないってば!響さんが居るのに、僕が他の女の子について行くわけないじゃないか!」
 分かっている。優しい彼は、親切心で道を教えようとしていただけだ。
 そこに付け込まれてああなってしまっていたが、その優しさは彼の長所であり、それが自分を救ってくれた。

 しかしそれはそれ、これはこれだ。自分以外の見知らぬ女に話しかけられていた事が、どうしても腹立たしい。
 だからつい、こうして不満を炸裂させてしまっている。こうでもしないと気が済まないからだ。
(……わたしが翔に味合わせた気持ち、ちょっと分かった気がする)

 2年前、惨劇の後。まだ中学生だった頃の響と翔を襲ったあの事件。
 翔に歪んだ愛情を向けていた女生徒が、翔が少し目を離している隙に響を襲った事があった。
 それがきっかけで、響は翔から離れてしまったのだが、今ので響は何となく、その時の翔の気持ちを理解した。
 大切な人が遠ざかるかもしれないという不安。翔はそれを超える、大切な人に別れを告げられる悲しみを体験している。
 あの日の自分が、彼にした仕打ちを後悔しながら、彼女はようやく翔の腕に入れていた力を緩めた。
「……じゃあ……埋め合わせてよ……」
「埋め合わせ……?」
 響は振り返り、翔の顔をじっと見つめてそう言った。
「今日一日……わたしを、満足させてくれたら……許す……」
 その全然素直ではない、可愛いワガママに、翔は微笑むと彼女をその胸に抱き締める。
「……お安い御用さ」

 この日一日、翔は響の事をひたすら猫可愛がりし続けたという。
 昼食を食べようと入ったレストランでは、注文を迷っていた響が選んだ料理と一緒に、もう片方の料理を自分の分として注文し、その上あーんで食べさせた。
 移動する際は恋人繋ぎで手を握り、目的地だったスイーツ店のケーキバイキングでは、響の頬に付いたクリームを指で取って舐める、という大胆なイベントもこなしていた。普段のヘタレっぽい雰囲気は何処へやら。響の一言がリミッターを外したのか、今日の翔はいつも以上にグイグイと攻めてきた。

 特に帰宅後は愛で方に拍車がかかり、寝る頃にはベッドの中で彼女を抱き締めながら撫でるわ触れるわ囁くわで、思いっきり彼女を甘やかし尽くしたらしい。
 お陰で響はずっと顔が真っ赤だった。
「翔……わたし、何もここまでしろとは……」
「満足するまで可愛がって欲しい。そう言ったのは響さんじゃないか」
「そ、それは……そう、だけど……」
 耳まで赤くなった顔を隠すように、翔の胸へと顔をくっつける。
 顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったけど、どこか安心でき、心が満たされていくのを感じながら、口元を緩ませた響は心の中で呟いた。
(もう、二度と……離れてやるもんか……!)
 
 ∮
 
・ハッピーサプライズバースデー
 
「もうしばらくだからね、響さん」
「なっ、何なの……?」
 その日、響はアイマスクで目隠しをされ、翔に手を引かれていた。
 ちなみに、目的地は伝えられていない。何があるのか分からないまま、ちょっとだけ不安な気持ちで翔の手をぎゅっと握っている。
「手すりに掴まって。ちょっと揺れるから」
 翔がちゃんと、手すりを掴ませてくれる。
 手が離れた事で少しだけ不安が膨らむけど、隣には翔の気配がする。
 やがて、扉が閉じる音と共に、降下していく感覚が身体に伝わった。
(二課へのエレベーター……?わざわざ目隠しまでして、いったい何が……)
 
 やがて、エレベーターは二課へと辿り着く。
 そのままエレベーターを降りると、翔は再び響の手を引いて……やがて足を止めた。
「響さん、アイマスク外していいよ」
 翔にそう言われて、響はアイマスクを外した。
「それで、目隠しなんてしたのは、いったいどうい……」
 次の瞬間、クラッカーの破裂音と共に、紙吹雪と紙テープが舞う。
 驚く響に翔と、それから弦十郎以下二課の職員一同が声を揃えて言った。
 
「お誕生日おめでとう!」
 
「え……?誕生日……?」
「そう。今日は響さんの誕生日、でしょ?」
 きょとん、とする響に翔が微笑みかける。
「今日の為に、朝から皆で準備していたんだぞ」
「もう、弦十郎くんったら張り切っちゃって~。集合予定時間より1時間も早くから準備してたのよ~」
 宴会用のシルクハットを被った弦十郎に、呆れたような顔をしつつも楽しげにな了子。
「提案したのは翔くんなんだけどね。響ちゃんを喜ばせる、最高のサプライズにしようって」
 クラッカーを片付けながら、翔を見て微笑む友里。
「パーティー料理は全て、響さんの好きなもので揃えていますよ」
「好きなだけおかわりしていいよ。ケーキも含めて、その為に腕を奮ったからね!」
 皿に被せていたクロッシュを開け、配膳の用意を進める緒川と藤尭。
「何をぼうっと突っ立っているの?今日の主役はあなたなのよ。シャキッとしなさいよ」
 そして、喋り方をいつもの防人口調から、柔らかい女性口調へと崩した翼。
 響の誕生日を祝う為に、この場に多くの人々が集まっていた。

「わたし……そうだ、忘れてた……。今日、わたしの誕生日なんだ……」
 響の顔に、自然と笑みが浮かんだ。
 皆が自分の誕生日を覚えていてくれた。その事実が、彼女にはとても嬉しかったのだ。
「ああ、それからもう1人」
 翔がそう言ったのと、響の背後からその人物が忍び寄って来たのは同時だった。
「ひ~びきっ♪」
「ッ!未来……!?」
 こっそり忍び寄り、背中に飛び付いてきた未来に、驚いて振り返る響。
 その表情を見て、未来は満足気に微笑んだ。

「響の誕生日パーティーするって聞いたから、来ちゃった」
「折角のお祝いなんだから、皆で過ごしたいでしょ?」
「未来……翔……みんな……」
 響の目元が潤む。こんなにも彼女は、多くの人々に愛されているのだ。
 それを実感した彼女は、感極まってその両腕を広げ、翔と未来を抱き締める。
「……ありがとう……本当に、嬉しい……ッ!」
「響……」
「響さん……」
「わたし……今、とっても幸せ……」
 翔と未来は顔を見合わせると、2人で響を抱き返す。
 3人で抱き合う姿に、翼は微笑みながら声をかけた。
「ほら、早くしないと冷めちゃうわよ!」
「はーい!ほら、響さん。行こう!」
「響、一緒に食べよっ!」
「うん……!」
 翔と未来に手を引かれ、響はテーブルへと向かっていく。

「ところで弦十郎くん、折角のパーティーなんだし、ワインとかないのかしら~?」
「今日の主役は子供たちだぞ、了子くん」
「も~、冗談よっ♪」
 紙コップを片手に、たわいもない会話を続ける弦十郎と了子。

「翼さん、どうぞ」
「緒川さん、ありがとうございます。飲み物は代わりに私が。何がいいですか?」
「そうですね。では……」
 翼の健康管理にも気を使った量を配膳し、翼の元へと持って行く緒川と、そんな緒川にもパーティー楽しんでもらおうと気を回す翼。

「藤尭くん、そろそろ交代よ」
「ありがとうございます、友里さん。それじゃ、食べ終わったらまた交代ですね」
 配膳役をローテーションし、互いに他の職員達を気遣いつつ、自分達も楽しんでいる藤尭、友里らを始めとした職員達。

 そして、同じテーブルに座り、共に料理に舌づつみを打つ響、翔、そして未来。
 3人の表情は……いや、この場にいる全員の表情は、笑顔一色に染まっていた。 
 

 
後書き
グレ響はいいぞォ……ジョージィ……。普段はツンツンしてるのに、季節ボイスとか極レベル解放ボイスでギャップ見せてくる所が可愛いんだ……。(排水溝から沼に引きずり込むピエロの顔)

え?結局、あの二人は病室でのキスの後どうしたのかって?
それはご想像にお任せします。
そのまま大人の階段登ったかもしれないし、何事も無くただ抱き枕にされたのかもしれない。
ただ、この書き方だとおそらく……いえ、言うのは野暮でしょう。
どうしても見たい、という声が大きいなら考えなくもないですけどね(笑)

それでは改めまして……ビッキー、Happy birthday!
無印完結したらG編入る前に短編挟んでイチャイチャさせたり、ある人とのコラボ回やりますので、ご期待ください! 
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