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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第6楽章~魔塔カ・ディンギル~
  第54節「カ・ディンギル出現」

 
前書き
さてさて、原作より増えた装者達。ここから何処までが原作に沿うのか、どこからが逸れるのか。
期待を胸に、いざスクロールッ!

そういやクライマックスって事は、そろそろOP映像も変わりますね。
前回までなら、サビ前のネフシュタンのカットに純が居そう。
個人的には伴装者は無印OPに、翼さんと奏さんの写真とかサビの響と翼さんがノイズと戦ってるシーンで翔も加わってるイメージがあったり。
それではお楽しみください! 

 
「未来……無事でいて……ッ!」
「くッ、ヘリとか車とか、何でもいいから何かないのかよッ!?」
「今は自力で何とかするしかないッ!とにかく急ぐぞッ!」
 響、翼、クリス、3人のシンフォギア装者と、翔、純、2人のRN式適合者は、無人となった街を駆け抜け、リディアンへと向かっていた。

「……じゃあ、つまりリディアンの地下には、特異災害対策機動部の基地があるって事なのかい!?」
「ああ、そういう事だ。理解が早くて助かる」
 その道すがら、純は翔から自分達シンフォギア装者と、二課についての説明を受けていた。
「あのフィーネって人に、最低限の事は教えられたからね。シンフォギア・システムについてと、二課の存在については聞いてるよ」
「それにしても、まさか叔父さんが居たのにこうなるなんて……」
(二課がカ・ディンギルだと気づいた時点で、俺だけでも……いや、それでは純をフィーネの手から解放出来なかった。フィーネの奴、それも想定して……?)
 翔は改めて、黒幕の狡猾さに舌を巻いた。

「ごめんよ、翔。僕がフィーネからの脅しをブラフだって見抜けていれば……」
 純は申し訳なさそうに目を伏せる。
 純のアーマーの裏側には、確かに小さなケースに入ったネフシュタンの欠片が仕込まれていた。が、それはあくまでも格納されていただけであり、何も怪しい仕掛け等は用意されていない。
「仕方ないさ。……おそらく、フィーネもそこまで用意する時間がなかったのかもな。お前の登場そのものが想定外だったんだろう。だからブラフで誤魔化した……と、推測するしかない」
「そう……だね」
 しかし純は、口にこそ出さないものの、少しだけ納得出来ていなかった。
(あの人が僕を手駒にする気があったのは本当だろう。でも、本気で僕を最後まで利用する気はあったんだろうか……?)
 あの時、フィーネは自分を殺さなかった。その理由が、彼は未だ腑に落ちていないのだ。
(気まぐれとか、殺すのが惜しくなったとか言ってたけど、あれは……)
 
「しかし、スカイタワーをカ・ディンギルだと誤認させ、その上であれだけのノイズでの足止め、更に先程の小日向からの連絡……。最初からリディアン、もしくは特異災害対策機動部二課が狙いと見て、間違いなさそうだな……」
「未来……」
 未来を心配し、暗い表情を見せる響。翔は響の隣に寄ると、その肩に手を置いて言った。
「本部には叔父さんも、緒川さんもいるんだ。大丈夫さ」
「……うん……」
「でも翔、通信が途切れたってことは、つまり二課はとっくにフィーネの手に墜ちているって事になるよね……?戻ったとして、地下にある基地までどうやって向かうのさ?」
 純の言葉に、翔は少し考えて……やがて、ある事に思い当たった。
「リディアンが元々、適合者を探す為の研究施設だって事は話したよな?」
「うん……」
「それは姉妹校である、アイオニアンも同じだ。研究が頓挫して今は破棄されてるけど、地下シェルターの何処かに、二課本部のエレベーターホールへと繋がる通路が残っているはず……」
「アイオニアンに!?」
「翔、それは本当か!?」
 驚く翼に、翔は頷く。
「以前叔父さんに聞いたんだ。もし、二課が何者かに占拠されるような事があったら、そこを使って侵入出来るって……」
「さ、流石師匠……。抜け目がない……」
 翔は純の方を向くと、その顔を真っ直ぐに見つめる。
「純、この中で一番戦闘経験が浅いのはお前だ。だからこそ、お前に任せたい。……アイオニアンの地下から、二課へと向かってくれ」
 そして純もまた、翔を真っ直ぐに見つめ返すと、力強く頷いた。
「それは大任だね……ああ、任されたよ。僕は僕に出来る事で、翔達を助けるよ!」
「それでこそだ、親友!」
 一旦立ち止まり、翔と純は固く握手を交わした。

「ジュンくん……」
 そこへ、クリスが神妙な顔つきで近づく。
 純が握手を終えて振り向くと、クリスは言った。
「……リディアンに、小日向未来って奴がいるんだ。そいつは、こんなあたしを助けてくれて、あたしなんかの友達になりたいって言ってくれた……。あたしにとって、初めての友達なんだ。だから……」
「……わかった。必ず助ける。だから、クリスちゃんは心置き無く、フィーネと決着を付けてくるといい」
 クリスの頼みに、純は頼もしく笑って応える。その顔を見たクリスは、純の背中に手を回した。

「じゃあ、行ってくる」
「ああ。行ってらっしゃい、だ」
「……それと、忘れ物だぜ」
 そう言ってクリスは爪先立ちすると、純の顔にフィーネのアジトで拾った眼鏡をかけさせた。
「あ……ありがとう。ずっと昂ってて、眼鏡ないから落ち着かなかったんだ」
「やっぱあの趣味悪いバイザーなんかより、それかけてる方が似合ってるぜ」
「翔、僕が帰ってくるまで、クリスちゃんの事は頼むよ!」
 互いに『行ってきます』のハグを交わし、笑い合った純とクリス。そして、純はアイオニアンの方角へと向かって行った。

「任せたぞ、純……」
「わたし達も──!」
「ああ、いざ往かん!敵はリディアンに在り!」
「フィーネ!首を洗って待っていやがれッ!」
 そして装者達もまた、リディアンへと向かって行く。
 決戦は、刻一刻と迫って来ていた。
 
 ∮
 
「……んんっ……」
 目を覚ました弦十郎が、ソファーから身を起こす。
「司令!」
「……状況は?」
「……本部機能の殆どが、制御を受け付けません。地上及び地下施設内の様子も不明です……」
「……そうか」
 友里からの報告に、弦十郎は歯噛みした。
 自分があの時、躊躇ってさえいなければ……こんな事にはならなかっただろう。

(了子くんが内通者だったのは気が付いていた……。しかし、黒幕であるなどどうして疑えるものかッ!)

 何となく、気が付いていた。これまでの出来事を振り返る度に、元公安の勘が告げていた。
 一連の事件の黒幕は、二課の内情に詳しく、聖遺物の取り扱いに長け、自分達を巧みに誘導できる立場にいる彼女以外に有り得ないと。
 それでも……彼女を疑いたくなかった。内通者だとしても、その裏に真の黒幕がいる。そうであって欲しいと、願ってしまった。

(彼女が黒幕だとしたら……俺は、どうすれば彼女を止められた?……了子くんがこんな事をする為に、何人も犠牲にして、多くの被害を出してでも為し得ようとした企みを、どうすれば止められていたのだ……)

 やがて、弦十郎は一つの後悔に行き当たる。
 それは、己が頑固さ故に伝えられなかったもの。今となってはもう遅い、胸の奥に仕舞ったままとなっていた想いだ。

(……もしも、俺が素直に言えていれば……了子くんは踏み留まってくれたのだろうか?……もし俺がそうなれていれば、俺は君の裏側に気付いてやれたのだろうか……。……大莫迦者だな、俺は……)

 考えるだけ意味が無いのは分かっている。今頃遅いのも理解している。
 それでも弦十郎は、その時ばかりは珍しく……普段見せないような表情(かお)をしていた。と、友里を手伝っていた職員の一人は語っていた。
 
 ∮
 
 紅い月が夜空に怪しく輝く。既に日は沈み、昼間は当たり前の日常に充ちていた姿は見る影もなく、崩れ落ちたリディアンは夜の闇に包まれていた。

「未来……」
 ようやく到着した4人の装者は、その光景を見回す。
「未来ーッ!みんなーッ!……ああ」
「落ち着け響、多分地下のシェルターだ」
「リディアンが……あッ!?」
 翼が崩れず残っていた校舎の屋上を見上げると、そこには……こちらを見下ろし笑っている、櫻井了子が立っていた。

「──櫻井女史ッ!?」
「フィーネッ!お前の仕業かぁッ!?」
「ッ!?了子さんが、フィーネ……!?」
「ふ……フフフフ。ハハハハハハハハッ!」
 クリスの言葉に驚く風鳴姉弟を見て、了子は声を上げて笑った。
「──そうなのかッ!?その笑いが答えなのかッ!櫻井女史ッ!!」
「あいつこそッ!あたしが決着を付けなきゃいけないクソッタレッ!──フィーネだッ!」
 了子は眼鏡を外し、結んでいた髪を下ろす。
 次の瞬間、了子の身体は青白い閃光に包まれ、そのシルエットが変わって行く。
「嘘……」
「その姿は……ッ!」
 やがて光が弾けると、そこにはモデルのような美しい体を黄金に色を変えたネフシュタンの鎧に包んだ、金の長髪を持つ女性が立っていた。
 それを見てようやく、その場にいる全員が確信した。櫻井了子の正体が、フィーネであるという現実を……。
 
 ∮
 
「防衛大臣の殺害手引きと、デュランダルの狂言強奪。そして、本部に偽装して建造されたカ・ディンギル……。俺達は全て、櫻井了子の掌の上で踊らされてきた……」
 主電源を奪われ真っ暗になった本部の廊下を、懐中電灯を手にした藤尭、地図を持った友里が先行する。その後ろには、緒川に支えられた弦十郎、そして未来が続いていた。

「イチイバルの紛失を始め、他にも疑わしい暗躍は、いくつかありそうですね……」
「それでも、同じ時間を過ごして来たんだ。その全てが嘘だったとは、俺には……」
「司令……」
 弦十郎の言葉に、緒川は答えを返せなかった。
 その気持ちは彼も同じだ。しかし、自分以上に共に過ごした時間が長い弦十郎は、他の面々以上のやるせなさを感じている事だろう。
 それを慮ると、何も言えなくなってしまった。

「甘いのは分かっている。……性分だ」
 俯き、下を向きながらゆっくりと歩き続ける弦十郎。
 その目に映るのは、果たして何なのか……。それを窺い知る事の出来る者は、誰もいない。
 
 ∮
 
「……嘘ですよね?そんなの、嘘ですよね?だって了子さん、わたしと翔くんを守ってくれました!」

 響は、デュランダル護送任務の際の出来事を思い出しながら反論する。

「あれはデュランダルを守っただけの事。希少な完全状態の聖遺物だからね」
「嘘ですよ……。了子さんがフィーネと言うのなら、じゃあ、本物の了子さんは?」
「櫻井了子の肉体は、先だって食い尽くされた。……いや、意識は12年前に死んだと言っていい」
「どういう意味だ……!?」

 翔の疑問に、フィーネは間を置かずに答えを返す。
「超先史文明期の巫女フィーネは、遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引く者が、アウフヴァッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施していたのだ。12年前、風鳴翼が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒は、同時に、実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた……。その目覚めし意識こそが、私なのだッ!」

「あなたが……了子さんを塗り潰して……」
「まるで、過去から蘇る亡霊……」
 驚愕する響、睨み付ける翼。そして翔は、言葉を失っていた。

「はははッ。フィーネとして覚醒したのは私一人ではない。歴史に記される偉人、英雄、世界中に散った私達は──パラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期に、いつも立ち会ってきた」
「──ッ!?シンフォギア・システム……ッ!」
「そのような玩具、為政者からコストを捻出するための、副次品に過ぎぬ」
 翔の言葉に、フィーネは嘲る態度で返す。どうやら彼女にとって、シンフォギア・システムは本気で玩具に等しいのが伺えた。
「お前の戯れに、奏は命を散らせたのかッ!」
「あたしを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのもッ!そいつが理由かよッ!」
「響があんな目に遭った原因も、広木防衛大臣を暗殺したのも、全部お前がッ!」
 激昴する翼とクリス、そして翔。

 しかし、フィーネはやはり口元に貼り付けた笑みを崩さない。両腕を広げ、高らかに宣言した。
「そうッ!全てはカ・ディンギルのためッ!」
 次の瞬間、地響きとともに地面が割れ、リディアンの真下から()()が屹立する。
 地下シェルターに逃げ込んだ人々が悲鳴を上げ、二課本部の廊下が隆起し、エレベーターシャフトのレールがパージされると共に、その奥に隠されていた装置が顔を出す。
 様々な幾何学模様と古代文字が刻まれ、天高く伸びる色鮮やかな魔塔。
 その姿はまさしく、古き書物に語られし伝説の『天まで届く塔』そのものであった。
「これこそが、地より屹立し天にも届く一撃を放つ荷電粒子──カ・ディンギルッ!」
 終わりの名を持つ巫女は、自らが建てた頂へと至る塔を見上げる。
 カ・ディンギルは遂に起動した。 
 

 
後書き
純「皆、無事かい!?」
紅介「純!お前何処行って……ってなんだその格好!?コスプレか!?」
純「コスプレじゃないよ!」
恭一郎「それより、何処に行ってたんだい!?風邪だと聞いていたから寮にも行ったのに、留守だったじゃないか!」
純「事情は追って説明する。それより皆、聞いてくれ。リディアンが大ピンチなんだ!」
飛鳥「なんだって!?」
純「姉妹校の危機、見過ごすわけにはいかない。このシェルターの何処かに、リディアンの地下フィルターへと続く通路がある筈なんだ。手伝ってくれるよね?」
恭一郎「当然だ。僕達の部活は人助け。困った人達を助け、己を磨き、いい男になるのが僕達の活動目的だ!」
流星「リディアンには、中学の頃の友達もいる。尚更ほっとけないよ」
紅介「ここで動かなきゃ男が廃るぜ!」
飛鳥「全会一致だ!……ところで、翔は何処に?」
純「一足先にリディアンへ向かったよ」
紅介「はあああ!?はえーなオイ!」
恭一郎「ああ……彼女か」
純「知ってるんだ……。なら話は早い、彼の元へ急ぐんだ!」
紅介「おっしゃあ!」
恭一郎「ああ!」
飛鳥・流星「「応ッ!」」

銀河に瞬く6つの光。それは1人のOTOKOの人助けと、あるOUJIの生き様に感銘を受けた者達の部活名。
またの名を「アイオニアンの双璧と四バカ」である。

遂に起動したカ・ディンギル!装者達の最後の決戦が始まる中、閉じ込められた二課の面々は……。
次回もお楽しみに!

改良型RN式回天特機装束 Model-0:RN式の改良型として開発されていたアンチノイズプロテクター、その試作機。
櫻井了子……フィーネ自身は、RN式をこれ以上改良するつもりはなく、シンフォギア・システム以上にコスト捻出用の玩具としての意味合いが強かったのだが、爽々波純という予想外のイレギュラーを殺せなかった彼女は、自身がアジトにいる間、身を守る為のボディーガード……最低でも見張り役としての役割を彼に与えた。
そんな純の身を守る為に与えたのが、本来ならRN式の完成を求める周囲の目を誤魔化す為のガワにも等しかった『Model-0』だった。
聖遺物からのエネルギーを、保護膜として体表に展開するのみならず、使用者の身体ではなく、その身に纏うプロテクターの方に固着させる事で、疑似シンフォギアとしての性能を引き上げることに成功している。有り体にいえば、聖遺物の力を組み込んだG3ユニット。(バッテリーの代わりに聖遺物の起動持続時間)
ただし、やはり素養のある者にしか起動出来ない点は相変わらず。最初期に比べれば、持続時間は数秒から3分までに向上しているものの、きっかり3分保持できるのは今の所、翔と純の二人のみしか確認されていない。
なお、胸部プロテクターの内側に取り付けられていたネフシュタンの欠片入りのケースは、純を本気で戦わせる為のブラフ。口を覆うマスクは、対話による解決……即ち相互理解を妨げる為の措置である。 
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