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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第4楽章~小波の王子と雪の音の歌姫~
  第45節「一番あったかい場所」

 
前書き
原作8話エピローグ!
これ描き終えた後でガチャ回したら、RN式緒川さんが出た思い出があります。
RN式司令とネフシュタンフィーネでOTONAパーティー組んでます。あと足りないのはウェル博士ですね。 

 
「はい、ふらわーさんから回収しました」
 緒川さんが未来に、ふらわーへ置いて来ていた鞄を返す。
 商店街はまだノイズの後処理が終わっていないけど、すっかり街の人達が戻って来ていた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
「あの~、師匠……」
 立花が気まずそうな表情で、叔父さんの顔を見る。
 叔父さんは立花の言いたいことを察したようで、後頭部を掻きながら答えた。
「……なるほど。未来くんに戦うところを目の当たりにされてしまったと」
「はい……。あの、それで──」
「ふう、詳細は後ほど報告書の形で聞く。ま、不可抗力というやつだろう。それに、人命救助の立役者に、うるさい小言は言えないだろうよ」
「やったッ!」
「うんっ!」
「「いえーい!」」
 ハイタッチを交わす2人が、どこか微笑ましい。
 と、俺の視線に気がついた立花が、こちらにも手を出してきた。
「翔くんも、いえーい!」
「ん?おう。いえーい!」
 立花とハイタッチを交わした時だった。そこへ激しいブレーキ音と共に、ピンクの軽自動車がやって来る。
 了子さん、相変わらず運転荒いなぁ。
「まあ、主役は遅れて登場よ!さって~、何処から片付けましょうかしらねん♪」
 テンション高め、鼻歌交じりに現場に現れた了子さんは、そのままノイズ残骸処理班に指示を下し始めた。
 遅れてきた割にはホンット悪びれもしないよねこの人。まあ、仕事はちゃんときっちりやってくれる人だから問題ないんだけど。
「さて、後は頼り甲斐のある大人達の出番だ。響くん達は帰って休んでくれ。無論、翔もな」
「「「はい!」」」
「あ!あの……」
 そう言って立ち去ろうとした叔父さんを、小日向が慌てて引き留める。
「わたし、避難の途中で友達とはぐれてしまって……雪音クリスというんですけど……」
「……。被害者が出たという報せは受けていない。その友達とも、連絡が取れるようになるだろう」
「よかった……」
 ……え?まさか小日向、本当に雪音と知り合っていたのか!?
 自分の勘が的中していた事に、立花と顔を見合わせて驚く。
「まさか翔くんエスパーなの!?」
「いやいや、そんなわけあるかって!」
「何の話してるの?」
「あ、聞いてよ未来~!翔くんがさぁ──」
 
 立花と小日向。2人の微笑ましい日常の中に、俺が混ざっている。
 
 わたしと翔くん。ここひと月の間に繋がった関係に、親友の未来が加わった。
 
 一昨日までの険悪なムードは、とっくに消えていた。これから先はきっと、俺もこの2人の輪の中に入っている光景が……。
 
 わたしと未来、その隣に翔くんも居るのが当たり前になって行くんだろう。
 
 ……その中で、俺はいつか立花に、この胸の想いを伝える事になる日がやって来る。
 
 ……その中で、わたしはいつか翔くんに、この胸の想いを伝えなくちゃいけない日がやって来る。
 
 その時には、きっと小日向にも。
 
 そうなったら、きっと未来にも。
 
 祝って貰えたらいいな……。そう、心の中で願ってみた。
 
 ∮
 
「……ここにするか」
 廃墟になったアパートの白い壁を見上げて、クリスは呟いた。
 フィーネに捨てられ、助けてくれた未来やふらわーのおばちゃんを巻き込み、信用出来る人間や頼れる身内のいない彼女は、一晩を明かす寝床を探していた。
 既に昨日の夜から一日中、何も食べていない状態が続いている。
 腹が鳴って仕方がないものの、食べるものは何も無い。
 人の居なくなった商店街、何処かから万引きする事も考えたが、いつ人が戻ってくるか分からない以上は気が引けた。
「……腹減ったなぁ……」
 既に背中とくっつきそうなお腹に手を当てながら、クリスはアパートへと向かって行く。
 
 その時だった。聞き覚えのある……否、今の状況ではあまり聞きたくない雑音が、彼女の耳に届いた。
 
キュピッキュピッ、キュピキュピッ
 
 ゾッとしながら振り返ると、そこには軽快なステップを踏みながら歩いて来るブドウノイズの姿が。
「チッ!昼間あれだけやって、まだやり合おうってのか!!」
 シンフォギアのペンダントを握り締め、聖詠を唱えようとしたその時だった。
 ブドウノイズは立ち止まると、その細長い手にぶら下げていたビニール袋を、地面に置いた。
「ッ!?な、なんだぁ!?」
 そしてブドウノイズはクリスに向かってぺこり、と頭を下げるとそのまま後ろを向いて走り去って行く。
「おっ、おい!待ちやがれ!!」
 慌ててノイズを追い、走るクリス。
 しかし角を曲がると、そこには何もいない。ブドウノイズの足の速さは、そこまでではなかったはずだ。すぐに追いつける筈の場所で見失った……それはつまり……。
「……なんだったんだ、あのノイズ」
 クリスは訝しげに、アスファルトに置かれたビニール袋を拾って中身を見る。
 中に入っていたのは、ペットボトル入りの水と茶封筒。茶封筒を空けると、中には一万円札が2枚入っていた。
「こっ、こいつは……!?」
 人を殺す為だけに生み出されたノイズに、こんなものを届けさせる事が出来る方法はただひとつだけ。ソロモンの杖を持つ者だ。
「フィーネのやつ、どういうつもりだ!?」
 ふざけやがって、と袋ごと投げ捨てようとするクリス。
 しかし、そこでまた腹の虫が鳴いてしまう。
「……くっ!」
 忌々しげに封筒を見るクリス。しかし、封筒を裏返した瞬間、その表情は驚愕に変わった。
 
 茶封筒の裏には、綺麗な字でメッセージが書かれていたのだ。
 差出人の名前はない。しかし、その一言だけでクリスは、これを送ってきた人間に気がついた。
 封筒の裏面に書かれたメッセージの内容は『You are my Princess』、このただ一言だけだった。
「ジュンくん……なのか?」
 どういった経緯なのかは知らないが、姿を見せない純から、ノイズを通じて贈られてきたメッセージと食費。
 それをぎゅっと握り締め、クリスは呟く。
「こんなモン寄越すくらいならさっさと戻って来いよ……バカ……」
 大事な人が生きていた喜びと、逢いたいのに逢えない悲しみ。
 それらが綯い交ぜになって、クリスは1人涙を流した。
 
 
 
「…………」
 そして、その様子をビルの上から見下ろしている何者か……背格好からして少年だろうが、その少年はソロモンの杖の持ち手を握り締める。
 その手は何処か悔しげで、やり場のない感情が掌から漏れだしていた。
 耳の部分に付けられた通信機から通信が入り、鎧の少年は通信に出る。
『用は済んだの?なら、そろそろ戻って来なさい』
「……本当に、契約は守ってくれるんですよね?」
『ええ。もうクリスに用はないし、あなたとの契約だもの。あと数日の辛抱よ、励みなさい』
 それだけ言って、通信は切れた。
 少年はもう一度だけ、食料を買いに街へと向かって行くクリスを見て……それからビルの屋上から飛び去った。
 自由を奪われ、声を封じられ、彼女を手にかけようとした女の計画に加担する。
 それで彼女を守れるなら、と。少年はそれを受け入れた。
 選択の余地は残されていなかったし、それが自分も彼女も生き残る為の方法だったからだ。
 仮に、もしもそれで自分が手を汚さないと行けなくなった時は……。
 少年は自らが最も信頼する男の顔を思い浮かべ、彼女の無事を祈りながら夜空を駆けた。
 
 ∮
 
 その夜、リディアン女子寮の一室では、2日ぶりの微笑ましいやり取りが行われていた。
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
 二段ベッドの同じ段にて、響と未来が並んで寝ている。
 仲直りした2人は、またいつもの距離感に戻っていた。
「ぐ~。ぐ~……」
「えっ、早い!もう寝ちゃったの!?」
「……なーんて、えへへ、だまされた~」
「あ、もうッ!響ったらひどい~!」
「あはははは、くすぐったいよ未来~」
 未来と2日ぶりにじゃれ合いながら、響は実感する。
(よかった、未来と仲直りできて……。ああ……やっぱり未来のいる所が、わたしにとって一番あったかい場所なんだ……)
「……ところで響、翔くんの事どう思ってるの?」
「ふえっ!?どっ、どどどどどうしたのいきなり!?」
「うーん、何となく?響と仲良さそうだったし、この前の話聞く限りだと今はどのくらい進展してるのかな~って」
「ししし進展だなんてそんな!わたし達まだ付き合ってもいないんだよ!?」
「えっ!?それ本当に!?」
 未来の巧みな誘導尋問に引っかかり、響は真っ赤になって口を抑えた。
「もー、そういう顔するからわたしも気になっちゃうんだって~」
「あ、あはははは……はは……」
「それで、どうなの?他の人に言えなくても、わたしには教えてくれたっていいんじゃない?」
 親友にそう言われると響も弱い。
 響は少し悩んだ末に、ぽつぽつと語り始めた。
「……最初はね、中学の時のクラスメイトだった翔くんだったって、気づかなかったんだ。でも……翔くんに何度も助けられたり、大事な事を教えてもらったりして……気付いたんだ」
「うん……」
「わたし……翔くんのこと、大好きみたい……」
 絞り出す様にそう言った響の顔は、未来がこれまで見た事の無いくらいに、キラキラと輝いていた。
「そう……じゃあ、響はその想いを伝えなくちゃいけないね」
「そ~なんだけどさぁ~……ど~んなタイミングで言えばいいのか……。翼さんにもOK貰ってるのに、わたしがタイミング掴めなくて中々言う機会が……」
「えっ!?響!翼さんからお墨付き貰ってるの!?」
 驚く未来に、響は照れ臭そうに頬を掻く。それを見た未来は、何やら思いついたように提案した。
「響、わたしに良いアイディアがあるんだけど……聞いてくれる?」
「えっ?」
 未来は微笑みながら、そのアイディアを響に語って聞かせる。
「……えぇっ!?い、いや、それはいくらなんでも早すぎるっていうか……」
「大丈夫。外堀はとっくに埋まってるんだし、建前もしっかりしてるし」
「じ、じゃあ……今度、翼さんに相談……してみる?」
「そうね。これ、翼さんの協力も必須だもん」
「緊張するなぁ……」
「翔くんにアタックしたいんでしょ?早く告白しておかないと、他の娘に取られちゃうかもよ?」
「うう……」
 こうして、響は親友である未来にも背中を押され、翔に告白する覚悟を決める事になる。
 そんな2人の部屋に置かれたピアノには、夕方3人で撮ったばかりの写真が印刷され、写真立てに飾られていた。
 立花響と風鳴翔。2人の胸の響きが交わる日は、もうすぐそこに。 
 

 
後書き
タイトル回収~。「響き交わる」って交響曲(シンフォニー)の意味と同時に、「立花響とその心を交える伴装者」「少女達と心を響かせ合い、伴奏する少年装者達」って意味も含めてたりするんですよ。

次回は翼さんのライブが迫る!
おがつば要素も入れるよ、勿論。だって好きなんだもの。
ってか、これ書いてる頃にやって来たおがつばイベ、タイミング良さ過ぎますよね。

翼「次はいよいよ私が主役ッ!」
緒川「え?僕にもスポット当てるつもりなんですか?」
翼「あ、緒川さん。RN式実装おめでとうございます」
緒川「翼さんこそ、天叢雲のデュオレリックギア実装、おめでとうございます」
翼「伴装者はRN式を設定に組み込んだ作品。きっと緒川さんもいつか、同じ戦場に経つ機会があるかもしれませんね」
緒川「僕と司令がギア纏って出撃すれば全てが片付く、なんて言われてますけど……いいんでしょうかね?」
翼「パワーバランスは割と重視したがる作者の事です。きっと何とかするでしょう!」
緒川「『何とかならなくても面白く、熱く描く自信はある』ですか。……じゃあ、頼みましたよ?」(作者からのカンペを見る)
翼「ところで緒川さん、おがつばってなんですか?」
緒川「ああ、それは……おっともうお時間みたいです」
翼「次回の戦場も、防人らせてもらう!」
緒川「これがルビ無しで読めたそこのあなたも、立派なサキモリストです。これからも翼さんをよろしくお願いしますね」
翼「皆、私だけではなく、緒川さんもよろしく頼むぞ!」

次回もお楽しみに! 
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