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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第4楽章~小波の王子と雪の音の歌姫~
  第41話「どちらも思うは君のため」

 
前書き
この頃は確か……そう。人生初!メロンブックスで薄い本買いました!
うにょん先生の「ビッキーかわいい!シリーズ」の最新刊!
勢いでポチろうとしてそのまま登録しちゃったワケダ。本体より手数料の方が高くついたけど、後悔はない!
むしろ人生初購入の同人誌としては最高でした。可愛いビッキーのイチャイチャを描くという意味では、自分の大先輩と言っても過言ではない方の作品ですからね。これは既刊も欲しいなぁ……。

さて、本編に関してですが、個人的最難関ポイントにして関所だったもの。それが393問題。
393が響を思った上で何に対して怒るのか、これを掴むのが中々大変でしてね。
その末にこんな形になりましたとさ。それではどうぞ! 

 
「た、ただいまー……」
 鍵の空いた玄関から部屋へ入り、恐る恐る顔を覗かせる。
 未来はとっくに着替えていて、不機嫌そうな顔で雑誌を眺めていた。
「ねえ、未来……。なんていうか、つまり、その……」
「おかえり」
「あ……うん、ただいま。……あの、入っても、いい……かな?」
「どうぞ。あなたの部屋でもあるんだから」
「うん……」
 他人行儀な態度に、未来がとっても怒っているんだと実感させられる。
 わたしがもう少し、話せるところは誤魔化さずに話していれば……。
「あ、あの……ね……」
「何?大体の事なら、あの人達に聞いたわ。今更聞くことなんてないと思うけど」
「……未来」
 雑誌を閉じ、テーブルに置くと立ち上がって、わたしの方を見ながら叫んだ。
「嘘つきッ!どうしてわたしに黙ってたの!?わたしが毎晩どれだけ心配してたか分かってる!?」
「そっ、それは……」
「それに風鳴くんとの事だって、どうして隠してたの!?隠す必要なんて無かったでしょ!!」

 未来の言葉が突き刺さる。わたしの事、こんなに心配してたのに……わたしはそれにも気付かずにいたなんて……。
「未来、聞いてほしいんだ。わたし──」
「どうせまた嘘つくんでしょ。わたし、もう寝るから」
 そう言って未来は、二段ベッドの下の方……本当なら未来が眠っているべき場所のカーテンの奥へと入って行った。
 カーテンの間から顔を覗かせると、未来は布団を被って壁の方を向いていた。
「……ごめん」
 絞り出せたのは、ただその一言だけだった。
(……嘘つくつもりなんて、なかったのに。ただ、未来を巻き込みたくないだけだったのに……)
 ふと、部屋の隅に置かれたピアノの上を見ると、中学の頃に2人で撮った写真が目に入った。
 写真の中のわたし達は、満面の笑みで笑っている。
 今までこんなに大きな喧嘩なんて、した事なんてなかったのに……。未来に危ない目に遭ってほしくなかったから、黙ってたのに……。
 わたし、どうすればいいんだろう……。
 
(……ごめんね、響……本当にゴメン……)
 口をついて出た言葉を、わたしは布団の中で後悔した。
 風鳴くんとの事、ちゃんと向き合うって決めたのに……。響がノイズと戦っている事を黙っていたのも、わたしを危ない目に遭わせない為だって分かっているのに……。
 それなのにわたしは……響の事、嘘つきだって言っちゃった。
 風鳴くんの事も偽善者だなんて言って後悔したばっかりなのに……。
 わたし……やっぱり、嫌な子だ。
 そう思うと、わたしなんかが響みたいな優しい子の友達で、本当にいいのか……。そんな迷いが、私の中で渦巻き始めた。
 
 ∮
 
(……装着した適合者の身体能力を引き上げると同時に、体表面をバリアコーティングする事で、ノイズの侵食を阻止する防護機能。更には、別世界に跨ったノイズの在り方を、インパクトによる固有振動にて調律。強制的にこちら側の世界の物理法則下に固着させ、位相差障壁を無効化する力こそシンフォギアの特性である。同時にそれが、人の扱えるシンフォギアの限界でもあった……)

 自身のラボの机にもたれ、手元の珈琲カップをもてあそびながら、櫻井了子は思案していた。

(シンフォギアから開放されるエネルギーの負荷は、容赦なくシンフォギア装者の身体を蝕み、傷付けていく。その最たるものが"絶唱"……。人とシンフォギアを構成する聖遺物とに隔たりがある限り、負荷の軽減はおよそ見込めるものではないと、結論づけている。それが()の櫻井理論だ)

 珈琲を一口啜り、研究室の壁にセロテープで貼り付けた写真を見る。

(この理を覆す可能性があるなら、それは立花響。そして風鳴翔。人と聖遺物の融合体第1号と第2号……。天羽奏と風鳴翼のライブ形式を模した起動実験で、オーディエンスから引き出され、更に引き上げられたゲインにより、ネフシュタンの起動は一応の成功を収めたのだが……立花響は、それに相当する完全聖遺物、デュランダルをただ1人の力で起動させる事に成功する……)

 よく見れば研究室の壁中が写真だらけであり、その写真はいずれも響、そして翔のもので溢れていた。
 日常風景から友人と過ごしている姿まで、いつの間に撮ったのか分からないものも多い。更には『見守り隊』が撮影した、翔と響の2人を中心に写したものも多く混ざっている。

 更に部屋の隅には、広木防衛大臣の血痕が残るケースも置かれていた。

(人と聖遺物がひとつになる事で、さらなるパラダイム・シフトが引き起こされようとしているのは、疑うべくもないだろう。人がその身に負荷なく絶唱を口にし、聖遺物に秘められた力を自在に使いこなす事が出来るのであれば、それは遥けき過去に施されし“カストディアンの呪縛”から解き放たれた証……)

 机のディスプレイに表示されているのは、響と翔のレントゲン写真だ。
 二人とも心臓を中心に、聖遺物が肉体を侵食して癌細胞のように広がっているのがひと目でわかる。彼女はそれを知りながらも、誰にもそれを話さない。
 彼女は自らの真の目的のため、融合症例の詳細を誰にも明かすつもりがないのだ。

(──真なる言の葉で語り合い、人類(ルル・アメル)が自らの手で未来を築く時代の到来……。過去からの超越!)

 櫻井了子を名乗る彼女は、その野望を次の段階へと進める為に動き出そうとしていた。
 立花響と風鳴翔。2人のシンフォギア装者のデータと、起動したデュランダルを見て、誰にも知られること無くほくそ笑みながら……。
 
 ∮
 
「……」
 昼休みの食堂。未来は窓際の席で、黙々とローストビーフを食べていた。
「……ここ、いいかな?」
「……」
 響の言葉にも答えず、彼女はただナイフとフォークを動かして、次の一口を進めるのみだ。
 響はチャーシューメンの乗ったお膳をテーブルに置き、未来の向かいに座った。

「あのね、未来、わたし……」

「何だかいつもと雰囲気が違うのですが?」
 振り向くとやって来たのは、安藤、板場、寺島の3人だった。
「どういうことー?よくわかんないから、アニメで例えてよ」
「これはきっとビッキーが悪いに違いない。ごめんねー、ヒナ。この子馬鹿だから許してあげてね」
 事情は分からないものの、何となく喧嘩した事だけは察した安藤が、茶化すようにそう言った。

「そういえば、音楽史のレポートの事、先生が仰ってましたが……」
「提出してないの、あんた一人なんだってね~。大した量じゃないのに、何やってんだか」
「あはは……」
 さすがに翔に頼りっきり、という訳にもいかないと感じた響は、今回は翔に頼らずにレポートを進めていた。
 だが、度重なる任務により、彼女は全くと言っていいほどレポートに手を付けていなかったのだ。
 ……既に慣れている翼、並びに任務の合間でもしっかりレポートの提出はこなしている翔には、そんな悩みは全く存在しないのだが。

「ビッキーってば、内緒でバイトとかしてるんじゃないの?」
 安藤の何気ない一言に、未来の手が止まる。
「ええっ!?響がバイトぉ!?」
「それってナイスな校則違反では?」
「それかやっぱり、噂の翔くん。もしかして、毎晩こっそりデートしてたり~?」
「えええええッ!?び、ビッキーってばいつの間に大人の階段を……」
 
 ガタンッ
 
 ナイフとフォークを置き、音を立てて席を立った未来は、そのまま何処かへと走り去ってしまう。
「あっ、未来ッ!」
 それを追って、響も行ってしまう。一口も手をつけられていないチャーシューメンをテーブルに残して。
「……もしかして私達、何かマズイこと言っちゃった?」
 険悪な雰囲気を崩すつもりが、悪化させてしまった事に気が付き、安藤達3人は顔を見合わせ、2人が走り去った先を見るのだった。
 
 ∮
 
(──わたしが悪いんだ……)
 息を切らせて階段を上る。着いた先は屋上だ。
「未来ッ!」
 昇降口から外へ出ると、未来はそこで静かに立っていた。
「……ごめんなさい!」
「どうして響が謝るの?」
 こっちを振り向かずに未来はそう言った。
「未来はわたしの事、ずっと心配してくれてたのに、わたしはずっと未来に隠し事して心配かけ続けてきた……。わたしは……」
「言わないで」
「あ……」

 振り向いた未来は、泣いていた。
「これ以上、わたしは響の友達でいられない……ごめんっ!!」
 その一言を最後に、未来は走り去って行く。
 後ろでバタン、と昇降口がとじた音がした。

「……どうして、こんな……」
 わたし、未来を泣かせちゃった……。わたしは、親友に嘘をつき続けた。
 だから未来は、わたしの事……嫌いになっちゃったのかな……。
「いやだ……いやだよぉ……」
 もう未来は、わたしの友達でいてくれないのかな……。
 そう思うと、どんどん涙が零れてきた。
「うッ、ひッ、……ぅ、ぅあぁああぁ……ッ」
 わたしの涙は屋上の床に落ち、嗚咽は青空へと吸い込まれて行った。翔くんが心配していたのって、こういう事だったんだ……。
 翔くん……未来ぅ……。わたし、どうすればいいのかな……?
 
 ∮
 
「確かにこちらからの依頼ではあるけれど、仕事が杜撰すぎると言っているの」

 その夕刻、例の館ではフィーネが苛立ちを顕にした声で電話に出ていた。
 互いに会話は全て英語。それだけで、相手は米国政府の関係者だと分かる。

「足がつけばこちらの身動きが取れなくなるわ。まさか、それもあなた達の思惑というのなら──」
『神ならざるものが全てに干渉するなど不可能。お前自身が一番わかっているのではないか』

 これ以上は話しても埒が明かないと判断したフィーネは、そのままガチャリと電話を切った。

「……全く。米国の犬はうるさくて敵わないわね。いっそ用済みのクリスでもイチイバルごとくれてやろうかしら──」
 
 バァンッ!
 
 勢いよく扉が開き、そこへクリスが現れる。

「あたしが用済みってなんだよ!もういらないってことかよ!あんたもあたしのことを『物』のように扱うって言うのかよ!頭ん中グチャグチャだ!何が正しくて何が間違ってんのか分かんねぇんだよ!!」

「……どうして誰も、私の思い通りに動いてくれないのかしら……」
 ゆっくりと椅子から立ち上がったフィーネは、ソロモンの杖をクリスの方へと向ける。
 放たれたノイズが、クリスの前に立ち塞がった。
「さすがに潮時かしら……」
「なんでだよフィーネ……どうしてあたしを……?争いのない世界が作れるって、だからあたしは……」

「ええ、そうね。あなたのやり方じゃ、争いをなくす事なんて出来やしないわ」
「なっ……!?」
 フィーネは静かに、そして残酷にその現実を突き付けた。
「せいぜいひとつ潰して、新たな火種をふたつみっつばら撒く事くらいかしら?」
「あんたが言った事じゃないか!痛みもギアも、あんたがあたしにくれた物だけが──」
「私の与えたシンフォギアを纏いながらも、毛ほどの役にも立たないなんて……そろそろ幕を引きましょうか」
 フィーネの右手が青白く輝き、その身に光が集まっていく。
「その光……ネフシュタンの鎧を!?」
「私も、この鎧も不滅……。未来は無限に続いて行くのよ……」
 光はネフシュタンの鎧を形成し、光が弾けるとフィーネは、クリスのものとは違い、金色に変化したネフシュタンの鎧に身を包んでいた。

「カ・ディンギルは完成しているも同然。もうあなたの力に固執する理由はないわ」
「カ・ディンギル……?そいつは──」
「あなたは知り過ぎてしまったわ。だからね、フフ、フフフ……」
 ソロモンの杖がクリスへと向けられる。
 次の瞬間、ノイズ達は変形してクリスの方へと突っ込んでいった。
「うわあっ!?うっ、く……ッ!」
 慌てて部屋を飛び出し、廊下を走って逃げるクリス。
 それをゆっくりと追いかけながら、フィーネは呟く。
「無駄に囀る鳥に価値はないわ。そのか細い喉を切り裂いて、二度と唱えなくしてあげる」
 這う這うの体で足を進めるクリスだったが、館の玄関口を出た所で躓き、転んでしまう。
 その直後、扉からフライトノイズが3体、空へと急上昇して行った。
 運良く助かったものの、早く立ち上がらなければフィーネかノイズ、どちらかは確実に彼女の命を奪うだろう。
(本気で……フィーネはあたしの事を……)
 背後から、加虐的な笑みを浮かべて迫るフィーネを見て、クリスはようやく気が付いた。
「……ちきしょう」
 フィーネが自分の事を利用するためだけに、これまで『痛み』で自分を縛っていた事に。
「ちっくしょおおおぉぉぉぉッ!」
 
「それじゃあ、ごきげんよう」
 ギアを纏う暇もなく、こちらを振り向き立ち上がろうとするクリス。
 フィーネは容赦なく、躊躇いもなく……クリスへと鞭を振るおうとその手を振り上げた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ゼェェェェェェェェエエエヤッ!!」
 その人物は眼鏡を外して胸ポケットに入れると、左拳を握って走り出した。
 ノイズによって破壊された扉の向こう、廊下の奥から素早い足音が、気合いの掛け声とともに迫る。
 振り返るフィーネ。その瞬間、彼女の顎に鈍い痛みが走った。
 フィーネが腕を振り上げた時、反射的に両腕で顔を守っていたクリスだったが、その声に腕を下ろし……その目を見開いて驚いた。

「ジュン……くん……?」

 そこに居たのは、不意打ちでフィーネに華麗なアッパーカットを決める純だった。
 愛する人の命を狙う者へと、赤く燃えたぎる怒りを込めた拳を見舞う彼の左手首から上は、まるで体表に張り付いたような銀色の鎧に覆われていた。 
 

 
後書き
英訳部分?もちろんGoogle先生のお世話になりましたとも……。
しかし今回、XVまで見終えてると色々懐かしい回になったな……。
ひびみく初の夫婦喧嘩とか、カストディアンの名前が初めて出てきたりとか。フィーネの盛大な勘違いとか……。

不滅の鎧に導かれるまま、漸く出逢う王子と姫君。
黒縁眼鏡が外れた時、ブラックホールが吹き荒れる!
次回、『第1部、完』
ラスボスが早めに倒れたので、次回からは日常系ラブコメメインのシンフォギアを……。
フィーネ「そんなわけあるかぁぁぁぁぁ!!」
……はい、嘘です!まだまだシリアス続きます!

暑苦しい友人「なあなあ、純のやつが無断欠席なんて珍しいな?」
クールな友人「翔、君は何か聞いていないのかい?同じ寮の親友なんだろう?」
翔「あー……純なら珍しく風邪を引いてな。今は寮で寝てるんだ」
双子の友人兄「この時期に風邪か……。心配だな、見舞いに行ってもいいだろうか?」
双子の友人弟「兄さんと同意見だ。お見舞いなら、僕も行こう」
翔「大丈夫だ。本人も伝染したくないらしいし、ちゃんと薬飲んで寝れば治るって言ってたぞ」
クールな友人「そうか……。では、今回は遠慮しておこう。あまり大袈裟に心配しても、困らせてしまうからね」
暑苦しい友人「悪化したりしたら呼べよ!?何か手伝える事とか、欲しいモンとかあったら俺達で何とかしてやっからな!」
翔「ああ。純にもそう伝えておくよ」
翔(やれやれ……純、お前は本当に何処へ行ったんだ……)

カットされたアイオニアンでの会話シーンです。
友人達の名前は決まっていないのですが、CVが余裕でわかりますね(笑)
まさかこの頃は名無しモブだった彼らに、後々キャラ名と個性が与えられるとは、作者自身も予期してませんでしたよ……。

次回、フィーネの前に飛び出し、不意打ちで顔に一発決めたOUJI!
その手にはなんと、回収し損ねたネフシュタンの鎧が……どうなる次回!? 
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