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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第4楽章~小波の王子と雪の音の歌姫~
  第39節「迷子(まよいご)」

 
前書き
まさか予告編をザルバに担当されるとは……。
って事でタイトルは牙狼風味になっております。

そういやこれを上げた日は、我らがウルトラマンジャスティス限界ヲタク氏の舞台挨拶を見に行ってたなぁ。
いやー、貴重で尊い時間を過ごさせて頂きましたよ……。

それでは、純クリを見守ってあげてください。どうぞ。 

 
「ジュンくん……!?」
「「「ッ!?」」」
 雪音クリスと名乗った少女の一言に俺も、立花も、姉さんまでもが揃って息を飲んだ。
 まさかこの娘……純の知り合い、だったのか!?
「クリスちゃん!その姿は一体……それに、その手に持ってるのは……!?」
「……あたしを……見るんじゃねぇ!!」
 そう言って雪音は、地面に向けて発砲すると土煙を捲き上げる。
 そのまま跳躍し、雪音は叫んだ。
「あたしはもう……ジュンくんの知ってるあたしじゃないんだ!!」
「何を言って……ッ!?クリスちゃん、上だ!!」
 純の叫びに全員が空を見上げると、フライトノイズが羽を螺旋状にして、ドリルのように回転しながらクリスの方へと突っ込んで行く所だった。
「──な……ッ!?」
 次の瞬間、2体のノイズにより、イチイバルのガトリング砲が破壊される。
 無防備になり、落下していくクリス目掛けて、3体目のフライトノイズが襲いかかり……。
「クリスちゃん!!」
「──ッ!?クリスちゃん、危ないッ!」
 
「え──ッ!?」
 立花が咄嗟に、フライトノイズに体当たりする。
 ノイズは炭と化したものの、勢い余って立花は倒れ込む。
 それを雪音は、反射的に受け止めてくれていた。
「クリスちゃん、大丈夫?」
「お前、何やってんだよッ!?」
「ゴメン……。クリスちゃんに当たりそうだったから、つい……」
「ッ!?バカにして!余計なお節介だ!」
「純!お前もこっちへ!離れているとノイズに狙われるぞ!」
 純に向かって叫ぶ。純は頷くと、こちらへ向かって走り寄る。
 その純を狙って飛来するフライトノイズには、生弓矢のアームドギアで一射見舞ってやった。
 倒れた立花と、それを支える雪音。そして駆け込んできた純を、俺と姉さんで囲んで守る。
 その時だった。知らない声が聞こえてきたのは……。
 
「──命じた事もできないなんて、あなたは何処まで私を失望させるのかしら?」
「「ッ!?」」
「この、声は……」
 雪音が向いた方角……公園から夕陽の沈む海を見渡せるよう、柵が巡らされた場所へと、俺と姉さんも目を向ける。
 そこには、黒服に金髪のロングヘアーでサングラスをかけて顔を隠した、ソロモンの杖を持つ女性が立っていた。
 離れているが、背丈は了子さんと同じくらいだろうか?
「フィーネ!」
(フィーネ?……終わりの名を持つ者?)
 音楽記号で、楽曲の休止を表す記号を名前に持つ女性……。
 この人が一連の事件の黒幕か!?

「こんな奴がいなくったって、戦争の火種くらいあたし一人で消してやるッ!」
 立花を放り出して会話を始める雪音……って立花を放り出すなよ!
 っと思ったら、純がしっかりと受け止めて地面に寝かせてくれた。
 流石は王子様系。やる事がイケメンだな……。
「そうすれば、あんたの言うように人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」
 雪音の縋るような声。しかし、フィーネと呼ばれた女性は溜息を吐くと共に宣告した。
「ふぅ……。もうあなたに用はないわ」
「な……なんだよそれ!?」
 雪音の表情が絶望に染まる。それと同時に、その後ろにいる純の表情が険しくなった。
「フッ……」
 フィーネが手を翳すと、彼女の掌から青白い光が放たれ、辺り一帯に散らばっていたネフシュタンの鎧の欠片が発光する。
 やがてネフシュタンの鎧は粒子化し、フィーネの手元に集まっていくと、竜巻のように渦を巻きながら消失した。
 そしてフィーネは、ソロモンの杖をこちらへと向ける。
 次の瞬間、3体のフライトノイズが独楽のように高速回転し、木々を伐採しながら迫って来た。
「ハッ!やっ!」
「ハッ!」
 姉さんの刃が2体を斬り伏せ、俺の一射が最後の1体を射抜いた。
 その隙に乗じて、フィーネは柵を足場として、夕陽を背に飛び降りて行った。
「待てよ、フィーネェェェェッ!!」
 フィーネを追って、雪音も飛び出していく。
 シンフォギアで強化された身体能力で、雪音はあっという間に柵の下へと飛び降りて行った。
「待って!クリスちゃん!!」
「おい純!何処へ!?」
「クリスちゃんを放っておけない!あの娘は僕が連れ戻さなきゃ!」
 そう言うと純は、1人で何処かへと走り去ってしまった。追いかけようとしたが、気を失ってしまった立花の方が心配だ。
 迎えのヘリがやってきた音がする。純……お前は、どこまで……。
 
 ∮
 
「反応、ロストしました。これ以上の追跡は不可能です」
 クリスのイチイバルが発するアウフヴァッヘン波形をモニタリングしていた友里が報告する。
「こっちはビンゴです」
 一方、クリスの身元を調べていた藤尭は、データベースからその資料を表示させた。
「雪音クリス、現在16歳。2年前に行方不明になった、過去に選抜されたギア装着候補の1人です」
「……あの、少女だったのか」
 そう呟く弦十郎の表情は、何処か重苦しさを感じさせた。
 果たして、彼は何を思っているのか……。今この瞬間の、彼の表情を知らない部下達に、それを推し量ることは出来ない。
 彼が感じている責任は、彼一人が心に仕舞っていた。
 
 ∮
 
 夜の街中、雪音クリスは2人の子供の手を引いて歩いていた。
「えへへ、おててをつないでいると、うれしいね」
「は、なんだそりゃ。ほら、ちゃんとお父さんを探せよ」
「わかってるよ」
 兄の少年と、妹の少女。小学生くらいの2人とクリスが出会ったのは、フィーネを見失い、途方に暮れながら歩き続けていたクリスが、子供の鳴き声を聞いたところからだった。
 最初は、兄が妹を弱いものいじめで泣かせたのかものと勘違いして拳を振り上げたが、兄を庇う妹の姿に理由を聞くと、迷子になって泣いていただけだと言う。
 放っておけなくなってしまったクリスは、2人を父親の元まで送り届ける事に決めたのだ。
「…………ふん♪ふんふふんふん……♪」
「わぁ……。おねえちゃん、うた、すきなの?」
 少女に言わて、無意識の内に口ずさんでいた鼻歌に気がつく。
「……歌なんて大嫌いだ。特に、壊す事しかできないあたしの歌はな……」
 自嘲気味にそう返すクリスに、少女は不思議そうに小首を傾げた。
 フォニックゲインや聖遺物と関係なく歌ったのは、いつ以来だろうか。
 もう既にかなりの日数、歌っていなかった気がする。
 そして歌えば、それはフィーネからの指示であり、シンフォギアや完全聖遺物の起動に使われ、その力は結局全てを壊してしまう。
 自分のために歌わなくなっていたクリスは、いつしか自分の歌が嫌いになっていたのだ。
 その歌が大好きだと言ってくれた人の、預かり知らぬ時間、預かり知らぬ場所で……。
 
「あっ!父ちゃん!」
 気が付けばそこは、交番の前だった。
 交番で警官と話していた男性が、2人に気が付き駆け寄って来る。
「お前達……何処へ行っていたんだ!ん、この方は……?」
「おねえちゃんがいっしょに、まいごになってくれたー♪」
「違うだろ、一緒に父ちゃんを探してくれたんだ」
「すみません、迷惑をおかけしました……」
「いや、成り行きだったから……その……」
 頭を下げる父親に、クリスはそっぽを向きながら答えた。
「ほら、お姉ちゃんにお礼は言ったのか?」
「「ありがとう!」」
「仲、いいんだな……」
 仲良く2人で声を揃えてそう言った子供達を見て、クリスはふと呟いた。
「そうだ。そんな風に仲良くするにはどうすれば良いのか、教えてくれよ」
 クリスに聞かれると、子供達は不思議そうな表情で顔を見合わせる。
「そんなの分からないよ。いつもケンカしちゃうし」
「ケンカしちゃうけど、なかなおりするからなかよしー♪」

 少女の無邪気な笑顔に、クリスは夕方戦ったばかりの、立花響と風鳴翔の言葉を思い浮かべる。
『ちゃんと話し合えば、きっと分かり合えるはず!だってわたし達、同じ人間だよ?』
 その言葉と少女の言葉が、どこか重なる。
 そして、その言葉を貫かせようと隣に立って支えていた翔の姿が、妹を守ろうと自分の前に立ち塞がった兄に重なった。
「……仲直りするから仲良し、か」
(話をすれば……分かり合えて、仲直りできるのかな……。あたしと、フィーネも……)

 そして、突き放して来てしまった幼馴染の顔が頭を過る。
 ノイズのせいで、ろくに話すことも出来なかった。それに、あんな約束を交わしたのに、自分はこんなにも『お姫様』からは遠ざかってしまった。
 身体中は痣だらけで、歌で何もかも壊してしまう。戦場に立てば引き金に指をかけ全てを撃ち抜き、ムカつく事があれば拳を振り上げてしまう。
 そんな自分を、一目見るだけでも約束に近づこうと進んで来たのが分かる純の眼鏡に、映してほしくなかったのだ。
(ジュンくんにも、謝らないとな……。あたし、折角会えたのに……)
 親子と別れ、少女はまた夜道を彷徨う。
 その先に、求めた答えが待っていると疑いもなく信じて……。
 
「はっ、はっ……クリスちゃん……クリスちゃん、何処だ!」
 一方、こちらも街中の何処か。
 人通りを何度も見回して、夜道を駆け抜けて行くのは、金髪碧眼の美少年。
 捜している少女の名を何度も呼んではまた走る。胸に抱いた想いを胸に、その情熱を糧として。
(詳しい事情は分からないけど、あの状況……クリスちゃんが帰る場所を失った事だけは理解出来た。だったら、僕が彼女の帰る場所にならなくちゃダメだ!事情は後で聞けばいい、真実は後で知ればいい!今は……彼女を見つけ出さなくちゃ!)
「クリスちゃん!クリスちゃん、クリスちゃん!何処だ!?何処に居るんだ!返事をしてくれ……クリスちゃあああああああん!!」
 少年と少女は、同じ街の何処かですれ違う。
 逢いたくても逢えない。話したくても逃げられる。
 そんな2人を再び引き寄せるきっかけは、少年のポケットの中に隠されていた事を、この時誰もが知らなかった。
 公園から走り出す前、咄嗟に拾っていた銀色の欠片。その輝きを、爽々波純だけが知っている。 
 

 
後書き
純クリのターンは開始早々、こんな感じで展開されております。
読んでて辛いところもあるかも知れませんが、同時に純くんのOUJI力もどんどん垣間見えて来ますので、安心して珈琲から砂糖を減らしておいて下さい。
またはブラック珈琲をお飲みください。

響「翔くん翔くん。わたし、前回クリスちゃんに『くせぇ』って言われてから、ずっと気になってるんだけど……わたしって臭いの?」
翔「落ち着け立花。そのセリフ俺も含んで言ってた筈だし……。その理論だと俺も臭うわけだが?」
響「そんな事ないよ!だって翔くん、いい匂いしたし……」
翔「たっ、たたた立花!?いつの間に俺の匂いを……」
響「あっ!いや、その……デュランダル移送で翔くんに抱き締められた時に……不可抗力で……。べべ別にっ、思いっきり吸い込んだりしたわけじゃないからね!?」
翔「わわわわ分かっているとも!そうだよな、不可抗力だよな!別にそんな、俺の匂いをくんかくんかした訳じゃないんだよな!?」
響「そんな事しないよ!……あ、でも……わたしが臭うかどうか、さ……翔くんに確かめてもらうなら、わたしは別に……その……」
翔「たっ、たたた立花……!?それは、その……流石に問題あるんじゃ……」
ANE「おおお、緒川さん!?あれはつまり、その……」(物陰から見守りつつ)
NINJA「耳とか尻尾が幻視できる気がする、ですか?奇遇ですね、僕もです」(同じくin物陰)

次回はいよいよフィーネのアジトに!?お楽しみに。 
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