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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第3楽章~不滅の聖剣・デュランダル~
  第25節「なお昏き深淵の底から」

 
前書き
これを投稿した頃といえば、XDの確定ガチャで無事にリミッター解除されたOTONAを加入させることが出来た頃!
RN式をネタに書いてる自分が、RN式未所持なのはシャレになりませんからね。
今ではRN式緒川さん共々OTONAパーティー組んで暴れてもらってますw

それから、後書きネタにいい反応してくれるクロックロさんと出会えたのもこの頃。ああいう視点でツッコミ入れてくれるのは、あの人くらいだったなぁ。お陰で後書きや本編でネタにしていける部分が増えたりしたし、また読みに来てくれると嬉しいな……。

と、このように皆さんの面白い視点からの感想で、作者のストックが潤う事もありますので、感想はどんどん送って欲しいです。
もしかしたら、作者自身も意図していなかったネタを提供できるかも?
それでは、デュランダル……の前に、修行の様子とクリスちゃんの例のアレです。どうぞ! 

 
「いいぞ!飯食って映画見て寝る……それが男の鍛練だ!」
「わたし、女です、師匠ッ!あとシミュレーターも使ってますッ!」
「細かい事を気にするな!よし、次はランニングとサンドバッグ打ちだ!ついてこいッ!」

 本部のシミュレーターから出てきた俺と立花は、しばらく休憩を挟み、再び修行へと戻る。
 ここ最近の放課後と休日はずっとこんな感じだ。

「そういや、今度観る予定の映画は……なるほど、カンフー映画。叔父さんの得意技、震脚なんかもここからだったっけ?」
「おお!師匠のオススメ映画ですか!」
「うむ。中国のアクション映画は、俺が最も敬愛する人の故郷のものだからな!人生で一番多く見てきた映画だ」

 叔父さん、わざわざ立花の分まで黄色いジャージ用意したくらいだからぁ。
 ちなみに俺が尊敬している俳優さんは、日本三大特撮の一つである大人気シリーズの初代主人公役。鍛え抜かれた肉体と、顔や声から溢れるパワフルなオーラ、そしてこの世界で1番バイクが似合う漢だ。
 俺も早く、姉さんと同じ二輪免許が欲しい……。

「スポーツドリンクとタオルは持ったな?では向かうぞ!」
「はい!師匠!」
「終わる頃には門限が迫ってる筈だ。遅れないよう、緒川さんに送迎を頼んでおこう」
「ありがとう翔くん!」
 
 盛り上がる3人を見つめる、二課の職員達。
 その表情は、内通者の存在への疑惑などは全く感じさせない明るさがあった。

「翔くん、すっかり響ちゃんのセコンドね」
「あの司令の特訓にここまで付いていける子、初めて見ましたよ……」

 友里は響を積極的にサポートしている翔の手際に、彼の姉を支える緒川の面影を重ね、藤尭は響の素直さと順応性の高さに感心していた。

「……それにしても、映画が教材ってどうなのかしらね?」

 そして了子はというと、弦十郎の独特な修行方法に苦笑いを浮かべていたのであった。
 
 ∮
 
 山奥の古い洋館。豪勢な外見でありながらも寂れており、何処か不気味な雰囲気を醸し出しているその建物の一部屋にて、以前ノイズに襲撃された装者達を遠巻きに観察していた金髪の女性──フィーネは、古い電話機を手に、ある人物と通話していた。

 交わされる言葉は全て英語で、女性は完全聖遺物、ソロモンの杖を片手に流暢な発音で通話を続けていた。

 部屋の天井には巨大なシャンデリアが積まれており、部屋の中心には長方形の豪華な食卓が配置されている。部屋の奥は階段付きの檀が存在しており、そこには巨大なディスプレイを始めとした精密機械が複雑に配置された実験設備となっている。

 ただ、その部屋には不自然な点も幾つかあった。
 一つは部屋の隅々に、明らかに拷問器具と思われるものが配置されている事。
 針だらけで拘束具が付けられた椅子。鳥籠のような鉄檻には、枷付きの鎖とこびり付いた血の跡、そして黒猫の死体がそのまま放置されている。

 そしてもう一つ。それは、フィーネの格好であった。
 彼女は今、ヒールとストッキング以外は何も身に付けず、そのグラマラスな肉体を晒していた。もっとも、この場にいるのは彼女と、部屋の隅にある装置に拘束され、気を失っている銀髪の少女……クリスだけなのだが。
 そのクリスも身にまとっているのは、ネフシュタンの鎧でも、衣服でもなく、やたら露出度の高いボンデージだった。
 
 やがてフィーネは電話を切ると、椅子から立ち上がりながら呟いた。

「野卑で下劣。産まれた国の品格そのままで辟易する……」

 自らに協力している取引相手への愚痴を隠しもせずに口にしながら、フィーネはクリスの前へと立つ。

「そんな男にソロモンの杖が既に起動している事を教える道理はないわよねぇ、クリス?」

 顎に手を添えると、クリスはゆっくりと目を開く。
 クリスの全身からは汗が滴っており、磔にされた彼女の足下には、その汗が水溜まりを作っていた。

「苦しい?可哀想なクリス……あなたがグズグズ戸惑うからよ。誘い出されたあの子達をここまで連れてこればいいだけだったのに、手間取ったどころか空手で戻って来るなんて」
「これで……いいん、だよな?」
「なに?」
「あたしの望みを叶えるには、お前に従っていればいいんだよな……?」
「そうよ。だからあなたは、私の全てを受け容れなさい」

 そう言って、フィーネはクリスから手を離すと、階段を降りてこの拘束具……いや、拷問器具の操作盤へと向かう。

「でないと嫌いになっちゃうわよ?」

 フィーネが操作盤のレバーを降ろすと、青白い電撃がクリスを襲う。
 感電式の拷問器具。それがこの装置の正体だ。

「うわああああああッ!!あっ、がああああああああッ!!」

 苦しみ悶え、苦痛に顔を歪めながらクリスは悲鳴を上げる。
 
 そんなクリスを見て、フィーネは恍惚の笑みを漏らしていた。

「可愛いわよクリス、私だけがあなたを愛してあげられる」
「ああぁああッ!がっ、はぁ……はぁ……」

 電撃が止まり、短く息を吐く。しかしクリスは苦しんでこそいるものの、不満を口にすることは無い。

 何故ならこの拷問器具、本来の用途こそ拷問の為だけにあるものなのだが、今現在使われている理由はそちらに重きを置いたものではない。前回の戦闘の中で、クリスの体内に侵食したネフシュタンの鎧。その破片を取り除く為の医療器具としての用途が、この拷問器具が使われている理由であった。

 ──もっとも、フィーネの趣味嗜好という側面も実は少なからず存在しているのだが。むしろ、今の二人の格好もフィーネの趣味であり、彼女の価値観に基づいたものなのだが。
 
 息を荒らげるクリスに、フィーネは再び近付き、妖艶な手つきで頬に触れる。

「覚えておいてねクリス。痛みだけが人の心を繋ぎ絆と結ぶ、世界の真実という事を……」

 クリスはその言葉を、ただ黙って息を呑み、聞いているのみだった。

「……さあ、一緒に食事にしましょうね」

 一晩中、荒療治とはいえ自分の身体を慮り、身寄りのない自分に寝食の場を与えてくれる。
 痛みさえ我慢すれば、この人は自分の事を愛してくれる。
 フィーネから、ようやくかけられた優しい言葉に、クリスは笑顔を見せる。

「……ふっ」

 次の瞬間、再びレバーが降ろされ、クリスの全身を電撃が襲った。

「うわあ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!」

 少女の苦しみはまだ終わらない。その身が青銅蛇の鎧を脱ぎ捨てる、その時までは……。
 
 ∮
 
「はッ!ふッ!」

 土曜日の朝、屋敷の庭に響き渡る掛け声。池の傍に植えられた木に下げられたサンドバッグを、立花響は一心に殴り続けていた。

「そうじゃないッ!稲妻を喰らい、雷を握り潰す様に打つべしッ!」
「言ってる事、全然わかりませんッ!でも、やってみますッ!」

 弦十郎に言われた通り、稲妻が落ちる瞬間を思い描く。

「……。──はあッ!!」

 心臓の鼓動に耳を傾け、目の前のサンドバッグに稲妻が落ちる瞬間、それを握り潰すように素早く拳を打ち込んだ。

 次の瞬間、サンドバッグを引っ掛けていた枝はへし折れ、そのままサンドバッグは池の中へと落ちて水飛沫を上げた。
 池を泳ぐ錦鯉が、驚いて水面へと飛び跳ねる。

「わぁ……やりました!!」
「うむ、よくやった!こちらも、スイッチを入れるとするか……続けるぞッ!」

 弦十郎はパンチングミットを両手に付け、構える。
 サンドバッグの次はスパーリングで精度を磨くつもりらしい。

「叔父さんの言う事をそのまま実践出来るとは……流石だ立花。俺も負けてはいられない!」

 そう言って、翔は古新聞を1枚手から離した。
 宙を舞う新聞紙に、翔は素早く手刀を振り下ろした。

「師匠、翔くんはどんな修行をしているんですか?」
「ああ。翔のシンフォギアは、腕に刃が付いているだろう?あれを使いこなせるよう、手刀の練度を上げているんだ」
「なるほど……」
「竜巻を断ち、空気を真っ二つに割るように……斬るべしッ!」

 意識を右手に集中させ、竜巻を切断するイメージを思い描く。
 新聞紙がひらひらと宙を舞う中、翔の手刀が勢いよく振り下ろされた。
 次の瞬間、新聞紙は二つに裂けて地面へと落ちた。

「翔くん凄い!」

 響が歓声を上げると、翔は新聞紙を拾ってそちらを向いた。

「ありがとう。でも、まだまだ片手だ。次は両手を使って、真っ二つどころか四つにしてやるさ」
「よし!では翔も付き合え!2人の拳が何処まで正確に打ち込まれるか、俺が見てやろう!」
「「はいッ!!」」

 弦十郎が構えると、二人は拳を握りそれに応じるのだった。
 
 ∮
 
「……どうした、翼?」
「……え、ここは──」

 目を覚ますとそこは、二課の敷地の一つである森の中で、私の隣には奏の姿があった。

「おいおい、どうしたんだよ。こんな真昼間から寝てたのか?それとも、あたしとの訓練はそんなに退屈か?」
「そ、そんなわけないッ!奏との時間が退屈だなんて!さ、さあ、続きをしよう、奏ッ!」
「いーや、そろそろ休憩だ。翼はもう少し力を抜かないとな」

 そう言うと奏はアームドギアを収納した。

「で、でも……」

 私は日々強くならなくてはいけない。休憩している暇なんて……。
 そんな私の心中を察したかのように、奏は言った。

「翼は真面目すぎるんだよ。あんまり真面目すぎると、いつかポッキリ行っちゃうぞ?」
「奏は私に意地悪だ……」
「翼にだけはちょっとイジワルかもな。いいじゃないか?それとも、あたしが嫌いになったかい?」
「……そんな事、ないけど……もう……」

 お互いに口癖のようになってしまったいつものやり取りは、そういえばこの日が初めてだっけ?
 
 そうだ──私は奏と、こんな風に過ごして──。
 
「はああああーーーッ!もらったッ!」
 
〈LAST∞METEOR〉
 
 場面は変わってノイズとの戦闘。
 奏が突き刺したアームドギアから、螺旋状にエネルギーが放たれ、ギガノイズが爆散する所だった。

「凄い、さすが奏!」
「ああ、任せとけって!さあ、残りも片付けるぞ!」
「うんッ!」

 そして全てのノイズを殲滅し、自衛隊の隊員達を救助していた際のことだった。

「……おい、大丈夫か?」

 奏が声をかけたのは、瓦礫の下で埋まっていた男性隊員だった。
 その人は同僚に肩を支えられながら、奏と私を見て言った。

「……ありがとう。瓦礫に埋まっても歌が聞こえていた。だから、頑張れた……」
「あ、ああ……」

 この時、奏は驚いた顔でそれを聞いていた。

「奏?」
「……いや、何でもないよ」

 奏は朝焼けに染まる空を見上げながら言った。

「なあ、翼……。誰かに歌を聴いてもらうのは、存外気持ちのいいものだな」
「……どうしたの、唐突に?」
「別に。……ただ、この先もずっと、翼と一緒に歌っていきたいと思ってね」
「……うん」

 その時の奏は、とても晴れやかな表情をしていた。
 まるで、何かの答えを得たような……そんな晴れやかな表情を──。
 
 そうして、私達はツヴァイウィングとなって──。

「あたしとあんた、両翼揃ったツヴァイウィングは何処までも遠くへ飛んで行けるッ!」
「どんなものでも越えて見せるッ!」

 あのライブの日を迎えた。
 そういえば、ツヴァイウィングの名前は奏と二人で考えてた時、翔に言われた一言がきっかけになったんだっけ。
 
『ユニット名か……。そういや、姉さんも奏さんも、名前に羽って入ってるよね。姉さんは奏さんと一緒なら、きっと何処までも飛んで行けるんじゃないかな?』
『2人の羽、か……。ツヴァイウィングってのどうだ?』
『ツヴァイウィング……うん、いい名前だと思う!』
『よし!じゃあ、あたし達2人は今日からツヴァイウィングだ!』
 
 私達は何処までも遠くまで、ずっと一緒に飛んで行く……その筈だった。
 
 でも、そうはならなかった。だって、あの日がツヴァイウィングにとって、最後のライブになったんだから……。
 
 ──あの日、私は片翼となった。
 
 1人じゃ飛べないよ……。苦しいよ、奏……。
 
 違う……それじゃダメなんだ。私は、奏の意志を、奏の為に1人でも──ッ!
 
「……翼」
 
 脳裏に浮かぶ思い出の彼女は、どんな時も笑い続けていた。
 
 でも、目の前を通り過ぎて行った彼女は笑わない。
 
 笑ってくれないんだ……。
 
 どうして……笑ってくれないの……?
 
 奏……。 
 

 
後書き
翔くんは学校をサボらせてくれないので、特訓はちゃんと放課後に。
一日中やるならちゃんと土日を使っております。
それから、例のシーン書いてる間がちょっと辛かったですね。

クリス「うわああああああッ!!あっ、がああああああああッ!!」
フィーネ「覚えておいてねクリス。痛みだけが人の心を繋ぎ絆と結ぶ、世界の真実という事を……」
???「ちょっと待ったああああああああ!!」(最後のガラスをぶち破る音)
フィーネ「なっ!窓から!?」
純「彼女に何をしたァァァァァァァァァァッ!!」
クリス「お、お前は……!」
純「純……爽々波純!クリスの幼馴染だッ!」
クリス「純くん!?」
フィーネ「馬鹿な、お前の出番はまだ先のはず!!」
純「申し訳ありませんが、もう我慢の限界ブチ切れ寸前!いえ、もう完全にプッツンしてるよ僕は!!なので武力介入させていただきますッ!!」
フィーネ「ほう?それはシンフォギア装者でもない小童が、私に逆らうほどの理由だと?」
純「そこの如何にもな格好した悪女っぽい人!あなたみたいな人が絆を語るのもそうですが、それ以上に、クリスに手を出そうなんざ2000年……いや、2万年早いぜ!!」
クリス「眼鏡外してその声で言っていいセリフじゃねぇだろ!!」
フィーネ「2万年……だと!?」
クリス「フィーネも真に受けて『あとどれくらい輪廻転生すればいいんだ』みたいな顔してんじゃねぇ!」
純「ともかく、貴女を略取・誘拐罪と暴行罪で訴えます!理由は勿論、お分かりですね?貴女がクリスをこんな目に遭わせ、その自由を剥奪したからです!覚悟の準備をしていてくださいッ!近い内に訴えますッ!裁判も起こしますッ!裁判所にも問答無用で来てもらいますッ!!」
クリス「覚悟の準備って何だよ!?」
フィーネ「馬鹿め、この私が法で裁ける存在だとでも?」
純「なら、その時は……ブラックホールが吹き荒れるぜ!!」
クリス「宇宙の果てまで運び去る気かよ!?」
フィーネ「面白い!ならばその前にお前にも痛みを与えてやろう!」
純「クリスは必ず取り戻す!爽々波純の名に懸けて!」
クリス「だから出てきちゃいけない赤青銀の謎眼鏡をさり気なく懐から取り出すな!!あーもうっ、誰かこいつらを止めろぉぉぉ!!」

クリス「──って夢を見たんだけど」
フィーネ「あなたの中の幼馴染どうなって……いえ、疲れてるのね。今夜はもう寝なさい」(苦笑)

本編のシリアスブレイク&どうしてこうならなかった系NGシーン。
今回はそろそろ出番が待てなくなってきた純くんの乱入でした。ちなみに、本来の彼はここまではっちゃけたキャラではないのでご安心を。
ちなみに純くんのイメージCVはマモさんです。これは勝ったな(確信) 
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