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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第2楽章~約束の流れ星~
  第24節「言えない秘密と始まる特訓」

 
前書き
今日のところはここまで。明日からはまた新章がスタートします。

さて、今回はOTONAへの弟子入り回になりますよ! 

 
 司令室に集まった俺達は、今回の一件で気になった点についての議論を交わしていた。
「気になるのは、ネフシュタンの鎧をまとった少女の狙いが、翔と響くんだということだ」
「それが何を意味しているのかは全く不明……」
「いや、共通点なら一つだけ」
 了子さんの言葉を否定して、人差し指を立てる。
 俺達が狙われる理由があるとすれば、おそらくは……。
「俺も立花も、聖遺物との融合症例である……この一点かと」
「なるほど……となれば、個人を特定しているのみならず、我々しか知らないはずの情報を握っているというわけだ。必然的に、この二課の存在も知っているはずだな」
「内通者、ですか……」
 藤尭さんが不安げな顔をする。
 確かに、二課の情報が漏れている以上、内通者の存在があるはずだ。
 あの鎧の少女を裏で操っている何者か。それに与している内通者の存在は疑わざるを得ない。
 
「2人の融合症例を拉致する事が狙い……。もしその目論見が成功すれば、響ちゃんも翔くんも碌な目に遭わないでしょうね。ありとあらゆる生体実験、解剖素材として扱われちゃうかも……」
「そ、そんな……」
 立花が怯えた表情を見せ、後退る。
 その肩に手を置くと、立花は俺の顔を見た。
 俺は立花、そして了子さんの顔を見て宣言する。
「そんなこと、絶対にさせません。自分の身は勿論、立花は俺が守ります」
「翔くん……」
 了子さんはそれを聞くと、何故か可笑しそうに笑った。
「翔くんは本当に響ちゃんにベタ惚れよね~」
「ベッ、ベタ惚れって何ですか!?俺は二課所属の装者として当然の事を……」
「そういう真面目すぎる所、弄り甲斐はないけど嫌いじゃないわよん」
 そう言って、了子さんはやれやれ、と言うように肩を竦めた。
 
「わたしも、強くならなくちゃ……」
 立花がそう呟いた。皆の視線が立花に向けられる。
「シンフォギアなんて強い力を持ったのに、わたしがいつまでも未熟だから……。翼さんだって、ずっとずっと泣きながらも、それを押し隠して戦っていたのに……。悔しい涙も、覚悟の涙も、誰よりも多く流しながら……」
「響くん……」
 立花の後悔は尤もだ。1ヶ月間、シミュレーションを重ねて来たとはいえ、彼女は単騎で戦える所まではまだ鍛えられていない。基礎を積んでいないのもあり、この中で一番練度が低いのは立花だ。
 ……でも、あの瞬間の姉さんは"誰よりも強い剣"じゃなくて、"弟を守る姉"として、"シンフォギア装者の先輩"として唄いきった。俺の目にはそう映っていたよ……姉さん。
「……わたしだって、守りたいものがあるんです!だから──ッ!」
 
(──だから、わたしはどうすればいいんだろう……?)
 
 わたしの迷いは口に出ることなく、心の奥底へと吸い込まれて行った
 
 ∮
 
「響?」
 屋上のベンチに座り、一人で考え込んでいると、やって来た未来に声をかけられた。
「未来……」
「最近、1人でいる事が多いんじゃない?」
 未来はこっちに歩いて来ながら、そう聞いてきた。
「そ、そうかな?そうでもないよ?わたし、1人じゃなんにも出来ないし、この学校だって未来が進学するから──」
 隣に座った未来に、手を握られる。
「だって響、無理してるんでしょ?」
 未来の言葉は図星だった。あーあ、やっぱりわたし、隠し事向いてないみたい。
「……やっぱり未来には敵わないや」
「もしかして、翔くんと何かあった?」
「そっ、そんな事ないよ!これは翔くんの事とは関係なくて……」
 そこでちょっとだけ、言い淀んでしまう。
 これは、翔くんの事と全く無関係じゃないから。ちょっとだけ、嘘を吐いている気がして……。
 ふと昨日、翔くんから言われた事を思い出した。
 
『立花、小日向とは上手くいっているか?』
 ミーティングの後、翔くんは藪から棒にそんな事を聞いてきた。
 喧嘩はしていない。でも、隠し事を続けないといけないのは辛い。
 そう言ったら、翔くんは少し考え込む素振りを見せて、それからこう言った。
『嘘を吐くのは辛い。それが傷付けるためのものではなく、大切な人を守る為の優しい嘘なら尚更だ。だから、隠し続けるのが辛い時は、嘘の中に少しだけ真実を混ぜる事も必要になってくる』
 嘘の中に少しだけ……?
 首を傾げると、翔くんは優しく微笑みながら続けた。
『人を騙す方法の一つに、「真実8割、嘘2割」って配分があってな。人を騙すのにも100%の真っ赤な嘘じゃ、当然だけどボロが出る。でも、本当の話をした中に少しだけ嘘を混ぜるだけで、その嘘は現実味を帯びてくるんだ』
 言ってること全然分かりません、と言ったら翔くんはまた少し考え込んでから、つまり、と言った。
『これ、人を騙す為だけじゃなくて、人を守る為の嘘にも使えると思うんだ。隠さないといけない大事な部分は嘘で隠すとして、それ以外の所はちゃんと本当の事を話す。そうすれば、全部隠してるよりは少しだけ気が楽だと思うぞ?……まあ、嘘を吐くのが苦手そうな君に言っても、役に立つかは分からないが……』
 困ったような顔でそう付け足す翔くんに、一言多いよ~、と頬を膨らませる。
 でも、翔くんの優しくアドバイスは、わたしの心にしっかりと染みていた。
 
「未来……ちょっとだけ、相談してもいいかな……?」
「うん……いいよ?」
 このまま隠し続けても、未来を心配させるだけだ。
 だからわたしは、ちょっとだけ話してみる事にした。
 どこまで隠せるかは自信ないけど……でも、未来のためだもん!
「わたしね……強くならなくちゃ、いけないんだ……」
「強く?」
「そう。私はまだまだ全然ダメで、翔くんにも迷惑かけちゃってる。翔くんは優しいから、全然迷惑だなんて思ってないと思うけど……やっぱりわたしも、翔くんに頼りっぱなしじゃダメだよね」
 そこまで言うと、未来は少し考え込む。
 うう……やっぱり色々隠しながら話すのって難しい……。
 
「……あのね、響。どんなに悩んで考えて、出した答えで一歩前進したとしても、響は響のままでいてね」
「わたしのまま……?」
 立ち上がり、空を見ながらそう言った未来に首を傾げる。
「変わってしまうんじゃなく響のまま成長するんだったら、私も応援する。だって響の代わりは何処にもいないんだもの。いなくなってほしくない」
「……わたし、わたしのままでいいのかな?」
「響は響じゃなきゃ嫌だよ」
 その言葉に、翔くんの言葉が重なる。
 私は私、"立花響"のままであればいい……。二人共、私に同じ言葉をかけてくれている。
 その同じ言葉に中学の頃、胸に刺さった棘が1本、抜け落ちた気がした。
「ありがとう、未来。わたし、わたしのまま歩いて行けそうな気がする」
 学校の隣にある、翼さんが入院している病院を見ながら、わたしは決意を握る。
「そっか。ならよかった」
 そう言って微笑むと、未来はスマホを取り出した。
「実はこの前の流星群、動画に撮っておいたんだ」
「え!?見たい見たーい!」
 未来のスマホを借り、動画を再生する。
 
 でも、カメラには真っ暗な空しか映ってなくて、星なんて一つも見えていなかった。
「んん?……なんにも見えないんだけど……?」
「うん、光量不足だって」
「ダメじゃん!!」
 そうツッコむと、わたしと未来の間には自然と笑顔が咲いていた。
「あははは、おっかしいな~もう……。次こそは、最後まで一緒に見ようね?」
「今度は絶対、途中で抜けないでよ?」
「うん!今度は翔くんも連れて来ていいよね?」
「え……う~ん……まあ、響がそれでいいなら……」
 何故か少しだけ困ったような顔をした後、未来はそう言った。
 あの日、翔くんと翼さんは空を見上げる人達を守る為、自分たちは空より目の前だけを見続けていた。
 だから、今度は2人よりも3人で!忙しくなかったら、翼さんも連れて来て4人で一緒に見よう!
 
 ──わたしだって、守りたいものがある。わたしに守れるものなんて、小さな約束だったり、何でもない日常くらいなのかもしれないけど、それでも、守りたいものを守れるように……わたしは、わたしのまま強くなりたい!
 
 ∮
 
「たのもーーーッ!!」
「なっ、何だいきなり!?」
「ようやく来たか、立花」
『風鳴』と木製の表札がかけられた屋敷の門を叩き、声を張り上げる1人の女子校生。
 家主の風鳴弦十郎は驚きながら戸を開く。一方、一緒にアクション映画を見ていた甥の風鳴翔は、予期していたかのように落ち着いていた。
「わたしに、戦い方を教えて下さい!!」
 立花響は二人の顔を見ると、綺麗にお辞儀しながらそう言った。
「この俺が、君に?」
「はい!翔くんを鍛え上げた弦十郎さんなら、きっと凄い武術とか知ってるんじゃないかと思って!」
 そう言われ、弦十郎は少し考え込むような素振りを見せると、真面目な表情で答える。
「……俺のやり方は、厳しいぞ?」
「はい!!」
 響は迷わず頷いた。それを見て、翔は満足そうに笑っている。
「時に響くん、君はアクション映画とか嗜む方かな?」
「……え?」
 これからどんなトレーニングが始まるのかと胸を踊らせていた響は、弦十郎からの予想外の質問に困惑する。
 すると翔が、腹を抱えて笑い始めた。
「翔くんどったの?」
「あはははは、いや、ゴメンゴメン。予想通りの困惑っぷりに、思わず、ね……」
 疑問符を浮かべる響に、翔は叔父の口癖であるあの言葉を教えた。
「叔父さんの鍛錬方法は特殊でさ、『飯食って、映画見て、寝る』。これがこの人の鍛錬方法だから、真似するにしてはアテにならないんだこれが」
「え!?ええええええええええええ!!??」
 それでどうやってあの強さを?と困惑する響に、翔は続ける。
「だから、俺はそれを実践しながらも筋トレやスパーリングも取り入れてなんとかここまで自分を鍛えて来たんだよ」
「そ、そうなんだ……」
「それに実際、叔父さんのは過程をすっ飛ばしてるだけで、アクション映画で戦い方を観察して真似し、映画の通りに鍛える……これが確かに効果あるんだよ。叔父さんのは特殊というか、もはや異常なんだけど」
「うむ。映画は偉大、という事だな!」
 弦十郎の破茶滅茶っぷりを実感しつつ、響はこの人なら師匠として申し分ないと実感するのだった。
「というわけで、叔父さん。宜しく頼めますか?」
「俺でいいなら、いくらでも鍛えてやる。2人纏めて相手してやるから、覚悟しとけよ!」
「はいッ!師匠!」
「よろしくお願いします、叔父さん!」
 
 こうして響は翔と共に、弦十郎の元で修行する事となった。
 弦十郎の好きなアクション映画、または翔オススメの特撮映画を鑑賞し、朝早くから街中をランニングしスパーリング。時間があれば筋トレを続けた。
 また、シンフォギアを纏って戦う以上、歌を磨くのも忘れない。
 未来や友人達を誘い、カラオケへ行っては高得点を狙って歌い続ける。
 翔はカラオケに同伴こそしなかったが、インナーマッスルの鍛え方や発生方法といった点でアドバイスしつつ、自らも演奏技術を高めるべくバイオリンを握っていた。
 やがて、弦十郎の自宅の一角にある道場では、道着姿がやたら様になっている少年少女と、明らかに格ゲーの世界から飛び出してきたのではと思われる大人一名が、組手を行う光景が日常化したそうである。 
 

 
後書き
XDと原作を両方見ながら、その間を取った台詞回しにしつつ、原作と違う状況と照らし合わせてセリフ改変するの、めちゃんこ大変です。
ちなみにOTONAは黒の道着に数珠、ビッキーが白の道着に赤襟巻きなので、OTOKOは灰色の道着に青鉢巻です。

響「師匠の修行、すっごい身になるね翔くん!」
翔「だろ?俺が世界で1番信頼してる大人が師匠なんだ、効果覿面に決まってるさ」
響「これ続けてたら、私達も師匠くらい強くなれるかな?」
翔「2人でOTONAへの階段を登るのか?」
響「お、おおお大人の階段!?それはまだ早すぎるというか、何というか!?」
翔「そっちじゃねぇ!そういう意味じゃないから!」
翼「そうだ!お前達にはまだ早い!」
翔・響「「姉(翼)さん!?」」
翔「入院してた筈じゃ……」
翼「何やらとんでもない発言が聞こえた気がしたので飛び出して来た」
響「これが防人の底力……!」
翔「SAKIMORIってやべぇ……!」
緒川「何やってるんですか翼さん、病室に戻りますよ」
翼「離してください緒川さん!私は2人に間違いが起こらないよう、姉として釘を刺す義務が!」
緒川「以前に比べて大分認めて来てくれてるのは良いことですが、絶対安静って言われてるの忘れないでください!話なら(病院の)ベッドで聞けばいいじゃないですか!」
響・翼「「えっ」」
翔「ああ……聞き間違いが聞き間違いを……。これもきっと、バラルの呪いってやつの仕業なんだ」

正直ブラコンSAKIMORIなら、弟に何かあった瞬間復活する気がする……。
さて次回、天下の往来独り占め作戦が迫る! 
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