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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第2楽章~約束の流れ星~
  第19節「完全聖遺物・デュランダル」

 
前書き
この頃はどんどんランキング上位に登り始めてて、毎日毎日頑張っていた頃ですね……。
何もかもが懐かしい……。 

 
「すみませーん!遅くなりましたー!」
 レポートを仕上げている途中、定例ミーティングの時間になったため、響は寮を出て二課へとやって来ていた。
 翼と翔も先に着いており、響を出迎える。
「では、全員揃ったところで、仲良しミーティングを始めましょ♪」
「それで了子さん、今回はどんな要件で?」
 翔の質問に答えるように、モニターにはマップが表示される。
「さて、これを見てくれ。これはここ1ヶ月にわたるノイズの発生地点だが……」
 マップには大量の赤い点が存在している。そのポイントがノイズの発生地点なのだが、響の口から出た一言は……。
「……いっぱいですね」
「はは、立花らしい」
 その脳天気な一言に翔と弦十郎が笑い、翼は一瞬頭を抱えた。
「まあ、その通りだな。さて、ノイズについて響くんが知っている事は?」
「テレビのニュースや学校で教えてもらった程度ですが……」
 弦十郎からの問いに、響は指を折りながらひとつずつ答える。
「まず、無感情で、機械的に人間だけを襲うこと。そして、襲われた人間が炭化してしまうこと。時と場所を選ばずに、突如現れて周囲に被害を及ぼす、特異災害として認定されていること……」
「意外と詳しいな」
「今まとめているレポートの題材なんです」
 弦十郎が感心したように言うと、響は後頭部を掻きながらそう言った。
「なるほど。どうやら翔との勉強会は、かなり身になったらしいな」
「ちゃんと覚えていてくれてるなんて、教えた甲斐があったよ」
「その件はどうも~」
 翼が若干ジト目気味だった事に気付かない、ブラコンの悩みの種達である。
 
「ノイズの発生が国連で議題に上がったのは今から13年前の事だけど、観測そのものはもっと前からあったわ。それこそ、世界中に太古の昔から」
「世界の各地に残る神話や伝承に登場する数々の異形は、ノイズ由来のものが多いだろうな」
「だとすると……この前翔くんが指摘した通り、そこに何らかの作為が働いていると考えるべきでしょうね」
 了子の一言に、響が驚いた表情を見せる。
「作為……って事は、誰かの手によるものだというんですか?」
「ここ1ヶ月のノイズ発生の中心地はここ。私立リディアン音楽院高等科、我々の真上です。サクリストD──『デュランダル』を狙って、何らかの意思がこの地に向けられている証左となります」
「だろうね。生弓矢を狙った連中も、多分本命はこっちの方だろうし」
「あの、デュランダルって一体……?」
 翼の言葉に首を傾げる響。翔はだろうな、と言いたげな表情をすると、ここぞとばかりに響に説明を始めた。
「フランスの叙事詩では、シャルルマーニュ十二勇士の一員であるローランが持っていたとされる絶対に折れない剣だよ。ギリシャの叙事詩であるイーリアスに登場するトロイア国の英雄、ヘクトールの武器でもあったとされているね。その黄金の柄の中には聖者達の遺骸の一部が収められていた、とも言われているご利益迸る剣でもあるね」
「えっと……要約すると?」
「金色の滅茶苦茶硬くて絶対折れないすっげぇ剣、かな」
「なるほど……凄い!!」
 翔のIQをかなり下げた説明に納得し、その凄さを理解したのを見て微笑むと、友里はデュランダルの説明を始めた。
 
「この二課の司令室よりも更に下層。『アビス』と呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下にて我々が研究している、ほぼ完全状態の聖遺物。それがデュランダルよ」
 その説明を補足するように、藤尭が続ける。
「翼さんの天羽々斬や、響ちゃんのガングニール、翔くんの生弓矢のような欠片は、力を発揮するのにその都度装者の歌を必要とするけど、完全状態の聖遺物は、一度起動すれば常時100%の力を発揮する。そして、それは装者以外の人間も使用出来るであろうとの研究結果が出ているんだ」
「それが、私の提唱した櫻井理論ッ!」
 藤尭がそこまで説明を終えた瞬間を見計らい、了子はドヤ顔と眼鏡に手を添えた決めポーズでそう言った。
 もっとも、響以外の面々は聞き慣れているのか「やれやれ」と言った顔で流していたのだが。
 
「だけど、完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲイン値が必要なのよね~」
「あれから2年。今の翼の歌であれば、或いは──」
「でも、そもそも起動実験に必要な日本政府からの許可っておりるんですか?」
 弦十郎の言葉に、友里が疑問を呈する。その疑問に対し、藤尭は深刻そうな顔で答えた。
「いや、それ以前の話だよ。扱いに関しては慎重にならざるを得ない。下手を打てば国際問題だ。米国政府が、安保を盾に再三のデュランダル引き渡しを要求しているらしいじゃないか」
「まさかこの件、米国政府が糸を引いているなんて事は……?」
「調査部からの報告によると、ここ数ヶ月で数万回にも及ぶ本部へのハッキングを試みた痕跡が認められているそうだ。が、流石にアクセスの出所は不明。それらを短絡的に米国政府の仕業とは断定できないが……」
 国際問題、とまで言われると内容が途端に複雑になり、響は話について行けなくなっていた。
 それでも、少なくとも二課が直面している問題はノイズだけではない。それだけは彼女にも理解出来ていた。
 
「……風鳴司令。お話中のところすみません」
 そこへ、緒川が眼鏡をかけながら現れる。
 その場の全員が彼の方を見ると、緒川は腕時計を指さしながら言った。
「翼さん、今晩はアルバムの打ち合わせが入っています」
「もうそんな時間か。すまない、私はもう行かなければ」
「だとすると、ミーティングはここまでかな」
 弦十郎がミーティングの打ち切りを宣言すると、翼は緒川と共に司令室を退出して行った。
 それを見送り、響は呟く。
「私達を取り囲む脅威は、ノイズばかりじゃないんだね……」
「ああ。悲しい話だけどな……」
「どこかの誰かがここを狙っているなんて、あまり考えたくないよ……」
 そう呟く響の前に立つと、了子は自慢げに宣言した。
「大丈夫よ。なんたってここは、テレビや雑誌で有名な天才考古学者、櫻井了子が設計した人類守護の砦よ!異端にして先端のテクノロジーが、悪い奴らなんか寄せ付けないんだから♪︎」
「はいはい。了子さんの天ッ才ぶりは重々理解していますよ」
「あはは、頼りにしています……」
 了子のしつこい程の天才アピールに、響と翔は揃って苦笑いするのだった。
 
 ∮
 
 翌日、昼休み。私立リディアン音楽院高等科の校庭、その片隅にある芝生では仲の良さそうな五人の女生徒が集まっていた。
「人類は呪われているーーーっ!!」
 そのうち2人は、友人に弁当を食べさせてもらいながら、必死で昨日仕上げる前に寝てしまった事で完成させられなかったレポートの最後のページを仕上げている立花響と、そんな彼女を隣で見守る親友、小日向未来だ。
「むしろ、私が呪われている。あむっ……もぐもぐ」
「ほら、お馬鹿なこと言ってないで。レポートの締め切りは今日の放課後よ?」
「だからこうして……もぐもぐ、限界に挑んでるんだよ」
 
「それにしても珍しいよね~、ビッキーがレポートこんなに早く仕上げてるなんて。頭でも打ったの?」
 灰色がかったショートヘアが特徴的なリーダー格の少女、安藤創世(あんどうくりよ)が不思議そうに呟く。
「確かに珍しいよね。いつもなら放課後ギリギリまでやってようやく提出なのに、今回は殆ど終わってるじゃん」
「未来さんが手伝うよりも先に、ここまで来ていたのですわよね?」
 茶髪のツインテールが印象的なアニヲタ少女、板場弓美(いたばゆみ)と、金髪ロングヘアで上品な言葉遣いの少女、寺島詩織(てらしましおり)も首を傾げる。
「うん。響、このレポート、一体誰に手伝ってもらったの?」
「うーん……何て言ったら良いんだろ。最近出来た友達、かな」
「友達?私、聞いたことないんだけど……」
 未来の目がジトッとする。安藤、板場の二人はその視線に一瞬だけ肩を跳ねさせた。
「ヒナが嫉妬してるよ……」
「し、親友の交友関係にジェラシー妬くなんてアニメじゃないんだから……」
「どのような方なのですか?」
「詩織!それ火に油ぁ!!」
 未来の表情に気づかなかったのか、寺島は他の二人が敢えて避けようとしていた疑問を見事に言いきった。
 そして、その問いに対して響は……少し困ったような顔をして、やがて意を決したように答えた。
「えっと、とっても優しくて……ちょっとだけかっこいい人……かな」
 瞬間、その場にいる全員に電撃が走った。
 その一瞬だけ小さくなった一言を、四人は聞き逃さなかったのだ。
「そ、それって……」
「もしかして……」
「まさかビッキー……」
「ねえ響、ひょっとして……」
「「「「彼氏出来てるの!?」」」」
 四人が導き出した結論は、寸分違わずにその声をシンクロさせた。
 
「ちっ、ちちち違うよ!?翔くんとは友達だけど、そんなっ、彼氏だなんて言われるような謂れは全然ないんだから!!」
 彼氏、と言われて慌てて反論する響。しかし、動揺で名前を出してしまった為、安藤と板場までもがそれに食いつく。
「へぇ、翔くんって名前なんだ。苗字は?何年生?イケメンだったりするの?」
「ちょ、ちょっと待って!って事は土曜日の昼、響がアイオニアンの制服着た男子と一緒に歩いていたって噂は本当だったってわけ!?」
「まあ、このリディアン女学院の姉妹校の?一体どのような出逢いをしたんですか?」
「ちょっ、ちょっと!そんなにいっぺんに聞かれても答えられないよぉぉぉ!!」
 3人から質問攻めにされ、響は未来に助けを求める視線を送る。
 が……一番わなわなと肩を震わせているのは未来であった。
「響、これは一体どういうこと!?もしかして、最近一人で何処かへ出掛けてたのって、そういう事だったの!?」
「だから違うんだってば!!」
「何が違うの!一から説明してよ!!」
「ええ……えっと、その……。わかった、説明出来る所まで説明してみる……」
 未来にまで迫られたら敵わない。響は二課やシンフォギアの事を伏せながら、翔との出会いについて語る事になったのだった。
 
 

 
後書き
響「どうして私達は、ノイズだけでなく人間同士でも争っちゃうんだろう?」
了子「ん?」
響「どうして世界から、争いはなくならないんでしょうね……」
了子「ん~、それはきっと……人類が呪われているから、じゃないかしら?はーむっ」
響「ひぃやぁっ!!??りょ、りょりょりょ了子さん!?なにゆえいきなり私の耳を食むんですかぁ!?」
了子「あ~ら、おぼこいわね。誰かのものになる前に私のモノにしちゃいたいかも♪」
響「え?え!?」
了子「でもそれは許してくれなさそうね~、そこの健気なナイトさんが」
翔「了子さん!立花を揶揄うんじゃありません!ってか、揶揄うにしたって限度があるでしょう!限度が!立花、大丈夫か?」
響「翔くん……わ、私は大丈夫だから落ち着いて、ね?」
了子「うん、やっぱり仲良いわよねあなた達。もし私のものにしちゃうなら、やっぱり二人一緒じゃなきゃダメよね~」
翔「俺も立花も、あなたの玩具になるつもりは毛頭ないのでご心配なく。俺だけならともかく、立花をあまり度を超えたおふざけに巻き込むなら、俺は了子さんが相手でも容赦しませんよ?」
了子「ふ~ん……藤尭くん、友里ちゃん。今の録音できてる?」
藤尭「バッチリです!」
友里「一言一句残らず保存しました!」
了子「はーい、それじゃ馬に蹴られないように撤収するわよ~!」
翔・響(藤尭さんと友里さん、何やってたんだろう……?)

あのシーンは本編に入り切りそうにないので、ここで使わせて頂くことになりました。
今後も本文でカットされた補完シーンは後書きに描かれます! 
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