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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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戦姫絶唱シンフォギア
第0楽章~前日譚~
  風鳴姉弟のサプライズ(天羽奏誕生祭2019)

 
前書き
遡ること7月の初め頃。シンフォギアにどハマりし、それからYouTubeの公式配信をマラソンし、適合率が一気に高まった結果、このフォニックゲインをどうにか解放しなくてはという事で書き始めました。
自分でも言ってる事、全然分かりません!

そして遡ること3時間ほど前。ハーメルンから引っ越した私は、ここで再スタートする事にしました。
最初に投稿するのが、本来は奏さんの誕生日当日に更新したエピソードだとは……。私は悲しい。

それでは心機一転、新天地での最初の作品としてよろしくお願いします! 

 
「もしもし、姉さん?こっちは準備終わったところだけど」

 翔はスマホを片手に、テーブルの上に最後のひと皿を並べた。

 会場の飾り付けは既に完了。料理もクロッシュを被せ、いつでも主役が来ていいように準備出来ている。

 7月28日、今日は特別な日だ。翔は姉の翼と2人で、サプライズパーティーを企画していた。
 翔が部屋を飾り付け、腕によりを掛けて料理を用意する。一方、翼の役割はプレゼントの購入。そして、主役を迎えに行くことだった。
 
 しかし、やはりというかテンプレというか、翼はプレゼント選びで悩み続けていた。

「うーん……あれがいいかしら? いや、こっちもいいわね……」
『常在戦場を口癖にしてるトップアーティストが、そんな優柔不断でどうするの?』
「そっ、それとこれとは話が別よッ!」

 現在、翼は都内のアクセサリーショップにいた。
 プレゼントには何がいいか。考えた結果、お揃いのアクセサリーを贈る事に決めた翼だったのだが、どれを贈ればいいのかで迷うこと2時間近く。一向に決まらないのだった。

 ペンダント?いや、常に首から下げてるな……。

 ブレスレット?確かに良さそうだが、調べてみたところ贈り物としては意味が重い……。

「どうしたものかしら……ん?」

 迷い続けた末、店の片隅まで来ていた翼の目にあるものが飛び込んで来る。

 それは、左右ワンセットのイヤリングだった。

 銀色の羽の形をした枠を持つイヤリングには、それぞれオレンジと青の石が嵌め込まれている。一目見た瞬間に、翼は「これだ!」と確信した。

 レジへと向かい、イヤリングを包装してもらった翼はそのまま店の外へと出る。
 晩夏の日差しが青空から降り注ぎ、街をギラギラと照らす。夏空を見上げながら、翼は翔に連絡した。

「翔、決まったわよ!」
『おお、それじゃあ後は……』
「ええ。奏を迎えに行くだけねッ!」
 
 ∮
 
「おいおい、いきなり呼び出したかと思ったら目隠しだなんて、一体どういう事なんだ?」
「いいからいいから。あ、段差あるから足元気を付けてね?」

 姉さんが奏さんを連れて、玄関からやって来る。
 パーティークラッカーを手に待機していると、間もなく二人がやって来た。

 アイマスクで目隠しされた奏さんをエスコートして来た姉さんに、そっとクラッカーを渡す。
 姉さんとアイコンタクトを取ると、足音を忍ばせて距離を置き、クラッカーを構えて……

「奏、もう外していいよ」
「わかった。それで、これは何の……」

 奏さんがアイマスクを外した瞬間、パーティークラッカーの栓を引き抜く。
 軽い破裂音と共に紙テープが宙を舞った。

「奏、お誕生日おめでとう!」
「奏さん、ハッピーバースデー!」

 姉さんと僕にそう言われ、奏さんは目を丸くした。

「へ?……あ、そっか!今日、あたしの誕生日だ!何ですっかり忘れてたんだろ……」
「いいから、ほら座って!」

 姉さんに促され、奏さんが席に着く。

 多分、最近任務と訓練、それにツヴァイウイングのライブもあったし、自分の誕生日にまで気が回らなかったんだろう。
 祝ってくれる家族がもう居ないのも、要因の一つなのかもしれない……。

「本当は二課の皆で祝いたかったんだけど、忙しいらしくて……」
「はは、いいよ。翼と翔が祝ってくれるなら、それだけであたしは満足だ」

 奏さんが嬉しそうに笑う。その笑顔はとても幸せそうで、姉さんは少し照れ臭そうだった。

「来年は緒川さんと叔父さん、了子さん、藤尭さんや友里さん達も皆で祝おうって約束しました。今日は僕達姉弟だけですが、思いっきりもてなしますよ!」

 クロッシュを取ると、昨日の晩から仕込んでいた料理の数々が湯気を上げる。
 特に唐揚げはタレに使う調味料から拘り抜いて完成させた逸品だ。二人共、きっと美味しく食べてくれると思う。

 ちなみにケーキは冷蔵庫の中。奏さんはよく食べるので、サイズが大きいのを選んで買って来た。余る心配などしていない。

「それではこれより、天羽奏さんの誕生日パーティーを始めます! 乾杯!」
「「かんぱ~い!」」
 
 それから僕達は、日が暮れるまで笑い合った。
 奏さんが唐揚げをどんどん頬張り、「翔、また腕を上げたな!」って言ってくれた時は嬉しかったし、ローソクの火を吹き消した後、姉さんがケーキを寸分違わぬ大きさにキッチリとカットした時は奏さん共々驚いた。

 それから、姉さんからのプレゼントを空けた奏さんは、今日一番嬉しそうだった。
 誕生日にプレゼントを貰ったのは、おそらく久し振りだったと思う。
 小さな青い石が嵌め込まれた、片翼のイヤリング。奏さんがそれを手に取ると、姉さんはもう片方のイヤリングを見せた。

 姉さんのはオレンジ色の石が嵌め込まれた、奏さんにあげたものと左右対称のイヤリングだった。
 左右対称で片翼、その上姉さんと奏さんの色だなんて、お誂え向き過ぎるデザインだ。二人の為に用意されていたと言っても過言じゃないだろう。

「奏さん、贈り物のイヤリングがどんな意味が知ってます?」
「いや?どんな意味があるんだ?」

 奏さんが首を傾げる。まあ、予想通りの反応だ。奏さんは普段の性格から見て、その辺りに詳しいタイプではないだろう。

「いつでも自分の存在を感じてもらいたい、という意味があるそうですよ」
「なっ!?こら、翔!余計な事言わない!」
「なるほどな~。つまり、これを付けていればあたしらはいつでも一緒、って事か」
「かっ、奏まで!」
「ホンット、姉さんは奏さんの事大好きだよね」

 僕からの一言で、姉さんはあっという間に真っ赤になって縮こまった。
 まったく。そういう所が可愛いんだから……。

「ありがとな、翼。このイヤリング、大事にするよ」

 そう言うと奏さんは、貰ったばかりのイヤリングを左耳に付け、姉さんを抱き締めた。

 思えばこの二人、よく抱き合ってるイメージがある。
 微笑ましいというかなんというか……お互い、喪ってしまったものと得られなかったものがちょうど重なってるんだろうなぁ、と。

 だからこの二人はこれくらいの距離で、お互いに依存する事で心を保っている。僕の勝手な推察だけど、あながち間違っても居ないんじゃないかなぁ。

「あたしも、翼の事は大好きだぞ♪︎」
「うう……もう……」

 あ、これ邪魔しちゃいけないやつだ。
 ここは空気を読んで、暫く二人っきりにしてあげよう。

 そう思って移動しようとした時、思いっきり肩を掴まれて引っ張られた。

「おおおおおおおッ!?」
「もちろん、翔の事もなッ!」
「かっ、奏さんッ!?」
「ちょっと、奏ッ!?」

 何事かと困惑する間もなく、肩に腕を回されたかと思えば、姉さん共々揃って奏さんに抱き締められる。
 フランクで男勝りな奏さんらしい感情表現だなと思う反面、とても恥ずかしいのだが、奏さんは離してくれる気がしない。

 姉さんに至ってはキャパシティーがギリギリらしく、そろそろ顔から湯気が出てくるのではないかと思うくらい真っ赤になっている。うん、可愛い。うちの姉さん今日一番可愛い。

「翼、翔……二人に出会えて、本当によかった……。これからもよろしくな?」

 ──顔は見えなかったけど、その時、奏さんの声はとても静かで。何処か安心したような、慈しみに溢れていた。
 


 この後、仕事が終わって戻ってきた緒川さんにこの状況を見られ、そのまま写真に収められてしまったのは別の話だ。

 その写真は今でも、姉さんと俺の机の上で、それぞれ写真立てに飾られている。
 俺と姉さん、そしてもう一人の姉とも呼べる人が、共に過ごした最後の誕生祝いの思い出として……。 
 

 
後書き
奏さん、XDだとめっちゃ当たって驚いてます。
初めてのガチャで出たエクスドライブは現在2凸、ソルブライト3枚、双星もいます。
あの人にはずっと、両翼揃って歌い続けていてほしかった……。
「生きるのを諦めるな!」はXVまで見ても色褪せない名言ですよね。
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