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おっちょこちょいのかよちゃん

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25 かよ子の母、山田まき子

 
前書き
《前回》
 オリガに勝利し、丸岡を追い払ったかよ子達は再びいつもの生活を再開する。そしてかよ子はこれからの闘いの仲間を増やした。そして丸岡は自身の属する組織にて作戦を立て直し始める・・・。
 
 今回からはかよちゃんの持つ杖にまつわる話を取り上げたいと思います。ちなみにかよちゃんが持つ杖の「何かの物質に杖を向けると向けたものに関する能力を得る」というのはゲーム「星のカービィ」のカービィの吸い込みによるコピー能力からヒントを得ました。 

 
 梅雨どきだから雨は降り続ける。しかし、珍しくこの日は晴れていた。かよ子は学校からの帰り道、道路に所々にある水溜まりをよけながら、まる子、たまえ、そしてとし子の四人で帰っていた。
「かよちゃ〜ん、水溜り踏んで靴濡らさないよ・・・、う・・・」
 そう言ったまる子が水溜りの上をバシャっと言って自分の靴と靴下を濡らしてしまった。
「ま、まるちゃんも気をつけないと・・・」
 たまえが気弱そうに忠告した。
「うん、アタシもおっちょこちょいなの忘れてたよ~」
「そういえばさあ」
 とし子が話題を変える。
「かよちゃん、この前長山君を悪い人達から守ったんだってね、すごいよ。ちょっとは変わったんじゃないかな?」
「うん、でも、あの時は長山君にも助けられたし、それに、一人は取り逃がしちゃったからまたいつ襲ってくるかわかんないよ・・・」
「そうだね、用心しなくちゃね」
「でも杉山君も凄い関心してたよお~」
 かよ子は好きな男子の名前を言われて赤面した。
「で、でも、杉山君にも助けて貰ったし・・・」
「でも、かよちゃん、杉山君にもいいところアピールできてるよ!」
 たまえが励ました。
「う、うん、ありがとう、たまちゃん」
 かよ子はやがて三人と別れ、家に着いた。

 かよ子は家に帰ると忘れないようにと思い、宿題に取り掛かった。宿題のプリントを学校に置いてきていなくて持ち帰っていた事はおっちょこちょいの自分にとっては非常にホッとする事であった。15分ほどかけて宿題を終え、かよ子は下の階に降りた。母が彼女を呼ぶ。
「かよ子」
「あ、お母さん、今宿題終わったよ」
「そう、じゃ、今日は隣のおばさんも呼んでる予定なの」
「え?どうして?」
「ちょっと話をしようと思ってね」
 ちょうどその時、インターホンがなった。
「あら、噂をすれば」
 かよ子の母は玄関へと行った。
「まきちゃん、来たよ〜」
 隣のおばさんはかよ子の母の名が「まき子」と言う為、彼女の事は「まきちゃん」と呼んでいた。
「奈美子さん、健ちゃんもお上がりになって」
(え、隣のお兄ちゃんも来てるの?)
 かよ子はなぜおばさんの甥も来るとは予想しなかった。彼も呼ぶ事が必要なくらいの話をするのだろうか?
「や、かよちゃん。手ぶらじゃなんだからケーキ持ってきたよん」
 隣のおばさんと甥の三河口が入ってきた。
「おばさん、ありがとう」
 そして母も一緒に戻ってくる。
「それじゃ、話を始めましょうか」
「ところで、話ってどんなの?」
「それはね、かよ子に渡したあの杖の事よ」
「私の杖?」
「そうよ。あれはかよちゃんのお母さんが元々使ってたんよ」
「おばさんもお兄ちゃんも知ってたんだ・・・」
「うん、俺にもその話は知ってるし、かよちゃんの活躍も聞いてるよ。アレクサンドルとアンナの兄妹との決闘、秘密基地争奪戦の鎮圧、丸岡修の長山君拉致の阻止・・・。あの兄妹との決闘は隣で見てたし、秘密基地の取り合いについてはすみ子って子の兄貴と同級生だから遠くから見てたよ。丸岡についても長山君って子の近所に住んでる知り合いが俺のさらに別の同級生がめちゃくちゃ怒ってたからさ、その戦いの様子を見てたんだ。君達が丸岡の落とし穴に落ちた時は・・・」
 三河口はポケットから一つの御守を取り出した。
「このおばさんの御守で地底まで落ちるのを止めたんだ。その後、丸岡の認識術と矛盾術を無力化させてかよちゃん達はオリガを倒し、逃げた丸岡を俺とその同級生の二人でぶっ飛ばしたわけだよ」
「そうだったの!?」
「うん、ごめんな、もっと近くで助けてやれなくて。実は俺にも『能力』があってね。それもとても強力すぎるからあまり使わないようにしてんだ。あの時は丸岡を遠くにふっとばしたからね。あれでも手加減したつもりだが・・・」
「え・・・?」
 かよ子は三河口にも自分が魔法の杖の説明書を解読できたり、オリガの相手の肉体をバラバラにして瞬殺するのを防ぐような謎の能力が備わっているのかと疑った。
「まあ、俺の話はまた今度話すよ。今日は君のお母さんとそのかよちゃんの杖の話を聞きに来たからね」

 かよ子の母は紅茶とおばさんが持って来たケーキを準備を終え、話を始めた。
「それでお母さん、この杖はいつから持ってたの?」
「そうね、かよ子と同じ小学生の頃からだったわね・・・」
「そうだったね。あの時は戦争が終わったころだったね」
 まき子も奈美子も当時の苦悩を思い出していた。
「戦争か・・・」
 戦後生まれのかよ子にも三河口にも戦中、そして終戦直後の明日の見えないような辛酸を味わった事がない。しかし、かよ子の母も三河口の叔母も思い出すだけで暗くなり、苦しく、そして辛く思い出すほど自分達にも戦争の恐怖や苦渋が伝わっていくのであった。
「ああ、ごめんね。二人とも」
「いえ、お気になさらず、戦争っていうのがとても恐ろしいものだというのが改めて分かりましたからね、にも関わらず、『あいつら』はまた始めようとするんですから・・・」
「そうね、戦争が終わって日本が負けてから大変だったわ。特に食料が足りなくて、あの頃は米軍(アメリカ)が憎らしくて、私達も米軍のジープが通りかかる度にいつ酷い事されるか分からなかったわ。ある時、お腹が減って歩き疲れた時、ジープが通りかかって来てアメリカ兵が降りてきて私に近づいてきて連れ去られると思ったけど、チョコレートをくれたのよ。アメリカの人は怖い人ばかりじゃないってあの時分かったわ」
「ちょっとまきちゃん、杖の話から逸れてるよ」
 奈美子が突っ込んだ。
「ああ、そうだったわね。あの杖は・・・」
 まき子は続ける。
「食糧不足で悩んでいた時に、異世界の人から貰ったのよ」 
 

 
後書き
次回は・・・
「家を失くした少女」
 終戦直後の物資不足の日本、かよ子の母・まき子は家を空襲で破壊され、ひもじい思いをしながら明日の見えない日々を過ごしていた。食料を見つけようと歩き回り、彼女が出会ったのは・・・。 
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