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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百四十六話 ビロードその十四

「もう書けなくなったってね」
「そう言ってたノ」
「遺書にそんなことを書いてたよ」
「作家として終わりだかラ?」
「そうしたのかもね、それに」
 僕はジューンさんに太宰治についてさらに話した。
「太宰は終生芥川龍之介を敬愛していたから」
「その人も自殺してるじゃなイ」
「そう、それでね」
「芥川を意識してなノ」
「自殺したかも知れないよ」
 芥川の自殺を知った十代の時に作家はあの様に死ぬべきだと言っていたらしい。この頃から芥川へのあこがれが強かったのだ。
「芥川賞も何としても取りたかったらしいし」
「そこまでだったノ」
「志賀直哉にも言ったし」
 如是我聞という人間失格と同じ頃に書いていた作品でだ。
「芥川みたいに弱くなれっテ」
「弱くなの」
「太宰は弱さを悪いと思ってなかったかラ」
「そこアメリカ的じゃないわね」
 ジューンさんはすぐにこう言った。
「アメリカだとネ」
「ランボーとかそうだね」
「映画のネ、とにかくネ」
「強いことがいいんだよね」
「アメリカという国も強イ」
 強いアメリカ、これを掲げて大統領になった人もいる。
「そうでないと駄目だってネ」
「考えているからだね」
「その考えはネ」
「どうかって思うよね」
「アメリカ人の私から見るト」
 どうしてもという返事だった。
「そう思ったけれド」
「それがなんだ」
「太宰は弱さをなのね」
「認めていたんだ、人は弱いもので」
 こう考えていてだ。
「その弱さを自覚してから優しくなれる」
「そう考えていたからなノね」
「志賀直哉にも言ったんだ」 
 強さ、それがあると言われた人にだ。
「当時文壇で凄い力を持っていた人だけれど」
「その人になのネ」
「あえてそう言ったから」
「芥川みたいに弱くなれっテ」
「死ぬ間際の作品だけれど」
 自殺するその直前だ。
「その時もそう言っていた位だから」
「芥川を終生敬愛していたのネ」
「だから自殺のことといい」
 このことが一番重要な要素だと思う、やはり。
「人生は芥川を真似ている様な」
「そんな風なノ」
「一脈通じるね、作品の作風も」
 それぞれ違うにしてもだ。
「何か太宰は芥川を思わせるんだ」
「そうなのネ」
「芥川は太宰を知らないけれど」 
「それでも太宰は芥川を知っていテ」
「その芥川をなぞった様な」 
 本当にそんな感じがする、芥川の全集で死んだ芥川と太宰を読んで司会者を入れて三人で話をさせている作品が最後の巻で載っていた。
「そんな気がするしね」
「そんなに芥川が好きだったノ」
「敬愛していたんだろうね」
「それも心かラ」
「そうだよ。
「成程ネ、そういえバ」
 ここでジューンさんはこんなことも言った。
「二人共男前ネ」
「あっ、そのこと言うんだ」
「太宰も芥川もネ」
「二人共確かに顔いいよね」
 写真を見ると本当にそう思う、あと三島由紀夫も結構な美男子だと思う。 
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