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六人分

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第三章

「そうしちゃうの」
「いるものと思ってしまって」
「そうだろうな」
「家族はね」
 両親は下の娘二人に答えた、そしてだった。
 千里の席に出したご飯やおかずは家族で分け合って食べた、そうして千里が一学期とおぢばがえりが終わって家に帰って来た時にだ。
 本人にこのことを話した、すると千里は驚いて言った。
「私がお家を出た日になの」
「ああ、ついな」
「あんたのご飯とおかずを出しちゃったのよ」
 こう千里本人に話すのだった。
「いないってわかっていたのに」
「それでもな」
「気付かないうちにね」
「用意したんだよ」
「そうなのね、何かね」
 千里は両親からその話を聞いて言った。
「不思議ね、私は皆と離れて」
「寂しかったな」
「そうなのね」
「その気持ちで一杯で寮に入ったのよ」 
 高校の女子寮にというのだ。
「幸い同じ部屋の三年の先輩が凄くいい人でね」
「ああ、よく電話で言ってるな」
「同じ兵庫の人よね」
「凄く優しくて奇麗で頭もよくて」
 千里はその先輩のことを笑顔で話した。
「確かに皆と別々に暮らしてるけれど」
「その先輩がいてくれてか」
「助かってるのね」
「かなりね。尊敬してるわ」
 千里は両親に笑顔で話した。
「本当にね。けれどお家じゃ」
「そんなこともあったんだよ」
「あんたがいなくなった日にね」
「そうなのね。それでそうしたことがあるのも」
「家族だな」
「無意識のうちにそうするのね」
「そうなのね」
 千里は両親の話にそうしたこともあるのだと頷いた、そしてだった。
 両親と妹達そして住み込みの人にこの一学期何があったのかを話した、家に戻った千里は夕食の時は家の夕食を食べた、この時は両親は間違わず彼女にご飯とおかずを出した。それは千里にとって久し振りに食べる家の美味しい味だった。


六人分   完


                   2019・3・14 
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